井上久美枝の発言 (予算委員会)

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○井上参考人 ただいま御指名いただきました連合の井上です。本日は、このような機会をいただき、感謝申し上げます。
 本日いただいたテーマは、コロナ禍での女性と雇用をめぐる問題ということで、早速ですが、お手元の資料一ページを御覧ください。
 特に女性への影響が大きく出ている中、連合では、同本部の下にコロナ禍におけるジェンダー平等課題に関する意見交換会を設置し、九名の有識者に参画いただき、議論を進めています。本日は、その議論を紹介しながら陳述させていただきます。
 最初に、女性の雇用への影響と問題の可視化に触れます。
 資料二ページは、連合が実施している労働相談の昨年一年間の件数と相談内容の推移です。
 三月の相談件数は、前年対比五百四十一件増の千六百五十六件、率に換算すると七〇%もの増加。その後も労働相談は増え続け、六月には前年対比千百七十一件増、ここでも七〇%超の増加となっています。一月から十二月の年間累計で二万八百二十八件となり、昨年比で三六%となっています。
 これまでの労働相談ではパワハラ・嫌がらせが継続してトップでしたが、昨年三月には解雇・退職強要・契約打切りがトップとなり、四月以降もこれまでよりも高い割合で二位の状態が続きます。四月と五月は休業補償がトップで、コロナ禍での事業や企業経営の悪化に伴い、有期契約における雇い止めや契約期間中の契約解除、また、学校の休校と休暇取得に伴う休業補償や経営悪化で仕事がなくなり、強制的に休暇取得させられるなど、休業手当に関わる相談も増加しました。六月以降は再びパワハラ・嫌がらせがトップで、この中には、新型コロナウイルスの影響で売上げが下がり、直属の上司から退職を促されるケースや、会社都合ではなく単なる自己都合退職にさせられそうになる退職誘導まがいの事例もありました。
 雇用形態別では、正社員以外からの相談が六割強を占めるとともに、職業別では、コロナ禍で大きな影響を受けているサービス業関係従事者や医療・福祉従事者からの相談が相対的に増加しています。
 昨年十二月の総務省労働力調査によると、非正規雇用は同年一月から五十六万人減、うち女性が四十一万人と男性の三倍弱です。
 女性の場合は、再就職を断念し、非労働力化する傾向があると言われます。中には、売春的行為や風俗業など、暴力やハラスメント、権利侵害を受けやすい働き方に向かう人たちもいます。このような実態が統計上どこに表れているのか疑問です。
 現に、女性の完全失業者数は七十六万人とされていますが、野村総研は、加えて九十万人が実質的な失業状態との推計結果を公表しています。連合も各種調査を実施していますが、組合員やモニターが対象で、どうしても属性の偏りが出てしまいます。
 大規模調査は民間では困難であり、国や地方自治体が無作為抽出標本を対象に全国調査を行い、女性が置かれている現状について、偏りない実態把握と問題の可視化を図るべきです。
 なお、昨年七月に策定された女性活躍加速のための重点方針二〇二〇では、「困難を抱える女性への支援」として「非正規雇用労働者の処遇改善」、また、十二月に閣議決定された第五次男女共同参画基本計画でも、「非正規雇用労働者の待遇改善」、「正規雇用労働者への転換」の支援がうたわれています。実現に向けて、国は、指導力を発揮するとともに、実効性のある施策を打ち出すべきです。
 次に、テレワークについて述べます。
 日本女子大学の大沢真知子教授とシカゴ大学の山口一男教授の分析によると、テレワークの機会の男女格差について、約一〇ポイントと顕著な格差があることが明らかになり、その主な要因は、雇用形態別、企業の業種、企業の従業員規模の三つで、その変数の男女差により、職場におけるテレワークの男女格差がほぼ説明できると分析されています。
 厚生労働省の「働く女性の状況」によると、五六%が非正規雇用です。産業別には、医療・福祉、卸売・小売業、宿泊・飲食業など、テレワークが困難な、対面サービスを要する業種が多いのが特徴です。規模別にも男女で差があります。国はテレワーク七割を掲げていますが、このような現実を踏まえたものであるのか疑問です。
