新藤義孝の発言 (憲法審査会)
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○新藤委員 まず、今、奥野委員から、冒頭に我が党の安倍元総理の発言についての見解がございましたので、これは奥野さんの持ち時間の範囲で、私、お答えしたいと思います。もう既に過ぎていますが。
我が党を問わず、どなたであっても、国会議員がどこでどのような御発言をされても、それは自由だと思っています。そして、大切なことは、憲法審査会における議論は憲法審査会の中で行っている。ですから、憲法のこうした様々な議論は、審査会の中の討議、これが重要なのであって、いろいろな方々の発言が私ども審査会の運営に影響を与えることはない、このことは何度も申し上げておりますので、誤解のないように御理解いただきたいと思います。
そして、私の時間を始めさせていただきますが、まず、本日は四回目でございます。緊急事態条項に関する議論、私なりに整理をし、そして、各会派から述べられた意見の大勢も含めて、中間的な取りまとめとして論点の確認をしたいと思います。
今国会では、二月から二か月間にわたり、緊急事態をテーマとした議論を行ってまいりました。まずは、目の前の危機となっているコロナ感染症蔓延拡大事態への対応を踏まえつつ、感染症蔓延時にいかに国会機能を維持するか、この問題意識に基づきまして、緊急事態が発生した場合の憲法五十六条第一項の「出席」の概念について、この議論を行い、緊急事態時にリモート出席を可能とすることを意見の大勢として取りまとめた報告文を正副議長及び議運委員長に提出できたことは画期的であった、このように考えております。
そして、この議論を通じまして、緊急事態条項全般に関する様々な論点が浮かび上がってきたわけでございます。
対象とする事態の範囲、事態認定の手続、そしてその効果について、各委員より様々な意見が出されました。
これまでの議論を通じ、おおむね共通の理解が得られたのではないかと思われますのは、一つは、憲法を改正し、大規模自然災害事態、テロ・内乱事態、感染症蔓延事態、有事、安全保障事態、この四つを緊急事態の対象として明記してはどうかということだと思います。もう一つは、どのようなときにあっても国会機能を最大限維持することができるよう、国会議員の任期延長の規定は必須であり、このための憲法改正を行う必要があるということだと思います。
この二つにつきましては、更に議論すべき項目が残るものの、方向性としてはおおむね意見の大勢であったと私は考えております。
これに加え、緊急事態条項全般について出された論点について、私なりの整理をしておきたいと思います。
第一に、対象となる事態の範囲につきましては、四つの事態に加え、あらゆる事態への対応を考慮し、その他これらに匹敵する事態という総括的な規定又はその他法律で定める緊急の事態という法律委任の類型を用意しておくか、この点は今後の討議事項になると思います。
第二に、議員任期延長の問題につきましては、一部の委員から、公選法上の繰延べ投票や憲法上の参議院の緊急集会で対応すればよく、憲法改正は不要ではないかとの意見もありました。
しかし、繰延べ投票は、選挙が執行できない地域が広範に及ぶ場合は想定されておらず、肝腎の被災地域から選出される議員が不在となってしまい、繰延べ投票が終わらない限り比例区の当選者が確定しない、様々問題が残ってしまいます。また、参議院の緊急集会は、憲法の文言上、衆議院の解散の際の制度であること、解散から特別国会召集までの二か月間程度の期間を想定したものであり、そもそも国会は二院制の下で衆参両院の活動が原則となっていることなどを考えれば、緊急集会があるから議員任期の延長は不要という主張には無理があると考えざるを得ないわけであります。
第三に、任期延長に関連し、衆議院の解散で議員資格が失われた状態の後、緊急事態が発生し、選挙が執行できなくなるという問題があります。この場合は、任期延長では対応することはできません。解散前の衆議院議員に議員としての身分を復活させるか、若しくは何らかの権限を与えるかといった論点について、更に議論をしていきたいと考えております。
第四に、大きな論点となりますのが緊急政令でございます。
オンライン審議や議員任期の延長など、国会機能の維持を図るための措置を用意したとしても、それでも対応できなくなるような緊急事態はあり得ます。例えば、通信環境の途絶、国土の壊滅的被害により物理的に議員が集まれない状態や、国会を開くいとまがない状態を想定しておく必要はないでしょうか。そのような場合に備えて、内閣が一時的に国会の立法機能を代替する緊急政令の制度と、それを財政的に裏打ちする緊急財政支出の制度について、丁寧な議論が必要だと私は考えます。
