伊藤孝恵の発言 (国民生活・経済に関する調査会)
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○伊藤孝恵君 新型コロナウイルス感染症は社会の最ももろい部分をあぶり出しました。こういった危機のとき、いろいろなところで引用される十八世紀のスコットランドの哲学者、トマス・リードの言葉があります。鎖の強度はその一番もろい箇所の強度に等しい、なぜなら、その箇所が崩れたら鎖全体がばらばらになって崩れ落ちるからだ。日本社会の最ももろい部分とはどこなのか。
ステイホームは家の中の問題を顕在化させました。家計の悪化は生きる気力や尊厳を奪い、いらいらが抑えられずに弱い子供や家族に手を上げる大人を増加させました。DV相談件数はコロナ禍で過去最大。偏りがちだった育児、家事、介護の女性への負担、非正規雇用者の失業やシングルマザーと子供の貧困は、自助、共助の域をとうに超え、公助の具体策を必要としています。コロナ禍において、男性の自殺者は減る一方で、女性の自殺率が一五・四%も増加した事実とともに、我々が直視すべき課題です。
また、児童虐待件数も過去最大。小中高生の自殺も一九八〇年の統計開始以来過去最高。孤独な育児による産後うつによる自死は二倍というデータもあります。その他、外国人労働者、児童生徒、独居高齢者、ヤングケアラー、不登校、引きこもり、今必要なのは、社会の一番もろいところ、崩れ落ちそうなところに駆け寄って補修することなのだと思います。
その意味で、当委員会における調査項目はまさに現下の社会の要請に応えるものであり、委員長、両筆頭理事、また調査室、委員部始め、この場をつくってくださった皆様の御尽力に感謝いたします。
さて、次は、当調査会がいかなる意思を持って動くかについて本日は議論せねばなりません。
四月二十一日の参考人意見陳述の中で、早稲田大学の棚村先生より、養育費不払問題の解消に向けた具体的な法制の提案がありました。養育費の合意形成及び履行確保の支援に関する法律とタイトルされたものです。
私は、児童手当並びに児童扶養手当の超大幅拡大により社会で子供を養育することを望んでおりますが、それがかなわない現状では、養育費の有無というのが、一人親家庭で育つ子供たちの学びや育ち、満腹度合いや選択肢、いわく将来に直結する課題であるため、その確保の方策に絞って本日は述べたいと思います。
上川法務大臣は、今年二月、法制審議会に養育費確保等に関する制度の見直しを諮問し、四月十六日には早速、離婚届の書式を見直し、公正証書を使っているか否かを尋ねるチェック欄を追加する旨を表明しました。早い自治体では今月から運用が始まっています。
しかし、これはあくまで自主的に、全体の八七・二%を占める協議離婚における公正証書での養育費取決めを施すもの、促すものであり、その効果は未知数です。法制的なアプローチという意味で考えれば、強制執行受諾文言付公正証書等を離婚以前に的確になされるよう、情報提供や相談体制、費用負担援助、それがDV等で困難な方への配慮もした上での取決め義務化が第一ステップです。もとい、現行法制下では、これが全ての入口になります。この場合、民事執行法を自ら行使しての強制執行となるため、第二ステップとしては、この強制執行の支援、場合によっては行政による徴収、サービサーを介しての徴収支援等が考えられ、既に取組を始めている自治体もあります。さらに、第三のステップは、まず行政が不払養育費を肩代わりした上で徴収もしてくれるといったものです。不払に悩む方々にとっては本望である反面、では、偽装離婚すれば養育費を税金で賄ってもらえるということか、行政職員を取立てに駆り出すのかなどの指摘も実際にあるところであり、これらについては幅広いステークホルダーの意見とともに国民的議論に付す必要性を感じます。
いずれにせよ、全ての入口、課題解決の端緒である公正証書取決めの合意形成支援と義務化及び簡易算定表整備の必要については感じるところであり、そもそも養育費が子供の育成に必要不可欠であるという総則、目的や基本理念、国や地方公共団体の責務等について立法府の意思を示すべきだと思います。
本調査会は、第百三十二国会において高齢社会対策基本法案を取りまとめています。第百五十一国会の共生社会に関する調査会では、配偶者からの暴力及び被害者の保護に関する法律案、いわゆるDV防止法可決、第百五十九国会ではその改正案も可決させており、良識の府参議院の調査会立法が現下の課題につながる政策推進のよりどころとなっています。
委員各位におかれましては、法制審や政府の結論を待つのみならず、政党の議論を静観するのみならず、調査会での議論を踏まえた立法について御検討いただきたくお願い申し上げます。
終わります。