吉野彰の発言 (資源エネルギーに関する調査会)

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○参考人(吉野彰君) 吉野でございます。本日はよろしくお願いいたします。(資料映写)
 本日は、イノベーションによるカーボンニュートラルの実現と、こういう表題でお話をさせていただきたいと思っております。
 今日お話しいたします内容でございます。
 まず最初に、カーボンニュートラルに向けた世界の動向と日本の状況と、これを簡単に御紹介させていただきたいと思います。
 今日、カーボンニュートラルに向けてということで、具体的なテーマは三つに絞ってございます。一つは、二ポツにございます、カーボンニュートラルに向けた再エネ電力と、これを最大限に導入するにはどうすればいいかというお話でございます。
 それから、三ポツ、カーボンニュートラルに向けた再エネキャリアと。再エネキャリアという言葉、簡単に説明いたしますと、再エネ電力で生み出した電力を使って、それをほかの化学物質に変換して、それをエネルギー源として使うという、そういう意味合いでございます。具体的には、水素ですとか、あるいはアンモニアですとかEフューエルと、こういったものがその候補として議論されております。
 そういうことで、この再エネキャリアの現状と考え方、その辺のお話をさせていただきたいと思います。
 それからその次に、四ポツといたしまして、カーボンニュートラルに向けたネガティブエミッション技術というお話をさせていただきたいと思います。
 これ後ほど説明いたしますけれども、ネガティブエミッションというのは排出したCO2を逆にマイナスにしてくれるような技術です。これも今後非常に重要な技術になってまいりますので、じゃ、具体的にどんな考え方があるのか、現状どうなのか、その辺のお話をさせていただいて、最後にまとめとして、現状認識と提言と、こういう順番でお話をさせていただきたいと思っております。
 まず最初に、これはもう簡単に、世界の動向と日本の研究開発ということで、これは簡単にさらっと流させていただきます。
 今御覧いただいておりますのは、カーボンニュートラルに向けた世界の動きということでございます。これは既に皆さん御存じかと思います。各国ともこのカーボンニュートラルに向けて一斉に動き出しておりますよという資料でございます。
 当然その中で日本のカーボンニュートラルに向けた動きということで、これも皆さん御存じのスライドかと思います。日本の政府として世界に対してこういうような宣言をいたしましたよということで、具体的には、二〇三〇年には四六%削減いたしますと、それから二〇五〇年には実質ゼロと。実質ゼロというのは、先ほど申しましたゼロエミッションの技術も含めてのお話でございます。
 これが一つの、二〇三〇年という一つのマイルストーンがあって、二〇五〇年というゴールに向けて動いていきますよと、これが日本が世界に対して投げかけた宣言でございます。
 その後の具体的な動きといたしまして、これも皆さん御存じかと思います、グリーンイノベーション基金という事業が現在進行中でございます。現在十八のテーマがプログラミングされて、それを各プログラム実行の段階に移っておりますよという表でございます。個々のテーマはちょっと説明省略させていただきますが、網掛けのグリーンの部分とイエロー、黄色の部分をちょっと見ていただきたいかと思います。
 五つのステップで検討を進めて、この第五段階を終了しますと具体的に動き出していきますよというプログラミングでございまして、緑の網掛けが既に八テーマ、これはもう既に動き出しております。それから、この黄色のマーカーの入っている五段階、これはもう近々プログラムがスタートしていくと。そういったことで、具体的な動きがもう既に出てきております。かなり非常に積極的なプログラミングが進行しているように私は思っております。
 こういったカーボンニュートラルに向けて、当然開発部隊が必要でございます。私の所属しておりますゼロエミッション国際共同研究センター、これは通称GZRと称しております。これの開発経緯をそこに示してございます。
 簡単に申しますと、二〇一九年の十月、当時のG20で当時の安倍総理がこういうゼロエミッション国際共同研究拠点設立を表明されて、それを受けて設立されております。具体的な開発部隊は茨城県のつくばにございます。
 そういうことで、次の本論の方に入ってまいりたいと思います。
 まず、カーボンニュートラルに向けた再エネ電力、要するに太陽光発電ですとか風力発電、そういった再エネ電力、これを普及させていくにはどうしたらいいかというお話でございます。
