小澤吉徳の発言 (法務委員会)
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○小澤参考人 私は、日本司法書士会連合会会長の小澤吉徳と申します。
本日は、参考人としてこのような機会を与えていただいて、心より感謝申し上げます。
裁判のIT化に関しましては、平成三十年の七月から公益社団法人商事法務研究会で行われました民事裁判手続等IT化研究会にオブザーバーとして参加をさせていただき、研究会で報告書がまとめられた後は、法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会の委員として審議に関わってまいりました。
司法書士は、裁判書類若しくは電磁記録等を作成することによって、本人訴訟をする当事者の支援をするとともに、簡易裁判所においては、代理人として弁護士さんと同様の業務をすることもございます。これらの方々を念頭に置いて、民事裁判手続等のIT化の目指すべき方向性は、当事者に使いやすく、当事者に利便性がある制度であるという視点から意見を述べてまいりました。
以上を踏まえまして、本日は、御審議いただく法案につきまして、主として本人訴訟のサポートの重要性について意見を述べさせていただきたいと存じます。
法案では、インターネットを用いてする申立て等は、国や地方自治体が当事者となる場合を除きますと、委任を受けた訴訟代理人が申立てをする際には、電子情報処理組織を使用する方法により申立て等をしなければならないということとされております。
近年における情報通信技術の進展等の社会経済情勢の変化への対応を図るためには、もちろん申立て等をするのも全てがインターネットを用いることが望ましいことになるのですが、パソコンやスマホが普及し、日常的にインターネットにアクセスすることができる者が増えたからといっても、まだまだインターネット機器の操作が難しいと感じる方も少なからずいらっしゃいますし、物理的にインターネット環境を利用することができない状況で生活をする方もいないわけではございません。
そこで、国民の司法アクセスを後退させないという観点から、インターネットを用いてする申立て等を義務とするのは司法書士、弁護士などの士業者のみとし、当事者については、電子情報処理組織を使用する方法によりすることができる者は、申立て等を電子情報処理組織を使用する方法によりするものとする旨の規律を最高裁判所規則に設けるものとするとの注意書きを付すことによって、義務化の対象でない方々においても、できる人は積極的にインターネットを利用するものとするという訓示規定を設けることが提案されております。
裁判手続全体を俯瞰してみますと、電磁的記録を活用するためには、訴訟記録を全て電子化することが肝となると考えております。そのため、書面で申立て等をされる当事者の訴訟記録については、裁判所の負担で電子化することとされているところです。
しかしながら、裁判所の負担が過度に増加してしまいますと、円滑な裁判手続の支障となるおそれが生じます。ですので、義務化の対象とならない方々にインターネットを用いた申立て等をしていただくための方策が最も重要な事項になると考えております。
他方で、郵送費用削減という経済的利益や郵送手続が不要となるという手間の削減という大きな利益があるものと考えております。
このように申しますと、それほど便利になるのであれば、特段の手当てをせずとも、当事者が自発的に利用するのではないかという御疑問もあろうかと思います。しかしながら、ほとんどの国民にとっては、裁判は一生のうちに数回経験するかどうかといった手続でございまして、そうした数少ない手続に直面する場合では、わざわざインターネットを用いた操作方法を学ぶよりは、慣れ親しんだ書面で出してしまいたいと考える方が多いのが現状であるというふうに思っています。
具体的な数値で御説明をさせていただきたいと思います。配付資料を御覧いただければと存じます。
昨年公表されました令和二年度の司法統計によりますと、地方裁判所全事件の第一審通常訴訟既済事件の総数は十二万二千七百四十九件であり、このうち、原告、被告双方に弁護士さんがついたものが五万四千六百二十五件、原告のみに弁護士さんがついたものが五万四千七百九十六件、被告のみに弁護士さんがついたものが三千四百三十九件となっております。
これらから、双方本人訴訟であったものは九千八百八十九件となり、双方若しくは原告、被告の一方が本人訴訟であった率は五五・五%となっております。地方裁判所においても、半数以上が、少なくとも一方当事者が本人訴訟であることが分かります。
