増田悦子の発言 (消費者問題に関する特別委員会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○増田参考人 全国消費生活相談員協会の増田と申します。消費生活相談員の団体でございます。よろしくお願いいたします。
本日、このような場で意見を述べさせていただく機会をいただき、大変ありがとうございます。
この度の改正法につきまして、消費者庁の御尽力に心から感謝申し上げたいと思います。
まず初めに、預託法改正により販売預託取引が原則禁止されることに賛成します。
豊田商事事件以降、ジャパンライフなど、販売預託商法による事件が多数発生してきましたが、消費生活相談の現場では、預託法を活用して交渉することはほぼできませんでした。訪問販売や連鎖販売取引などに該当すれば、その規制や民事ルールによって交渉をしてきましたが、契約者が主に高齢者であり、複数の契約をして多額の現金を支払ってしまってからの相談であることが多く、交渉は大変難航してきました。
消費者は、勧誘者の説明を信じ、契約したい気持ちがあるものの、漠然とした不安があり、信用性を知りたいと思い、消費生活センターに相談することがあります。この度の改正により、販売預託取引は、無限連鎖講と同様に重い刑事罰をもって禁止されている取引であり、契約をしないよう明確に助言ができる、これが非常に有益だと考えております。
消費生活相談の現場で長い間苦い経験をしてきました消費生活相談員は、原則禁止の実現に期待しております。
二番目に、特定商取引法改正についてです。
詐欺的な定期購入契約の規制強化に賛成します。
消費生活相談のあっせん交渉では、定期購入契約について、たとえ分かりにくくても一応の表示をしていると、事業者からは表示していると主張され、解決は困難を極めています。
資料に事例を御紹介させていただいております。
表示事項義務と、虚偽誇大表示を禁止し、不実表示、不表示で誤認して契約した場合、購入者に取消権が付与されることに賛成します。
また、申込みはいつでもインターネットで可能とし、解約時には電話に限定した上で電話がつながらないなどは、解約を拒否していることと変わりありません。契約解除について、妨害とみなされる行為を禁止することに賛成いたします。
そして、送りつけ商法の規制強化も賛成いたします。
そもそも、申込みもしていないのに、一方的に送りつけられた商品を一定期間保管しておかなければならないこれまでの規定は、消費者にとって非常に不本意なものでした。おかしいと思いながらも、事業者から請求された場合、多くは少額であることから支払ってしまうケースもあったと思います。
保管期間をなくし、直ちに返還請求権を喪失することに賛成します。今後、この改正の内容について、消費者、事業者へ広く周知していただくようお願いいたします。
三番目に、電磁的方法によるクーリングオフの通知について賛成いたしますが、メール送信も発信時に効力があることを明確化していただきたいと思います。
悪質な事業者の場合、クーリングオフの通知が届いていない、メールでは効力がないなど主張する可能性があります。
これまで事業者交渉をしてきて、特商法を理解していない事業者がいることを知っています。政省令やガイドラインまで理解している事業者がどれだけいるのか、非常に懸念があります。
クーリングオフは、消費者が簡易な方法で契約を解除できる強い権利です。それは、消費生活センターが介入せずとも、消費者自身によって実現できる必要があります。事業者からメールでは効力がないと言われた場合、消費者は諦めてお金を払ってしまうことも考えられます。
消費者にも事業者にも分かりやすくするために、メール送信も発信時に効力があることを明確化してください。
四番目として、契約書面の電磁的交付を可能とする改正に反対いたします。
デジタル化の有益性、必要性については、十分に理解しています。しかし、脆弱な消費者に対し、攻撃的なアプローチをすることの多いこの分野において、電磁的書面交付を可能とする改正は新たなトラブルを増加させると考えます。
反対理由を五点申し述べます。
一点目は、高齢者の見守りが機能しなくなるということです。
高齢者は自らを守ることが困難なため、消費者庁は見守りネットワークの構築を最重要課題とし、やっと福祉部門との連携ができてきました。高齢者の自宅にあった書面を家族やヘルパーが早期に発見して通報してくれることで、被害回復につながることが多くなっています。
被害に遭っている意識が乏しい高齢者が、自らスマホを見てほしいと申し出ることは考えにくく、ヘルパーはもちろん、家族であっても、スマホを見せてもらうことは簡単ではありません。
例えば、母親が独り暮らしで、最近は物忘れがひどいため、自分と妹で身の回りの介助をしている、今日、自分が屋根工事の契約書を見つけた、母に確認すると、点検に来ていた事業者に、屋根がひび割れして雨漏りしている、工事をしないと大変なことになると言われたらしい、契約金額は四十万円でまだ払っていないようだなどの相談が寄せられます。
