所千晴の発言 (資源エネルギーに関する調査会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○参考人(所千晴君) よろしくお願いいたします。
 本日は、このような貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。
 私は、先ほど山冨先生からも御紹介いただきましたように、選鉱と呼ばれる、鉱石あるいは使用済みの製品から固体資源を分離濃縮する技術を研究開発しております。その立場から本日は発表させていただきたいと思います。(資料映写)
 最初のスライドは、これも多くの方が既に御指摘されているかとは思いますけれども、これから先、金属の消費が大幅に伸びていくということが予想されているという一例です。論文からデータを取ってまいりました。銅、亜鉛、鉛、鉄、アルミといったベースメタルにニッケルも加えてありますけれども、いろんな研究者がいろんなシナリオに基づきまして、これから金属がどれぐらい消費が伸びていくかというのを推算しております。
 ここに四種類のシナリオ書いてありますけれども、世界中がみんな先進国のような成長を望むであるとか、あるいはみんなで協調しながらうまく資源をやりくりしていくだとか、あるいはちょっと自国のセキュリティーを重視して協調しないで資源を使っていくとか、いろんなシナリオがありますけれども、結論として、やはりどのシナリオになったとしても、これ、左側が二〇一〇年で右側が二〇五〇年、ちょうどカーボンニュートラルのターゲットとなっている年かと思いますが、多くて三・八倍ですね、今の金属の消費量の三・八倍まで消費が伸びるんじゃないかと、必要になるんじゃないかというふうに試算をされています。
 その需給バランスですけれども、ここでは銅を例に取ってあります。銅は文化なりと我々よく言っているんですけれども、電気があるところには必ず銅が必要になるという意味で、我々の文化の質を向上していくのに銅というのは非常に重要な金属でありますけれども、これも銅の将来の需給バランスを試算してみた一つの例ですけれども、プライマリーサプライと書いてあるところが、いわゆる鉱石から、天然資源から供給されると予測される銅の量です。それから、セカンダリーサプライと書いてあるのが人工資源、使用済みのものをリサイクルして供給されるであろう銅の量。これを二つ合わせますと、このトータルサプライというところにあります。先ほどのスライドと同じ人が試算しておりますので、いろんな横文字で書いたシナリオがありますけれども、どのシナリオに従ってもこれぐらいの供給があるだろうと。
 それに対して、先ほどの需要ですね、需要はこの赤い色のところで示していますけれども、やはり供給が足りなくなるんじゃないかと、需要の方が上に来ていまして、供給が足りなくなってしまうんじゃないかということが今研究者の間では危惧されていると、そういう状況になっています。
 それから、昨今、カーボンニュートラルということで、これから再生可能エネルギーあるいは蓄エネ、いろんなことが導入されてくると思いますけれども、そういったものが導入してくると、特定の金属の需要が今のバランスとは違って必要になってくるんじゃないか、これもいろんな方が既に御指摘されているかと思います。
 代表的なものは、例えば電気自動車でリチウムイオン電池が必要になるとなると、先ほど山冨先生からも鉱石のお話いただきましたけれども、コバルト、ニッケル、リチウムといったものが今以上に急激に必要になってくるんじゃないか。あるいは、磁石が必要になるとすれば、レアアースですね、ネオジムそれからディスプロシウム、そういったものが必要になってくるんじゃないかということで、今のバランスとは違ったところである特定の金属が急激に必要になって、やはりそこの需給のバランスが崩れるんじゃないかということも今多くの方々によって懸念されているところかなと思います。
 資源は、天然資源がまずございます。それから人工資源、使用済みのものからもう一度リサイクルするというものがあって、それから、先ほど山冨先生からも御紹介いただいた日本の近海にある海洋資源、私としては、この順番で非常に重要度が増すというふうに思っています。
 常に天然資源と人工資源のベストミックスが必要で、今は天然資源の割合が多くて、そこに使用できる人工資源をもう一度リサイクルをして使っているという状況ですけれども、これから、環境負荷に対するますます世の中からの要請、環境負荷低減への要請、あるいは持続可能な開発に対する考え方がどんどん世の中で変わってまいりますと、この人工資源に対する必要性の要請が変わって、このバランスが変わってくる可能性もあるなと、徐々に天然資源と逆転してくる可能性もあるなと思っています。
 それから、海洋資源は、先ほど山冨先生からもお話がありましたように、まだ一般的な天然資源に比べますと処理が困難、難処理性がありますし、それから環境負荷もそれなりにあることが懸念されますので、しかしながら、資源セキュリティー、あるいは技術を高度化していく、あるいは人材育成という点においては、今から継続的な技術開発を行っておくべきであろうというふうに考えています。
