有田芳生の発言 (本会議)

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○有田芳生君 立憲民主党の有田芳生です。
 私は、立憲・国民.新緑風会・社民の共同会派を代表して、総理以下関係閣僚に質問いたします。
 まず、新型コロナ問題です。
 五月四日の未明、東京の繁華街の路上で女性が倒れているのが発見されました。母親に幼い頃から虐待され、十一、十二歳から売春を強いられ、暴力団員から薬物を勧められて逮捕されるなど、過酷な経験をした二十五歳でした。母親の暴力から逃れるため、区が手配したビジネスホテルの非常階段には、携帯電話が入ったポシェットとスニーカーが置いてあったそうです。
 彼女は、取調べに当たった元刑事の勧めで夜間中学に進み、将来は介護福祉士になる夢を抱きました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で、新入生代表として挨拶する予定だった入学式が延期、落ち込んで薬物仲間からもらったコカインを使用してしまいました。元刑事との電話での最後の一分半ほどの会話はこうです。「もうどうでもいいよ」、「どうでもよくないから頑張ってきたんだろ。諦めない努力をしないと」、「わかった」。
 彼女は、「コロナのせいで何もかもなくなった。もうどうでもいいんだ、私は」とも元刑事に語っていたそうです。十三年ぶりの中学生活を目前にした、つい一月ほど前の悲劇です。朝日新聞の女性記者が、丁寧な取材で二十五歳の短い人生を閉じた女性の悲しい思いを記録しています。
 緊急事態、エマージェンシーの語源はエマージ、何かが現れるという意味です。私たちには悪いこともいいことも見えてきました。例えば、イギリス在住の作家、ブレイディみかこさんは、ロックダウンのせいでブライトンでは二酸化窒素排出量が六〇%も減少し、信じられないような晴天が続いていると新潮社の「波」に書いています。日本では、新型コロナ禍によって生活保護受給申請者の増加や二百を超えた倒産、一万六千人を超える解雇や雇い止めなど、社会の相貌が徐々に、あるいは急激に変わろうとしています。
 抽象的な言葉や数字の背景には生身の人間がいます。一人一人、人生の機微に直接、あるいは間接、あるいは想像力を持って触れることが政治家には求められているのでしょう。自民党の石破茂衆議院議員は「エルネオス」というビジネス情報誌でこう語っています。与党の中で一歩離れた立場で見ていると、多くの国民の気持ちと政権の対応に乖離があるような気がします。
 言葉を換えれば、現実がどこまで見えているかという問題です。
 総理に伺います。
 総理の目には新型コロナ禍にある日本の姿はどのように映っているのでしょうか。他人に届かない干物の言葉ではなく、生ものとしての言葉で具体的イメージを語ってください。
 多くの国民の気持ちと政権との乖離で分かりやすい第一の問題が、いわゆるアベノマスクです。経産省出身の官邸官僚は、全国民に布マスクを配れば不安はぱっと消えますからと総理に進言したといいます。そして、四月一日、総理は一世帯に二枚ずつ布マスクを配る計画を表明しました。
 しかし、妊婦向けに届いた布マスクにはごみや髪の毛などが入っている不良品が多く、全世帯には五月中に配布を完了するとしていたものの、六月四日時点で配布率は六四%にとどまっています。私が確認しただけでも、おおむね配布を完了とする東京でもアベノマスクはまだまだ届いておらず、沖縄での配布状況は六月四日時点で三〇%から四〇%にとどまっています。
 総理に伺います。
 もはや市場にマスクはどんどん流通しています。アベノマスクで国民の不安はぱっと解消したとお思いですか。さらに、配布がなぜ遅々として進まなかったのか、一体どんな説明を受けているのですか。お答えください。
 厚労大臣にもお聞きします。
 布マスクを全国で本日までに約七五%配布するとしていましたが、現状はどうなっていますか。
