木戸口英司の発言 (本会議)
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○木戸口英司君 立憲民主・社民の木戸口英司です。
私は、会派を代表し、ただいま議題となりました重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案に対し、反対の立場から討論いたします。
私は、防衛施設の保安を徹底するのは当然であり、外資による周辺の土地買収に安全保障上懸念があるとの認識に立っています。だからこそ、代表質問において、本法律案の十分な審議と政府による誠意ある答弁を求めました。それは、時間を重ねるだけにとどまらず、衆議院の審議で全く明らかとされなかった規制等の内容、私権制限の歯止め、安全保障上の実効性等について明確化していくことを求めたからです。
内閣委員会において、衆議院で開かれなかった外交防衛委員会との連合審査や参考人質疑も行いました。しかし、政府答弁は不安定さが一層増し、不明瞭で、欠陥法案であることが明瞭となってきました。
昨日の理事会で、衆議院内閣委員会と同様に、合意なく委員長職権で質疑終局、採決の提案がされたことは到底容認できません。
本法案が重要法案であるにもかかわらず、参議院で審議入りしたのは六月四日、会期末まで二週間を切った中でした。参議院は、審議を十分尽くすため、重要議案の参議院における審議時間は原則として最低二十日間を確保することを衆議院に求めてきました。それをほごにする法案の扱いに参議院軽視は極まり、加えて、参議院自ら熟議の府であることを放棄したと断じざるを得ません。
本法案は、とても質疑終局、採決の段に至っておらず、即時廃案、再検討の上、出し直しするべきです。
反対の理由は、まず、国民生活の基盤の維持並びに我が国の領海等の保全及び安全保障に寄与するという本法案の目的を達成する実効性に大きな疑問符が付くことです。
本法案では、重要施設の敷地の周囲おおむね千メートルの区域内及び国境離島等の区域内で、機能を阻害する行為を防止する必要があるものを注視区域として指定し、土地等の利用状況についての調査を行うこととなります。そもそも、重要施設の機能阻害行為は千メートルの区域内にとどまるのでしょうか。大きなリスクとなっているサイバーテロ等は、その区域の土地利用調査で防止できるのでしょうか。
自衛隊や米軍、海上保安庁の施設、原発や軍民共用空港等の生活関連施設という施設目的も伴うリスクも異なる施設と区域を一つの法案で調査、規制することが本法案の整合性と実効性を著しく低下させていると言えます。
本法案が成立すれば、全国各地の土地等の所有、利用に係る情報を収集することとなり、膨大な人員、体制、予算と時間を要することとなります。安全保障上の実効性を確保するという観点で一度立ち止まり、法案を検討し直すべきではないでしょうか。
問題となるのは、注視区域及び特別注視区域の指定対象となり得る重要施設並びに国境離島等の範囲が明示的でないことです。
政府によれば、防衛関係施設の注視区域候補が四百数十か所、特別注視区域候補が百数十か所、海上保安庁の施設については百七十四か所中二か所、国境離島等では、領海基線を有する国境離島四百八十四島、有人国境離島地域離島百四十八島が指定の候補とされています。沖縄県内の有人離島については全てこの中に含まれると小此木大臣は答弁しています。
このように広範な区域指定の可能性があるにもかかわらず、対象となる重要施設の範囲は曖昧で、生活関連施設の範囲はどこまで広がるか分かりません。政府は、現時点で政令で指定することを考えているのは、原子力関係施設と自衛隊が共用する空港の二つの類型であるとしていますが、それを法案に書き込むことは拒みました。
この点、本法案の前提となった政府の有識者会議の構成員だった与党側の参考人ですら、生活関連施設の範囲について、この条文案を読むだけでは様々な臆測が広がるおそれがあるということを審議プロセスを見て痛感した、そこはしっかりとこれから議論をしていかなければ国民の様々な解釈を呼んでしまうと思ったとおっしゃったことは看過できません。
また、対象となり得る防衛関係施設のリストも、安全保障上の理由から提出されていません。しかし、区域指定の際には官報に公示されるのですから、結局、隠しようがないのです。