 国内から既に金属鉱山はほとんど稼働中の鉱山がなくなって、休廃止鉱山ばかりになっておりますけれども、やはり開発できる鉱山があると、サイトがあることは、人材育成、技術の継続という点においては非常に重要なことであるというふうに考えます。
 天然鉱物資源なんですけれども、これもどんどん難処理化をしております。
 左上は銅鉱石の品位ですけれども、以前は一%を超えていたものが、どんどんどんどんその鉱石の中の銅の品位、濃度というのがどんどん減っていってしまっているというのが今現状です。
 それから右側、これ当研究室で撮った画像ですけれども、銅鉱石はこんなイメージでして、ほとんど灰色の脈石と呼ばれる資源にはならないところにぽつぽつとちっちゃく中に混じっているのが銅でして、その割合も減っているし大きさもちっちゃくなっていると。大きさがちっちゃくなるということは、物理的に分離をするのがすごく難しいという状況になります。なので、分離にお金が掛かってしまうということです。こういうふうにどんどん難処理化しています。
 それから、ここにヒ素の銅鉱物なんかも、赤いところでぷちぷち混じっていますけれども、もはや銅よりも大きい形で、時々こういうヒ素、これは毒性も高く、きちんと処理しなければいけないものですけれども、こういったものも濃度が高く混じってきてしまっているということで、どんどん難処理化をしています。ですから、これを環境負荷低くどうちゃんと分離していくかというような技術開発も必要になってきます。
 それから、一般的な資源開発の流れを下に書いてありますけれども、探鉱から始まって、この採鉱の段階では銅は一%を切っているところから、我々が専門としております選鉱というところで分離濃縮をして、できるだけエネルギーを掛けないでまず物理的に濃縮をするということをします。ここで大体銅が二〇%ぐらいに濃縮してきます。二、三〇%ぐらいになります。そこからいよいよ火を使ったり薬剤を使ったりして更に純度を上げていって、最後は九九・九九九と九がいっぱい並ぶような非常に純度の高い銅を使う。
 ここの素材産業は日本はすばらしいものを持っていて、この純度の高い素材が日本の多種多様な機能の高い製品作りに、物作りに役立っている。ここのところをしっかりと確保しながら、とはいえ、入口の鉱石がこれだけ難処理化していますので、後で負荷を掛けないように前処理をしてきちんと分離濃縮していくということが今求められているということになります。
 それから、環境に対する考え方というのもこれから少しずつ変わっていくんじゃないかというふうに考えています。
 これはSDGsの考え方の基になったプラネタリーバウンダリーという図で、環境の負荷を何種類か右側に書いてあって、それぞれ今、プラネタリーバウンダリーと呼ばれる地球の限界をどれぐらい超えてしまっているかというのを赤色や黄色でカテゴライズして懸念を示しているような図なんですけれども、いわゆる気候変動のところはカーボンニュートラルということで、今まさにいろいろな考え方に基づいて議論がされているところだと思いますが、環境問題というのは気候変動だけではなくて、例えば左側にありますような土地利用の変化であるとか生態系を壊してしまうようなこと、こういったことも環境負荷の一つです。
 こういったことは、いろんな環境の考え方があるんですけれども、一つの環境負荷の考え方として、TMR、その対象を得るのにどれぐらい物質が関与したかというような考え方がありまして、これで見ますと、例えばいろんな金属を取ってくるときに、鉱石から取ってくるよりもPCからもう一度リサイクルした方がその関与する物質総量は下がるというような試算もあります。これも金属ごとに、あるいは製品ごとにいろんな事情がありますので一概にそうだとも言えないんですけれども、こういった環境に対する考え方が広く広まってくると、やはり鉱物資源よりも人工資源を何とか利活用していこうというふうになっていくのかなというふうに思います。
 いずれにしても、ここで申し上げたかったことは、環境問題というのは非常に多種多様で、カーボンニュートラルと必ずしもこういう例えばTMRのような概念とがいつも両立するとは限りませんので、これからは、カーボンニュートラルと同時に資源循環もどうするかという、もしかしたら相反してしまうような二つの概念のどこに一番我々人間としていい点があるのかということを考えていかなければいけない時代になっていくんじゃないかなというふうに考えています。
 この人工資源を利活用していくのにいろんな課題がございますので、そこを御紹介したいと思います。
 これは、先ほど示した水色の天然資源の開発フローとそれから人工資源の利活用のフローを並べて比較したものなんですけれども、これを見ていただきますと、後半の製錬、精製のところは同じようなプロセスを取っていく、で、前半のところが大分違っている、上流のところが違っているということに気付いていただけるかと思います。
