新藤義孝の発言 (憲法審査会)

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○新藤委員 自由民主党の新藤義孝でございます。
 ただいまの法制局の論点説明は、日本国憲法の根本的性質を簡潔に指摘し、明確にしてくれたと思います。
 資料の二ページにありますように、我が国の憲法は諸外国に比べ文字数が少ない、すなわち、権力統制機能が弱く、その分、憲法附属法の役割が大きい、それがゆえに通常の国が憲法改正で行うことを法律の改正で行っている、だからこそ、憲法改正により必要な条項を整備し、規律密度を上げて権力統制機能を回復させるべき、これこそが日本国憲法の改正の意義だということだと思います。
 三ページのグラフを見ますと、この一八八九年の明治憲法、一九四六年の現行憲法、文字数はそれほど変わっておりません。ただ、その時期の諸外国の憲法も同様でございましたが、近年になるほど文字数が増えて、憲法の規定内容が豊富になっています。
 四ページのグラフでは、緊急事態条項を整備している憲法は、二〇一三年時点で九三・二%であります。一九九〇年以降に制定された外国の憲法で全て緊急事態条項が規定されている、こういう研究成果も発表されているところであります。
 日本国憲法は一九四六年の制定から時が止まっていると言われても仕方がないと私たちは認識すべきだと思います。憲法は、不磨の大典であってはならず、立憲主義に基づき権力を統制するとともに、時代や社会の変化に合わせてアップデートしていく必要があると私は考えています。日本国憲法の改正がいかに必要で重要であるか、この問題意識を原点に、憲法改正で盛り込むべき規定について、憲法審査会は更に議論を深めなければならないと考えます。
 本日は、緊急事態条項の残された重要論点について、私なりの意見を申し上げます。
 まず、先週も取り上げました議員任期の延長の問題でございますが、議員任期満了直前に緊急事態が発生した場合どうするのかという論点でございます。しかし、これに加えてもう一つ、衆議院の解散後に緊急事態が発生した場合にどうするのかという問題が残されています。
 このような場合に備えて日本国憲法は参議院の緊急集会の制度を用意していますが、現行憲法の参議院の緊急集会が規定しているのは、かなり限定された事態です。すなわち、解散から総選挙まで四十日、その後の特別会召集まで三十日、合計すれば最長でも二か月程度の臨時的対応を想定しているにすぎないわけであります。
 また、国会は衆議院と参議院の二院制であり、参議院の緊急集会は、その重大な例外規定です。長期間選挙が執行できず衆議院議員が不在となる場合にまで、参議院の緊急集会に国会機能を代替させてよいとはとても考えられないのではないか、このように思うわけであります。
 衆議院の解散により議員資格が失われた状態で、解散後に緊急事態が発生し、選挙が執行できなくなる事態となれば、衆議院議員は不在となり、新たな国会を構成することができなくなります。すなわち、国会機能が維持できないということになるわけです。このような場合に、解散前の衆議院議員に議員としての身分を復活させるか若しくは何らかの権限を与えることができないか、そうした議論も必要ではないでしょうか。この論点は、今後更に議論をしていきたいと考えています。
 そして、こうした議員の任期延長など、国会機能を維持する手だてを講じたとしても、国会が壊滅的被害を受ける最悪の事態が発生するおそれは依然として残ります。この究極のリスクに備えておくためには、国民の生命財産を守るため、内閣が暫定的に立法措置を行う緊急政令の制度についても議論をしておく必要が出てきます。
 緊急政令につきましては、これまでの審査会で、オンライン審議が実現すれば、緊急政令の必要性は低下するのではないかとの質問をいただきました。そのとおり、オンライン審議により国会機能を維持できるケースが増えれば、緊急政令を制定する頻度は少なくなるかもしれません。しかし、通信環境の壊滅的な被害などにより、オンライン審議さえも不可能となる事態がないとは言い切れません。どのような事態においても国家機能を維持するために、それには頻度ではなく可能性の問題として緊急政令の必要性に変わりはない、そのように考えているわけであります。
 加えて、この緊急政令の執行に必要な予算支出を可能とする緊急財政支出の仕組みは、セットで整備しておく必要があるのではないかと考えます。
 もう一つ、緊急事態条項の残された論点として、特別の人権制限が必要かという問題もあると思います。
 日本国憲法では、十二条や十三条の公共の福祉の規定によって必要な人権制限は可能と説く人もおりますが、いかなる場合にその制約が許されるのか、また、制約の限界はどこまでなのか、特に有事における制限について明確ではありません。緊急事態時には平時とは違う自由や財産の制限が必要な場合も考えられ、こうした有事の人権に関して憲法上の規定を置いておくことは、立憲主義の観点からも重要です。
 同時に、そうした緊急事態にあっても制限されてはならない人権を規定しておく、このことも重要ではないかと思います。
 ドイツ基本法の緊急事態条項においては、財産権や居住、移転の自由などの人権について、平時とは違う制限ができる規定になっています。
 他方、今、苦難を受けているウクライナにおいては、緊急事態条項の非常事態、戒厳の布告がなされています。ウクライナ憲法には、緊急事態期間中、人権に制限が加えられる場合であっても、市民権の保障、個人の尊厳の尊重、拷問の禁止、婚姻の自由、裁判を受ける権利など、制限されてはならない人権の規定が設けられています。
 我が国においても、緊急事態条項の創設に当たっては、平時と違う人権制限の規定とともに、緊急時においても制限してはならない人権、この規定を設けるべきか検討が必要ではないか、このように考えるわけであります。
 緊急事態条項に関する討議は、今回で三回目となりました。様々な御意見が出され、本日の論点説明を踏まえての集中討議により、議論はまたかなり深まるのではないかな、このように期待をしております。
 私は、今朝の幹事会において、来週も審査会を開催し、この間の議論を踏まえ、総括的な討議を行ってはどうかと提案をしております。引き続き、筆頭間で協議を行ってまいりますが、委員各位におきましては、緊急事態条項に関する論点整理が深まるよう積極的な討議を期待いたしまして、私の発言を終わります。

発言情報

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発言者: 新藤義孝

speaker_id: 16290

日付: 2022-03-31

院: 衆議院

会議名: 憲法審査会