棚村政行の発言 (国民生活・経済に関する調査会)
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○参考人(棚村政行君) ありがとうございます。本日は、参議院の国民生活・経済に関する調査会にお呼びいただきまして、本当に光栄に存じます。
私、民法を専攻しておりまして、特に家族法を研究をしております。その立場から、今日は子供の養育費の不払の問題についてお話をさせていただきたいと思います。
時間限られていますので、資料としまして、一応簡単に用意をさせていただきました。一つが養育費をめぐる問題で、私自身が、やはりこの点は改めたり検討しなきゃいけないというところを、ポイントを絞って御提案させていただきたいと思います。ちょっと声がかれていますので、済みません、聞き取りにくいかもしれませんが、それがレジュメのような資料になっております。それで、別添ということで、私自身が、養育費の取決めを促進し、履行をどうやって確実にするかという法案のようなものを少し、何というんですか、作成してみました。先生方の御参考になればということで、若干後で御説明をさせていただきたいと思います。
じゃ、早速お話をさせていただきます。
まず、養育費の不払の問題については、厚労省の二〇一六年の全国ひとり親世帯調査というのがございます。それを見てもお分かりだと思いますけど、取決めをしている母子世帯が四割ちょっとというようなことになっています。それから、受け取っている、養育費を受け取っているところが二四・三%というので、五年前より少し良くはなったんですけれども、かなり厳しい水準になっています。
今、一人親で、例えばしんぐるまざあず・ふぉーらむなんかの調査の結果を見ましても、それからひとり親の支援協会というような形のところの調査結果を見ても、コロナ禍でもってかなり厳しい、収入が減少したり、入ってこなくなるとか、それから、せっかくもらったひとり親の特別給付金みたいなものも電気、ガス、水道とかいろんな生活費で消えちゃったというのが多くなっています。要するに、どうにもならない状況が、更に厳しい状況増しているというのは先生方も一致するところだというふうに思っています。
私、民法の立場から、こういうふうに、一のところでは、そもそも養育費とか扶養料とかというものが民法、法律の中できちっと明確にされていないのがやはり今の日本の現状です。ここに書いてあるように、生活保持義務とか扶助義務とかって、先生方も法律の概念で分かりにくいかもしれませんけど、要するに、自分が例えばビーフステーキ食べていたら、子供や妻もやっぱり同じものを食べなきゃいけないというぐらい重い、自分と同程度の生活を守りましょうという重い義務になっています。それから、余力があればそれを振り向ければいいと、自分がおなかがいっぱいになったら余ったものを分ければいいというのは扶助義務という言い方をしています。
ただ、親子というのは、離れて暮らそうが離婚した後であろうが、やっぱり子供たちは親の助けが必要です。経済的にも非常に支援が必要ですけれども、それについてきちっと明文でもって定めているところは、何せ、明治民法というのは、当時はすばらしかったんですけれども、百二十年以上の前の規定が根本的なやはり下地になっています。その辺りのところをやっぱりきちっと、未成熟の子供を誰がやっぱり、お金の面だけではなくて、面倒を見ていくんだということが必要です。
それからもう一つ、同居している親と別居する親というんですかね、あるいは親権を取った親とそうでない親とかっていろんな分け方があるんですけれども、これも請求をするときにいろいろと根拠規定があります。別れた夫婦、別れても離婚前の夫婦として、婚姻費用の分担という形で子供の教育費、養育費取るというときもありますし、それから監護費用というんで、これは二〇一一年の民法の改正でようやく入った規定なんですけれども、そこのところでやはり扶養の、八百七十七条という親族一般の面倒見の扶養のところの規定、どれも使えなくはないんですけれども、やはりきちっとそこでの基準とかルールとか方法とかっていうのが定められていません。この辺りも、子供の生きる権利とか健やかに成長、発達する権利、それから教育を受ける権利、学習する権利とかっていろんなやっぱり子供の権利を実現をして、子供たちが本当に笑顔で、年寄りのために何か未来を背負わされるという、そういう話じゃなくて、むしろ生き生きとできるということへの、民法上もきちっとルール、規律、置いてほしいと。
それから三番目のところですけど、これも時間が余りないかもしれませんけれども、養育費については大分紛争があって、これは別居したときの生活費の請求、婚姻費用の請求もそうなんですけれども、非常に争いが多くなってきましたので、算定表っていう一応目安を示しましょうというのが裁判所で行われました。
