玉木雄一郎の発言 (憲法審査会)

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○玉木委員 国民民主党代表の玉木雄一郎です。
 今週は定例日に憲法審査会が開催されたことをまず歓迎したいと思います。関係の皆さんの御尽力に心から敬意を表したいと思います。
 また、緊急事態条項を中心として、テーマを絞って議論することには大変意義があると考えます。これからも、言いっ放しではなくて、具体的な議論の成果を出せる運営を期待したいと思います。
 まず、改めて、国民民主党の考える緊急事態条項についての基本的考え方を述べたいと思います。それは、緊急事態条項自体が危ないのではなくて、まともな緊急事態条項がない中、曖昧なルールの下で、行政府による恣意的な権力行使によって憲法上の権利が制限され得る状態が危ないと考えます。
 一般的に流布する緊急事態条項のイメージは、行政権の簡易迅速な権限行使を可能とする、権限行使の容易化条項としての緊急事態条項です。しかし、私たち国民民主党の考える緊急事態条項は、むしろ、公共の福祉など漠たる規定を根拠として、行政府による権力の濫用や人権侵害の危険性が高まること、また、国全体が正気を失いがちになるという歴史の教訓に鑑み、これに対する立法や司法による統制を明示する、権限行使の統制条項としての緊急事態条項であります。
 ここで、緊急事態条項に関する国際的な比較を一つお示しをしたいと思います。
 これは、ケネス・マッケルウェイン東大教授の研究で示されたものでありますけれども、一七八九年から二〇一三年までに制定された世界の約九百に上る憲法のデータを分析したものでありますけれども、まず、二〇一三年時点で、九三・二%の憲法において緊急事態条項が規定をされております。今や緊急事態条項は、憲法における最も共通した項目の一つになっています。ちなみに、表現の自由は九五・五%の憲法に明記をされております。それに匹敵する比率で緊急事態条項は明記をされています。
 他方で、緊急時における人権保護規定の停止や緩和規定が憲法に盛り込まれている割合はそれよりも低くて六三・七%で、過大な権力を委任することには、特に第二次世界大戦以降、慎重になっている傾向も見られます。
 また、緊急事態が宣言できる状態については、一番多いのは外国からの武力攻撃で、これが六四%、次に内乱で四五・六%、次が災害で三九・七%なんですが、一九九〇年以降盛り込まれたこの緊急事態が宣言できる状態について、最も急ペースで規定率が上がっているのが自然災害です。
 その一方、緊急事態を宣言できる状況を法律で定めるとしている憲法は一〇%に満たないというのが実態です。これは、緊急事態を法律で定めると、政府の重大な権限行使を議会の単純過半数で決定できるため、法律に委任することに慎重な態度を取っているものと考えられます。
 私たち国民民主党は、こうした背景も踏まえつつ、そして行政府による権力濫用を防止する観点から、緊急事態は限定列挙すべきものだと考えます。具体的には、外国からの武力攻撃、内乱・テロ、大規模自然災害、感染症の大規模蔓延、この四つのカテゴリーを基本とすべきだと考えます。
 いずれにせよ、何を緊急事態とするのか、まずこの点について、憲法審査会で議論を深め、共通認識を形成したいと思います。
 次に、緊急事態が宣言されたときの効果についての国際比較についても、併せて紹介したいと思います。
 一番多いのは、二二・八%の憲法が規定している議会任期の延長と解散権の制限、これが一番多いです。次に規定率が高いのが、緊急事態宣言下の憲法改正発議を不可とする規定です。これが一二・五%。なお、法律と同等の効果を持つ政令について定めているのは七・四%にとどまっています。
 こうした点も踏まえて、我が党としては、前回も提案した議員任期の特例についての議論をまず急ぐべきだと考えます。任期満了時に正常な選挙ができないような事態に陥った場合に、任期の特例延長の規定を創設すべきだと思います。
 この点に関しては、先ほどから話の出ている憲法五十四条二項の参議院の緊急集会は、解散時だけでなく任期満了時にも内閣は開催を求めることができるのか、この解釈を本審査会でまず明らかにすべきことを提案したいと思います。
 次に、ヨーロッパにおける緊急事態と人権保障についても触れておきたいと思います。
 日本における緊急事態条項の議論については、どうしても日本特有の護憲、改憲論の磁場から離れて行うことが困難でありますけれども、一度、こうした構造から離れて議論してみることが必要だと思います。そのための素材として、欧州評議会に設けられたベニス委員会の見解を紹介したいと思います。
 ベニス委員会とは、欧州評議会の下に一九九〇年に置かれた憲法問題についての諮問機関です。加盟国に法的助言を行っており、日本もオブザーバー参加しています。
 このベニス委員会は、憲法に明確な緊急事態権限について定めることこそが、人権保障や民主主義、法の支配にとって有益だと主張しています。特に、コロナ禍を経て二〇二〇年六月に策定された報告書の中で、緊急事態と緊急事態権限に関する基本的な規定を憲法に盛り込むべきであり、その中に、いかなる権利が停止され、いかなる権利は逸脱から許されず、いかなる状態においても尊重されなければならないことを明確に示す規定を含むべきであるとしています。続く二〇二〇年十月の報告書でも、同様の趣旨が述べられています。
 私たち国民民主党は、ベニス委員会が指摘しているように、政府による緊急権の濫用を防止するためには、行使できる状況、効果、発動に関する規定を詳細かつ明確に憲法に規定すべきだと考えます。こここそ、憲法の規律性をしっかりと生かすべき分野だと思います。
 改めて申し上げたいのは、緊急事態条項自体が危ないのではなく、まともな緊急事態条項がない中、曖昧なルールの下で、行政府による恣意的な権力行使によって憲法上の権利が制限され得る状態が放置されていることこそ危ないと考えます。
 だからこそ、憲法の規範性を生かすことが重要であり、国民民主党が考える権限統制条項としての緊急事態条項を検討する際には、権限統制のツールとして、大きく二つのカテゴリーの統制が必要だと考えます。原則国会の事前承認を求めるなどの手続的統制、そして二つ目に、絶対に制限してはならない人権制限の限界を明示するなどの内容的な統制。この手続的統制、内容的統制の二つのカテゴリーで、中身をしっかりと議論していくことが必要だと思います。
 こうした緊急事態における統制の具体的内容については、現在、党内で議論しているところであり、まとまれば条文の形で是非お示ししたいと考えています。
 いずれにせよ、緊急事態条項については議論すべき点が多々ありますので、事の緊要性に鑑み、次回も緊急事態条項に絞った集中的な審議を求めたいと思います。そのためにも、改めて審査会の毎週開催を求め、私の発言を終えたいと思います。

発言情報

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発言者: 玉木雄一郎

speaker_id: 29596

日付: 2022-03-24

院: 衆議院

会議名: 憲法審査会