玉木雄一郎の発言 (憲法審査会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。
今週も、こうして定例日に憲法審査会が開催されたことをまず歓迎したいと思います。
また、緊急事態条項を中心としてテーマを絞って議論することは大変有意義だと思いますし、具体的な議論の成果が出せる議論となるよう、私も貢献していきたいと思います。
まず、改めて、国民民主党の考える緊急事態条項についての基本的考え方を述べたいと思います。それは、緊急事態条項自体が危ないのではなく、まともな緊急事態条項がない中、曖昧なルールの下での行政による恣意的な権力行使で憲法上の権利が制限され得る状態こそが危ないということであります。
私たち国民民主党の考える緊急事態条項は、行政の簡易迅速な権力行使を可能とする権力行使の容易化条項としての緊急事態条項ではなく、むしろ、公共の福祉など漠たる規定を根拠として行政府による権力の濫用や人権侵害の危険性が高まること、特に、緊急事態においては国全体が正気を失いがちになるという歴史の教訓に鑑み、これに対する立法や司法による統制を明示する、権力行使の統制条項としての緊急事態条項が必要だという考えです。
前回紹介した、欧州評議会に置かれたベニス委員会の見解を改めて説明したいと思います。
ベニス委員会は、憲法に明確な緊急事態権限について定めることこそが、人権保障や民主主義、法の支配にとって有益だと主張しており、特に、コロナ禍を経て二〇二〇年六月に策定された報告書の中では、緊急事態と緊急事態権限に関する基本的な規定を憲法に盛り込むべきであり、その中に、いかなる権利が制限され得るのかを定めた条項、いわゆるデロゲーション条項といいます、これに加えて、いかなる権利は制限が許されず、どんな状態にあっても尊重されなければいけない権利、これをデロゲートできない権利といいます、これを明確にする条項を含むべきとしています。
私たち国民民主党は、このベニス委員会が指摘するように、政府による緊急権の濫用を防止するためには、行使できる状況、効果、発動に関する規定の本質的部分は明確に憲法に規定すべきだと考えます。
そこで、国民民主党が考える、権力の統制条項としての緊急事態条項についての全体像をお示ししたいと思います。
まず、権力統制のツールとして、大きく二つのカテゴリーを設けてはどうかと思います。一つは、国会の事前承認を求めるなどの手続的な統制、もう一つは、先ほど申し上げた、絶対に制限してはならない人権制限の限界を明示するなどの内容的な統制です。
最初に、緊急事態の宣言発令の要件と手続について述べたいと思います。
まず、行政府による権力濫用を防止する観点から、緊急事態の要件は極力限定列挙すべきだということは従来から申し上げています。具体的には、外国からの武力攻撃、内乱・テロ、大規模自然災害、そして感染症の大規模蔓延の四つのカテゴリーを原則として考えるべきだと思います。さらに、単にこれらの事態が客観的に発生するだけではなく、これらによって、通常の統治機能の運用によっては緊急事態の収拾が著しく困難であるときという要件を加重してはどうかと考えます。
宣言を発令する際の手続としては、原則国会の事前承認を求め、例外的に事後承認を認めることとしてはいかがでしょうか。この点は、自民党の二〇一二年の憲法改正草案にも明記されており、建設的な合意がつくれるはずだと思います。
次に、緊急事態が宣言されたときの効果における手続的統制と内容的統制について述べたいと思います。
手続的統制の第一として、国民民主党では、国会機能の維持を最重視しています。
具体的には、国会開会時の閉会の制限と閉会時の召集義務を課してはどうかと考えます。また、緊急事態宣言下での衆議院の解散制限の規定も検討しています。これは、緊急事態のときであっても、いや、緊急事態のときだからこそ、国会の立法機能や行政監視機能を可能な限り維持しようとする考えです。解釈で認められたオンライン出席についても、この際、明文で規定することも検討してはいかがでしょうか。
加えて、任期満了時に緊急事態が宣言された場合の議員任期の延長と選挙期日の特例に関する規定は不可欠だと思います。これは、前回申し上げたように最優先で議論するテーマだと思います。
