岸田文雄の発言 (本会議)
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○内閣総理大臣(岸田文雄君) 小林正夫議員にお答えいたします。
まず、過去三十年間の日本経済と新しい資本主義についてお尋ねがありました。
一九八〇年代以降、世界の主流となった、市場や競争に任せれば全てがうまくいくという新自由主義的な考え方は、世界経済及び日本経済の成長の原動力となった反面、格差や貧困の拡大、気候変動の問題の深刻化など多くの弊害も生み出しました。
主要先進国を始め世界中で格差や貧困、気候変動問題に向き合う中で、弊害を是正しながら更に力強く成長するための新しい資本主義モデルの模索が始まっています。
そうした中で、我が国では官と民がそれぞれ役割分担をして、成長と分配の好循環を生み出す新しい資本主義を実現していきたいと考えています。
そのために、まずは科学技術・イノベーション、グリーン、デジタル、経済安全保障を柱とする成長戦略を着実に進めてまいります。将来の市場規模を示すことで民間に投資を促したり、規制・制度改革によって民間の投資を促すといった工夫を行うことで成長戦略を加速化してまいります。
その上で、官民が協働しながら、成長による果実を国民一人一人に広く分配してまいります。国が率先して公的部門の給与を引き上げるとともに、民間企業の賃上げを税制や補助金などあらゆる施策を総動員して支援してまいります。
鍵は、人への投資です。人への投資は、コストではなく、未来への投資であり、幅広い国民の所得と給与を引き上げていくことで消費を喚起し、次なる成長を生み出すという成長と分配の好循環を実現してまいります。
このように分配を成長戦略と位置付けることは、これまでの自民党政権の成長戦略とは異なる新しい成長モデルであり、私が目指す新たな資本主義であります。
こうした新たな資本主義の実現によって、格差や貧困、気候変動といった社会課題を解決しながら、力強く成長を実現し、分厚い中間層を取り戻し、国民が豊かに生活できる経済をつくり上げていきたいと考えております。
そして、国民の政治への信頼についてお尋ねがありました。
私は、総裁選のときから、信なくば立たず、政治に国民の信頼を取り戻すことが何よりも重要であると述べてきました。このため、自民党に改革実行本部を設置し、広く国民の意見も踏まえて、自民党のガバナンスコードを検討していくなど、政治の信頼回復に向けた議論をしっかりと進めてまいります。
その上で、森友問題については、財務省において自らの非を認めた調査報告を取りまとめており、政府から独立した機関である会計検査院も二度にわたる検査報告を国会に提出をし、さらに、第三者である検察の捜査も行われ、結論が出ているものと承知をしています。
また、訴訟の過程において、裁判所の訴訟指揮に従いつつ、丁寧に対応するよう指示も行ったところであります。
日本学術会議の会員の任命については、日本学術会議法に沿って、昨年十月に任命権者である当時の内閣総理大臣が判断を行ったものであると承知をしております。
日本学術会議の在り方については、梶田会長とコミュニケーションを取りながら未来志向で検討を進めてきており、引き続き小林大臣の下で取り組んでもらいたいと考えています。
こうした内容については、これまでも国会などにおいて様々なお尋ねに対して丁寧に説明を行ってきたところだと承知をしており、今後も必要に応じてしっかりと説明をしてまいります。
また、今後、行政において国民の疑惑を招くことがないように、公文書管理法に基づく文書管理の徹底等にもしっかりと取り組んでまいります。
日本経済の見通しについてお尋ねがありました。
我が国経済は、新型コロナによる厳しい状況が徐々に緩和されつつありますが、半導体不足などの供給面での制約や、原材料価格の動向による下振れリスクに十分注意するとともに、多くの国で確認されているオミクロン株を始め新型コロナの再拡大による内外経済への影響や金融資本市場の変動等の影響を注視する必要があると考えております。
