玉木雄一郎の発言 (憲法審査会)
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○玉木委員 会長、ありがとうございます。
国民民主党の玉木雄一郎です。
今週も定例日にこうして憲法審査会が開催されたことを改めて歓迎したいと思いますし、幹事の皆さんの御尽力に心から敬意を表したいと思います。
また、緊急事態条項を中心にテーマを絞った議論が進んでいることには大変意義があると思っております。引き続き、我々としても具体的な成果が出せる議論に貢献をしてまいりたいと思います。
前回、既に国民民主党としての緊急事態条項に関する全体像についてはお示しをしておりますので、今日は、重複するところもありますが、少しその中で絞ってお話をしたいと思います。
まず、緊急事態条項に関する中間整理として、また、緊急事態条項にまつわる誤解を解き、冷静な国民的議論を促すためにも、改めて、我が党国民民主党の考える緊急事態条項についての基本的な考え方を述べておきたいと思います。それは、緊急事態条項自体が危ないのではなく、まともな緊急事態条項がない中、曖昧なルールの下での行政府による恣意的な権力行使で憲法上の権利が制限され得る状態こそが危ないということであります。
これも繰り返しになりますけれども、私たち国民民主党が考える緊急事態条項は、行政府の簡易迅速な権力行使を可能とする権力行使の容易化条項としての緊急事態条項ではなく、むしろ、公共の福祉などの漠たる規定を根拠として行政府による権力の濫用や人権侵害の危険性が高まること、また、緊急事態においては国全体が正気を失いがちになるという歴史の教訓に鑑み、これに対する立法府や司法における統制を明示する、権力行使の統制条項としての緊急事態条項を導入すべきとの考えです。
また、本審査会で何度も紹介申し上げたベニス委員会では、憲法に明確な緊急事態権限について定めることこそが、人権保障や民主主義、法の支配にとって有益だと主張しています。その中に、いかなる権利が制限され得るのかを定めた条項、いわゆるデロゲーション条項に加え、いかなる権利は制限が許されず、どんな状態にあっても尊重されなければならない権利、デロゲートできない権利、逸脱できない権利とも言われます、これを明確に示す条項を含めるべきであるとされています。
そこで、私たち国民民主党は、政府による緊急権の濫用を防止するために、行使できる状況、効果、発動に関する規定の本質的部分は明確に憲法に規定すべきと考えます。これが基本的考えです。
そして、前回も、国民民主党の考える、権力統制条項としての緊急事態条項の全体像についてお示しをした際に、その権力統制のツールとして、国会の事前承認を求めるなどの手続的な統制と、絶対的に制限してはならない人権制限の限界を明示するなどの内容的統制の、大きく二つのカテゴリーをお示しをしました。
今日は、そのうち手続的統制に少し絞ってお話をしたいと思います。
これも繰り返しになりますが、国民民主党としては、権力、とりわけ行政府による権力の濫用を防止する観点から、いついかなるときでも国会の行政監視機能や立法機能を維持するということが非常に大事だと考えます。かかる観点から、特に任期満了時に緊急事態が宣言された場合の議員任期の延長と選挙期日の特例に関する規定の創設は極めて優先順位の高い検討項目だと考えており、本審査会でも速やかに議論し、結論を得るべきだと考えます。
加えて、本日強調したいのは、手続統制の第二としての裁判所による統制です。
具体的には、まず、緊急事態宣言の要件が満たされているかどうかの要件充足性について、最高裁が勧告できるようにし、恣意的な宣言発令を抑制するようにしてはどうかと考えています。また、緊急事態宣言発令中に取られた法令、命令、条例及び規則等の合憲性について、最高裁が集中的に判断できる規定を設けて、いわゆる統治行為論で逃げないようにすることで、最高裁が事実上の憲法裁判所として機能を発揮できるようにしてはどうかと考えています。
先ほど、議員任期の特例延長について議論を最優先で急ぐべきだと申し上げましたが、前回でしたか、他党からも御提案がありました、恣意的な任期の延長をどのように防ぐのかという論点は極めて重要だと思います。
この点に関して考え方を述べたいと思います。
他党からは、任期の特例延長を認めるに当たっては裁判所の関与を導入すべきとの意見もありました。先ほど北神委員からも同様の趣旨がありました。これは非常に一考に値すると考えます。
そのときの関与の在り方ですけれども、私たちの案では、そもそも根っこの緊急事態宣言の要件が満たされているかどうかの要件充足性そのものについて、最高裁が勧告できるようにして、恣意的な宣言発令そのものを抑制しようと設計しています。
