吉川沙織の発言 (本会議)
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○吉川沙織君 立憲民主党の吉川沙織です。
私は、ただいま議題となりました水落敏栄参議院議院運営委員長解任決議案に対し、提案の理由を御説明申し上げます。
本会議先例二〇六号、「委員会の審査を終わった案件は、議院の議決により議事日程に追加する場合を除き、次会の議事日程に記載する」。
十四日夕刻の議院運営委員会理事会において、さらには内閣不信任決議案提出後に開会された議院運営委員会理事会において、最大会派からは全く提案のなかった重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案(閣法第六二号)の今回の緊急上程は、先例上、そして国会の議事運営の常道からすれば、これに外れるものであると言わざるを得ません。
今回、突如として提案されたこの緊急上程は、予算案や年度末の日切れ議案など、例外的に認められるべきものです。委員会で瑕疵なく採決された議案であれば、それぞれの賛否は別にして、次の本会議の議事日程になることが原則であり、理解をします。ただ、十六日は会期末予定日であることからしても、その本会議の議事日程として正常な形で議会運営をすべきではないでしょうか。本法案の採決を扱う議事日程を緊急上程で強行的に追加されるのではなく、十六日の本会議で通常どおり扱いさえすれば、それぞれの賛否は別にして、原則に従って正常に扱うことができるのです。
先ほどの議院運営委員会理事会においても、先例上も次の本会議が原則であることを申し上げ、その本会議で扱いましょうと幾度も提案させていただいたにもかかわらず、今回強行的に議事運営の常道から外れた形で議事日程の追加をされるのであれば、そして、それを議院運営委員長が容認なさるのであれば、議院運営委員長に対する解任決議案を出さざるを得なかったのです。
しかも、十四日夕刻の議院運営委員会理事会においては、最大会派から驚くべき提案がなされたのです。それは、法的拘束力を有し、全てに優先するとされる解釈と慣例が定着している内閣不信任決議案が提出されたとしても、十五日十時の本会議を定刻どおり開会し、内閣委員長解任決議案を扱いたいという提案でした。
内閣不信任決議案は、仮にですが、可決されれば憲法第六十九条の規定により内閣は解散か総辞職を選択せざるを得ないものであり、その議案が提出されれば、その処理が行われるまで衆参共に本会議や委員会を開会すること自体行われていません。この国会運営のルールが確立して以降は、当然、院の構成に関わるからといって先に処理した例も見当たりません。国会運営のルールが確立する前、昭和二十年代、三十年代の例はあったとしても、今は内閣不信任決議案が処理されるまで参議院の本会議、委員会が動かないのは、その性質に鑑み、当然ではないでしょうか。
そういった過去の例を調べも検討もせず、国会運営の慣例をいとも簡単に覆す提案を幾度も続け、最終的に三回目の議院運営委員会理事会でようやくあり得ない提案を撤回し、本会議開会に至ったのですが、法規、先例を重視する私自身にとっておよそ信じ難い議院運営委員会理事会でした。これまで議会の先人が積み上げてきたルールを顧みない、あり得ない前例を最大会派自らが作ってしまうところだったためです。
立法府に身を置く議会人は、議会の先人の知恵で積み上げられてきた法規、先例を大事に議会運営に携わるべきであると考えます。もちろん、法規と違って、先例は時代によって変わっていく側面もあるでしょうし、墨守するものでもないと思います。しかし、先例は法的拘束力を有しないものの、これまでの議事運営の積み重ねであり、議会の先人の知恵の結果であり、十分尊重すべきものであると思います。
最近は、どちらかといえば政略的配慮を優先し、先例をないがしろにする傾向があるのではないでしょうか。新自由主義的発想での議会運営は、その都度態度を決めればいいとするルールなき議会運営につながるおそれもはらんでいると思っています。土地利用規制法案の緊急上程も、十四日夕刻の議院運営委員会理事会の提案も、まさにルールなき国会運営そのものです。
土地利用規制法案については、その趣旨と必要性について理解はします。今から十年前、平成二十三年、当時の民主党は、外国人による土地取得に関するPTを設置し、外国人や外国資本による土地買収について規制策を検討し、実際に法改正を行っている経験があるからであり、規制の必要性については同意するところです。なお、本法案は、外国資本の土地購入を規制するものではありません。