政府としては、先般決定した総額五十五・七兆円の大規模な経済対策によって新型コロナの次なる感染拡大への備えを固め、コロナ禍で厳しい影響を受けた方々に万全の支援を行うとともに、新しい資本主義を起動し、成長と分配の好循環を生み出していくことで日本経済を一日も早く回復軌道に戻し、コロナ後の新たな社会を切り開いてまいります。
積極財政と子育て世帯への給付についてお尋ねがありました。
今回の所得基準は、児童手当の仕組みを活用することで、できる限り年内に支給を開始し、プッシュ型で迅速に支援をお届けするためのものであります。
今回の所得制限を設けた場合でも、給付を行う必要性の高い子育て世帯に対し幅広く支援を行うことができるものと考えております。
また、クーポンによる給付は、より直接的、効果的に子供たちを支援することが可能であり、民間事業者の振興や新たな子育てサービスの創出、消費の下支え等につながることも期待されます。
地方自治体の皆様にはこうした政策的意義について理解をいただく中で、まずはクーポン給付を原則としながらも、地方自治体の実情に応じて現金での対応も可能とする運用といたします。
この一連の執行過程において、地方自治体の御意見も伺いながら、柔軟な制度設計を進めてまいります。
その上で、今回の経済対策では、生活困窮者自立支援金の拡充や緊急小口資金等の特例貸付けなど、様々な施策を講じることとしており、新型コロナの影響を受けた方々にこうした政策を広く重層的に行使することによって支援を行っていきたいと考えております。
なお、消費税については社会保障の財源として位置付けられており、当面、消費税について触れることは考えておりません。
また、税、保険料の納付が困難な方々に対しては、税の猶予や保険料の減免、猶予の仕組みを設けており、個々の事情に応じて対応してまいります。
そして、付加価値の適正配分や補助金の拡大などの中小企業支援についてお尋ねがありました。
まずは、中小企業に付加価値が適切に配分され、恒常的に利益が上がるような環境整備が重要です。その実現に向けて、政府としては、下請Gメンの倍増による下請取引の適正化や、大企業と中小企業の共存共栄のためのパートナーシップ構築宣言、これを推進してまいります。
また、ポストコロナも見据え、新事業に挑戦し、生産性向上等に取り組む中小企業の支援も重要です。このため、今般の補正予算で新分野展開を支援する事業再構築補助金を一・一兆円から一・八兆円に積み増すとともに、売上減少の要件を緩和することで対象を拡大し、中小企業の新たな挑戦を後押ししていきたいと考えます。
基金の効率的な活用についてお尋ねがありました。
財政の単年度主義の弊害是正に向けて、国家的課題に対して基金などを活用し、中長期的な視点を持って戦略的な財政運営を行うことが重要です。
これまで、基金事業については、行政事業レビューの枠組みの下、各府省自らがこの基金の執行状況や余剰資金の有無を毎年度自己点検し、その結果を公表することで不断の適正化に取り組んでいるところです。
こうした取組に加え、今般の経済対策では、多年度にわたって取り組む施策については成果を測定するためのKPIを設定し、PDCAの取組を推進してその進捗を評価することで基金の効果的かつ効率的な活用に努めてまいります。
持続可能な社会保障制度の構築についてお尋ねがありました。
人生百年時代を見据えて、子供から子育て世代、お年寄りまで、全ての方が安心できる全世代型社会保障の構築に向け、日本の未来を担う若者世代、子育て家庭にターゲットを置いて取組を進めてまいります。
全世代型社会保障構築会議を中心に、男女が希望どおりに働ける社会を目指して、女性の就労の制約となっている制度の見直しや勤労者皆保険の実現、仕事と子育ての両立支援、家庭介護の負担軽減などに取り組むとともに、社会保障制度を支える人を増やし、能力に応じて皆が支え合う持続的な社会保障制度を構築することにより、若者、子育て世帯の保険料負担増の抑制も目指してまいります。