そもそも、緊急政令につきましては、昭和二十一年の日本国憲法制定時に、時の日本政府から必要性が主張され、GHQによって拒否された経緯があります。その際、GHQは、緊急政令は濫用のおそれがあるから、緊急事態が発生したときは不文の法理である国家緊急権に基づいて対応すればよいと主張されたとされています。しかし、不文の法理であるからこそ、濫用されるおそれが出てくるとも考えられます。だからこそ、諸外国においても、その濫用を防止するために、憲法への取組、実定化する努力が続けられているのであります。
先週の法制局の論点説明において、実に九三・二%の憲法が緊急事態条項を規定しているという紹介がありましたが、この数字は各国の緊急事態への真摯な取組の表れであります。
日本国憲法に緊急事態条項を新設し、国会がどうしても開けないなどの限定した要件の下に、内閣に暫定的な立法権を与え、国会が事後にしっかりチェックする制度として、緊急政令を明文で憲法に規定することは、政府が超法規的に行動し、国民の権利侵害が発生するおそれのないよう措置していくことを意味するものであり、法治国家として当然のことではないでしょうか。今後、更なる議論を皆さんとしていきたいと考えます。
第五に、緊急事態におきましては、平時と違う、個人の自由や財産など、人権の制限が必要となる場合もあります。また、今まさに緊急事態下にあるウクライナの憲法のように、人権に制限が加えられる場合であっても、市民権の保障、個人の尊厳の尊重、拷問の禁止、裁判を受ける権利など、制限されてはならない人権の規定についても議論を加えておくべきと考えます。こうした人権保障の在り方について憲法上の規定を置いておくことは、立憲主義の観点からも重要です。
第六は、憲法上の緊急事態認定の手続について、その主体としては、内閣又は内閣総理大臣、あるいは国会が行うべきとの議論がありました。
一方で、法律上の緊急事態の認定主体は、有事法制や災害対策法制などを見ると、基本的に内閣か内閣総理大臣となっています。
諸外国の憲法では、政府の長が宣言し、議会が承認するという仕組みを取る国が五五%と、法制局から説明がありました。
緊急事態の認定は、行政権行使の主体として国民の生命財産に責任を負う内閣とするのがよいのか、あるいは迅速性を考慮して内閣総理大臣とするのがよいのか、更なる議論を続けたいと思います。いずれの場合におきましても、国会の関与は当然であり、事前又は事後承認の規定について検討を加えていきたいと考えています。
以上、本審査会における緊急事態条項のこれまでの議論について、私なりに中間整理し、論点の確認をさせていただきました。
この際、なぜ日本国憲法に緊急事態条項を定めるべきなのか、私たちが考えている基本的な意義を申し上げたいと思います。
国家の最大責務は、国民の生命と財産を守り、自由で幸せな社会生活を提供することです。国民意識の統合と領土の保全、主権の確立こそが国家成立の根本的要素であり、憲法は、立憲主義に基づき、権力の行使を統制するとともに、あるべき国の姿を示す国の基本法でもあります。
憲法は、いついかなるときにおいても、国民を守る存在でなければなりません。にもかかわらず、日本国憲法には、七十五年前の施行以来、緊急事態という国の根本概念が規定されておらず、緊急時においても平時の延長線上での運用を行わざるを得ません。そのために、法律レベルにおいては、緊急事態が発生するたびに、後追いでパッチワークのような特例法が作られ、問題が発生した箇所をその都度に塞ぐような対応がなされておるわけであります。
緊急事態が発生した際に、国はその責務と権限を明確にし、国民を守り抜くための最大機能を発揮させること、これこそが緊急事態条項を創設する基本的な意義と考えております。
今後の憲法審においては、緊急事態条項について議論を深めたように、憲法本体に関するほかのテーマにつきましても議論が必要であり、併せて国民投票をめぐる投票環境の向上やCM規制などについても議論したいと願っております。
私は、朝の幹事会で、来週の審査会を開催し、こうした問題についての討議を提案いたしました。この取扱いについては、筆頭間協議で詰めてまいります。
委員各位には、憲法審査会の更なる活発な運営に向け、引き続きの御理解と御協力をお願い申し上げ、私の発言といたします。
ありがとうございました。