奥野総一郎の発言 (憲法審査会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○奥野(総)委員 それでは、私の持ち時間で発言させていただきます。
平時から有事を想定してこうした問題を議論していくことは必要だと私も思います。しかし、議論の目的は、有事の際に国家の機能をいかにして止めないようにするかであって、憲法を変えることではありません。ウクライナ危機を奇貨として、どさくさ紛れで憲法改正を行うということでは、まともな議論にはなりません。強く抗議します。現行制度で何ができて何ができないか、まず事実関係を確認して、その上で議論を進めていく必要があると思います。
こうした観点に立って、私はいわゆる緊急事態に対する自由討議というものを受けてきましたけれども、議論を行うにつれ、様々な論点が浮かび上がっています。有識者を呼んで確認したいこともたくさんあり、総括というにはほど遠い状況であります。
しかし、現時点では、いわゆる緊急事態に関して、憲法を改正しなければならないというような明確な憲法事実があるとは思えません。
一点、ここで申し上げておきたいんですが、安倍元首相が山口等の講演の中で、いわゆる安倍改憲四項目について、多数決で押し切ってもいいと取られかねないような発言をしていると記事にありました。結論ありきの議論では、到底、我々は応じられません。この場の意味も、各会派の皆さん、ないと思うんですよ。
新藤筆頭に申し上げておきますけれども、場外で元首相という方がそういう不規則発言をされるのはやめていただきたい。少なくともここでの議論の正統性に疑義が生じますから、とんでもない発言だと思います。後ほど意見を求めたいと思います。
そういうことでありまして、憲法事実がないということと思えば、国民投票法の論点についてまずこれから議論をする必要があり、次回以降、国民投票法の課題について議論を集中的に行うことを提案したいと思います。
それから、これまでの議論、緊急事態についての議論を確認しておきますが、先週も衆議院法制局から説明があったように、憲法を頂点とする現行法制では、いわゆる緊急事態に関する制度はもう既に組み込まれているということだと思います。
まず国会を動かす、緊急事態でも国会を動かすことを基本とするということであれば、緊急政令、政令で予算や法令を定めることは不要、それから、人権の制約を新たに設けることも、私は日本国憲法の改正限界を超えると思いますので、できない、当然駄目だということだと思います。この点をまず最初に申し上げておきます。
日本の法制について、緊急事態対応は既に織り込まれていると申し上げましたけれども、武力攻撃、内乱・テロ、自然災害、感染症、それぞれ基本法制があって、緊急事態等の認定も行える仕組みができています。そのことも前回、法制局から説明がありました。
憲法五十四条の参議院の緊急集会も、制定経緯から見て、いわゆる緊急事態を想定した規定であります。
つまり、日本国憲法は、平時に包括的な立法を行っておき対応する、それから、緊急時には緊急集会の活用、もちろん衆議院があれば衆議院で平常の議会運営、国会機能を維持しながら予算や立法を措置する、こういう仕組みを取っているものであります。したがって、新たに日本国憲法に緊急事態に関する規定を設ける必要はありません。
岸田総理は、今年の二月の予算委員会で、私に対して、自民党の四項目のたたき台素案、先ほど安倍総理が四項目を進めるとおっしゃっていましたと申し上げましたけれども、その四項目について、これに基づいて憲法を改正していくべきだとまで言っているんですね。
では、その四項目というのはどういうものかというのは、もう少し詳しく見ると、緊急事態については、自民党憲法草案の方を見れば、政府が自ら緊急事態を認定し、緊急政令、法律によらず政令で国民の権利を制限し、義務を課すことができる、国会の議決なく予算も使えるようになるというふうに規定されています。
また、緊急事態の範囲も、武力攻撃、内乱、地震と例を挙げていますが、その他の法律で定めるということで、法律の中身によっては幾らでも広がるという仕組みになっています。非常に広いんですね。
ですから、ワイマール共和国、これを再三出しますが、ワイマール時代、緊急事態に財政難などありとあらゆる事項を含ませて、緊急事態として乱発していた。当時のヒトラー首相がこれを悪用して、選挙に介入をして政権を取り、圧倒的多数で全権委任法につながった。こういうことでありますから、こうした歴史を見ても、独裁的な権限を政府に付与する、こういう政令は認めるべきではありません。こうした強権的な緊急事態条項は、立憲主義に反するものであります。
先週の衆議院法制局の説明によっても、ドイツ、アメリカを始めとして九割以上の国で、憲法上、緊急政令の規定は設けられておらず、ということは、緊急時においても議会機能を維持して立法措置、予算措置を行うということが世界的なスタンダードだということであります。こういうことから見ても、重ねて言いますが、緊急政令はおかしい、到底認められません。
それから、先週、更に問題になったのは、基本的人権の制約です。
先ほど山田委員からもありましたが、諸外国を見ても、緊急事態の際に広範に人権の制約を認めている国はありません。