ただ、これも二〇〇三年ということで、大分時間がたって、生活実態とか物価とか経済状況、こういうものを反映していないんじゃないかということですので、是非、先生方も含めまして、ほかの国は、要するに、裁判所が紛争解決のためにルールを、あるいは基準を示すんではなくて、内閣府とか関係する厚労省、文科省、それから経産省とか、要するにいろんなところが知恵を絞り合って、厚労省もそうですけれども、ガイドラインとか、そういう算定表とか、それから、今回提案するのは、やっぱり自動計算ツールみたいな形で、目安としてこれくらいあれば生きていける、それから文化的な最低限のものはもちろんできる、そして、できれば本当にゆとりを持って生活できる金額って幾らなのかということを先生方も含めてきちっと考えていただいて、それをある意味では全国で困っている人たちに対して示していくと。そうすると、紛争が起こっても、変えなきゃいけない事情があるかとか、それをやっぱり上げた方がいいのか減らした方がいいのかという議論も、家庭裁判所もやっぱり国民みんなの総意でもって決められたものだから払ってくださいとか言いやすくなると思うんですね。この辺りもきちっとやってほしいと。
それから、養育費でもめるのは、やっぱり幾ら払ったら妥当かという問題もあるんですけど、決めた後にやっぱり事情が変わってくるということは結構多いわけですね。再婚したとか、養子縁組をされたとか、一番大きいのは、今、事件では、やっぱりリストラされちゃったとか、お金が、給料が減らされちゃったと、それで変更してほしいというんだけど、変えてくれと言われている方もきついわけですよね。だから、その辺りのところも、どういう事情があれば変えられるんだということをやっぱり明確にしていく必要があります。
それから、この債務名義というところで、二のところで書かせていただきましたけれども、これもやっぱり、調停の調書とか審判とか、あるいは判決とか和解調書とか、こういう、それから公正証書というのが債務名義ということで、これがあれば強制執行ができますというものです。ただ、これについても、やはり先ほど言ったように取決めしているのが六割と。それから、父子世帯は必要もないという人もいるのかもしれませんけれども、八割近く取決めもしていないと。協議離婚が九〇%弱ですので、どんなふうに取決めをして、どんなふうに離婚した後の責任を負っているのかというのは分かりませんでした。
今、法務省で全国のウエブ調査を幾つかさせてもらって、法律以外のいろんな分野の先生とも協力して、統計データが出てました。それで、今後、ちょっといろいろとそういうデータに応じて、必要な制度、やるべきこと、明らかにしていきたいんですけれども、やっぱり身近な自治体で、離婚届だとかそういうものを配付したり受け付けたりする段階ですね、せっかく来たときに、やっぱりそういうことについての相談支援の体制ができるようにしてはどうかと。
それから、これ取決めの義務化というのは一方では重いことになるので、DVだとかいろんなことを抱えてもう早く別れたいという方にとっては負担になる可能性もあります。ただ、これについてはやっぱり少し考えなきゃいけない。
それから、養育費について、先ほど言いましたけれども、何らかの形でこの債務名義にするのを、裁判所か公証人か使わなければ駄目だということになると、結構皆さん敷居が高いんですよね。ですから、この辺りのところも少し検討してはどうかと。
特に、身近な自治体での支援というところは、ここに書いてありましたけれども、簡単に済ませますけれども、やっぱり相談支援体制、それから情報提供、それから親ガイダンスとか、こういうようなことについても少し教育、啓発みたいなことを、意識を少し変えてもらうとか、そんなことがやっぱり必要になってくる。
それから、協議離婚制度については、先ほども言いましたけれども、養育計画とか、それから親ガイダンスとかいろんなものをやりながら、お子さんのことについての取決めをうまく促進する、あるいは話合いができない人たちは、例外的に話合いをしなくても要するに決められる、あるいは家裁の方に誘導して早く解決できるとか、少し工夫が必要だと思います。
いずれにしても、ここに、ちょっと三ページのところはもう駆け足で行きますけれども、一番やっぱり大事なのは、今の調査結果を見ても、裁判所も弁護士さんも幾ら掛かるか分からないとか、敷居が高いことはもう間違いないんですよね。そうすると、むしろ行政とかそういうところが、きちっと養育費についての取決めとか、あるいは決まったことをちゃんと守らせるということで、専門部署みたいなものをやっぱり置いていってはどうなのかなというようなことをちょっと考えます。後でちょっとお話しします。