 多くの国民の気持ちと政権が乖離している第二の問題は、黒川東京高検前検事長の定年延長問題です。産経新聞とFNNによる六月一日公表の世論調査では、黒川前東京高検検事長の処分について、納得できないが八〇・六%、納得できるが一四・八%でした。処分とは訓告です。
 法務大臣に伺います。
 法務省職員の訓告等に関する訓令にはこう書かれています。よくお聞きください。「訓告は、職員の責任が重いと認められる場合に、当該職員の責任を自覚させ、将来における服務の厳正又は職務遂行の適正を確保するため当該職員を指導する措置として行うものとする。」、ここに明記されているように、将来における服務のための措置です。辞職した黒川東京高検検事長に法務省での将来の服務などありません。辞めていく者にこれからの仕事について指導することは無意味ですから、この訓告そのものが成り立たないのではありませんか。合理的な説明をしてください。
 法務大臣に更に伺います。
 東京高等検察庁非違行為等防止対策地域委員会が出している「品位と誇りを胸に 今一度見つめ直そう 自分の行動と職場の風土」という文書があります。そこでは懲戒処分と監督上の措置が明確に区別されています。処分、処分の言葉が大臣からもメディアでも躍りましたが、黒川前東京高検検事長は実は処分などされておらず、単なる措置が行われただけではないですか。
 二月十日に山尾志桜里衆議院議員が、黒川氏の定年延長について、国公法の規定は検察官には適用されないとする一九八一年の政府答弁と矛盾すると指摘しました。すると、法相は詳細は知らないと語りました。驚いたことに、三日後の二月十三日、今度は、安倍総理が衆議院本会議で法解釈の変更をしたといきなり答弁しました。つじつまが合わなくなり破綻すると、法律よりも安倍政権の解釈を優先させる、こんな無法は許されません。
 総理に伺います。
 解釈変更した日付を示す文書をなぜ出せないのですか。
 法相に伺います。
 どうしてこんなに重要な変更を口頭決裁としたのですか。
 法務大臣に更に伺いましょう。
 先ほど紹介した東京高検の文書では、国公法第九十九条の信用失墜行為の禁止の説明で、「刑事罰の対象となる事案が多く、そのほとんどは刑事罰に加え懲戒処分を受けることになります」とあり、その対象の一つに賭博が明記されています。法務大臣の認識では賭けマージャンは賭博に当たらないのでしょうか。明確にお答えください。
 さらに、いとも不可解なことがあります。二〇一七年三月に賭けマージャンで防衛省は自衛隊員九人を停職処分にしました。点ピン、つまり、千点百円のレートは同じです。なぜ同じレベルの賭けマージャンなのに、自衛隊員は懲戒処分としての停職処分にされたのに、黒川前検事長は措置としての訓告なのでしょうか。
 法務大臣は、五月二十一日の午前十時頃、取材にこう語っています。大変ゆゆしき事態だ、賭けマージャンであれば賭博罪に当たる、しっかり調査を終わらせて、今日の夕方には結果を公表し、処分を発表したい。処分するとはっきり述べています。大臣は懲戒処分にするつもりだったのではないですか。それを訓告という余りにも軽い措置で終わらせたのは、法務官僚と官邸の意思が働いていたのではないでしょうか。
 法務大臣は、翌二十二日の記者会見で決定過程を明確に語りました。よくお聞きください。様々なことを総合考慮した上で、内閣で決定したものを、私が検事総長にこういった処分が相当であるのではないかということを申し上げ、監督者である検事総長から訓告処分にするという知らせを受けたところでございます。
 まとめましょう。まず内閣で決定。次に大臣が検事総長に提案。検事総長が了解した。文意は明確です。森大臣は正直に語っていたのです。大甘処分を下したのは法務省ではなく官邸ではないですか。森大臣は懲戒処分を求めたのに官邸に否定された。これが事実ではないでしょうか。それとも、大臣は五月二十二日の御自身の発言を否定するのですか。
