山下貴司の発言 (憲法審査会)

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○山下委員 自由民主党の山下貴司でございます。
 ウクライナへの侵略など安全保障環境の深刻化により、外国による侵略から国民の命や国土をいかに守るかという自衛権の在り方が、現実の問題として国民の間に広く共有されています。私は、このようなときこそ国会が自衛権の在り方を議論すべきだと思います。それは、九条については憲法学も指針を示せずにいるからでもあります。
 一例を挙げると、先日、本審査会にも参考人としておいでになった高橋和之東大名誉教授は、三年前に出された、憲法学の最高権威、芦部信喜「憲法」の最新第七版の端書きで、憲法九条について衝撃の告白をしておられます。芦部先生が最晩年に、九条を法的拘束力のある規範ではなく、むしろ政治的マニフェストと考える説を検討すべきかもしれないと述べたことを最近知ったというものです。
 具体的には、芦部先生が九五年の講演で、九条を法的に拘束する規範だと考えると、憲法を改正するか自衛隊を解消する方向で考えるかしない限り、憲法の規範との矛盾を解くことはできません、必要最小限の自衛力も当分の間暫定的に認めるという立場を取るためには、政治的マニフェストの意義を再検討しなければならないと述べたことです。
 マニフェストとは、御存じのように、従来の政党にも見られた必ずしも守られない公約であり、九条に法的拘束力がなければ、法的には違憲、合憲の問題は起きません。つまり、芦部教授は、自衛隊が解消できない以上、九条を法的拘束力のないものと解釈して、自衛隊の憲法適合性問題を棚上げしようとしたということであります。
 高橋名誉教授も、先ほどの「憲法」の端書きで、芦部先生の時代の憲法学は圧倒的多数が自衛隊違憲論を唱えていた、しかし、今では七割以上の国民が自衛隊の存在を支持すると答えるようになっている、こうした現実を前にして、憲法学は自衛隊の憲法適合性問題を棚上げした、立憲主義を守れという呼びかけは、憲法と現実の乖離を説明し指針を与える理論なくしては、うつろにしか響かない、九条の補訂について最後まで悩んだと、この本で告白されています。
 このように、憲法学の権威ですら九条について指針を示さない中、国会こそ責務を果たすべきであります。
 我々自民党は、自衛隊の解消を考えない以上、立憲主義の下で憲法九条の法的拘束力を肯定するには、芦部先生が示した第一の選択肢、つまり、九条を法的に拘束する規範だと考え、憲法を改正するという選択肢を取り、立憲主義の下で自衛権を考えたいのであります。
 これは、最高裁の判断にも沿うものです。最高裁砂川事件判決も、憲法九条は我が国が主権国として有する固有の自衛権を何ら否定していない、我が国が自国の平和と安全とを維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置を取り得ることは、国家固有の権能の行使であって、憲法は何らこれを禁止するものではないとしています。
 我が党の九条イメージ、たたき台素案は、この最高裁の判断に沿って、九条一項、二項を維持した上で、必要な自衛の措置とそのための実力組織として自衛隊の保持を憲法上明記し、あわせて、シビリアンコントロールのために、総理大臣の指揮監督権と国会の承認その他の統制を憲法上明記したものであります。
 このように、九条一項、二項を維持した上で、追加的に自衛のための実力組織を憲法に明記する案は、自民党が初めてではありません。「憲法九条私ならこう変える」との論考を二〇一三年十月の文芸春秋に公表したのは、先日まで立憲民主党代表であった枝野幸男議員です。その中で、現行憲法には手を加えず、これに続けて新たな規定を追加するのが形式としては最も適切だと考えますとして、詳細な九条の二、九条の三追加案を明示し、あくまで私見としながらも、従来の民主党の方針とそごはありませんと述べ、党内議論を始め、これから真に国益につながる憲法論議を深めていきたいと思いますと力強く結んでいます。
 確かに、奥野野党筆頭幹事も、二〇一二年の朝日新聞と東大のアンケートに、憲法を改正するか解釈変更して集団的自衛権を行使できるようにすべきだという意見に賛成と答えています。どのような見解か、次回以降、詳細を伺いたいところです。
 憲法学が指針を示せず、野党にも憲法九条について憲法論議を深めるべきとの意見が事実としてある中、この憲法審査会において、九条についての論議を深めることを強く求めて、私の発言といたします。

発言情報

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発言者: 山下貴司

speaker_id: 606

日付: 2022-05-12

院: 衆議院

会議名: 憲法審査会