 天然資源であれば、調査をして、それを掘りに、採鉱するというプロセスになりますが、ここのところに取って代わるのが、人工資源であれば、ちょっと横文字なんですけど、MFA、マテリアルフローアナリシス、これは、どこにどんな製品があって、どんな素材がどういうふうに分布しているかということを調査するものです。そういった解析のデータがいわゆる天然鉱物の調査、探鉱に当たる部分になる。
 それから、LCAは、こういったプロセスがどれぐらい環境負荷が小さくできるかということを試算するライフサイクル評価です。こういったデータをうまく集めて、どこにどういう資源が人工物としてあるのかということを戦略を持って集めて活用していかなければいけないというところがまず課題としてあるかなというふうに思います。
 それから、その次に、いわゆる掘ってくるというところは、鉱山は、太陽の恵みで長い間の歴史を掛けて既に大規模に濃縮してくれているところを見付けてそこを開発していくということになりますけれども、人工資源というのは、濃度はあっても消費者の手元にばらばらに存在をしています。ですから、それを誰かが集めてこなければいけない。ここも非常にエネルギーの掛かることですので、誰がどうやって効率よく集めるのかということを真剣に考えなければいけない。
 真ん中の選鉱の部分は、まさに、後の製錬にどれだけ負荷を掛けないで分離濃縮できるかという技術開発がキーになってきます。
 それから、製錬のところ、精製のところも、入ってくるものが変わってきますとバランスが変わりますので、その新しく入ってきたものにどう対応してエネルギーを掛けずに分離濃縮できるかというような技術開発。それから、分ければ必ず残りが出ます。必ず残りが出るんですけど、この残りを捨ててしまっては全体として効率がうまくいっているとは言えませんので、この残りをいかに利活用するか、あるいはバランスよく使っていくかというようなことが必要になってきます。
 それから、ここにデジタルXと書きましたけれども、鉱山と大きく違うのは、使用済みの製品というのは、元々使用に至るまでのデータがどこかにあるはずであるということです。このデータを使用済みのところにきちんと伝達することによって、その後の処理フローが非常に高効率化される可能性があります。ここのところは、一つ一つの製品の情報のセキュリティーの問題であるとか競争の問題であるとか、いろんな問題はありますけれども、できるだけそういった部分を技術的に、あるいはシステム的にクリアすることによって、できるだけ後の処理の部分にその情報が伝達されるようにすると。この概念は、今のいわゆるデジタルXの概念とも非常に相補的なんじゃないかというふうに考えていまして、新しい仕組みづくりが望まれるところかなというふうに思います。
 一つ一つ、より詳しく御説明します。
 まず、一番目の、マテリアルフローアナリシスやLCAをきちんと使っていかなければいけない、あるいは効率よく回収していかなければいけないというところを示す一つのデータなんですけれども、これはいろんな、いわゆるリサイクラー、廃棄物処理業と呼ばれるような会社の規模を表したものなんですが、棒グラフがたくさん伸びているところは、アメリカであったりフランスであったりドイツであったりといったところのリサイクラーあるいは廃棄物処理業の規模です。それに比べまして、右側三つは日本の同じようななりわいをされている会社の規模なんですけれども、これを見ていただくと、日本のこの分野の企業が規模がまだ小さいということが分かっていただけるかと思います。
 やはり、こういったものを利活用していくのに、規模というのは一つ非常に大きな経済的なファクターになりますので、どのように効率的に大規模化していくのかと、集めるのかというところは非常に大事で、そこに、先ほど申し上げましたように、一つは、データを集約して戦略的に使っていくということ、もう一つは、使用される前までの、ここに動静脈連携と書きましたけれども、製品の材料データ、あるいはそこにどれぐらい機能が残っているのかというデータ、そういったものをできるだけデータ連携をして利活用していくことが、この大規模化あるいは高効率化につながっていくんじゃないかなというふうに考えています。
 もう一つは、その次の物理的な分離濃縮のところの課題ですけれども、ここのところもまだまだ技術的に向上できる部分があるというふうに思っています。
 現状では、人力ですごく丁寧に、だけれども大規模化はなかなか難しいような解体の方法か、あるいはシュレッダーと呼ばれる、全体を機械的にぐじゃぐじゃっと切り刻んでしまうような分離の仕方、これが既に実用化されていますけれども、ここは、技術を向上させてこの間を埋めていくような、要するに、高効率で大規模だけれども精度も高いというような分離濃縮技術、それから、この全体を右上の、軸の右上に全体的に引き上げていくような技術開発がこれから必要になるんじゃないかというふうに考えています。
