新垣邦男の発言 (憲法審査会)

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○新垣委員 会長、ありがとうございます。
 立憲民主党・無所属会派、社民党の新垣邦男です。
 大規模災害を理由とした緊急事態条項の創設や、議員任期の特例延長について意見を申し上げたいと思います。
 社民党は、現在の我が国の情勢において、緊急事態条項の創設に具体的な立法事実は存在しないと考えております。現行法では、災害対策基本法、災害援助法、大規模地震対策特措法、原子力災害特措法、警察法、自衛隊法等によって、既に自然災害を想定し、一定の要件で国への権力の集中と被災地の財産権等の制限などが認められており、災害関連の法制度は十分に整備されていると思います。
 二〇一五年に日弁連が岩手、宮城、福島各県内で実施した東日本大震災被災自治体首長からのヒアリングやアンケート結果では、原則として市町村に主導的な権限を与え、国は後方支援をしてほしいとの回答が九二%に達しており、被災市町村が国への権力集中を求めていないことが明らかになっております。また、憲法が災害対策の障害にならなかったという回答も九六%に達しており、被災市町村は災害を理由にした憲法改正の必要性を認めておりません。
 先週の本審査会で、関東大震災の際、当時の政府は明治憲法下で許された緊急勅令十数本を出して国難を乗り切ったとの御意見がございました。しかし、関東大震災では、大日本帝国憲法第八条に基づく緊急勅令に基づき、軍隊や権限を集中する戒厳令の一部が施行される中で、適用範囲が拡大され、多数の中国人や朝鮮人が虐殺された事実を忘れてはなりません。
 緊急事態条項がそもそも立憲主義を停止するものであって、濫用の危険性が極めて大きいことは、ドイツにおけるワイマール憲法の国家緊急権を活用したヒトラー独裁政権の樹立、フランスにおけるアルジェリア危機を名目とした緊急権発動に基づく人権侵害や出版規制による表現の自由の侵害を見れば明らかであります。
 それゆえ、フランス、ドイツ、イギリス、アメリカの四か国のうち、災害やテロを理由に憲法上の国家緊急権を定めているのはドイツだけで、他の三か国は法律で対処しています。コロナ対策でも、フランスやドイツは、憲法の緊急事態条項は危険だとして、法律で対応しております。
 次に、議員任期の特例延長に関する憲法改正論議について申し上げます。
 衆議院の任期満了後に大規模な自然災害などが発生した場合ですが、憲法学者の長谷部恭男東大名誉教授や土井真一京大教授は、憲法第五十四条二項を類推適用して、参議院の緊急集会は開催できると主張しております。その理由について、長谷部先生は、衆議院議員が存在しない場合で発生した緊急事態に対処するのが緊急集会の目的であるとし、土井先生は、衆議院が存在しない状況で緊急集会を認めなければ、内閣が緊急事態の法理に依拠するなどして単独で必要な措置を講じる事態を招きかねないなどと述べられております。
 また、飯島滋明名古屋学院大学教授は、憲法五十四条に定める衆議院の解散というのは限定的列挙ではなく例示的列挙であり、任期満了の場合でも参議院の緊急集会は開催できるとしております。飯島先生は、憲法に明記されたものしか認めないのであれば、衆議院の解散も憲法六十九条の場合にしか認められず、同七条三号は六十九条解散のための助言と承認にならざるを得ないとし、その上で、七条解散が認められるのであれば、参議院の緊急集会も限定的に解する必要はなく、合理的必要性があれば衆議院の解散の場合に限定されないはずであると主張しております。
 なお、参議院の緊急集会は開催できないという憲法学説もございますが、それは、衆議院の任期満了は期日が明らかであるため、当該期日までに必要な措置を講ずることが法律上可能だという主張です。公職選挙法第三十一条一項が衆議院の任期満了前の選挙を義務づけるものとなっている以上、憲法改正で四年任期の延長特例を可能にすることよりも、四年の任期内に確実に衆議院選挙が実施されるよう、公選法第三十一条を改正することを優先すべきだと考えます。
 そもそも、任期満了後の総選挙の事例も、戦後、一九七六年の三木内閣の一例しかありません。実際に起こっていない、また可能性が低い事例を想定して憲法改正という主張をするのではなく、今まさに国難な状況を生じているコロナへの対策や、頻発する大規模地震被害への対策にこそ政治は全力を注ぐべきであるということを主張して、意見とさせていただきます。

発言情報

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発言者: 新垣邦男

speaker_id: 12021

日付: 2022-03-24

院: 衆議院

会議名: 憲法審査会