 これはエネ庁の資料になってございます。日本の電源構成と再エネ主力化に向けた動きということでございまして、左の方のグラフをちょっと見ていただきますと、これは現状でございます。二〇一九年での電源構成でございます。ほぼ七割方が化石燃料に依存しておりますねというのがお分かりいただけるかと思います。
 これを、先ほど申しました一つのマイルストーンであります二〇三〇年に向けて、一つは、再エネ電力を普及させていこうというのが一つの動きになっているかと思います。その辺の、二〇三〇年時点でそれが何%まで行っているかというのは、いろいろ議論はありますが、一応、三五%から四〇%近くは再エネ電力で賄うという方向性が示されております。そういうことで、では、こういった再エネ電力を普及させていくにはどうしたらいいかというのが当然問題になってまいります。
 この右のグラフを見ていただきたいと思います。これは一つのモデルとして、一日の電力の需要と供給とのバランスということでございまして、これは既に現在そうなっていますし、これから更に太陽光発電とか風力発電が増えてまいりますと、昼間の電力が余ってまいります。これはそのグラフ、右のグラフはそれを示してございます。当然、そこで需要と供給のバランスがずれてまいります。当然、供給過剰、発電し過ぎと、それをいかにして平準化していくというのが、一つこの再エネ電力の主力化に向けた大きな課題となっております。
 そういうことで、一つは、こういう再エネ電力を賄うキーデバイス、また太陽電池、それから風力発電、その他いろいろございますが、その中で、産総研、GZRとしては今こういうアプローチをしていますよというのを御紹介していきたいと思います。
 新しい次世代型の太陽電池の研究開発を進めております、ペロブスカイト型の太陽電池という。このペロブスカイトというのは結晶型の名称でございますので、こういう、俗にこれをペロブスカイト型の太陽電池と称しております。
 ポイントだけ御説明いたしますと、一つは、このペロブスカイト型の太陽電池というのは真空技術で作るものではございません。磁気テープあるいは粘着テープのような、ああいう塗工法で連続して太陽電池を作っていくという新しい技術でございます。当然、そういう塗工法で作ってまいりますので大面積化が非常に容易という大きなメリットがございます。
 これまでは基礎研究の段階であったんですが、ここ数年で非常に技術が進歩しておりまして、一つの評価パラメーターでございます変換効率、これは二四%まで来ております。この二四%というのはいわゆる小さな太陽電池での評価でございまして、この二四%というのは、大体現在広く使われておりますシリコン系の太陽電池とほぼ同じレベルとお考えいただければ結構かと思います。そういうことで、問題の変換効率がかなり上がってきましたねと、大面積化も容易ですねと。
 ただ、残念ながら一つ大きなまだ課題が残っておりまして、それは耐久性です。太陽電池は当然屋外暴露で使いますので、非常に長期の耐久性が要求されるわけなんですけど、残念ながら今まだそこが達成されておりません。
 そういうことで、大きなそういった課題をクリアして、低コストで、しかも大面積の容易にできる太陽電池の開発を進めておるというのが一つのこの再エネ電力。
 もう一点、先ほどちょっと触れました、今度は平準化ということになります。
 特に、これは後ほどまたお話ししますが、日本というのは残念ながら非常に狭い島国でございます。北海道、本州、四国、九州と島があって、こういった狭い国で電力のネットワークというのは当然限界がございます。こういった再エネ電力を普及させるためには、蓄電システムがこれは必須になってまいります。EUですか、USの場合はネットワークが非常に広うございますので、少々変動しても全体としてある程度バランスが取るのは容易なんですけど、残念ながら日本の場合はそうはまいりません。かといって、じゃ、新たに蓄電システムをつくっていくというのは、これはコスト的に非常にしんどい話になります。
 今御覧いただいております資料、これはリチウムイオン電池の用途別の市場予測でございます。市場実績と市場の予測でございます。この中で、下の水色のバー、これがリチウムイオン電池のモバイルアイテム向けのマーケットです。この赤い棒グラフ、これが電気自動車です。
 そういうことで、二〇三〇年には大体、これはワールドワイドなんですが、電気自動車がこれぐらい普及しておりますよと。で、御覧いただきたいのは縦軸でございます。二〇三〇年時点で千四百ギガワットアワーです。これはとんでもない蓄電システムが自動的に電気自動車の普及という形で構築されますよと、これを使わない手は絶対ありませんねと。これはワールドワイドでございますので、そのうちこれが日本の、このうちの一〇%あるいは一五%の普及率になっておれば、十分、こういった再エネ電力の導入で大きな壁になっております蓄電の平準化の問題、コストを掛けずにできますよと。これは、そういった社会システムをつくっていただければ、これは間違いなく実行できるかと思います。
