田村智子の発言 (本会議)
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○田村智子君 私は、日本共産党を代表して、経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律案について、岸田総理大臣に質問いたします。
この法案は、通称、経済安全保障推進法案と呼ばれていますが、経済安全保障とは何か、なぜこの法案が必要なのかが、提案理由説明を聞いても、法案の条文を読んでも判然としません。衆議院の審議でも、法案に経済安全保障についての定義がないことが問題とされました。
経済安全保障という言葉から、新型コロナ感染症を要因とした、マスク不足、建築資材や半導体の不足など、生活必需品や原材料を海外生産に頼り過ぎたことへの対策にも聞こえます。異常気象、ロシアによるウクライナ侵略戦争によって、穀物等食料危機への不安も高まっており、経済安全保障というのなら、なぜ食料自給率への言及がないのかという指摘もあります。
そこで、法案審議の前提として、経済安全保障とは何かを確認いたします。新興感染症や異常気象、他国での紛争など、非常事態の際に日本の経済が停滞、混乱しないように、国内生産体制の強化を進め、海外での生産拠点を多層的に構築するということなのでしょうか。安全保障の確保とは何から何を守るのか、国民に分かりやすく説明いただきたい。総理の答弁を求めます。
二〇一九年九月から二〇二一年七月まで国家安全保障局長を務め、退職後も内閣府の有識者会議のメンバーとして経済安全保障の政策協議に関わっている北村滋氏は、今年二月、経済安全保障とは何かと題する大企業向けのセミナーで講師を務めています。その中で、経済安全保障という言葉を定義するに当たっては、どのような観点から政策が展開されるのかを理解することが重要ですと述べ、次の三点を挙げています。
一つに、経済を安全保障政策の力の資源として利用する、言わば経済的措置を武器代わりに使うこと、二つに、我が国や企業が保有する機微な情報、先端技術をいかに守るのか、そして三つ目に、自由で開かれた国際経済システムの維持、特に同志国との連携が重要。
これらは、政府の経済安全保障の考え方と同じでしょうか。違う部分があるならば、それはどこでしょうか。総理の答弁を求めます。
経済安全保障とは、経済を守ることではなく、日本防衛の手段として、あるいは国家間の争いに対する力、圧力として経済的措置をとるということにほかなりません。
北村氏は、今回の法律ができると用意ドンで初めて経済安全保障の政策が始まるという論調が多いんだけど、違う、もう始まっているんだ、例えば、土地利用を規制する法律の改正など、経済安全保障関係の政策は打ってきている、今回の法律は、経済安全保障大系というものがあったとすると、その一部と考えてもらった方がいいとNHKの取材に答えています。
事実、二〇二〇年四月、国家安全保障局には経済班が設置され、既に取組を推進と政府資料に記載されています。重要土地規制法によって、米軍基地、防衛省施設等の周辺で土地取引を監視できる仕組みがつくられました。外国からの研究資金、研究に参加する外国人留学生についても規制措置がとられ、外為法で輸出に対する新たな規制措置もとられています。
重要土地規制法の制定を含め、これら一連の措置が経済安全保障であり、本法案は、当面、新たな法整備が必要な措置に限ったものであって、経済安全保障のスタートでもゴールでもないと考えますが、総理、いかがですか。
国連憲章と国際人道法をじゅうりんするロシアに国際社会が経済制裁を行うことは当然です。しかし、北村氏が経済的措置を武器代わりとして使うとする経済安全保障における経済的措置とは、国連の枠組みとは別に、日本独自で、あるいは同志国とともに行うものではありませんか。お答えください。
二〇一八年、韓国大法院が元徴用工への賠償を日本企業に命じる判決を出し、政府は、二〇一九年七月、半導体素材などの輸出規制の措置を韓国に対してとりました。経済産業省は、徴用工問題との関係を否定する説明をしていますが、措置がとられた直後のプレスリリースでは、日韓間の信頼関係が著しく損なわれたと言わざるを得ない状況、大韓民国との信頼関係の下に輸出管理に取り組むことが困難になっていることに加え、大韓民国に関連する輸出管理をめぐり不適切な事案が発生したとしており、この判決が関係していることは明らかです。いまだ日韓での協議は続いていますが、輸出管理をめぐる不適切な事案とは何かの説明も、安全保障に関わる取引情報だとして明らかにされていません。
経済安全保障でとられる措置については経済界と協議するとの説明がなされていますが、過去の事例に照らせば、時の政権の外交上の理由でいきなり経済安全保障の措置がとられ、安全保障を理由に関係企業に何の説明もないということが起きるのではありませんか。答弁を求めます。
国家の安全保障を理由としたとき、違反行為とされた事案が不当な捜査や逮捕につながることも危惧されます。
二〇一八年、大川原化工機株式会社に対して突然強制捜査が行われ、生物兵器の製造に転用できる噴霧乾燥機をドイツ企業傘下の中国の子会社に無許可で輸出したとの外為法違反容疑で、二〇二〇年三月、社長以下三人を逮捕、自白を強要しての起訴、ところが初公判直前に起訴が取り消されるという事件が起きました。
問題となった装置は輸出届出規制の対象外であったのに、一年近くも勾留し、体調悪化しても勾留を解こうとせず、がんの治療が遅れるという事態まで起きました。大川原社長は何の嫌疑を掛けられているかも分からなかったと述べており、経済安全保障によって、根拠も不明確なまま身柄を長期拘束し、ひたすら自白を強要する、人権じゅうりんの違法捜査が行われ得ることを示した事件と言えます。
政府は、大川原化工機事件をどのように総括していますか。本法案でも、安全保障のために様々な規制を事業者や国民に課すことになりますが、その内容は政省令に白紙委任されています。規制の内容が曖昧であり、誤認捜査、長期勾留による自白強要などの人権侵害や経済活動への混乱が起き得るのではありませんか。答弁を求めます。
先端技術、革新的技術研究は防衛装備開発にもつながり、経済安全保障の重要な柱となっています。法案では、特定重要技術開発基本指針を総理大臣が作成し、閣議決定すること、この基本指針に基づき、各大臣が官民共同の協議会を組織できるとしています。
プロジェクトマネジャーなど研究者が各省庁に置かれる協議会に加わり、研究に関わる情報、方針を政府と共有し、研究成果の取扱いも政府と協議することになります。当然、研究成果をどこまで公開にするかについて政府の意向を反映させることができると考えますが、いかがでしょうか。また、協議では、資金の出し手である政府側の意向を受け入れざるを得なくなるのではありませんか。それを防ぐ仕組みはありますか。
以上、総理の答弁を求めます。
経済活動や研究を国家安全保障の手段とすることには多くの危惧があります。本法案を熟慮の府である参議院において徹底審議することを求め、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