有村治子の発言 (政府開発援助等に関する特別委員会)

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○有村治子君 ODA調査派遣第二班について御報告を申し上げます。
 当班は、本年一月五日から一月十一日までの七日間、ブータン王国及びタイ王国に派遣されました。
 派遣議員は、本日の委員会に御出席の中西哲議員、山本博司議員、木戸口英司議員、宮沢由佳議員、そして団長を仰せ付かりました私、有村治子の五名です。
 ODA調査のための派遣団としては、ブータンが二〇一三年九月以来二回目、タイは二〇一二年一月以来八年ぶりの訪問でした。
 ブータンは後発発展途上国から低中所得国になることを目指している一方、タイは中進国として援助を受ける側からASEAN諸国等に援助をする側に移行しつつあります。このように、今回の調査においては、経済社会開発の段階が大きく異なる両国を視察することによって、それぞれの開発段階におけるODAの意義、在り方を調査することができました。例えば、日本、ブータン、タイは少子高齢化という共通した課題を抱えていますが、ブータンとタイでは経済社会の状況が異なるため、それに対する支援の在り方も同一のものではあり得ません。我が国の協力はそれぞれの国の発展、開発段階に合った支援を行うことが可能だと実感したところです。
 当派遣団は、ブータン及びタイにおいて、ODA案件の視察のほか、ブータンのワンチュク国王陛下始め政府要人五人、議会要人十三人、在外公館職員十一人、JICA事務所職員十三人、JICAボランティア十一人、JICA専門家四人、ODA事業に関係する日本企業関係者五人、その他の国際機関やNGOと関係する現地邦人八人という実に多くの方々から貴重な意見を聞く機会を得ました。
 今回の調査に当たって多大な御協力をいただきました皆様方に、この場を借りて改めて感謝の意を示したいと思います。
 ブータンにおいては、農業分野、医療分野における支援の現状を視察するとともに、ワンチュク国王陛下に拝謁し、ツェリン首相、ドルジ外務大臣、ドルジ上院議長等と意見交換を行いました。
 ブータン政府は、後発開発途上国からの卒業という目標を実現するため、様々な分野における発展を目指しています。新たな分野における発展の基礎となるのが人材育成で、新たな組織や制度をつくって人材育成に努めておられます。このブータンの取組に対して、我が国からの支援が期待されています。ブータンから日本への技能実習生受入れについての合意がなされており、今後速やかに技能実習生の受入れが実現するように期待しています。
 また、ナムギャル国民総幸福量委員会次官から、ブータンにおける国づくりの基本的理念である国民総幸福量、GNH、グロス・ナショナル・ハピネスについて御説明いただき、GNHの概念をより深く理解する貴重な機会を得ました。ブータンでは、GNHの理念が推進できるかどうかという基準が政府の進める主要政策の採否基準となっています。我が国のブータンODAの実施に当たっても、ブータンのGNH増進に資するものとなるように配慮することが重要です。本調査では、ブータンの発展、支援の方向性をその理念に基づき確認すべきと実感したところですが、同時に、日本がGNHの理念から学ぶことがあると強く感じ入りました。
 タイにおいては、チャオプラヤ川に架かる橋梁、バンコク大量輸送網である鉄道事業、日本の高専、高等専門学校を導入している教育現場、障害者が就労しているベーカリーショップ、高齢者介護を行っている施設を視察するとともに、ウィチャーワット外務大臣政務官等と意見交換を行いました。
 今回視察させていただいた橋梁や鉄道などの公共交通機関は地域住民にとって重要な移動手段であり、我が国の支援によって市民生活の利便性が向上していることを確認しました。橋梁や鉄道といったインフラ整備は、これまでの我が国からの支援もあり、技術的にも資金的にもタイ独自で整備することが可能になってきています。その一方で、鉄道のメンテナンスについては日本の技術が活用されており、こうした分野における支援は引き続き両国のウイン・ウインの関係に資すると思われます。
 また、交通渋滞緩和のためのシステム等の開発に関する協力はタイ側からも期待されているところです。インフラ整備以外の分野においても我が国が支援可能な分野はあり、今後もタイの発展に寄与できると考えます。
 また、今回、バンコク最大のスラム街であるクロントイ・スラムを視察する機会を得ました。
 タイは中進国となり、経済成長も著しく、メコン地域におけるリーダー的な役割を果たしています。その首都であるバンコクにおいては高層ビルが建ち並ぶ地区もあり、この地にスラム街があることなど、にわかには想像できません。しかし、実際にスラム街に身を置いたときには様々なことを考えさせられました。政治とは何をするべきか、政治家とはどんな現実を見るべきか、派遣団の議員にとっても示唆に富む大事な経験になったものと思います。
 ODAの意義や在り方については長年議論をされてきました。相手国に真に感謝されるためにいかなる支援が的確なのか、友好関係を保った上でいかなる国益を狙えるのか、国民の血税を原資とする限られた予算の中でどのような優先順位を付けることが妥当なのか、などです。