 まずは、性別、雇用形態別、業種別、職種別、従業員規模別に実施状況を調査、分析し、実態に合っているのか検証すべきです。その上で、テレワークにおける不合理な雇用形態差別を防ぐとともに、実施できない場合の感染リスク対策のため、当該業種等への支援策を重点的に講ずるべきです。
 また、テレワークの場合、事業主が用意すべき労働の場を提供させられていることになり、家族の生活空間も脅かされています。
 東洋大学の村尾祐美子准教授が意見交換の際に、子供が家で歌を歌っているだけで怒られる、それでよいのかと訴えられていたのが印象に残っています。
 昨年六月にはいわゆるパワハラ防止法が施行され、私も審議会での議論に参画しましたが、当時は余り想定されていなかったウェブを通じたハラスメントなど、対人リスクやコミュニケーション上の問題も発生しています。
 本来は事業主が対策を講ずるべき課題を労働者個人に負わせることがないよう、責任の明確化を図るべきです。
 さらに、資料五ページは連合資料を基にした村尾准教授の分析ですが、子供がいてテレワークする女性は、自身の労働の負荷の高まりに加え、テレワークするパートナーの労働の負荷も高まっているため、男性の家事、育児等への参入がより難しくなり、通常時よりも増大した家事、育児等をより偏った形で担っている実態も明らかです。
 育児休業取得率は女性が八〇%台で推移する一方、男性は七%台です。今国会では、男性の取得促進等のための改正法案の審議が予定されていますが、成立したとしても、施行は先です。
 コロナ禍で、更に女性のキャリアが悪影響を受けたり、無償、有償労働の負担が過剰になったりしないよう、テレワーク下でも保育サービス等を十分に供給するとともに、男性の育児、家事等への参入や長時間労働防止を促進すべきです。
 次に、昨年支給された特別定額給付金について述べます。
 社会的包摂サポートセンターの遠藤智子事務局長によると、当時、夫からDV等を受けている女性からの相談が数多く寄せられたそうで、特別給付金をめぐって、同居の被害者に被害の自覚が生まれたのが特徴だそうです。
 二人以上世帯の八七%は男性が世帯主で、公的な給付金すら、配偶者である女性には個人が個人として受け取る権利が保障されていません。
 今後のために、特別定額給付金の給付対象者の性別ごとの受給状況を調査、検証し、世帯主基準を見直して、一人一人に支援が確実に行き届くスキームを構築すべきです。
 続いて、雇用の創出について述べます。
 昨年の自殺者数は、二〇〇九年以来十一年ぶりに増加し、特に女性の増加が顕著です。困窮する人たちが求めているのは、当面の生活費や、避難、宿泊場所を確保した上での働ける場所です。
 新型コロナウイルス感染症対策関連の事業だけでも、国から民間委託されているものはたくさんあります。資格が必要な場合もありますが、電話の受付、書類整理等で人手が足りない職場も多いはずです。雇用を失った人たちを公共部門で積極的に採用するというのはいかがでしょうか。
 また、人材不足は、直接的な支援を行うNPO等民間団体も同様です。財政的措置を行い、雇用を失った人たちが、自らが支援する側として訓練を受けながら働けるようになれば、雇用の回復につながります。
 このような形で、国として雇用創出に努めるべきです。
 最後に、森喜朗氏による差別発言に触れないわけにはいきません。
 お手元に連合の談話もお配りしましたが、日本は女性差別がある国だと世界に発信してしまいました。トップの交代で済む話ではありません。オリンピック憲章に反するのはもとより、ILO第百十一号条約に反するものであり、日本が中核条約を批准していないことが、あのような発言が出る背景にあると考えています。
 東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、日本が国内法を国際基準に適合させ、来日する多くの選手、関係者の期待に応えるまたとないチャンスであり、日本があらゆる差別を許さない国であるということを国際社会に示すためにも、第百十一号条約を直ちに批准するという声明を出すべきです。
 そのことをお願いし、陳述とさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 井上久美枝

speaker_id: 11957

日付: 2021-02-16

院: 衆議院

会議名: 予算委員会