 多くの国民の気持ちと政権が乖離している第三の問題は、持続化給付金をめぐる委託費七百六十九億円の疑惑や第二次補正予算における十兆円の予備費の異例な規模の問題です。
 過去二十年以上続いた平均予備費三千五百億円の三十倍近く、リーマン・ショック直後の経済緊急対応予備費でも一兆円でした。当初予算及び一次補正と合わせると、十二兆円もの予備費を国会で事前チェックできないのです。
 財務大臣にお聞きします。
 追加の対策が必要なら、第三次補正予算案を国会で審議するのが憲法八十三条に基づく財政民主主義の基本ではないですか。
 多くの国民の気持ちと政権が乖離している第四の問題は、拉致問題です。
 第二次安倍政権が発足して七年半近くが過ぎました。第一次と合わせると八年半です。安倍総理は、拉致問題は最重要課題だとずっと内外で主張してきました。しかし、被害者の帰国では残念ながら成果はゼロです。
 六月五日、被害者家族会の代表を十年ほど務めた横田滋さんが八十七歳でお亡くなりになりました。あの笑顔が今も心に浮かびます。ここに謹んでお悔やみ申し上げます。
 横田さんの後に会長となった飯塚繁雄さんが、こういう状況は当然のことは、いつかは来ること、だからこそ家族が元気なうちに早くと訴えてきた、亡くなってから騒ぐのではなく、政府はこうなる前に解決に向けて考えてほしいと考えています。
 総理に三点伺います。
 なぜ拉致問題は解決しないのですか。あらゆるチャンスを逃すことなく、果断に行動していかなければならないといった官僚的な常套句でなく、残された被害者家族に届く言葉で説明してください。
 二〇一四年三月、横田滋さんと早紀江さんは、モンゴルのウランバートルで、めぐみさんの娘であるウンギョンさんと初めて出会うことができました。帰国したその日に電話をくださった早紀江さんは、めぐみちゃんがいなくなってから悲しい日々でしたが、初めてうれしい思いをしましたと弾んだ声で語っていました。総理は、横田御夫妻とウンギョンさんとの出会いをどのように評価していますか。
 私は、三月十六日の予算委員会などで何度も首相に問うてきた問題があります。それは、政府認定拉致被害者の田中実さんと特定失踪者の金田龍光さんが生存していると北朝鮮から二〇一四年に通告されたものの、その事実さえいまだ認めないことです。田中さんと金田さんの安否確認をするべきですが、もう六年も放置したままです。余りにも冷淡ではありませんか。それとも、拉致被害者の救出に序列でもあるのでしょうか。
 田中さんは七十歳。どうしていらっしゃるか全く分かりません。警察庁も把握しているように、結婚した相手が日本人だという情報もあります。それが拉致被害者なのか、特定失踪者なのか、確認するのが政府の責任です。
 政治学者の御厨貴さんは、「政治が危ない」という本の中で、安倍総理が語った言葉を記録しています。僕が安倍さんにインタビューして、アベノミクスは本当に成功したんですかねと聞いたら、アベノミクスっていうのはやってる感なんだから、成功とか不成功とか関係ない、やってることが大事。政府にとっては拉致問題もまたやってる感が大事なのでしょうか。
 安倍総理は、二〇一六年の年頭所感で、築城三年、落城一日、政府には常に国民の厳しい目が注がれていると語りました。それから四年半弱、国民の厳しい目が更に強まっていることは総理御自身が日々実感されていることでしょう。
 ノンフィクション作家の佐野眞一さんは、安倍政権を評価して、明治以来最悪と語っています。この超長期政権もいずれ歴史の法廷で厳しく裁かれることでしょう。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 120115254X02320200608_004

発言者: 有田芳生

speaker_id: 5133

日付: 2020-06-08

院: 参議院

会議名: 本会議