岩井茂樹の発言 (政府開発援助等に関する特別委員会)

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○岩井茂樹君 ODA調査派遣第一班について御報告をいたします。
 当班は、本年の一月九日から一月十五日までの七日間、フィリピン共和国及びインドネシア共和国に派遣されました。
 派遣議員は、こやり隆史議員、古賀之士議員、若松謙維議員、そして団長を務めました私、岩井茂樹の四名でございます。
 今回訪問したフィリピンとインドネシアにつきましては、我が国が最大のODA供与国となっており、深い関わりがあります。また、極めて親日的な国であり、その背景には、ODAを始めとした協力関係の積み重ねがあるのです。ところが、近年、中国等の支援が拡大し、我が国のプレゼンスが低下の危機に直面していると指摘せざるを得ません。
 また、フィリピンとインドネシアは共に中進国入りを目前に控える状況となっており、いずれ中進国入りすれば、新規の借款に当たってSTEP条件の適用ができなくなります。両国の経済発展については、支援を継続してきた我が国としても祝福するべきでありますが、両国に対する我が国のODAにとって、中進国入りは大きな転換点になると言えます。
 歴史を遡れば、我が国のODAは、一九五四年十月六日のコロンボ・プランへの加盟でスタートラインに立ちました。当初はアジア諸国に対する賠償と、それに並行する経済協力として資金協力を行ってきましたが、これまでの長い歴史の中で、質の高い我が国のODAは高い評価を獲得してきました。他方、中国の支援は、安価な事業の実施という評価を受ける中で急拡大し、多くの問題が表面化しています。このような現実を直視し、この機を捉えて我が国のODAについて改めて検証を加えるべきだと考えます。
 今回の派遣では、このような問題意識の下、所管大臣等との意見交換、現地視察、最前線で支援に取り組む日本企業関係者やJICA関係者との意見交換等、様々な角度から調査を重ねてきました。この派遣を通じ、多くの所見が得られましたが、ここでは三点に絞って御報告いたします。
 まずは、我が国ODAのプレゼンスを高める必要性についてであります。
 今般の調査では、我が国のODAの質の高さを改めて実感しましたが、他方、例えばインドネシアでは、我が国に競り勝った中国が支援する新幹線建設において工期の遅れが発生しています。このような大きな事業で日本が支援の機会を逃したこと自体、プレゼンスの低下を如実に表すものでありますが、他国のプレゼンスが高まったことで施工の遅れや質の低下を招いているとすれば、支援を受ける国としても看過できないはずです。このため、我が国ODAのプレゼンスを高めることは被供与国の利益にもつながるものであり、我が国のODAが果たすべき役割は一層増大していると言えます。
 フィリピンで視察した首都圏鉄道三号線では、日本企業が担っていた維持管理業務が地場企業や韓国との合弁会社などに移され、粗悪な維持管理が続けられた結果、想定された速度を出せず、輸送力が著しく低下したことに加え、出火や脱線といった事故が引き起こしてしまいました。このような経緯で再び我が国が支援することとなった同線の改修事業は、日本の技術力が再評価された好事例であります。また、パッシグ・マリキナ川河川改修事業では、我が国の技術力を発揮したすばらしい施工を視察できた一方、日本企業の施工でない箇所では非常に心もとない護岸を見受けることができました。
 インドネシアで視察したプルイット排水機場では、中国製のポンプが連続運転できない一方、高性能な日本製ポンプは絶え間なく排水を続けられ、高い評価を得たとの説明を受けました。また、視察で乗車したジャカルタの鉄道は、インドネシア側が希望する期日を忠実に守って建設工事を完成させ、多大なる信頼を獲得したとのことであります。
 そのほか、中国漁船による違法操業が確認されたナツナでの離島開発は、中国による支援が想定されておらず、我が国が推進する事業となっています。インドネシアは国際海上交通の要衝であるマラッカ海峡の沿岸国でありますが、スルタン・ジョグジャカルタ特別州知事からは、南シナ海地域の安定にとって日本の協力は不可欠であるとの認識が示されました。
 このように、我が国の支援が評価される一方、他国が支援した事業については、施工技術の未熟さや進捗管理の問題など様々な課題が表面化しており、これまでに実施されたインフラ整備を総括する時期に来ていると言えます。そのためには、他国が実施した支援の問題点を調査するとともに、日本に対する高評価の事例を洗い出し、大使館やJICA、そして国会との間で情報を共有する必要があると考えます。その上で、こうした情報を積極的に活用して支援先の国々と協議することが、我が国のプレゼンスを高めるための解決策になるのではないでしょうか。
