玉木雄一郎の発言 (憲法審査会)
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○玉木委員 国民民主党の玉木雄一郎です。
まず、今週も定例日に憲法審査会がこうして開催されたことを歓迎したいと思います。また、一部にあった、憲法を議論することイコール戦争へまっしぐらといったようなステレオタイプの論調が冷静なものに変わりつつあることを、併せて歓迎したいと思います。
ただ、むしろ、一部の政治家やメディアの中に、例えば緊急事態条項の議論がコロナの感染拡大やウクライナ危機への便乗であるとの世論をあおるような言説があることは遺憾であります。多少の意見の違いがあっても、本憲法審査会の議論は便乗と批判されるようなものではなく、社会や世界の変化に対応した極めて建設的で冷静な議論が行われていることは、当審査会の名誉のためにも付言しておきたいと思います。
その意味でも、冒頭、何度も繰り返して恐縮でありますけれども、国民民主党の考える緊急事態条項についての基本的考え方を述べておきたいと思います。
それは、緊急事態条項自体が危ないのではなく、まともな緊急事態条項がない中で、曖昧なルールの下で行政による恣意的な権力行使が行われ、憲法上の権利が制限され得る状態こそが危ないということを改めて申し上げたいと思います。
また、これも何度も申し上げて恐縮ですが、私たち国民民主党が考える緊急事態条項は、権力行使の容易化条項としての緊急事態条項ではなく、むしろ、緊急事態において国全体が正気を失いがちになり、行政府による権力の濫用や人権侵害の危険性が高まるという歴史の教訓に鑑み、これに対する立法や司法による統制を明示する、権力行使の統制条項としての緊急事態条項であります。
特に、任期満了時に緊急事態が宣言された場合の議員任期の延長と選挙期日の特例に関する規定の創設については、やはりスピード感を持って結論を得る必要があると考えます。今後、議員任期の特例延長に絞った集中的な審議を改めて求めておきたいと思います。
さて、本日は、前回も言及した国民投票法について述べたいと思います。
まず、投票立会人の選任要件の緩和など、公選法改正に伴う投票環境の整備については、速やかに改正を行うべきと考えます。
その上で、旧国民民主党時代の二〇一九年五月に提出をした国民投票法改正案に盛り込んだ以下の三つのポイントについても議論をして、早急に結論を得たいと考えます。
まず一つに、国民投票運動に関するネット広告規制の必要性です。二つ目に、国民投票運動に対する外国人からの寄附規制。三つ目に、憲法改正の是非と政権の在り方についての選択との間に混乱が生じないよう、衆議院及び参議院選挙と国民投票との重複を避ける規定の創設についてであります。
このうち、今日は、SNSの活用による投票行動への影響について、技術の進歩やビッグデータの利用が一層高度化しておることを考え、ネット広告規制について特に申し述べたいと思います。
一昨年の五月二十八日の本審査会でも触れましたけれども、改めてケンブリッジ・アナリティカ事件について紹介しておきたいと思います。
二〇一八年三月、ある報道が世界に衝撃を与えました。それは、フェイスブック上で収集された約八千七百万人分とも言われる個人情報が選挙コンサルタント会社であるケンブリッジ・アナリティカ社に不正に横流しされ、その情報が大統領候補であったトランプ陣営に渡って、大統領選挙の政治広告に利用されたと報道が行われました。
その内容が衝撃的だったのは、フェイスブック上からユーザーの政治的な信条や心理的な傾向が五千もの属性に基づいて細かく類型化、いわゆるプロファイリングされ、その中から、まだ意思の固まっていない、意見を変えられそうな人を抽出し、その有権者の感情につけ込むお勧め記事を効果的に打ち込んだとされています。例えば、トランプ支持者で、ネットの情報に流されやすい性格の人などと分類された者に集中的にフェイクニュースが投下され、個人の投票行動が操作されたと言われています。
SNS上の「いいね」や、どんな写真や動画あるいは記事を何分何十秒見たかという膨大なデータから、個人の性格などをかなりの精度で予測できるとされています。例えば、フェイスブックで、何に「いいね」を押したかを収集、分析しただけで、そのユーザーが白人であるか黒人であるかを九五%の確率で、男性か女性であるかを九三%の確率で、民主党支持者であるか共和党支持者であるかを八五%の確率で、キリスト教信者であるかイスラム教信者であるかを八二%の確率で、正しく分類できるそうです。これは、山本龍彦先生の著書「AIと憲法」の中でも紹介されています。
そして、こうしたデータ分析により個別具体化されたマイクロターゲティング広告の提供によって、個人の投票行動が操作され得る状態に置かれています。
このケンブリッジ・アナリティカ社は、アメリカの大統領選挙だけではなく、二〇一六年のいわゆるブレグジット、英国のEU離脱にも関与したと言われており、こうした事実は、大量の個人データとAIの活用が国家の命運を左右する投票イベントの結果に影響を与えることを示唆しています。だからこそ、憲法の要求する選挙の公正性を担保するための適切な規制が必要で、それは、最高法規である憲法の改正手続である国民投票法にこそ不可欠だと考えます。
このような問題意識から、私たちは、二〇一九年に、インターネット広告の規制や、いわゆるフェイクニュースの流布を禁じる努力義務を利用者に課した国民投票法の改正案を提出したところであります。
なお、私たち国民民主党は、情報の自己決定権としてのデータ基本権の保障を憲法上に明記し、デジタル時代に即した人権保障のアップデートを提案しておりますが、これは、先ほど申し上げたように、個人データの類型化により個別最適化された政治広告によって、思想、良心の形成過程自体に影響を与えることが現実に可能になっているからであります。
そこで、私たち国民民主党は、結果として形成された内心の思想、良心の自由のみならず、その形成プロセス自体の自由や自律性がゆがめられることのないよう、第十九条に、「思想及び良心並びにその形成の自由は、これを侵してはならない」と、「並びにその形成」を加える改正案を提案しています。
いずれにしても、デジタル時代の到来、AI社会の進展によって、近代憲法が前提としてきた自律した個人の尊厳という近代立憲主義の中核価値自体が揺らぎ、有権者の主体的な判断や選挙の公正性といった民主主義のプロセスへの脅威が高まっているとの認識を持って議論を進めることが必要だと考えます。
つまり、民意が操作され、民主主義そのものがハックされる可能性が出てきているということであります。しかも、ここに外国人による国民投票運動に対する寄附規制が入っていない場合には、こうした活動に対して外国勢力による影響を多大に受けてしまう、つまり、外国勢力によってある国の民主主義がハックされ得る可能性も出ていることに注視しなければなりません。
そうした観点から、私たちの提案した国民投票法改正案には外国人寄附規制も導入しておりますので、併せて議論を深める必要があると考えます。
最後に、改めて、二〇一六年のアメリカ大統領選挙において投票行動を操作したとされるケンブリッジ・アナリティカ事件の当事者であるブリタニー・カイザー氏を当憲法審査会に呼んで話を聞くことを提案したいと思いますので、森会長の取り計らいをお願いしたいと思います。
以上です。