道下大樹の発言 (憲法審査会)
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○道下委員 立憲民主党の道下大樹です。
まず、我々立憲民主党は、予算委員会において新年度予算案が審議されているさなかに憲法審査会が頻繁に開催されることについては、厳に慎むべきというふうに申し上げてきましたし、皆様に協力を求めてまいりましたが、今回、このように開催されてしまいました。
これまでも特別な事情を考慮して開催された事例はありますが、憲法改正ありきでこの憲法審査会が開かれることがあってはならず、ましてや、コロナ禍で、国民の命、暮らし、経済に多大な影響が発生していることを考えますと、コロナ対策に取り組むことを重点的に含められている予算案審議に集中すべきだというふうに多くの国民が思い、求められていることは明白だと思います。
さて、これまでの憲法審査会におきまして、憲法改正の必要性について、一部の委員から幾つか意見が述べられました。しかし、私は、どれも憲法改正の必要性は乏しいと言わざるを得ないと考えています。
幾つか指摘をさせていただきたいと思います。
まず、緊急事態条項についてであります。
よく、今の日本国憲法では、このコロナ禍、感染急拡大して緊急事態となった場合、ロックダウン、強い行動規制はできない、憲法に緊急事態条項があればもっと適切な対応ができたという意見を述べられる方がおられます。でも、これは本当なのでしょうか。
日本国憲法には、第十三条や第二十二条のように、自由権が規定されています。では、憲法で自由権が保障されているからといって、全く制限できないかといえば、そうではありません。例えば、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第三十三条では、都道府県知事に対して、交通の制限又は遮断をすることができるとしています。また、原子力災害対策特別措置法第二十七条の六では、市町村長は、警戒区域を設定し、立入りの制限や禁止、退去を命ずることができるとしています。
私が申し上げたいのは、このように、憲法上の自由権を制限できる場合として、実質的な根拠として、一つ目、規制の目的が正しいかという規制目的の正当性、二つ目、規制が目的達成に役立っているかという目的、手段の関連性、三つ目、より制限的でないほかの選び得る手段がないという規制手段の必要性、四つ目、権利の重大性よりも得られる利益の方が大きいという規制の相当性、これらがある場合に制限できるとし、それを法律で定めております。
あの悪名高い緊急事態条項として、ワイマール憲法第四十八条二項が挙げられます。この緊急事態条項の濫用は、制定されてかなり早い段階から始まりました。それ自体は正しいと思われる対応であっても、議会などの丁寧な手続を飛ばした緊急対応の前例を作ること自体が非常に危険であることは、歴史が証明しています。緊急事態対応は、個別問題を分析し、それに応じた法的根拠を整えるのが法治国家の基本であると私は考えます。
各国のコロナ対応を見てみますと、立憲主義国では、感染症対策の法律や、それに基づく政省令、地方自治体や各州のルールに基づいて対応しています。憲法にある緊急事態条項を使って、議会を無視して政府の緊急政令で対応している国はほぼありません。そもそも、このコロナ禍にあっても、議会が開けないような状況にはなっていません。
憲法を改正して緊急事態条項を規定するよりも、感染症法等を改正してコロナ対応に当たるのが真っ当ではないでしょうか。そう考えますと、今回、岸田政権が感染症法等の改正案を出すのを断念したということは非常に残念でございます。
次に、教育の無償化についてであります。
皆様御承知のとおり、憲法二十六条において義務教育の無償化が定められております。国際人権規約のA規約十三条2(b)及び(c)により、中等教育及び高等教育を漸進的に無償とすることが国家の責務とされています。日本政府は長くこの条項を留保していましたが、民主党政権下の二〇一二年九月十一日に、留保を撤回する旨を国連事務総長に通告しました。
ちなみに、いわゆる高校無償化制度、正式名称は高等学校等就学支援金制度ですが、これは民主党政権下で二〇一〇年に開始した国の制度であり、先ほどの国際人権規約の留保を撤回する通告をする前に実施された制度でありますし、また、安倍政権下の二〇一九年から、三歳から五歳児の全ての子供と、ゼロ歳から二歳児は条件付で幼児教育を無償化する、いわゆる幼児教育、保育の無償化が始まったことを考えますと、憲法は改正しなくても、法律によって教育の無償化は実現することができます。
なお、憲法九十八条二項は、日本国が締結した条約及び確立された国際法規を誠実に遵守することを必要としています。我が国においては、高等教育の漸進的無償化は、国際人権規約の留保を撤回しましたので、既に国内法上遵守すべき政府の法的義務となっていると考えられます。
以上のことから、憲法を改正して教育環境の整備を国の責務とする必要はありませんし、憲法を改正の対象として議論する意義は見出し難いと考えます。
以上です。