それから、そのほかの民事法の立場からすると、やっぱり別居ということが起こって、大体相談を見ると、問題が起こって、別居中の紛争というのが七割ぐらいかなり深刻なんですね。離婚した後の紛争というのも三割ぐらい深刻になっていくんですが、五年とか時間が少したってくるとまあ落ち着いてくるという傾向があります。そうすると、やっぱり法定別居制度みたいなものを少し検討して、別居している間の紛争の解決、あるいは社会的な手当てとか、それから公的給付との、私的な養育費とか債権との相互の関係を少し整理をした方がいいのかなと。そういう意味では、法定別居制度みたいなものは検討してはどうか。
それから、できる範囲のところなんですけど、やはり住所が、養育費相談支援センターとかいろんなところへ行きますと、やっぱり住所が分からない、それから、強制執行だとかいろんな手だて、どんな書類を集めたらいいか分からないとか、そういうかなり入口のところとかやり方の問題でかなり悩まれています。ですから、その辺りも非常に、今ある制度をもう少し工夫してはというのがこの提案です。
それから、履行勧告、履行命令制度ももうちょっと実効性を高める必要があると。
四のところで書いたのは、一番最後の方なんですけど、養育費の不払に対してどういうふうに日本は取り組んでいったらいいだろうかというときに、北欧の国々は、ある意味では、立替払制度というんで、子供の問題は社会や国で責任を負おうと。教育だって無償ですしって、手厚いんですね。ただ、あそこは、やっぱり国の規模が小さいのと、高福祉高負担というんで国民のコンセンサスがかなりできているところなので、社会保障の一環としてこの問題を解決しちゃいましょうということは比較的やりやすいと思うんですね。
ところが、アメリカとかイギリス、オーストラリア、ニュージーランド、英米の国々ですと、基本的には個人や家族、これが取れるものはやはり是非取って、その取る取り方とか決め方を応援しましょうと。これはかなり強力にやりますので、居どころを探して取決めをさせて、決まったことを払わなければ刑務所に入れると、犯罪としてですね。それぐらい徹底しているわけです。
お隣の韓国は、実は二〇一五年までは養育費の取立て、受領率は日本より悪い一七%しかなかった。ところが、この問題は非常に深刻であると、一人親だけではなくて子供の貧困の問題を解決しないといけないというので、養育費履行管理院というのと、かなり英米型の強制徴収強化型というのを導入して、それでもつなぎで足りないときには一時的な養育費緊急支援サービスと、こういうのを導入しました。額は、残念ながら月二万円ぐらいですごい安いんですね。だけれども、日本なんかは、是非、一生懸命取ろうと思って頑張っても取れない人たちのために、立替払型か緊急支援型か分かりませんけれども、是非そういうものをつくってもらいたいと、こういうことです。
私の私案のところを簡単に説明します、もう二分しかありませんので。
先生方に、法律家なので、法律の条文を作るとか構想するのは結構できるんですが、ただ、やっぱり子供の問題は実はもう本当に最優先課題であって、今日出ているテーマ、全て非常に重要なテーマだと思いますけれども、これをやっぱり国としてもしっかりと実現していかなければいけないと。こういうことで、国の責務、地方公共団体の責務、それから父母も責務を負っていただいて、国民全体も負ってというので、ガイドラインを作ったり、あるいは、僕は養育費相談支援機構とかという独立行政法人を考えたんですけど、今度こども庁ができますので、是非、こども庁というところを通して縦割りの行政の弊害を横串を刺す、それから、独立行政法人みたいなところで、せっかく国がお金を用意して予算を付けるんですから、その配分をきちっとできるようにする、そして、ある意味では、養育費の問題だけではなくて、場合によっては面会交流とかお子さんの問題について、虐待とかいじめとか、そういうところも総合的にワンストップサービスでいろいろ応援ができるというようなことをつくってはどうかなということで、提案をさせていただきました。
これは、いろいろまだまだ足りないところいっぱいあると思いますけれども、お隣の韓国がこれだけ頑張って、今養育費の受給率は三五%に上がっています。運転免許とかパスポートの停止の制度も法律で入れました。さっき言ったのでは、裁判所じゃなくて養育費履行管理院でADRをやって、そこで合意を形成させて債務名義にしようと。ただ、大法院というか最高裁が韓国でも大反対して、それは通らなかったと。
ただ、今喫緊の課題を抱えていますので、まさに政治家の先生たちが声を上げて動いてくださると、もしかすると子供たちに本当に養育費が届いていく、あるいは、払えない人には国の方で責任を負っていくというシステムができればということで、済みません、時間超過したかもしれませんが、私の意見を述べさせていただきました。
ありがとうございます。