たとえ法律、施行規則、ガイドラインで消費者保護を手当てしても、違反する事業者がいます。消費生活相談員は、行政処分と違って、事業者とあっせん交渉して返金してもらわなくてはなりません。
家族やヘルパーが早期に契約書面を見つけてくれれば、クーリングオフにより解決できる可能性が高いですが、クーリングオフ期間を過ぎると、勧誘時の説明が虚偽だった、強引だった、契約当事者の判断力が低下していたなど、いろいろな問題を指摘しての交渉になります。もちろん、言った言わないになりますし、認知症の診断書がないケースも多くあって、交渉は難航します。
早期の発見で、まだ払っていない段階でしたら解約交渉はしやすいですが、悪質な事業者の場合、現金での支払いが多く、一度払ってしまうと返金は困難を極めます。
生命保険を勧誘されて、タブレットで入力したようだが、契約した覚えがないという相談が寄せられます。生命保険会社による説明がなかったとは思えませんし、実際、タブレットで申込みをして、後日、書面も郵送されていたことが分かりました。突然訪問されてタブレットで契約しても、契約した意識が低いのだろうと思います。
電話勧誘販売の場合は、特に契約した意識が低く、書面が郵便で届いて初めて、契約が成立していることや契約内容を理解する人が少なくありません。在宅率の高い高齢者が、電話で光回線契約を勧誘されて、よく理解しないままに契約してしまい、書類が届いて初めて家族が気づくということが起こっています。
許認可を受けている金融商品取扱事業者や電気通信サービス事業者が説明してもトラブルになっているのが現状です。
二点目は、契約書面の電磁的交付についての同意取得についてです。
書面の電磁的交付の同意について、明示的な同意がなければ承諾とは認められないということですが、元々、不招請勧誘され、虚偽、誇大な説明等により契約に至ることが多い分野であり、契約内容の実態さえ理解していない状態で、真意の同意が取れるのか大変疑問です。
訪問販売で、タブレットによる申込みを受け、その流れの中で、電磁的書面交付の同意をタブレットで得るということが想定されますが、そのような同意が真意の同意とは考えられません。
契約の申込みが消費者の真意かどうか争うと同時に、電磁的書面交付の同意が真意かどうか消費生活相談の現場で争うことになり、更に交渉が困難になります。また、違法な方法で同意取得をした事業者に、書面交付したとはみなされません、クーリングオフとして返金してくださいと言っても、認めないことが容易に推測できます。
三点目は、若者の連鎖販売取引についてです。
連鎖販売取引において、SNSによる勧誘、オンラインによる説明、オンラインによる契約が既に行われていますが、それに加え、オンライン書面交付と、取引が全てオンラインになることで、勧誘が活発になる可能性があります。
連鎖販売取引の法定書面は、数十ページにもわたります。その法定書面をスマホで受け取り、スクロールしてクーリングオフの記載を一目で捜すことは困難です。消費者は、元々クーリングオフができる取引であることを知らないことが多いため、スマートフォンに検索機能があっても、クーリングオフの規定を捜すこと自体しないと思われます。結果的に、クーリングオフの機会を失うことになりかねません。
そして、若年者の場合、消費者金融から借り入れて支払っていることがありますが、消費者金融への返済のためにアルバイトをしなくてはならず、就職活動に大きく影響しているのを見てきました。
さらに、成年年齢引下げにより、現状の被害が十八歳、十九歳に発生することは容易に想像できます。
勧誘が活発化し、匿名性の高いインターネット上での連鎖販売取引等の行政処分が迅速にできるのかも大変疑問です。
四点目は、消費者のITリテラシーがまだ十分ではないということです。
オンライン化が急速に進んでいるとはいえ、スマホによるネット検索やSNSの利用程度という人が多くいます。そのため、書面を受領しても、保存方法を知らない、スマホを買い換えて紛失する、あるいは、スマホの設定により添付データを受け取れないという現実に対処してきました。また、プリンターを持っていない消費者も多く、印刷できないということもあります。消費者が書面の重要性を理解せずに電磁的交付に同意をすることが考えられるため、保存するということに注意を払う意識が低いと考えられます。
最近では、電気代やスマホの料金を払えず、スマホが使えなくなったという相談もありました。
インターネット上の定期購入の問題から分かるように、普通の判断力を持った消費者も、オンラインにおいては脆弱な消費者となっています。
五点目として、インターネット機器の不具合、通信回線事故についてです。
機器の不具合により書面が消失してしまったり、通信回線の事故で書面が受け取れなかったり、そういうことが想定されます。回線の不具合の責任はどうなるのか、機器の不具合は消費者の責任になるのかなど、新たなトラブルの要因となり、消費生活センターでの課題が増えます。
最後に、消費者からの苦情、相談を受け止め、特定商取引法を広く活用している、消費者被害の回復を目指しています消費生活相談員として、電磁的書面交付に反対する意見としたいと思います。
以上でございます。(拍手)