 そのためには、とにかく得たい機能をできるだけ残しながら分離をするということが重要で、何もかも分離、切り刻んでしまうのではなくて、どのレベル、製品から原子、分子に至るまでどのレベルででも分離ができると、そういった技術開発がこれから求められていくのではないかと思います。
 そういった技術開発をするためには、これからは製造の段階からそういった分離ができやすい設計にしていくということも一つの選択肢かなというふうに思いますし、また、それが物作りの一つの強みになっていくような価値観になっていくと、また、この人工資源の利活用の世界も少しずつ変わっていくかなというふうに思います。
 それから、製錬の部分ですけれども、この部分は、とにかく不純物をどう制御して分離をして、余すところなく副産物を利活用していくかということに尽きると思います。今でも、これは銅と亜鉛と鉛の製錬が、製錬ネットワークということで今でもお互いに連携をして、ありとあらゆる二十種類以上の金属を連携しながらちゃんと回収しているという図を示しているんですけれども、これが、入口の鉱物あるいは人工資源が変わっていきますとバランスが変わりますので、そのバランスが変わったところにいかに対応していけるか。特に、ここに書きましたけれども、鉱石では入ってこないような樹脂あるいはハロゲン、こういった元素が入ってきますと、また違った分離のコンセプトが必要になってきます。そういった技術開発がこれから求められていくかなと思います。
 人工資源の利活用への世の中の要請が高まっている例というのを幾つか御紹介したいんですけれども、一つは、素材側も責任ある素材生産というのを考え始めています。それは、一つの例で、これはカッパーマークと呼ばれるものですけれども、ここにあるコミュニティーとか労働環境とかガバナンスとか環境、人権といったものを評価して、そこにちゃんと合致しているものにカッパーマークという指標を与えて、これはきちんと責任ある生産をしている素材なんだというお墨付きを与えるというような評価制度です。
 これ、ヨーロッパの方で始まっておりますけれども、こういうふうになってきますと、日本もこういったものを生産しなければいけませんし、あるいはこういったものを製品に使っていくべきであるというような世論が強まっていくというような動きがあります。
 また、製品側も、これは外資メーカーですけれども、既に自社の製品を一〇〇%リサイクルされた素材で作るということを宣言していたり、あるいはもう一〇〇%再生可能エネルギーで製造するというようなことを宣言して、それを毎年レポートで出すというようなことを始めている。かなり影響力のあるメーカーがこういうことを始めていますので、そういった意味でも、リサイクル率の高い素材を使っていくというふうなことが、これからさらに世の中から求められていく可能性が高いというふうに思います。
 それから、これはリチウムイオン電池ですけれども、リチウムイオン電池に対しても、例えば、ヨーロッパが最近既にニッケル、コバルト、銅のリサイクル率を義務化するような法案を今出しています。あるいは、製品の方にもリサイクル率の高いものを使うように義務化していく。あるいは、カーボンフットプリントというのは、その製品、リチウムイオン電池を作るのに全体でどれぐらいCO2を排出したかというものなんですけれども、その値を報告させるということを義務化するというような動きも出てきていますので、こういった動きを見ますと、素材側、製品側どちらでも、少しずつこの人工資源をちゃんと利活用していくことの要請は強まっているかなというふうに思います。
 最後に、私も、連携あるいは人材育成の重要性を述べたいというふうに思います。
 既にいろいろな、国内でも学会などを通じて、あるいは各大学が、あるいは協会が、いろいろな考えの下に人材育成を、何とか人材をつないでいこうという試みはしておりますけれども、この分野で、例えばヨーロッパではEITローマテリアルズという組織がございまして、これは、資源の分野から材料の分野までを全て統括して、人材育成から教育から研究から、あるいは企業との連携までを全ていろいろとやりくりしているエージェンシーです。こういった一気通貫で物事を見れる機関があるというのはすごく大きくて、あるいは、研究だけでもない、開発だけでもない、教育まで全てをここで見られるという機関があるというのは非常に大きな存在になっているかなというふうに考えています。
 このように、日本においても、各分野の連携とそれから人材育成というのは、このように、鉱石だけではなくて製品を対象にして資源の戦略を練っていくという意味においてはますます重要になってきているなというふうに思っております。
 最後は、今申し上げたことのまとめです。
 ありがとうございました。

発言情報

speech_id: 120414396X00320210224_004

発言者: 所千晴

speaker_id: 12765

日付: 2021-02-24

院: 参議院

会議名: 資源エネルギーに関する調査会