荒戸裕之の発言 (資源エネルギーに関する調査会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○参考人(荒戸裕之君) 御紹介いただきまして、ありがとうございます。秋田大学の荒戸裕之と申します。本日は、このような機会を与えていただきまして、感謝申し上げます。
スライドを中心に説明をさせていただきます。(資料映写)
この際に、簡単に自己紹介をさせていただきます。
私の専門は地質学でございまして、大学では、石油地質学、すなわち、油田とかガス田がどのようにして成立しているか、それから、どうやってそれを探すかという辺りのことを指導しております。
本日のテーマに向けて、我が国のエネルギーの安定供給というお題の中で、特に私が専門としております石油、天然ガスの安定供給について、地質学の立場から意見を述べさせていただきたいというふうに思います。
まず初めに、石油、天然ガス資源の基本的な事項の確認でございますけれど、石油、天然ガスとは、定義で申しますと、地質学の立場からは、天然に地下から産する炭化水素の混合物というふうに定義されております。ここで言う炭化水素とは、有機炭素と水素を主体とする化合物でございます。石油、天然ガスはその炭化水素化合物の混合物でございますので、天然に産するときには一定の決まった組成を持つものではございません。
成因は有機成因説というのが主流でございまして、そのもとになった根源物質は、地質時代の生物遺骸、プランクトンとか、植物プランクトンとかあと陸上の高等植物とか、そういったものの体をつくっている有機物であるというふうに考えられております。
生物遺骸が海底等の地層の中に濃集して保存される場合がございまして、そうした地層を根源岩というふうに申します。地層の中の生物遺骸は、地層が地下深部に埋没するに伴って熱に長くさらされますと、有機熟成作用というものを受けましてケロジェンという物質に変化します。そのケロジェンから炭化水素の分子が発生し、分離してくると。その分離してきた炭化水素の分子は、隙間の多い地層の中、岩石中にしみ出して拡散していきます。拡散するんですが、一定の条件が整う場所がございますと、そこにトラップされて、長い地質時代の間に石油鉱床、すなわち油田、ガス田が形成されるというふうに考えられております。
以上を概念に表現したものがこの図、ちょっとビジーな図で申し訳ないんですが、全体を石油システムというふうに総称いたします。厚い地層が堆積する場所、これ堆積盆地と申しますが、そのある場所に根源岩がたまり、熟成し、炭化水素が排出、移動してきて、トラップに石油、天然ガスがたまる、これが油田、ガス田になっていくわけです。
現在までの研究ではこのように考えられておるのですけれども、どこにどれだけ賦存しているのかということをピンポイントで言い当てることができるかと問われますと、それはかなり難しいというのが現状でございます。
というのは、私たちが足を踏み入れたことのない地下深部の自然現象を取り扱っておりますし、長い地質時代を経た地質現象を扱っておりますので未解明の点も多々あるというのが現状で、というわけで、石油探査は、確立した技術としての面があるだけでなくて、今後解明されるべき科学としての面も併せ持つというふうに御理解いただきたいというふうに思うわけです。
さて、次に、エネルギーの需要予測、これは一般的なデータでございますけれども、これを見ていきたいと思うんですが、石油、天然ガスの安定供給のために、エネルギー需要の種類別の依存度を現状と将来予測で見てまいります。
直近の二〇一六年のデータ、これは八割以上が再生不可能エネルギーに依存している、石炭、石油、天然ガスなどの再生不可能エネルギーに依存しておると。そのうちの半分以上が石油、天然ガスであるわけです。それが二〇四〇年になる頃には、再生可能エネルギーの需要全体の二〇%程度まで賄い得るようになると。その分、石油、石炭、天然ガス、いわゆる化石エネルギーへの依存度が減少すると予測されております。
もちろん将来予測の前提にはいろんな見解がございますので、これ以外の予想も成り立つということは御承知のとおりです。しかし、これだけ見ても、石油、天然ガスのエネルギーとしての重要性は当面は揺るがないというふうに理解できると思います。