 そういったことで、この再エネ電力をどうやって導入していくかという一つのお話でございます。
 続きまして、今度は再エネキャリアという言葉をちょっと使わさせていただいております。これは、再エネ電力で何がしかのエネルギー、二次エネルギーに変換しますよという、そういうお話でございまして、これが今後、化石燃料の代わりに使っていけばいいですねということでございます。
 その候補として、水素、アンモニア、Eフューエルというのが検討されております。これは、先ほど御紹介したGI基金の中でもこの三つのテーマは取り上げられております。じゃ、これが、将来どれが本命になってこのカーボンニュートラルにどれだけ貢献できるのかというのが今一番のポイントとなってございます。
 そういうことで、じゃ、この再エネキャリアに関しまして産総研のGZRで今こういう開発を進めていっていますよというのを順に、水素、アンモニア、Eフューエルと、この順番でちょっと御紹介していきたいと思います。
 まず、水素につきましては、水素の製造、それと水素の貯蔵、その利用技術ということで、水の電気分解を含めまして研究開発を進めております。
 それから、二つ目のアンモニア、これにつきましても、まずは水の電気分解で水素を作って、それをアンモニアに変換しますよと。これはもう百年前の技術ですが、実際これを大規模になおかつ低コストでやっていくためには当然技術革新が必要になります。で、肝になるのは触媒です。そういったことで、触媒の問題、それからアンモニアの燃焼ガスの問題、こういったものを検討を進めております。
 最後に、Eフューエルということで、これは合成燃料、簡単に申しますと、再エネ電力で生み出した水素と炭酸ガスを反応させて、天然ガスでございますメタンですとかあるいはメタノール、そういった新しい燃料を、グリーンな燃料を生み出していきますよという技術でございます。これも、この反応そのものはもう百年前のケミストリーです。ですが、先ほど申しましたように、現時点でそれを見直したときに、やはりいろんな技術革新が必要であろうと。特に、ポイントはやはりこの場合も触媒ということになります。そういった新しい触媒の開発を含めて現在研究を進めております。
 最後に、ネガティブエミッションの技術を簡単に御紹介しておきたいと思います。
 ネガティブエミッションというのは、その名のとおりでございまして、排出したCO2をマイナスにしてくれますよという技術です。これはちょっと漫画チックな資料になってございます。
 そもそも地球が誕生いたしましたのが四十六億年前です。その時点でCO2濃度は数十%の組成になってございました。それが現在に至っているわけでございます。それが約四〇〇ppmと。
 じゃ、なぜ地球の歴史の中で急激にそのCO2が減ってきたかといいますと、理由が二つあります。
 一つは、このグラフに書いてございます鉱物固定、鉱物固定というのはいわゆる天然の鉱物です。天然の鉱物が大気中のCO2を吸収しましたよという、簡単に言いますと中和反応です。炭酸ガスというのは酸性でございますので、アルカリ性の天然鉱物がたくさん存在する地点ではそういったものがCO2を吸収しましたよと。これが大きな大きな要因の一つだと言われております。それからもう一つは、当然、いわゆる光合成生物の登場です。これは約三十億年前なんですけれども、シアノバクテリアという光合成生物が生まれて、それがCO2を吸収して酸素を吐き出しましたねと。結果として、この二つの要因によって現在の地球の大気組成になっていますよと。
 悲しいことに、残念ながらそのせっかく減ってきたCO2が今増えてきております。これは人類の活動によって増えてきておるわけなんですが、もう一度、こういう地球の歴史を振り返って、この技術をうまくもう一度活用していこうというのがネガティブエミッションの技術の中身になります。
 具体的には、一つはやはり当然、光合成の高効率化というのがあります。現在、光合成、一般の光合成の効率というのは約一%です。太陽電池と同じ効率で比較いたしますと一%です。これは、今後数%あるいは一〇%ぐらいまで上がってまいりますと、がらっと様相が変わってまいります。それには当然新しい技術が必要になります。そういうことで、産総研の中でもこういった新しい光合成機能を持つような植物群を開発を進めております。
 それからもう一つは、先ほども言いました天然鉱物でございまして、簡単に言いますと、具体的に申しますと玄武岩です。よく地球上には玄武岩と安山岩と花崗岩があります。これは地球の岩石の大半を占めております。一番多いのがやはり玄武岩です。この玄武岩という天然鉱物というのは、先ほど申しました炭酸ガスを吸収する力があります。でも、残念ながら地球の表面上の玄武岩というのは既に反応が終わっておりますので、とはいえまだまだ未反応な玄武岩というのは眠っております。そういったものをうまく活用していくと大気中のCO2濃度を減らすことが可能になりますね。これがネガティブエミッションの技術になります。