その上で、我が党の案では、任期の特例延長を認める際には、各議院の出席議員の三分の二以上の多数でその任期の特例を定めることができるとしており、これは、多数を占める政権与党による濫用を防止するために、出席議員の三分の二以上の特別多数による議決を必要としたものであります。
なお、選挙期日については、解散中に緊急事態宣言が発令された場合であって、総選挙の適正な実施が困難なときは、参議院の緊急集会は、出席議員の三分の二以上の多数で、解散の日から四十日以内とされている選挙期日の特例規定を置くことを検討しています。
以上のような緊急事態における統制の具体的内容について、条文の形でお示しをしたいと思っております。少なくとも、前回そして今回申し上げたことを一枚ぐらいの紙でまとめた緊急事態条項の条文イメージ素案を、できれば審査会でお示しをしたいと思いますので、幹事会で御議論いただきたいと思います。
いずれにしても、緊急事態条項については、スピード感を持って結論を得る必要がある議員任期の特例延長に絞った集中的な審議を次回以降も続けることを求めたいと思います。
次に、国民投票法についても一言申し上げます。
特に重要だと考える新たな論点を三つ提示したいと思います。これは、私たちが旧国民民主党時代に提出した法案の中に既に条文の形で盛り込んでおります。
まず一つ目は、国民投票運動に関するネット広告規制の必要性であります。二つ目に、国民投票運動に対する外国人からの寄附規制であります。三つ目に、憲法改正の是非と政権の在り方についての選択との間に混乱が生じないよう、衆議院及び参議院の選挙と国民投票との重複を避けてはどうかという視点であります。
これらについては早急に結論を得たいと考えております。特に、SNSを活用した投票行動への操作や影響については、技術の進歩やビッグデータの利用によってかなり高度化しており、現状を踏まえた、机上の空論にはならない具体的な議論が必要だと思います。
その観点から、前回も提案をいたしました、二〇一六年のアメリカ大統領選挙において投票行動が操作されたとされる、いわゆるケンブリッジ・アナリティカ事件の当事者であるブリタニー・カイザー氏を当憲法審査会に呼んで直接話を聞くことを提案したいと思いますので、会長、是非お取り計らいをお願いしたいと思います。
最後に、SNSによるフェイクニュース等の影響に関して、国民民主党が重視するデジタル基本権について一言述べたいと思います。
SNSが民主主義に与える影響は無視できなくなっており、その観点から、国民民主党は、情報の自己決定権としてのデータ基本権の保障を憲法に明記し、デジタル時代に即応した人権保障のアップデートを提案しています。二〇二〇年十二月の憲法改正の論点に既にその点はまとめております。
その中でも、思想、良心の形成過程の自由の保障がとりわけ重要だと考えます。
現行憲法十九条の思想、良心の自由は、形成された思想、良心を保護する規定との理解が一般的でありましたが、しかし、プロファイリングに基づく個人の意思形成過程への働きかけによって、個人の内心の過程や認知傾向に過度な干渉が及ぶおそれがあることは、既に多くの有識者が指摘するようになっています。その結果、形成された結果としての思想、良心は当該個人のものかもしれませんが、そもそも、そのような思想、良心の形成過程自体が本人の自律的な選択や決定によるものとは言えないような事象が生じていることが大きな問題となりつつあります。
そこで、国民民主党は、このような内心の思想、良心の形成プロセス自体の自由あるいは自律性がゆがめられることがないようにすることも憲法に明記し、その保障を十分たらしめることが必要だと考えます。例えば、第十九条を、思想及び良心並びにその形成の自由は、これを侵してはならないことと、単なる思想、良心の自由ではなく、その形成の自由も保障することを明記することを提案しています。
いずれにしても、デジタル時代の到来、AI社会の進展によって、近代憲法が前提としていた自律した個人の尊厳という、近代立憲主義が目指した中核的価値それ自体が脅かされているとの認識を持って憲法論議を行う必要があると考えます。いわば、有権者の主体的な判断過程のゆがみや選挙時の不正に対する脅威といった、デモクラシーのプロセスへの懸念が高まっているとの認識が必要だと考えます。
こうした意識を持って、国民投票法の議論を始めとした憲法審査会の議論自体も新しい変化に対応したものにアップデートしていくことが必要だと考えます。
以上で表明を終わります。