 今回訪問したブータンにおいてもタイにおいても、農業機械や医療機材又は橋梁や駅に我が国の支援によることを示す日の丸の表示とともに、フロム・ザ・ピープル・オブ・ジャパンと描かれたプレートが掲げられていました。こうしたプレートにより、相手国の国民の皆さんは、我が国からの支援であることを知ることになります。ODA予算も国民からの税金が財源となっている以上、相手国が主体的な意思で日本に感謝の思いを具体的に表してくださっていることを、この報告の機会などを通じて主権者たる国民の皆様にも御報告いたします。さらには、こうした先方の主体的な意思として掲げられたプレートの存在が我が国としても有り難いものであることを相手国に明確に伝えることも重要であると考えます。プレートの掲示は、我が国の支援への認識を相互に深めることになり、今後の友好関係のきずなを強める礎になると思われます。
 ブータン及びタイは、長年、我が国との交流が活発な親日国であり、特に両国とも皇室、王室間の親密な関係が友好関係を築く上でも大変重要な役割を果たしてきたことを実感しました。
 ODAによって、相手国との友好関係を強め、信頼関係をより強固にすることで、日本が周辺地域の安定と安全に寄与し、諸外国に対する我が国の信頼性を高めることが、結果として国際社会における日本の発信力強化や我が国の国際的地位を高めることになると考えます。
 今回の調査を踏まえ、派遣議員の中からODAに終わりはないとの意見が出されました。各国の経済社会の開発状況は様々ですが、各段階において我が国ができる支援はあり、しかも、支援対象国が次の開発段階になった際には新たな役割や関係性が求められることになります。国際関係に終えんがないように、ODAにおいても、開発段階で関係が切れるということではなく、その国の発展段階に合った支援を行うことが可能です。
 しかも、こうした相互敬意に基づく支援は、援助対象国のみならず、我が国にとっても得るものも多く、様々な形で世界の各地域、エリアをより安定した持続可能で豊かな社会にしていくというウイン・ウインの関係構築を実現すべきだという感覚を強くして帰国いたしました。
 今回の調査において得られた成果を今後の我が国ODA政策の発展に寄与できるよう、国政の議論において生かしてまいりたいと思います。
 結びに、団長を仰せ付かりました者としてODA視察後の考察としての意見を述べさせていただくことをお許しいただきたいと存じます。
 一月前半に派遣されたODA調査の帰国からたった二週間後、あっという間に中国武漢発のコロナウイルスが各大陸に拡散、蔓延し、世界の景色が一変しました。四か月たった今でも世界中で通常の経済社会活動が制約を受ける中、WHO、世界保健機構の運営が世界的な関心事となり、トップである事務局長人事の重要性が改めて脚光を浴びています。国連システムにおいては、WHOを始めとして、世界銀行、ワールド・バンク・グループ、ILO、国際労働機関、IMF、国際通貨基金、ユネスコ、国連教育科学文化機関など十五の専門機関があります。加えて、日本とも関連の深い関連機関が、IAEA、国際原子力機関、WTO、世界貿易機関など八つあります。
 日本は、WHO、ITU、ユネスコ、IMOなどの過去四機関のトップを輩した経験がありますが、二〇一五年以降の組織トップの人事実績は皆無、ゼロになっています。国連や国際機関への拠出金に見合った人員の輩出、存在感、リーダーシップが求められている中で、日本から発信力のある優秀な国際人材を計画性を持って養成し、輩出できるよう、日本政府、外務省には引き続き努力を続けていただきたいと考えます。
 同時に、日本が外交基軸にしてきた国際協調主義を尊び、国際機関の公正性、透明性、中立性、民主的運営を実現するため、国連専門機関の事務局長を始めとする幹部人事に、日本を始めとするこのような価値を重視する国々の人を輩出していることの重要性を、コロナウイルス禍と向き合っている今だからこそ強調したいと考えます。
 国際専門機関トップ、幹部ポストの人事は、参加国による合意形成、選挙によって決定されます。この点において、国民の貴重な血税で成り立つODAも、各国との友好親善を深める非常に重要な手段であるだけでなく、国際機関のトップ人事を見据え、民主的な国際秩序を支持する友好国を増やす戦略性も磨いていくべきだと考えます。
 トップの人事を担う各国候補には、語学力、各国代表と渡り合う交渉能力、世界組織を動かすマネジメント力に加えて極めて高い専門性が求められ、事実上、閣僚経験者であることが審査の基準になっている専門機関もあります。トップを輩出した国々の履歴、地域バランスを考えた公平性も重視されるので、その全てを満たす人材の発掘、養成、そして選挙の勝利は容易なことではありません。
 今年行われる万国郵便連合、UPU選挙を始め、世界を牽引する専門機関のトップ人事を狙える日本人の養成、国連システムのミドル、ジュニアマネジメントも含めたその層を支える国際人を安定的に輩出し、その層を厚くする外交戦略を見据え、ODAとの連携を強めていただきたいと切に願います。
 以上で第二班の報告といたします。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 有村治子

speaker_id: 22113

日付: 2020-06-01

院: 参議院

会議名: 政府開発援助等に関する特別委員会