また、簡易裁判所になりますと、同じく令和二年度の司法統計におきましては、第一審通常既済事件数の総数は二十九万七千百四十二件でありまして、このうち、原告、被告双方に弁護士、司法書士がついたものが一万九千七百七十一件、原告のみに弁護士、司法書士がついたものが三万六千百四十二件、被告のみに弁護士、司法書士がついたものが二万九百二十一件となっております。
これらから、双方本人訴訟であったものは二十二万三百八件となり、双方若しくは原告、被告の一方が本人訴訟であった率は九三・三五%と、簡易裁判所では、実に九割以上が、少なくとも一方当事者が本人訴訟ということになっております。
御参考までに、登記における本人申請率及び本人のオンライン申請率としましては、令和三年三月三十日の内閣府規制改革推進会議第九回デジタルガバメントワーキング・グループ資料によりますと、不動産登記においては約一〇%であり、このうちオンライン申請はほぼ見られず、商業・法人登記においては、会社設立の本人申請率が約二五%であり、このうちのオンライン申請率は約六・五%。役員変更登記の本人申請率が約二〇%であり、このうちオンライン申請率が〇・七%と法務省から回答がされております。この数値は、私たち司法書士の現場の肌感覚と一致するものでもあります。
このようにシステム稼働後十五年以上が経過した登記制度においても、本人が積極的にオンライン申請を利用しているとは言い難い現状がございます。
登記と比べて本人訴訟率の高い裁判についてはなおさら、本人に利用していただくためには、システムの構築の際、当事者が使いやすいユーザーインターフェースとすることはもちろんですが、ほかにも、個々人のインターネット環境の整備の拡充、電子証明書の普及など、様々な方策を一気呵成に進める必要があると考えております。
これらの方策のうち、喫緊の対応としましては、本人訴訟による申立て等についても、司法書士、弁護士さんなどの士業者を活用することが考えられるのではないかというふうに思っています。
委任を受けた、訴訟代理人となる司法書士、弁護士については、インターネットを用いてする申立て等をすることが義務となることですから、当然インターネットを用いて申立てをする環境は整っております。
現に、登記分野の申請等件数のオンライン申請利用率は、令和三年九月二十四日付のオンライン利用率引上げに関する基本計画によりますと、令和元年度は約七九・五%となりますが、これらの申請の大多数は、司法書士や土地家屋調査士等の士業者を活用した成果によるものと理解をしております。
このようにオンライン申請に熟練した司法書士などの士業者を活用し、代理業務としての委任を望まない当事者については、司法書士などの士業者が書類作成業務として委任を受けることで、インターネットを用いてする申立て等の利用件数を増加させることが可能となります。こういった方策こそが、裁判IT化に関する新制度を成功させるための重要なポイントとなるのだろうと考えております。
日本司法書士会連合会として検討を進めております本人訴訟のサポートの体制について御説明させていただきます。
すなわち、IT環境の不十分な方、操作に不安のある方をサポートするために、全国の司法書士会に設置されている百五十七か所の総合相談センターのインターネット環境や電子化のための機器を充実させるための助成を計画するとともに、既に一部の総合相談センターでは、ネット予約やウェブ面談相談の導入など、IT化の対応も実施をさせていただいているところでございます。また、総合相談センターでは、業務に付随する相談として、裁判IT化に関する相談も対応していただくように全国の司法書士会に指示しているところでございます。
さらに、全国四十五の司法書士会においては、最大六十五インチの大型タブレットを設置済みでありまして、これらの複数のシステムによるウェブ会議機能を備えております。
法案の審議の際に、本人訴訟の当事者にいかにインターネットを用いてする申立て等を利用していただくかという観点からの方策を検討されると思いますが、是非とも士業者の活用について考慮していただくよう希望する次第であります。
また、本人訴訟の当事者がIT化による利便性を享受する方策として、日本司法書士会連合会といたしましては、法制審議会部会において、とりわけ本人訴訟の多い簡易裁判所においては、弁論準備手続だけでなく、口頭弁論においても、電話会議による方法が可能とするような意見も述べさせていただいているところではあります。
時間でございますので、本日は、この発言についてはこの程度とさせていただきますが、この法案がいち早く成立すること、そしてそれが国民の裁判を受ける権利の保障となり、多くの市民、国民の皆様がメリットが享受できるような、そういったことに、微力ではございますが尽力をさせていただきたいというふうに思っています。
本日はどうもありがとうございました。(拍手)