オミクロン株への対応についてお尋ねがありました。
オミクロン株への対応については、未知のリスクには慎重の上にも慎重に対応すべきであると考え、水際対策において緊急避難的・予防的措置を講じているところです。
具体的には、外国人の入国について全世界を対象に停止するとともに、帰国者には、専門家の意見を踏まえつつ、滞在国・地域のリスクに応じて指定施設停留措置と定期検査を講じつつ、十四日間の待機と健康フォローアップを求めております。
また、オミクロン株の陽性が確認された場合には同乗者全員を濃厚接触者として取り扱い、保健所と連携して定期検査や施設待機等の措置を講じております。
検疫の待機施設の確保についても地方自治体と連携して最大限努力しており、本日時点で、先週土曜日から約三千室を追加的に確保し、約一万室を運用しているところです。
さらに、国内感染対策として、新規感染者数が落ち着いている現状において、全ての国内新規感染者についてオミクロン株の検査を行うことで早期探知に全力を尽くしてまいります。
引き続き、強い危機感を持って状況の把握に努めるとともに、機動的かつスピード感を持って必要な対応を行ってまいります。
医療提供体制の確保とワクチンの三回目の接種についてお尋ねがありました。
先般取りまとめた全体像に基づき、今後、感染力が二倍となった場合にも必要な方が確実に入院できる体制整備を進めてきました。
具体的には、都道府県が個別の病院名を明らかにして新たな病床の確保を計画的に行うほか、病床使用率を勘案した病床確保料の見直しを行うとともに、都道府県と医療機関が、書面で、緊急時に確実に入院を受け入れることを明確化しています。その上で、医療体制の稼働状況を徹底的に見える化いたします。
これらの取組によって、感染ピーク時の病床使用率を八〇%以上とし、この夏に比べて三割、一万人増の約三万七千人が入院できる体制を確保いたしました。
また、新型コロナワクチンの三回目の接種については、交互接種が可能であることを含め、ワクチンの有効性や安全性について国民に丁寧に説明するとともに、自治体と緊密に連携し、着実な実施に万全を期してまいります。
接種間隔の前倒しについては、感染防止に万全を期す観点から、できるだけ早期に、既存のワクチンのオミクロン株への効果等を見極めた上で、優先度に応じ、前倒しの範囲や方法についてお示ししたいと考えています。
雇用調整助成金の財源確保についてお尋ねがありました。
雇用調整助成金については、新型コロナの感染が拡大する中で、前例のない措置を講ずることにより、事業主の雇用の維持の取組を強力に支援してきたところです。
雇用調整助成金の特例措置等は来年三月末まで延長することとしており、そのために必要な財源確保及び当面の雇用保険財政の安定を図るために、今般の補正予算において、一般会計から労働保険特別会計雇用勘定に二兆円強の繰入れを行うこととしております。
こうした措置を踏まえつつ、令和四年度以降の雇用保険制度の安定的な財政運営の在り方を検討してまいります。
今後の防衛、安全保障の方針についてお尋ねがありました。
我が国を取り巻く安全保障環境はこれまで以上に急速に厳しさを増しています。また、御指摘の宇宙、サイバー、電磁波といった新たな領域について我が国として優位性を確保することは死活的に重要であり、現在も防衛大綱に基づき能力の強化を進めているところです。
さらに、経済安全保障、ミサイル技術の著しい向上、島嶼防衛、こうした課題に対し、国民の命と暮らしを守るために何が求められているのか、あらゆる選択肢を排除せず、現実的に検討し、スピード感を持って防衛力の抜本的な強化に努めてまいります。このため、新たな国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画、おおむね一年掛けて策定をいたします。
北京冬季オリンピック・パラリンピック競技大会についてお尋ねがありました。
北京冬季大会への各国の対応について各国がそれぞれ説明をしていますが、日本政府として、それぞれの国の説明について申し上げることは控えます。