 もちろん、その使い方によっては、ネガティブエミッションではないんですけれども、CO2の固定化と、プラントから排出したCO2をこの玄武岩で捕まえますよと。これはネガティブエミッションにはならないんですけれども、CCSにはなります。こういったいろんな活用の方法がありますねということでございます。
 最後に、現状認識と提言ということでまとめさせていただいております。簡単にサマリーをお話しさせていただきます。
 国内の再エネ電力の最大限導入にはコストの掛からない蓄電システムの構築が必須になります。これは、わざわざ蓄電のための蓄電システムをつくろうとしますと非常に無理が発生いたします。一方、電気自動車の普及というのは現在世界で普及していっております。その電気自動車に搭載されている電池をうまく活用すれば新たな投資をなしにちゃんと蓄電システムが構築されますよと、結果としてそれが再エネ電力の普及に大きな貢献をしますよと。当然車のグリーン化、バッテリーEVの普及と再エネ電力の普及、これがうまくリンクするようなシナリオが必要であろうと思います。
 それから、二つ目の再エネキャリアにつきましては、先ほどお話ししたとおりでございます。当然これは低コストで作らないといけませんので、再エネ電源の最適地、サンベルト諸国等いろんな国が取り沙汰されております。そういったところが多分生産拠点になろうかと思います。そういったところで当然日本の技術を生かさないといけないわけで、日本の技術がそこに最大限生かせるような、そういった進め方が必要であろうというわけです。
 それから、三番目のポイントは、先ほど言いました、それと並行してゼロエミッションの技術、二〇五〇年トータルゼロエミッションというのはまさにそのとおりでございまして、どうにもこうにもCO2を出さざるを得ない部分が多分残るかと思います。それが、その部分を帳消しにしてくれるような技術がこのゼロエミッションの技術ですよということでございます。
 最後にちょっと、イノベーション創出に向けた研究開発でも、当然のことながら、これはもうグローバルな問題でございますので、国際協調が必要だと思います。そのときに、当然日本がリーダーシップを取れるような形にならないといけないわけでございます。そういったことで、このGZRではG20という国際会議を踏まえていろんな国際活動を進めておりますので、そういったものを是非活用していただきたいと思っております。
 それから、当然こういったイノベーションによって日本が豊かにならぬといかぬということでございます。これはもう当然のことでございまして、言い方を変えますと、今回のこのカーボンニュートラルというのは新しい産業を生み出す絶好のチャンスですよと、それは日本から生まれるかどうかが一番大事ですよと。もちろん一〇〇%日本でという必要はありません。少なくとも一五%、二〇%を、日本がこれだけ貢献したんですよと、そういう形を二〇五〇年にはつくり上げないといけないなと思っております。
 最後に、一つだけちょっと余計なことを書いてございます。
 今後、この特にカーボンニュートラルに向けましては、いろんな国際規格あるいは国際的な約束事を決めていかなければなりません。その場合には、もう各国の国益が真正面からぶつかります。そういったときに、少なくとも日本が損をしないような形にしないと、せっかくいい技術ができたんだけども、ルール上それが除外されますと、これはもうアウトです。
 そういうことで、こういった国際ルール、規格化に関しましては、海外では専門の人を育てています。プロフェッショナルネゴシエーター、日本語で申しますと職業交渉人という言葉が使われております。彼らが全責任を負って、日本の国益に沿うような方向に標準化なりルールを決めますよと。当然、出来高払です。成功払いです。失敗したら一切お金入りませんよと。こういった、残念ながら日本ではまだこれができておりません。相当これまで損してきております。リチウム電池のルール化、規格化でもかなり損してきております。
 是非、この点を踏まえまして、少なくとも、こういう国際ルールで各国の国同士の国益がぶつかったときにちゃんとそれをうまくまとめ上げるような人を育てておいていただきたいというのが最後の締めくくりでございます。
 以上でございます。

発言情報

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発言者: 吉野彰

speaker_id: 12998

日付: 2022-02-02

院: 参議院

会議名: 資源エネルギーに関する調査会