守島正の発言 (本会議)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○守島正君 日本維新の会、守島です。
 私は、会派を代表して、政府提出の刑法等の一部を改正する法律案及び刑法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整理等に関する法律案に対して賛成、立憲民主党提出の法律案に反対の立場から討論いたします。(拍手)
 今回の大きな改正点の一つ目である、犯罪者の処遇を一層充実させ、立ち直りを後押しするための諸制度の導入に関して、まず、懲役と禁錮を廃止し、新たに拘禁刑を創設することについては、懲役と禁錮という二つの刑が創設された明治時代と現在では、刑罰に関する社会的な認識や期待される効果が大きく異なっております。昔は懲らしめとしての要素が強かったものが、今では再犯防止や更生といった役割が強く求められるようになっています。
 改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行う拘禁刑の創設により、個々の受刑者の心身の状態その他の特性に応じた更生プログラムが実施できるようになることに加え、刑務作業以外の様々な処遇の選択肢を増やすことは、近年の高齢受刑者が増加しているという刑務所の実態に合致したものであると考えております。
 また、十分な教育を受けることがなかった受刑者に、刑務作業だけを行わせるのではなく、刑務所内で出所後の社会生活や就労に必要な基礎的学力を身につける教育を受けさせることが可能となります。
 加えて、今回の改正案では、執行猶予制度の拡充や、刑事施設内や社会内処遇の充実化等を図ることも規定されており、検挙者に占める再犯者の割合、いわゆる再犯者率の高さが長年の懸案となっていることを鑑み、今回の刑法改正がこうした課題の解決に向けた糸口になることを期待いたします。
 続いて、二つ目の大きな改正点は、悪質な誹謗中傷行為を抑止するために、侮辱罪の法定刑を引き上げることです。
 近年、インターネット上の誹謗中傷が横行し、その被害者が回復できないほどの精神的なダメージを負うことで自殺にまで追い込まれるという悲劇も生じており、ひいては被害者の家族や関係者まで心ない誹謗中傷の標的にされるケースが多発する等、大きな社会問題となっています。
 事実を摘示しないで公然と人を侮辱する罪である侮辱罪も、明治以来、古くからある罪刑ですが、インターネットが普及した現在では、公然と侮辱するという概念はこれまでと大きく異なるものとなっております。
 日常生活での不満に対する憂さ晴らし、あるいは自分勝手な正義感を振りかざすなど、侮辱行為に及ぶ動機は様々ですが、公然とこれらの言動を行うのであれば、かつては、当然、相応の対応、反撃等を覚悟せねばならず、これが一つの抑止効果となっておりました。
 ところが、匿名性が高いインターネットの普及によって、侮辱する側は、大した罪の意識もないまま手軽に、そして自らの姿を見せないまま侮辱の言動に及ぶことが多くなっている上、インターネットは拡散するスピードが速く、影響する範囲も全世界に及ぶことから、侮辱を受けることの被害はかつて考えられなかったほど甚大なものとなっております。
 このSNSの誹謗中傷によりプロレスラーの木村花さんが若くして命を閉ざされて二年になろうとしておりますが、この間、こうしたネットの誹謗中傷に対して様々な活動をなされてきた木村花さんのお母様の響子さんは、被害者は普通の生活ができないほど心が壊されていると訴えております。
 被害者は、心に深い傷を負うだけではなく、その被害を止めようとすると、膨大な手間と時間、費用を費やさなければなりませんが、たとえ侮辱罪で有罪になったとしても、現行法では、侮辱に対する罰則は三十日未満の拘留又は一万円未満の科料とされており、加害者の責任と被害者の心理的、金銭的負担のバランスが著しく取れていないのが現状です。
 例えば、木村花さんが亡くなった事例では、投稿者は侮辱罪で有罪となりましたが、略式命令の内容は科料九千円というもので、多くの国民から余りにも軽過ぎるとの声が出されたことは当然であると感じるとともに、木村響子さんも、言論の自由は尊重されるべきだが、それに見合った責任も伴わせるべきという旨を語られておりました。
 法定刑を、拘留、科料に加え、一年以下の懲役、禁錮又は三十万円以下の罰金に引き上げる今回の改正案により、被害実態と刑罰のバランスが現状よりは適正化されるため、卑劣な言動の抑止に一定程度はつながると考えるとともに、公訴時効を一年から三年に延ばすことに関しても、匿名性に隠れて人を誹謗中傷する者を特定するための時間の確保など、逃げ得を許さないためにも有効な手段であると考えます。
 しかしながら、同時に考慮すべきことは、今回の厳罰化によって、民主主義の根幹であり、憲法に保障されている言論、表現の自由を萎縮させてはならないということであり、法務委員会の審議の中でも、侮辱罪の処罰範囲が不明確であることや、正当で自由な言論活動が阻害される可能性を排除し切ることができないという意見を始め、数々の課題、問題が指摘されてきました。
 よって、本法改正案の附則において、インターネット上の誹謗中傷対策への適正な対処ができているかどうかや、表現の自由等の制約になっていないか等、施行後三年経過時に検証を行うといった委員会修正が加えられたことを踏まえ、法の運用に当たっては、十分な留意を求めるとともに、与野党で共同提案、採択された附帯決議を重く受け止めていただくことをお願いいたします。
 また、立憲民主党提出の対案に関しては、侮辱罪の法定刑引上げだけでは的確に対応できないインターネット上の誹謗中傷等への対策として加害目的誹謗等罪の創設などを提案されたものと理解する次第ですが、その趣旨にあるように、内面における人格を保護法益とする規定を追加してしまうと、侮辱罪とは犯罪としての構成要件が異なるため、処罰される表現行為が広がることで、逆に表現の自由が侵害されるおそれもあります。
 加えて、加害目的誹謗等罪においては、刑法二百三十条の二と同様の特例を定め、真実性の証明により、名誉毀損罪と同様に違法性阻却ができるとされていますが、事実を摘示しない場合は違法性が阻却されず、必ずしも政治的な言論が保護されるわけではありません。
 このように、立憲案に関しては、法技術的な問題が解消されておらず、議論が未成熟ということもあり、残念ながら、現状においては賛成いたしかねます。
 最後に、日本維新の会としては、今回の刑法改正に関しては賛意を示すものの、インターネットの誹謗中傷対策としては、これで十分という見解には立っておらず、刑法の範囲に限定されない、インターネット誹謗中傷防止施策や被害者の救済施策、事業者の取組促進等施策など、総合的なインターネット上の誹謗中傷対策を推進するための維新独自法案を去る五月十二日に提出しております。こうした我々提案の施策を迅速、確実に図っていく決意を改めて表明するとともに、本法律案の成立後も引き続いてのインターネット上の誹謗中傷問題解決に向けた包括的な議論、施策を与野党一丸となって進めていくことをお願いいたしまして、私の賛成討論といたします。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

speech_id: 120805254X02820220519_011

発言者: 守島正

speaker_id: 629

日付: 2022-05-19

院: 衆議院

会議名: 本会議