北京冬季大会への日本政府の対応については、適切な時期に、オリンピック・パラリンピックの趣旨、精神、あるいは外交上の観点等、諸般の事情を総合的に勘案し、我が国の国益に照らして自ら判断していきたいと考えます。
また、ガソリンや軽油、灯油、重油の引下げのための施策についてお尋ねがありました。
政府としては、国民の皆さんが年末から春先までを見通せるように、灯油や重油をお使いの農業や漁業等に対する支援、また、自治体が地域の事情に応じた対策を行う際の支援等を強化してまいります。加えて、ガソリン、灯油の急激な値上がりに対する備えとして、年内から執行可能な激変緩和価値も、激変緩和措置も講じてまいります。これにより、国民の皆さんにスピーディーに、かつ混乱なく効果が行き渡るものであると考えております。
そして、電力の安定供給についてお尋ねがありました。
この冬の電力供給は、安定供給に必要な供給力は確保できるものの、厳しい見通しです。このため、発電事業者の燃料在庫を定期的に確認するとともに、公募を通じた追加の電源及び燃料の調達に取り組むなど、官民連携して対応を進めています。
気候変動問題や電力価格の安定化とのバランスを取りつつも、引き続き政府として責任を持って国民経済に必要な、不可欠な電力の安定供給の確保に努めてまいります。
再生可能エネルギーの適地の確保についてお尋ねがありました。
御指摘のとおり、再生可能エネルギーの推進に伴い、地域における災害や森林等の環境への影響といった懸念があることは承知をしております。二〇五〇年カーボンニュートラルの実現や二〇三〇年度の野心的な目標の実現に向けて、そうした懸念にもしっかり配慮した上で、地域と共生しながら再生可能エネルギーの導入、進めていくことが重要です。
政府としては、再生可能エネルギーの適地確保に向けて、事業者に森林法に基づく林地開発許可や環境影響評価法に基づく評価手続など関係法令の遵守徹底、地球温暖化対策推進法に基づく促進区域指定等を通じた案件形成、また再エネ海域利用法に基づく洋上風力の推進など、地域の御理解を図りながら各省庁連携で政策を総動員し、再生可能エネルギーの最大限導入に取り組んでまいります。
企業の賃上げについてお尋ねがありました。
人への分配は、コストでなく、未来への投資です。他方、コロナの影響を受け、製造業などはコロナ前の水準又はそれ以上に回復する一方、悪影響を続けている業種もあり、一律の議論は困難な状況にあります。
そこで、来年の春闘に向けた議論では、私から、業績がコロナ前の水準を回復した企業について、新しい資本主義の起動にふさわしい三%を超える賃上げを期待する、同時に、悪影響が続いている企業については、自社の支払能力を踏まえ、最大限賃上げを期待する、こうしたことを発言させていただき、今後、民間側の労使で議論していくことといたしました。
政府としては、民間企業の賃上げを支援するため、賃上げ税制の税額控除率を引き上げる、赤字でも賃上げをする中小企業に対する補助金の補助率を引き上げる、また、三年間で四千億円の施策パッケージを創設し、人への投資を促していく、下請Gメンの倍増、さらには、この中小企業が原材料費、労務費上昇分を適切に転嫁できるように働きかける、こうした環境整備に全力で取り組んでいきたいと思います。
そして最後に、雇用対策についてお尋ねがありました。
足下の雇用情勢、新型コロナの影響が残っていますが、今後は、新型コロナの影響により厳しい状況にある方々への支援に加えて、成長と分配の好循環を実現するための施策、取り組んでまいります。
今般の経済対策において、労働移動の円滑化やデジタルなど成長分野の人材育成の強力な推進に取り組むこととし、人への投資を積極化させるため、三年間で四千億円の、四千億円規模の施策パッケージ、新たに創設することといたしました。
非正規雇用の方を含め、学び直しや職業訓練を支援し、再就職や正社員化、ステップアップを強力に進めることで国民の生活を支え、雇用を守り抜いてまいります。
以上です。(拍手)