日本国憲法には公共の福祉に基づく制約があり、その範囲内で、先ほど述べたような個別法には一定の制約が盛り込まれています。これで十分でありまして、新たに人権を制約する規定を憲法上に設ける必要はありません。
これもまた自民党の日本国憲法改正草案、先ほど赤嶺委員もおっしゃっていましたけれども、中には、基本的人権に関する規定について、最大限尊重するということが書かれているんです。逆を言えば、広範に制限を認めているということになりますね。国際的にも例のない、人権を軽んずる案なんですよ。こういうものに基づいて議論しようというのは、そもそも立憲主義に反する、とんでもない話だと思います。憲法の基本理念である基本的人権の尊重を逸脱しておると言えると思います。憲法の改正限界を超えるもので、こんなものを憲法の中に規定するわけにはいきません。
それから、その上で、議会機能をどのように動かすかということです。日本国憲法が想定している緊急時の議会機能の動かし方でありますが、定足数、これは公明党さんもおっしゃっていますが、オンライン出席を活用すれば十分対応できるんじゃないでしょうか。そもそも、緊急時であっても、総議員の三分の二が出席できないような事態というのはなかなか想定され得ないと思いますし、万一の場合に備えてオンライン出席を活用すればいいと思います。
それから、任期の関係ですが、解散により又は任期満了まで選挙ができずに衆議院が存在しなくなった場合、これも究極の事態なんですが、さらに、長期にわたり選挙ができないということになると思いますけれども、これも、日本全土が戦乱に巻き込まれたり、致死性の強いウイルスが全国に蔓延する場合、究極の事態ですけれども、この場合には、まずは参議院の緊急集会を活用する。そして、選挙は繰延べ投票制度で延期をすることが基本だと思います。
しかし、緊急集会についてはいろいろな意見もあるんです。学説の有力説は、衆議院解散以外の場合でも招集できる。条文上は解散のときしかできないんですけれども、できると書かれています。任期満了の場合でも使えるという説が有力であります。ですから、この点については、有識者を呼んで、緊急集会の招集要件、権能についてしっかり確認しておくことは必要だというふうに思います。ですから、議論はまだまだ尽きていないということです。
それから、議員任期の延長についてですが、更に申し上げれば、海外の事例を見ても、アメリカを始め、半数程度は規定を設けていません。先週の説明にもありました。つまり、緊急時においても選挙が行われることを前提としていると考えられます。我が国においても、一九四二年、戦時中ですね、それから戦後すぐの一九四六年四月でも衆議院選挙は行われています。諸外国の例を見ても、安易に議員任期の延長を認めるべきではないと思います。
それから、三分の二で議会自らという話もありましたが、今、実際、三分の二を与党は持っているわけですよね。この状況だと何でもできてしまうということを考えれば、三分の二で議員の延長を認めるという要件は緩過ぎると思うんです。少なくとも、頭の体操として考えるにしても、第三者機関をかませて判定させなきゃいけないというふうに思います。
基本は、いついかなるときも国会を動かすことであり、きちんと民主的な統制が行われることであります。とにかく、改憲ありきで行くと話がゆがんでしまうので、丁寧な議論を行って、現行憲法に足らざるところがあるかどうかをまず考えて、冷静な議論を行っていく必要があると思います。多数決で押し切ろうなんというのはとんでもない話です。
最後に、国民投票法については、毎回申し上げていますけれども、制定以降十年以上たって、インターネット広告、グローバル化、SNSの普及など、事情変更も生じてきています。ウクライナの事例を見ても、世論に影響を与えるということを外国政府が画策することもできるということであります。ですから、まず、玉木さんもおっしゃっているようにブリタニー・カイザーさんを呼んでというのもいいでしょうし、こうしたSNSの有識者招致、それから、民放連、元に戻ればCM規制、民放連でのCM規制についての議論も求めます。
あと、運動資金の問題です。外国人の運動資金規制、寄附を行えない、運動資金を外国人が出せないようにする。それから、資金の透明化についても、国民投票法について論点整理をすべきであります。集中討議を求めてまいります。
このほか、衆参の選挙運動期間と国民運動期間の重複の回避でありますとか、投票日当日の国民投票運動の禁止などについても議論をする必要があり、これらについて、CM規制、SNSへの対応、資金の見える化、外国政府の運動資金寄附の禁止、それから今申し上げた等々について、我が党の法案、国民投票法の改正案というものがありますので、近日中に提出をします。これらをたたき台に、論点の整理をしっかりやっていくことを求めます。
毎回申し上げていますが、国民投票法について、附則四条に基づくきちんとした検討、結論が出ない限りは憲法改正の発議はできない。要するに、国民投票法の公平公正が確保できていないということでありますから、発議はできないということであります。
しっかり、次回以降、国民投票法について集中的に議論をしていくことを求めまして、私の発言といたします。
以上です。