稲田朋美の発言 (憲法審査会)

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○稲田委員 自由民主党の稲田朋美です。
 発言の機会を与えていただいたことに感謝いたします。
 国権の最高機関である国会で、国民の代表として国家の基本法である憲法改正の議論をすることは、国会議員としての最大の責務と言っても過言ではありません。この審査会においては、言論の府にふさわしく、前回の審査会で新藤幹事が述べられたように、本体議論を活発に行うべきです。
 さて、憲法五十六条一項の「出席」について、機能的に拡張解釈し、コロナ禍においても対応できるよう衆議院規則の改正等で措置すべきとの意見が述べられました。
 私も、国会がいついかなる状況下においても機能できるような備えをしておくことは重要であると考えます。しかし、緊急事態対応は、オンライン審議に限らず、基本的人権の制限や損失補償、さらには議員任期の延長など、幅広い問題を含みます。現下のコロナ対応のために例外的にオンライン審議について解釈で対応するとしても、本来的には、やはり解釈ではなく、憲法上、明文をもって規定するのが本筋です。
 コロナ禍においては、どの程度国民の権利を制限できるのか、また、営業活動を制限した場合の補償の程度について議論になりました。特措法改正では、感染症は国民がひとしく受ける制約であり、営業時間短縮要請や休業要請は特別の犠牲には当たらず、憲法二十九条三項の損失補償の対象とはならないと整理されました。
 一方、国と自治体がコロナの影響を受けた事業者を支援するために必要な措置を講ずる義務を明記し、時短要請に応じた飲食店に対しては協力金を支払うこととなりました。また、事業者が要請、指示に反した場合の過料は設けられましたが、個人の外出等に対する自粛は、要請できても命令はできず、罰則もありません。
 言うまでもなく、感染症蔓延のような国家的危機の際には、基本的人権である個人の自由も、国民の命を守るため一定の制約を行うことは必要ですし、医療機関への指示、命令なども検討する必要があります。
 憲法上、営業の自由を含む職業選択の自由の制約としては、公共の福祉が規定されているのみです。一般に、一定の害悪発生の危険の存在を前提に営業の自由を制約する場合、規制の程度、手段、方法は、その害悪発生を防止するための必要最小限のものにとどまることが要請されます。
 憲法に緊急事態条項がなく、法律による人権の制限を公共の福祉という抽象的な文言に頼ることは、立憲主義の観点からも望ましくありません。どのような場合に緊急事態として人権の制約が許されるかなど、その基準も含め、明確に憲法に規定すべきです。そもそも、緊急事態条項が憲法に盛り込まれていないことは、国民を守り抜く意思の欠如を示しているとも言えます。
 戦後、占領下での憲法改正に当たり、日本政府は緊急事態条項の創設を主張しました。衆議院の解散等の国会召集ができない場合で、特に緊急の必要があるときに、国会の事後承認を条件として、国会による法律、予算に代わる、政府による閣令の制定を可能とする規定を憲法に設けることを主張したのです。しかし、GHQに拒否されたため、妥協して、国会による対処を前提として、参議院の緊急集会のみを規定することとなりました。本来であれば、昭和二十七年の主権回復のときに憲法改正をして、緊急事態条項を定めるべきでありました。
 南海トラフ地震や首都直下型地震、さらには外国からのミサイル攻撃や大規模なテロにより、国家中枢が機能不全に陥ったり、選挙を実施することができないような甚大な被害を被ったりする事態もあります。さらに、コロナの今後の蔓延の程度、あるいは、将来、未知のウイルスの蔓延によっても同様の事態は起こり得ます。超法規的な措置によらず、憲法に基づいて緊急事態に対応するための体制を構築しておくことは喫緊の課題です。憲法に、オンライン審議を含め、緊急事態条項を明文で規定する必要があり、そのための議論を開始すべきだと考えます。
 以上です。

発言情報

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発言者: 稲田朋美

speaker_id: 17560

日付: 2022-02-17

院: 衆議院

会議名: 憲法審査会