これ、同じデータを需要量というふうに量で見てまいりますと、二〇四〇年までに需要自体が三〇%も増加するというふうに言われておりまして、ですから、割合として石油、天然ガスの需要の割合は減るんですが、量として見たときには、今までよりも更に多い量が必要になっていくというふうにみなすことができるわけです。ですから、現在と同じかそれ以上の量の石油、天然ガスを供給し続ける努力をしないといけないという意味であります。
このような見通しを理解した上で、国のエネルギー基本計画は、石油を今後とも活用していく、天然ガスを役割を拡大していく重要なエネルギー源として位置付けております。
さきに確認してまいりましたとおり、石油や天然ガス探査は科学としての側面も有するわけですから、今後活用を続けていくためには、これまでの知識や技術の上に黙ってあぐらをかいているわけにはいかないと。
しかしながら、残念なことなんですが、エネルギー基本計画には、これら在来型の石油、天然ガス探査についての今後の施策については余り多くは述べられておりません。新たな技術開発や最新技術によるデータ取得の努力が続けられてきたからこそ、可採埋蔵量が維持されてきたということをよく理解する必要がございます。
では、石油、天然ガス資源について抱く私たちの懸念、第一に枯渇問題ですね、第二に地球環境問題、本日はこの地球環境問題は余り触れませんが、それともう一つ、我が国としては輸入依存問題があると。私たちはこれに対してどのように対応していくべきなのか、次に見ていきたいと思います。
ここにお示ししたのは、世界の石油の可採年数の変遷でございます。縦軸が年数、横軸が一九二〇年から今までの時間の流れを示しております。
一九二〇年代から四〇年くらいまでは大体可採年数は二十年程度と言われてきたものが、年を経るに従ってだんだん延びてきて、今は直近のデータで五十年というふうに言われております。なお、これは使った分以上に毎年新たに見付かっているなどの理由によります。
一時期、ピークオイル論というのがございまして、悲観的な見方もございましたけれども、その後、御存じのとおりのシェール革命とかそういったものがございまして、事態は一変したというふうに理解されます。
可採年数というのはどういうものかというのを一応、御承知とは思いますが確認しますと、分子の方に確認可採埋蔵量、今現在見付かっていて、これを取ることができると分かっている油の量を置きます。分母の方に、昨年末、十二月三十一日までに使った年間の生産量、これを置くわけですね。ですから、昨年と同じペースで使い続ければ見付かっている量は何年もつかという数字になるわけなんですが、実は様々な要因でこれは変動して大きくなったり小さくなったりします。
分子側が増える要因は、一つには技術の進歩、向上で新たなものが見付かっていく、あるいは油価が上がることによって開発可能な油田が増えていくというようなこともあります。
技術のその進歩、向上というのは例えばどのようなものであるかというのを少し考えていきたいと思います。
ちょっとごちゃごちゃした図で申し訳ありませんが、まず図の左上の方から御覧いただくんですが、この図は石油探査の在り方を歴史的に見たものでございます。
昔は、地表にしみ出した油を使っていたわけです。黙ってすくって使っていたわけですね。それがやがて、油がしみ出している場所を掘るようになるわけです。最初は手で掘る、要するに人が掘るわけですね。だんだん深くなっていくと、それでは間に合わなくて機械で掘るようになると。だんだん深部まで見ていくようになるわけです。
次の段階としては、地表に兆候のないところにおいても、この場所の地下に油があるに違いないと考えてそこに掘るようになる。その確認のために、地質学それから地球物理学的な手法が用いられるようになります。そうした技術の発展で、地下のより深部へ、それから陸上から海域へ、海域でも浅い海から深い海へと探査の領域が広がってまいりました。
例えば、約三十年前くらいの海域の探査というのは大体水深二百メートルくらいまでの大陸棚の上で行われていた、それが中心でしたけれども、現在でははるかにそれを超えて、水深三千メーターくらいのところまで探査が行われるようになっております。こういった状況は、在来型の油田、ガス田の探査技術の話でございます。
では、在来型だけでなくて、非在来型も含めた新たな技術とは具体的にどのような姿をしているものかということをこの図で、シェールオイル、シェールガスの例を地下の断面イメージで考えてみたいと思います。