さらに、ドイツにおけるミニ国会のような、両院合同委員会による国会機能の代替についても議論してはいかがでしょうか。
手続的統制の第二として、裁判所による統制も必要だと考えます。
具体的には、まず、緊急事態宣言の要件が果たして満たされているかどうかの要件充足性について、最高裁が勧告できるようにし、恣意的な宣言発令を抑制することを検討しています。また、緊急事態宣言発令中に取られた法令、命令、条例、規則等の合憲性について、最高裁が集中的に判断できる規定を設け、統治行為論で逃げられないようにすることで、最高裁が事実上の憲法裁判所として機能を発揮するようにしてはどうかと考えます。つまり、緊急事態においては、立法府に加えて司法府のチェックもしっかりと働くように設計することが大切だと考えます。
続いて、緊急事態宣言の効果に関する内容的統制について概要を述べたいと思います。
内容的統制の第一として、いついかなるときも国会機能を維持することが大前提でありますが、それでもなお、国会による法律の制定、予算議決を待ついとまがないときには、あらかじめ法律で定めるところにより、法律で定める政令や財政支出等を可能とする規定を創設すべきと考えます。
内容的統制の第二として、人権制限の限界を明記することが重要だと考えます。
具体的には、公共の福祉に基づく必要かつ合理的な限度での人権制限を前提とした上で、それでもなお踏み込んではならない絶対的禁止の部分について、一般的、個別的に規定すべきです。いわゆるデロゲートできない権利についての規定です。
まず、ドイツ憲法のように、各人権の本質的内容の絶対的制限禁止を規定するとともに、自由及び権利の制限は必要最小限度のものでなければならない旨も規定すべきだと考えます。その上で、判例や学説の多数の見解等を踏まえて、奴隷的拘束、思想・良心・信教の自由の内心部分への制約や、検閲、拷問、残虐な刑罰の絶対的禁止を規定することを検討しています。例えば、内心の自由の侵害は絶対にこれを禁ずるなどの明文の規定を設けてはいかがでしょうか。
最後に、スペインやフランスの憲法を参考に、緊急事態の発令中は憲法改正、発議、国民投票を制限する規定も設けるべきだと考えます。なぜなら、国の基本法である憲法は、落ち着いた環境の中で議論し、手続を進めるべきと考えるからです。
こうした全体像を視野に置きつつ、国民民主党としては、特に、緊急事態の定義と要件、そして議員任期の特例については議論をまず急ぐべきだと考えます。
なお、任期の特例を創設するに当たっては、何度も申し上げておりますが、憲法五十四条二項の参議院の緊急集会を、解散時だけでなく任期満了時にも内閣は開催を求めることができるのかどうか、これは有識者に出席を求め、その解釈を本審査会で確定することを提案したいと思います。
以上のような緊急事態における統制の具体的内容について、我が党内で今議論を深めております。いずれにせよ、まとまり次第、条文の形でお示しをしたいと思います。緊急事態条項については、議論すべき論点が多々ございますので、事の緊要性に鑑み、引き続き緊急事態条項に絞った集中的な審議を求めたいと思います。そのためにも、憲法審査会を毎週開催することを改めて求めたいと思います。
最後に、奥野幹事から、SNSにおけるフェイクニュースが民主主義に与える影響に関しての参考人の話がありましたけれども、私も参考人は呼ぶべきだと思います。
特に、二〇一六年の、以前この審査会で御紹介しましたけれども、ケンブリッジ・アナリティカ事件というのがありまして、もう今はこの会社はありませんけれども、トランプ対ヒラリーの大統領選挙にも大きな影響を与えたと言われるいろいろな操作が行われました。ここに関わった、当時ケンブリッジ・アナリティカで働いていたブリタニー・カイザー氏、彼女は今、各国の議会でこの実態を議会証言しています。ですから、実態をまず把握するためにも、ブリタニー・カイザー氏をこの審査会に、オンラインでも結構ですから、参考人で来ていただいて、発言を直接聞くことが適切な規制やルール作りには非常に役立つと思いますので、そのことを私からも提案して、終わりたいと思います。