 歴史的な経過をたどって極めて親日的な国となった両国の事例に鑑みれば、これまでの事業を再評価し、日本の好事例と他国の問題点について十分な説明を行い、より適切な事業を提案するとともに、信頼関係を醸成してお互いの理解を深め、計画から施工、維持管理までをトータルで捉えるライフサイクルコストの重要性について、これまで以上に粘り強く説明することも必要であると考えます。
 次に、中進国入りという転換期に対処する必要性について申し上げます。
 インドネシアでは、今なお、税制、投資規制や行政による許可など、日系企業の活躍が阻害される要因が存在しています。意見交換でも話題になりましたが、税収の増加に目を奪われた財政当局の対応が公訴にまで発展するような状況を看過すれば、ODAに参画する日本企業を含めた関係者のインセンティブを阻害し、インドネシアの発展に支障を来してしまう可能性があるのです。レオナルド国家開発企画庁次長からは、このような問題に対応するため、複雑な投資規制を一つにまとめるオムニバス法の策定について言及がありましたが、法改正に伴う改善の度合いは現時点で確定したものではなく、様々な要因で経済の活力を奪ってしまうことが依然として懸念されます。
 このような背景の中、意見交換した関係者からは、被供与国が中進国入りすれば新規円借款事業への参画が非常に難しくなるとの懸念が示されました。そのような状況下においても企業のモチベーションを維持し、支援先の国のために働き続ける民間企業の気持ちに応えることが重要であり、日本政府として更なる対策を講じる必要があります。
 フィリピンでは外資による大規模な開発が行われていますが、ペルニャ国家経済開発庁長官からは、政府と民間が一体となって協力する新たな取組の必要性について言及がありました。高層ビルが建ち並ぶ両国に対しては、経済の発展に応じたODAの新たな姿を模索し、中進国入りという転換期にふさわしい対応策を講じる必要があると感じました。また、その前段階として、ペルニャ国家経済開発庁長官からは、中進国入りした後、STEP条件を受けられなくなるまでの間に新たな事業を始められるような協力を求められたところでもあります。
 インドネシアでは首都移転の議論が行われており、今後の展開に応じた関与が必要となるほか、ODA被供与国側の政権交代によってそれまでの事業が大きく転換する可能性があることも踏まえれば、マスタープランの策定などで積極的に関与し、STEP条件の適用に依存しないODAの姿を模索していくことが必要です。そのためには、参議院全体として問題意識を共有し、本委員会としても適切なフォローアップが必要であると考えます。
 最後に、ODA派遣の役割について申し上げます。
 今回、フィリピンとインドネシアを訪問し、両国に対するこれまでの支援が両国を極めて親日的な国家にする一因であったことを実感しました。他方、我が国のODAがプレゼンスの低下という問題に直面している現状を目の当たりにし、政府による現行の取組の限界を感じました。
 ODAの事業が相手国の政権交代といった政治の動きによって影響を受けることを考え合わせれば、我が国としても政治の立場からODAに関与することが必要であります。インドネシアの新幹線建設は、政権交代に伴って事業計画が一転したとされています。また、政権の存続期間中に一定の成果が求められ、工期を区切って非効率な事業の実施につながってしまう事例もあり、政治的な要因に基づくODAの課題が見受けられます。
 そのような問題意識を持ちつつ、今回の派遣では、両国要人との意見交換において我が国ODAが抱える諸課題の解決に向けた働きかけを行うとともに、インドネシアの首都移転に関する協力等についても言及しました。また、ODAの事業に携わる日本企業関係者など様々な方から問題の所在を伺い、その解決に向けた意見交換も要人との間で行いました。
 両国でのこのような対応は、国民の代表である国会議員にこそできるものであり、我が国ODAの発展に結び付く一助になったのではないかと自負しています。参議院のODA派遣は、各国の状況を調査するとともに、行政レベルでの解決が困難な事例に突破口を切り開く役割も果たすべきものと考えており、政府やJICAに当たっては、今後とも、国会議員による訪問の機会を活用し、相手国との協議を更に進めるよう取り組んでいただきたいと思います。
 最後になりますが、今回の調査に当たって多大な御協力をいただきました視察先の関係者、外務省及び在外公館、JICAを始め、JICAの専門家及び青年海外協力隊員、日本企業関係者の方々に改めて感謝を申し上げます。
 以上でございます。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 岩井茂樹

speaker_id: 17305

日付: 2020-06-01

院: 参議院

会議名: 政府開発援助等に関する特別委員会