この図の一番下側に黒い層がございますけれども、これが石油根源岩層、すなわち生物がつくり出した有機物が濃集している地層でございます。これが熟成帯、要するに、ある程度の深さまで埋没すると油が出てきて、更に深くまで埋没すると天然ガスが発生するということでございます。
油や天然ガスは、先ほども申しましたが、隙間のある地層の中にしみ出して、油、天然ガスというのは水より軽いですので、浮力で浅い方へ移動していきます。どこまでもそういう地層がつながっていればどんどん拡散するんですが、行き止まりの場所があるとそこに後ろから来たものが次々とたまっていく、これが在来型の油田、ガス田のでき方なわけです。
これに対して、この最初に説明しました黒い層の、この根源岩層の中に取り残される炭化水素というのも実はたくさんあるわけです、ということが以前から実は分かっています。この熟成根源岩からしみ出さなかった炭化水素、これを最新の技術で取り出したものがシェールオイルとかシェールガスと言われるものなわけです。
その最新の技術とは何かといいますと、地表から井戸を掘るわけなんですが、その井戸を自由自在に曲げて水平にも掘るという技術があると。これは、水平坑井とか大偏距掘削とか申します。それがまず一つ。もう一つは、坑井の中に大きな水圧を掛けて地下で地層にひびを入れる技術、これは水圧破砕、フラクチャリングというふうに言っております。この二つの技術があってシェールオイル、シェールガスが取り出されるようになったと。
ですから、全体の資源としての流れを見る限り、シェールプレイといいますけれども、シェールオイル、シェールガスは、在来型の油田、ガス田が形成される途中の段階の資源を利用するようになったものだというふうにみなすこともできると思います。
それをもう少し炭素のサイクルという観点から見てまいりますと、この図のようになっております。これは横軸が、右が発散、左が集積というふうに御覧いただきたいと思います。縦軸はサイクルの進行を示しております。サイクルというのは、石油、天然ガスを作っている主成分である有機炭素が無機炭素からできる、そしてまた無機炭素に戻っていく、そのサイクルのことを言っています。
在来型のプレイでは、この図の右上からスタートして、有機炭素が植物によって固定されて濃集し、一旦、根源岩層というところに、この左上の方の箱の部分に濃集されるわけです。そこでできた炭化水素は発散していく、ところが途中でトラップがあるとまた濃集すると、こういう段階を踏みます。ですから、最初の濃集を一次濃集というふうに考えますと、二番目の濃集が二次濃集でありまして、二次集積とも言っていいかと思いますが、ですから、在来型は二次集積の産物であると。それに対して、シェールオイル、シェールガスは一次集積の産物と。このサイクルで見ていくと、ある意味とても違うものを取り扱っているんだということになります。
こういったものが日本でどのくらいの余地で見ることができるのかというのを次のマップで御覧いただきたいと思うのですが、日本全体の産油ガス地を示しております。
日本海の東縁に当たる例えば秋田、新潟、山形、それに北海道の中軸部から東北日本の太平洋岸にかけて、そのほかに、関東、それに東海、九州と各地に広がっているわけです。これは何を示しているかというと、日本には石油や天然ガスが生成される地質学的な条件はそろっているんだということを示しているとも見られるわけです。
時間もありませんので、私の今の職場があります秋田の話とかはちょっとスキップさせていただいて。
日本に実際に幾つかある油田、ガス田で稼働しているものも当然あるわけですが、それが賄う、自給率ですね、はどのくらいかということなんですが、石油でいうと約〇・三%、天然ガスで三%というふうに言われております。少ないというふうに言えば少ないのですが、日本にも油田、ガス田、石油、天然ガスが賦存している、それが実際に稼働しているんだということを御理解いただければと思います。
それの探査というのは実際に続けられておりまして、資源エネルギー庁が実はある海域での調査をきっかけに導入した三次元物理探査船「資源」というものがございました。これ、日本周辺海域で基礎的なデータを収録してきているわけです。
