北神圭朗の発言 (憲法審査会)

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○北神委員 有志の会の北神圭朗です。
 本日は、緊急事態条項の全体像について、我々の考え方をまとめてみました。
 これまでは、緊急事態に対応するために、我が国としては、参議院の緊急集会の規定により、国会の機能を維持し、緊急事態の宣言、そして権限集中などについては法律で対応してきたところであります。
 問題は、この対応で十分かどうかであります。
 まず、緊急集会につきましては、先ほども発言がありましたが、緊急事態において国会機能を維持する制度としては不十分だと考えます。衆議院の解散中、かつ二か月程度の極めて限定された場合にしか機能しない。また、憲法が、両議院をもって初めて国会が構成されることを規定しています。緊急事態が長引けば長引くほど、憲法の趣旨から遠ざかってしまいます。
 逆に、こうしたことから、緊急集会は、我々がここで議論をしている重大な国家緊急事態ではなく、やはり平時での対応を想定していると理解した方が適当だと思います。また、緊急事態条項を憲法上規定することは、これが濫用されるおそれがあるという批判もあります。
 しかしながら、国会議員の任期延長については、これは内閣の権限行使云々というよりは、国会の機能を確保することに主眼があります。すなわち、行政権の濫用につながるどころか、むしろ緊急時にもこれを監視できることを目指しているわけであります。
 もっと言えば、我々の案では、緊急事態が発生した際には、公職選挙法上の繰延べ投票、参議院の緊急集会という既存の制度を優先的に活用することを前提に、これでも対応できない場合のためにのみ任期延長に踏み切るべきだと提案しています。
 次に、緊急事態の範囲について、全国的な感染流行、大規模な自然災害、戦争、内乱などとすべきです。
 また、要件としては、国政選挙の実施が不可能な場合であって、国会の立法機能及び行政監視機能が長期にわたり維持できないおそれがあり、かつ、繰延べ投票、緊急集会で対応することが困難なときに限定する必要があると考えます。
 手続面では、緊急事態において、内閣の権力濫用を防止する観点を重視し、国会が決定する方が望ましいと考えます。
 この際、緊急事態の発生が、任期満了前の場合、任期満了後の場合、解散後の場合と、分けて論じる必要があります。なお、解散前という場合も想定できますが、よもや重大な緊急事態の際に解散をする総理はいないだろうと思われますので、解散の禁止については、こだわりませんが、基本的に不必要だと思います。
 具体的には、任期満了前に発生した場合には、厳格に、国会議員の三分の二の特別多数決による。任期満了後の場合は、参議院の三分の二の特別多数決とし、次の選挙により議員が選ばれるまでの間は職務執行を継続することとする。解散後の場合は、緊急集会を開き、その三分の二の特別多数決により決め、次の選挙により議員が選ばれるまでの間は職務執行を継続することとする。
 全ての事例について、任期延長の期間は、一年以内あるいは緊急事態が終了したと認める期間と、期限を切るべきです。
 また、議員の任期を議員自ら決めるというお手盛りの指摘もありますので、裁判所の一定の関与はあってもいいと考えます。
 他方、権限集中につきましては、主に立法府と行政府との間の権限配分の在り方を緊急時に限って改めるという議論です。
 具体的には、国会に与えられている法律制定の権限と予算の議決権について、緊急時には内閣が国会に代わって行使することにしてはどうかという提案がなされています。特に緊急政令については、現在は個別具体的な措置が個別法に定められているのみですが、より包括的、一般的な緊急政令規定を憲法に設けるべきとの議論もあります。人権制限、財政支出も、これを前提にした議論です。
 これまでのオンライン国会や国会議員の任期延長は国会機能の維持のためのものでしたが、これらの論点は、同じ緊急事態といっても、むしろ国会機能が維持できない事態を想定するものであり、おのずと議論の次元が異なってきます。こうしたことを踏まえると、権力濫用の指摘も、この論点については一定受け止める必要があり、やはり、権限集中、人権制限、財政支出については、もう少し検討を深める必要があるのではないかと考えます。
 その検討の仕方としましては、まずは、現行の緊急事態関連の法律を一通り洗い出すことを御提案申し上げます。その際、検討すべきは、本来想定されるべき緊急事態は現行の法律で網羅できているのかどうか。
 二つ目には、もし足りないということであれば、これを補うための手当ては法律でするのか、それとも憲法でするのか。
 私の問題意識は、そもそも、法律で対応する場合に求められるような個々の緊急事態の状況を、細部にわたって、前もってあらゆる緊急事態を本当に想定し得るのか。実際、我が国は、事が起きてから、その都度個別具体的な情勢に応じて法律で対応してきたからこそ、緊急政令も個別具体的なものに限定できたのであります。しかし、今後、必ずしもそのような法律の審議の余裕があるかどうか、保証の限りではありません。これは、法律論というよりは、むしろ危機管理の原則の問題であります。
 ということから、更に検討すべき事項として、三つ目には、既存の法律で想定されない事態が発生し、かつ国会が機能しない場合、内閣が事実上白紙委任を受ける状態を回避するためには、憲法上、包括的な権限と、これを制限する手続を規定すべきかどうか。
 四つ目には、あるいは、憲法に、包括的な権限ではなく、事態の緊急性に応じて段階的に相応の権限や手続を設けるべきかどうかが挙げられると考えます。
 いずれにせよ、私は決して議論を長引かせる意図はありませんが、ここはやはり、専門家の意見なども参考にした上で、丁寧に検討すべきだと考えます。
 根底にあるのは、この緊急事態条項というのは、ややもすれば相対立する二つの要請を均衡させる難しい作業だという認識です。
 一つは、危機管理の性質上、国民の生命、財産、権利を守るために、逆説的に権力を集中させなければならないという現実の要請。もう一つは、これまた逆説的でありますが、だからこそ、立憲主義の観点からこれを最大限制限しなければいけないという理念的な要請。この二つの要請、二つの逆説をてんびんにかけながら均衡点を探るのにはもう少し時間がかかると、これまでの議論を通して再認識するに至ったわけであります。
 したがって、今後の審議の順序としては、まずは、国会議員の任期延長並びにこれを発動する際の緊急事態の要件と手続について、憲法の専門家等の意見も聴取した上で、一応の結論を得るべきだと考えます。
 これをもって私の発言といたします。

発言情報

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発言者: 北神圭朗

speaker_id: 4662

日付: 2022-04-07

院: 衆議院

会議名: 憲法審査会