伊藤孝恵の発言 (本会議)

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○伊藤孝恵君 国民民主党・新緑風会の伊藤孝恵です。
 私は、会派を代表し、ただいま議題となりました法律案について質問いたします。
 十二年前の二〇〇九年五月二十九日、この議場で消費者庁設置関連法案が全会一致で成立しました。相次ぐ食品偽装や製品事故の対応や相談窓口はそれまで各省庁がばらばらに担い、消費者にとって不便なだけでなく、行政対応が遅れて被害を広げる一因になっていました。
 食品表示担当の農林水産省と衛生担当の厚生労働省が対策に二の足を踏んだために、多くの犠牲者を出したコンニャク入りゼリーによる窒息死亡事故はその典型例で、一歳六か月の赤ちゃんから八十七歳に至るまで、子供たちとお年寄りばかりが窒息により亡くなりました。
 ねじれ国会の中にあっても、これでは駄目だと与野党全党が知恵を出し合い、長い時間を掛けて修正協議を行い、八十八時間の審議と三十四の附帯決議を付けてようやく生まれたのが現在の消費者庁です。同年九月の発足記者会見で、初代大臣は、我が国の行政の在り方を消費者・生活者重視に大きく転換していくための突破口とすると語りました。
 数えること二十人目の大臣でいらっしゃる井上消費者担当大臣に、以下伺います。
 二〇〇九年以降、閣法、議法問わず、消費者庁に関連する法案は何本成立し、うち全会一致は何本だったかお答えください。その数字には消費者行政に対する立法府の意思が込められています。
 本法案の原案が衆議院で全会一致とならなかった最大の理由は、突如盛り込まれた契約書面等の電子化によるものです。大臣は質疑の中で、電子化に関する消費者からの具体的な要望の有無を問われ、何か具体的に、個別に、あるいは書面でといった要望はなかったんだと理解していますと、立法事実はない旨を認められました。
 消費者も消費者団体も、弁護士会や司法書士会、全国知事会も、誰も求めていない、日本訪問販売協会に至っては、要望はもちろん、業界内で議論すらしたことはなく、青天のへきれきだとまで言ったこの電子化は、なぜ改正事項となったのでしょうか。規制改革推進会議の要請があったというお答えは承服いたしかねます。彼らが求めたのは、オンライン英会話コーチの契約など極めて限定的な範囲です。
 これまで、不意打ちの勧誘や利益を強調する勧誘、提供される役務内容に関する誤認を防止するなど、そこに合理的理由があるからこそ、書面による交付は法定とされてきました。契約内容の警告機能やクーリングオフの告知機能によって、消費者被害を防止、救済する重要な役割を担ってきた書面交付を不要とするのであれば、当然、傍証が求められます。
 高齢者の契約における家族やヘルパーなど、第三者の視認による消費者被害の発見や被害回復の効果について、大臣はどのようにお考えでしょうか。訪問販売やマルチ商法、電話勧誘販売や預託取引など、消費者被害における過去十年の発生件数と被害者年齢の特徴、事件発覚の端緒等の傾向を示した上で、書面交付は必要なしとの結論に至った理由をお示しください。
 政府は、電子化は時代の潮流であり、契約書面等の電子化は消費者の承諾を前提とする、あくまで選択肢の一つなのだから問題はないとの認識でした。しかし、考えてみてください。まさに、消費者の承諾、それも納得ずくの承諾が事後的に争われる、それが悪徳商法による消費者被害というものです。この被害はなぜ後を絶たないのでしょうか。
 言わずもがな、それは特殊な心理状態に追い込んで承諾させる、契約締結に至らしめるのが悪質事業者の手口だからです。こうした事業者から、判断能力が低下傾向の高齢者のみならず、予備知識の乏しい若者などの被害を未然に防ぐことこそが消費者庁の最大のミッションだと考えますが、大臣の見解をお聞かせください。
 今回の法改正では、適切に承諾を得ずに電磁的交付をした場合は行政処分や罰則の対象になります。この適切に承諾を得ているかどうかは、誰が、いつ、どこで、どのように判断するのでしょうか。悪質事業者を相手に、消費者がその不適切性を立証するのは相当難しいと思われ、また、法の穴をかいくぐる能力にたけている悪質事業者とのイタチごっこに対抗できる調査能力や体制、ノウハウを今の消費者庁が内包しているとは到底思えませんが、大臣の御所見を伺います。
 二〇〇〇年十一月八日、IT書面一括法に係る国会審議において、当時の担当大臣は、契約をめぐるトラブルが現に多発している法律、例えばマルチ商法規制の訪問販売法等については、そもそも本法律案にはなじまない、ですから対象としないことにいたしましたと答弁されています。