どのくらいかというと、このマップの左と右、比較しながら御覧いただきたいんですが、資源エネルギー庁のワーキンググループによると、探査対象となり得る日本周辺の海域というのは大体どのくらいかというと、水深が二千メートル未満、そのほかに、海底面から厚さが二千メートル以上の堆積物があるエリアですね、そういう石油や天然ガスが生成していても不思議ではない海域というのがどれくらいあるかというのを調査して、これが約八十万平方キロを超えるとかなりの面積あるんだということが言われているわけです。
これに対して、先ほどの「資源」がどれだけ十年間で調査を行ったかというと、その海域は大体五万四千平方キロと言われていまして、可能性のある海域の六%程度にすぎないと。すなわち、探査対象の海域の大部分は十分な詳細な探査がなされないまま余地として残されているんだと。それらのデータを取る必要があるというふうに考えるわけです。
もう一つ、よく言われるのがメタンハイドレートのことなんですが、メタンハイドレート、日本近海にこのように分布しているということが一応言われております。分かっているわけです。
メタンハイドレートも、先ほどの炭素サイクルの話で見ると、一次集積の産物というふうにみなすことができます。メタンハイドレートは今すぐに国産のエネルギー資源として役割を任せるという段階にはないわけですけれども、数十年先あるいはその先の将来のために地道な研究をやはり続けていく必要があるというふうに考えます。
そういったことも含めて、「資源」の後継機として導入された「たんさ」という船が引き続きデータをどんどんと収録するものというふうに期待されるわけですが、そのデータというのは何かというと、三次元地震探査というデータになります。これは、収録しただけでは石油、天然ガスの胚胎が特定できるわけではなくて、それに対して地質情報を加えて、石油地質学的に分析してやる必要があります。総合的な判断によってその海域の有望性を評価していくということが可能になるわけです。
そのためにはある程度の規模の技術者の集団が必要になります。日本の石油探査技術者、地質技術者及び物探技術者といいますが、正確に把握できていないんですけれども、大体規模として五百人くらいのスケールというふうに考えられています。この数が、例えばエクソンモービルとかBPとかロイヤル・ダッチ・シェル、それからシェブロンなどというスーパーメジャーがそれぞれ数万人規模の探査技術者を抱えていることと比べますと、余りにも少ないというふうに言わざるを得ないところです。
若い石油探査技術者を積極的に養成して、例えば、JOGMECなどの公的な組織を充実させるとか、産総研とか大学の研究組織をフル活動させて探査を引き続きやる必要があるというふうに考えております。
これ、最後の、まとめの前のスライドですが、自給率を今後大幅に上げるということはなかなか簡単ではないのですが、海外の産油ガス地において日本企業が開発に参画するいわゆる自主開発原油の比率、これを比較的早く向上させることは可能であろうというふうに考えております。ただ、これを担う民間企業に目を向けますと、技術者不足というのはやはり顕著でありまして、十分な検討体制を取れない場合もあるということで、これを補っていく必要があります。
また、民間企業が保有する開発技術といいますのは、自主開発原油の確保だけではなくて、資源外交のカードとしても重要だと。すなわち、産油国の油田開発への技術協力、それから産油国の技術者を育成すること、こういったものは自国が技術を持っていないとかなわないというふうに言えます。
まとめ、三つ書いてございます。今後とも活用していく、あるいは役割を拡大していく重要なエネルギー源、これを維持していく、そして確保していくためには、在来型資源の探査を引き続き日本国内、周り、あるいは世界で継続していき、増強していく必要がございます。我が国周辺の海域にはその余地はまだまだあるというふうに考えて構わないというふうに思います。これを長期的かつ粘り強い緻密な計画で立案して実施していく必要があると。
また、非在来型プレイの創出、これは新たなプレイタイプというものを創出し得るわけだと考えていますが、そのためには創造力あふれる有能な人材の育成が必要であると。そのことが、石油外交、技術者育成、技術協力を前提として日本の技術を高めるということにつながっていくというふうに考えております。
以上、雑駁でございましたが、私の意見を述べさせていただきました。ありがとうございました。