土地利用規制法案は、与党内でも協議が難航したために、内閣自らが定めた閣法提出期限に今国会唯一提出遅延するほど課題が多く、会期末まで二週間を切った中、会期内には十分な審議期間の確保も見通せない中、残念ながらこのような形になることも予想されましたので、六月三日の議院運営委員会でも審議入りには慎重な立場で意見表明を行いました。
六月八日の内閣委員会の質疑でも明らかにしましたが、参議院の審議期間の確保については、昭和四十八年三月十九日、昭和四十九年五月十日、各会派代表者懇談会での議論を踏まえ、参議院議長が衆議院に対し、二十日間の参議院の審議期間の確保について申し入れたことを端緒とし、昭和五十七年二月二十四日には、参議院改革協議会の答申で、また平成八年十二月十六日の参議院制度改革検討会の答申において、二十日間の審議日数の確保を衆議院に申し入れています。
衆議院で使用される重要広範議案という概念もありますが、これは申入れ当時にはなかった、平成十一年以降に使われている言葉です。土地利用規制法案が安全保障の観点から国民の権利を制約し、義務を課そうとするものであることからすれば、平成八年までの申入れ当時における重要議案に本法案は該当するものであり、本院での十分な審議期間の確保が必要であったと考えます。
私は、立法府と行政府の関係については、これまで束ね法案や包括委任規定を問題として、五年半前から議院運営委員会理事会、本会議や予算委員会、質問主意書等で再三にわたり指摘してきました。束ね法案は、法律案を束ねることによって国会審議を形骸化するとともに、国会議員の表決権を侵害しかねないものであること、包括委任規定を含む法律案は、細目的事項を具体的に明示せずに実施命令の根拠規定を法律に設けようとするものであり、法律による行政の原理の意義を埋没させるおそれがあるとともに、立法府の空洞化、これを招来しかねないといった問題を抱えているものです。
国会は、憲法上、国権の最高機関であり、国の唯一の立法機関として、法律による行政の根拠である法律を制定するとともに、行政執行全般を監督する責務と権限を有しています。国会の憲法上の責務と権限を侵害しかねないような束ね法案と包括委任規定については、立法府と行政府の関係が改めて問われている今こそ、与党か野党かは関係なく、行政府に対して厳に慎むべきと主張すべきではないでしょうか。
今回、このような形で緊急上程してまで成立させたいという土地利用規制法案には、典型的な包括委任規定が包含されています。法第二十四条、「この法律に定めるもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、内閣府令で定める。」とするものです。
法律を実施し、又は施行するため必要な細目的事項を定めるいわゆる実施命令については、憲法第七十三条第六号、内閣府設置法第七条第三項、国家行政組織法第十二条第一項に基づき、個別の法律による特別の委任がなくとも制定することができるとされていますが、実際には多くの法律において実施命令の根拠規定が設けられています。
例えば、本法案と同じように内閣府令の委任を置いている法律の一つとして、平成十六年に全部改正された信託業法があります。第八十九条、「この法律に定めるもののほか、この法律の規定による免許、登録、認可、承認及び指定に関する申請の手続、書類の提出の手続、記載事項及び保存期間その他この法律を実施するため必要な事項は、内閣府令で定める。」と内閣府令で定めるべき事項を具体的に書いてあります。
実施命令の定立には個別法による授権は必要ないとされていても、具体的に規定する事項を明示することが法律による行政の原理の趣旨に鑑みても適当であり、ある意味では、我が国の法律の圧倒的多数が閣法である中でも維持されてきた行政府の矜持でもあるように思います。
ところが、近年、書類の記載事項といった具体的な事項には一切触れることなく、この法律に定めるもののほか、この法律を実施するため必要な事項は内閣府令で定めるなどとする包括委任規定を置こうとする法律案が増加しているところであり、この傾向には危惧を抱いています。
実施命令において規定することができる事項は法律を実施するために必要な細目的事項に限られるとされていますが、包括委任規定の文言には実施命令で規定するべき事項が具体的に記載されていないため、実際に実施命令が制定されるまでは、果たして本当に法律を執行するための細目的事項に限られているのかどうか、必ずしも明らかではありません。もしかしたら、実質的に国民の権利を制限したり国民に義務を課したりすることとなるような事項が定められるかもしれないという懸念は常に付きまとい、将来的にどうなるか分からない不安を抱えることになります。