市ケ谷にある防衛省本省の、指揮中枢機能を有し、特別注視区域指定候補の最たるものですが、経済的社会的観点からの配慮として、周辺の市街地を特別注視区域に指定しないことを与党審査の段階で合意したと報じられています。港区などの都内、国内各地に所在する在日米軍施設をどこまで指定するかも今後の米側との協議次第です。こんな法律を認めてよいのでしょうか。
沖縄県は、県土そのものが有人国境離島である上に、多くの在日米軍基地を抱えています。大多数の沖縄県民が本法律案に基づく調査や規制の対象となり、本法律案の曖昧な定義や基準のために県民が知らぬ間に監視下に置かれてしまうこともあり得ます。本法律案には、土地等の所有者や利用者の利用状況を調査するため、利用者その他の関係者に情報提供を求める規定があり、従わなければ処罰されます。基地等の監視活動や抗議活動をする知人や協力者の個人情報の提供を迫られることで、地域や市民が分断されることとなり、市民運動や住民運動の自己抑制、萎縮につながりかねません。
また、本法律案では、地方公共団体の長等に対し、注視区域内の土地等の利用者等に関する情報の提供を求めることができるとされ、その範囲は政令に委ねられています。政府は、注視区域内の土地等の利用者等の広範な個人情報を本人の知らないうちに取得することが可能となり、本法律案には個人情報の保護に十分配慮しつつとの規定はあるものの、プライバシー権等を侵害する懸念は残されています。
さらに、二年以下の懲役と二百万円以下の罰金という罰則規定のある命令の対象となり得る重要施設や国境離島の機能を阻害する行為の例が法案に示されていません。行政による恣意的な運用、処罰のおそれが排除できず、罪刑法定主義の点で大きな欠陥です。
政府は、機能阻害行為の例として、重要施設の機能に支障を来す構造物の設置、国境離島等については、領海基線の根拠となる低潮線に影響を及ぼすおそれがあるその近傍の土地の形質変更等が該当し得ると答弁していますが、これも法案に書き込むことを拒みました。
政府は、予見可能性を確保する観点から、閣議決定される基本方針において可能な限り具体的に機能阻害行為を例示するとしています。内外情勢の変化に即応するためとして、法律はおろか、政令でさえなく、基本方針に例示するという対応は、政府は機動的と表現していますが、余りに白紙委任的な法案であり、とても賛成できません。
法案第六条は、「内閣総理大臣は、注視区域内にある土地等の利用の状況についての調査を行うものとする。」と規定しています。調査対象者も手法も調査事項も限定されていません。
調査手法としては、公簿収集や報告徴収以外にも、政府は、重要施設を所管又は運営する関係省庁、事業者や地域住民から機能阻害行為に関する情報を提供してもらう仕組みを今後検討するとしています。これでは調査が無限定に広がりかねません。法の目的の範囲内で必要最小限度の措置を行うことが規定されているというだけでは、歯止めになる保証はないではありませんか。
第二十二条では、「内閣総理大臣は、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長及び関係地方公共団体の長その他の執行機関に対し、資料の提供、意見の開陳その他の協力を求めることができる。」とあります。全国の防衛関係施設・区域の調査に当たり、関係行政機関となるのは防衛省・自衛隊であり、自衛隊による住民に対する直接的調査への協力要請が行われることが想定されます。
政府の説明によると、土地等利用状況調査のうち、現地・現況調査は第二十二条に基づき、内閣総理大臣が防衛大臣に対し協力を求めることがあるとし、防衛省は補助的な事務を担うもので、補助的な事務の一部、例えば現地への地理的な案内、移動のための車両の提供等は自衛官が行うこともあり得るとしています。しかし、本法律案の目的達成のための自衛隊による住民への直接的な現地・現況調査がどの範囲まで許されるのか、その範囲が拡大していく懸念は捨て切れません。
国民が政治に求めているのは、主観的願望ではなく、科学的根拠と客観的事実に基づいた責任ある判断と明確な説明です。コロナ対策、オリパラの開催判断、そして本法案に共通する、この道しかないと突き進む政府の態度に国民は不信感と危険性を感じています。
リスクの適切な評価と対策を国民に示していくことが政治の責務であり……