 二〇〇〇年といえば、IT革命という言葉が流行語大賞にも選ばれた年です。今以上にデジタル化が喧伝された中にあっても、政府は従来からの一貫した方針を変えませんでした。それを覆した今回の判断です。よほどの理由、政府の方針転換があったのだと思います。理由を教えてください。
 この十年で、消費者リテラシーを含め、契約書面等の電子化を許容する環境が整ったのかといえば、むしろ逆で、コロナ禍で広がる困窮と混乱の中で高齢者が狙われ、デジタルデバイドは深刻化し、消費者被害の相談件数は右肩上がりです。
 給付金詐欺にワクチン詐欺、身寄りのないお年寄りが、ワクチンの予約を取ろうと一日中役所に電話を掛けてもつながらずに、誰にも頼めずに不安でいる中、予約を代行しますよと掛かってきた電話に飛び付いてしまう気持ちを、大臣、想像してください。
 スマホの保有率や電子商取引の市場規模、そんな数字を並べて電子化を正当する知恵があるなら、消費者被害に遭ってしまう一人一人の高齢者の孤独を、暮らしを想像し、対策を講じてください。
 政府は、電子化による被害が起きないよう、政省令で必要な対策を定めるとしています。その具体例として示されたのは、紙の書面で事前承諾を取るというものです。今まで紙で契約を取り交わしてきたものを電子化したいがために、まず契約の事前承認を紙で取り交わし、契約書自体は電子化する、まるでコントです。政省令でいかなる対策を備えるおつもりか、御説明ください。
 政府のデジタル化はどれもこれも手段が目的化しています。本改正案の目的でいえば、まさに法案名、消費者被害の防止及びその回復の促進を図るための特商法改正であるのに、いつの間にか電子化が目的になっています。もとい、それが消費者保護に資するものであればまだ救われるのですが、全くそうではないという声が現場からこんなにあふれているからこそ、我々は対案を提出し、再考を求めています。
 日に日に大きくなる懸念に対し、政府は、契約者が高齢者の場合は家族など第三者のメールアドレスにも送付させるなど、政省令や通達等において規定される承諾の実質化を図ることを検討されていると伺いましたが、悪質事業者は、ならばと、家族のいない高齢者を狙うでしょう。息子には相談できないという親心の隙間に付け込むでしょう。大臣、これらは十分な歯止めになり得るのでしょうか。
 手段が目的化してしまっている、この袋小路から抜け出る方法はただ一つ、本法案から契約の電子化規定を一旦削除し、消費者保護の観点から、消費者や消費者団体等の意見を聞く場を公で設け、あらかじめ政省令や通達等も含めた制度設計をした上で、法律案を見直すことです。大臣の見解を伺います。
 最後に、消費者庁と同時に発足した民間有識者による監視機関、消費者委員会について伺います。
 消費者委員会は、消費者問題を自ら調査審議を行い、必要であれば各省庁、内閣総理大臣にまで建議、勧告等を行うことができる組織です。
 十二年前、政権交代前夜の激動の中、与野党が衝突を封印し、共にこだわり抜いたのがこの消費者委員会であり、第三者機関として消費者庁から独立させ、消費者庁をも監視させることを目指したといいます。
 それが、いつの間にか、消費者庁から巧みに送り込まれた事務局長が中心となり、今回の電子化をバックアップしていた事実は看過し難く、先人の努力に連なる行政監視機能を果たせなかった大きな自戒があります。この消費者委員会内のガバナンスには課題があると考えますが、大臣の御所見を伺います。
 私は、DXの推進に賛成です。しかし、デジタル化というものは、自己に関するデータを自由に管理、処分できる権利、自己に関するデータを無断で分析、予測されない権利など、守られるべき権利、安心の下敷きがあって初めて利活用への理解が進むものだと思っています。そして、社会の実情を顧みないデジタル先導には、摩擦や犠牲が生じ得ることを忘れてはなりません。万が一にも高齢者にそれを強いることがないように、そのことを殊更強く申し上げ、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣井上信治君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 120415254X02420210521_011

発言者: 伊藤孝恵

speaker_id: 17711

日付: 2021-05-21

院: 参議院

会議名: 本会議