包括委任規定に関しては、束ね法案と併せて国会質疑や質問主意書等でただした後、一旦その件数は減りました。ただ、閣法において包括委任規定の存在を認めれば、その内容を具体的に何を定めているか、委員会質疑のたびに確認してまいりました。それは、立法府として、立法府の審議の場で明らかにするのが筋であるためです。このような視点から見ると、土地利用規制法案第二十四条においては、何一つとして具体的な例示がなされていません。
六月八日、内閣委員会での質疑において、土地利用規制法案第二十四条の包括委任規定、「この法律に定めるもののほか、この法律の実施のため必要な事項は、内閣府令で定める。」とする、必要な事項とは何かお伺いいたしました。そうしましたら、内閣官房から、「現時点におきまして、この規定に基づき、この法律の実施のために必要な事項として法執行上の手続的な事項を、具体的にこういうことを定めるということを内閣府令で定めるということは想定していない」との答弁があったのです。
まさか、想定を一つもしていないとの答弁が返ってくるとは予想だにせず、愕然としました。立法府の一員としては、何らの想定すらしていないのであれば、この規定を設ける必要性、根拠は全くなく、これはまさに立法府権の侵害そのもので、白紙委任も甚だしいことだからです。
これまで、先ほども申し上げましたとおり、包括委任規定を置こうとする条文があれば、そしてその法律案を認めれば、各府省庁に国会質疑を通じて確認してきましたが、具体的な手続事項として全て想定はありました。それすらないとすれば、包括委任規定である法第二十四条は撤回すべき条文であると強く指摘せざるを得ません。
先ほども述べたとおり、実施命令は個別の法律による特別の委任がなくても制定することができるとされていますが、実際には、どのような事項を実施命令で定めることとするのかを具体的に明示した規定が法律に設けられてきました。法律を実施し、又は施行するため必要な細目的事項を定めるという名目で何でもかんでも実施命令に落とし込むことを可能としてしまうのでは、法律による行政の原理の意義が埋没していき、国会による立法行為が空洞化してしまいかねません。
本法案は、時間不足で詳細を詰め切ることができなかったためなのか、本来であれば法律で規定するべきであるような事柄であっても基本方針で定めることとされるなど、全体として法律による規律密度が低いと言わざるを得ません。このため、法律による行政の原理から逸脱することがないか、強く危惧します。
しかも、法律案自体がこれだけ不明瞭であると、後になって本来は法律で定めるべき内容が定められていないことが判明し、下位法令でそれを無理やり補うこととなり、結果的に第二十四条の内閣府令が国民の権利を制限したり、国民に義務を課したりすることになるのではないかと非常に懸念しています。
事実、平成二十五年に成立した新規制定法において、最初に法律で規定した条文が不十分であったがために、政省令に委任する事項が度を過ぎて、最終的に平成二十九年に改正を余儀なくされた閣法があります。これも法制定時の規律密度が余りに低かったことに起因するものですが、当該法律は私権制限を伴う法律ではありません。ここは今回の法案と決定的に違う点です。国民の私権を制限し義務を課す、しかも刑事罰まで規定されている法案である以上、可能な限り法律で具体的に規定する、そのような法律を制定するのが立法府としての責務です。これらの問題を見過ごしたまま本会議の運営を正常ではない形で押し進めようとする議院運営委員長に解任決議案を出さざるを得ませんでした。
本法案の問題点についてこれまで申し上げましたのは、包括委任規定、ただ一点のみです。ほかに運用上懸念される事項を挙げれば枚挙にいとまがありません。
私は、六月八日の内閣委員会で九十分間の質疑に立ちましたが、主たる論点を挙げたのみで、時間が足りず、まだまだ質疑すべき事項、そして先ほどから繰り返し申し上げてきた立法府の審議の場で明らかにすべき事項がまだまだ残されています。にもかかわらず、当初、最大会派から提案すらなく、先ほど委員会採決したばかりの土地利用規制法案を議了案件として扱うことの議事日程の追加を容認されてしまったため、残念ながら議院運営委員長に解任決議案を出さざるを得なかったのです。原則の例外である緊急上程という形で議事日程を追加することは容認できません。
土地利用規制法案について、今後の運用に大きな懸念のある包括委任規定一点に絞ってのみ指摘申し上げてまいりましたが、規制が私権制限を伴うこと、規制対象が条文に明示されていないことなど、包括委任規定以外にも問題や課題が山積しています。
今回の議事日程の追加は、与党か野党かは関係なく、充実した審議期間の確保を衆議院に申し入れてこられた参議院の議会の先人の思いを踏みにじるものであると申し上げ、水落議院運営委員長の解任を求めて、私の提案理由の説明を終わります。(拍手)
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