伊藤孝恵の発言 (本会議)

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○伊藤孝恵君 国民民主党・新緑風会の伊藤孝恵です。
 私は、会派を代表し、ただいま議題となりました法律案について質問いたします。
 冒頭、ウクライナの地で戦火の中、引き裂かれ、奪われ、失われた命に哀悼の誠をささげます。
 全世界が足並みをそろえてロシアと厳に対峙し、民主主義国家が連帯して難民の受入れと支援を進めることはもちろん、我が国のジェノサイド条約加盟に向け、国内法との整合性に鑑みた現実的な議論を始める必要があります。官房長官に、ロシアへの制裁の現状も含め、答弁を求めます。
 教育委員会制度や男女共学化など、現在の日本の教育制度の礎は、その多くが戦後、アメリカの提言によりなされたものです。そんな時代背景下で、旧文部省の官僚たちがアメリカ側を説得してようやく産声を上げたのが昭和二十四年公布の教育公務員特例法です。
 本法第二十一条には、教育公務員は、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならないと記されています。加えて、第二十二条には、研修を受ける機会が与えられなければならないと書かれています。つまり、研修は義務であると同時に権利でもある、ここに立法の趣旨があります。
 そして、なぜ教員の学びがそれほどまでに大切かと問われれば、我々の目の前にいる子供たちに良質な学びを贈ることこそがこの国の未来に連なる可能性そのものだからです。
 昭和二十四年の公布から七十二年、大戦の傷癒えぬ中にあって、どうか未来世代が豊かで幸せな学校生活を送れますようにと、教員たちの奮闘に期待し、この法律を送り出したであろう先人たちの願いに思いをはせながら、以下、文部科学大臣に質問させていただきます。
 教員の学びを保障するには、免許更新制や研修の是非よりも、まず先に世界一多忙と言われる労働環境の改善について議論すべきだと思います。大臣の見解を伺います。
 OECDが二〇一八年に実施した国際教員指導環境調査によると、日本の教員の一週間当たりの労働時間は、小学校、中学校共に調査参加国の中で最長にもかかわらず、知識や専門性を高めるための職能開発の時間は最短でした。授業に向けて研さんするのではなく、事務作業や部活動など、課外活動に多くの時間を費やしている実態があります。今年度は教員勤務実態調査が行われます。この結果を基に、働き方を再考し、定額働かせ放題の給特法の抜本見直しに向けた検討が開始されるものと理解しています。
 教員が疲弊していては良い授業はできません。子供たちを愛するには、愛せるだけの心の余裕が必要なのです。諸外国は軒並み教員の身分や待遇を改善する教育政策を取っているのに対し、我が国の教員の給与は右肩下がり、非正規教員の課題も放置されている現状について、大臣はどのような意思をお持ちなのか、また、それらが子供たちの学びにいかなる影響を及ぼしているとお考えか、伺います。
 やることは明確です。業務過多に陥っている教員たちの仕事のどこをどのように減らすのか。教員をサポートする人材やデジタル技術など、いつまでにどのくらいの規模の投資をするのか。いかなる人材をいかなる方法で、賃金水準で計画的に増やすのか。全ては子供たちの毎日の学びを支えるための海図を大臣に見せていただきたいのです。答弁を求めます。
 劣悪な労働環境が認知されている昨今、二〇二一年度採用の公立小学校の教員試験倍率は過去最低の二・六倍となり、中学校、高校も大幅減となりました。教員のなり手はいないのに、二〇二五年度には小学校の全学年で三十五人学級となります。これに伴って、学校現場には新たに一万三千人を超える教員を迎え入れる必要があります。新卒並びに社会人教員採用におけるそれぞれの取組の具体策について大臣に伺います。
 教員免許更新制は、免許を有しながら教職に就いていない社会人が教員を目指す上で高いハードルとなっていました。かく言う私も、四半世紀前に教員免許を取得しましたが、現行法制下では免許は休眠状態です。教員を目指す場合、仕事の合間を縫って三十時間の免許状更新講習を受講しなければ教壇に立つことはできません。
 文部科学省が昨年、免許状を有する民間企業の勤務者などを対象に行ったアンケートでは、教員への転職ボトルネックとして、教員免許が休眠状態又は失効中であるとした割合が三割弱、免許状更新講習を受講する時間がないとした割合が二割強に上りました。本法律案により更新制が廃止されれば、講習を受けなくても教壇に立つことが可能となります。
 今後、文科省として、免許状が休眠状態又は失効中となっている社会人に対してどのような働きかけをしていくのか。学校現場の疲弊のみならず、子供たちが多様な経験や感覚を持つ社会人教員から学べるメリットを思えば、政府広報や専用相談窓口などを設けてでも人材を確保すべきと考えますが、大臣の御所見を伺います。
 教員免許更新制は、自民党政権が紆余曲折の末に実現させた政策です。不適格教員の排除という目的を、周囲の批判をかわすため、教員の能力開発という美辞麗句で覆って変質させた結果、一体これは何のため、誰のためという制度ができ上がり、今日の迷走を招きました。
 文科大臣が我が国の子供たちに示しておられる学習指導要領の冒頭には、主体的、対話的で深い学びの実現が掲げられております。大臣には、是非、当該制度の導入を主導した政治家たちに、主体的、対話的な深い問いを投げかけていただきたいと思います。
 そもそも、中央教育審議会のまとめで指摘されている制度の不備の多くは、導入前から危惧されていたことです。にもかかわらず、政治主導でいつの間にか進められてしまったことに問題の核心があります。
 子供や現場の視点に欠けた政策決定を二度としないために、大臣はどのように主体的に検証に関わっていかれるおつもりか、なぜ廃止の決断に十三年もの時間を要したのか、教えてください。
 最後に、本法律案では、教員免許更新制を廃止するだけでなく、教育公務員特例法も改正し、研修受講履歴の記録作成を義務化することになっています。研修記録を作成すること自体を否定するつもりはありません。私が伺いたいのは、その記録が教員の成長、ひいては子供たちの学びにとって有益であるというエビデンスの有無と、制度設計の詳細です。大臣の認識をお示しください。
 エビデンスなき理念先行の義務化は、教員免許更新制と同じ過ちを繰り返すことになりかねず、教員による主体的な学びを求める一方で、研修を受講しない場合は懲戒処分になり得るという立て付けは、現場の不安を呼んでいます。
 教員は、生徒たちを目の前にして、自分の使命とは何か、自分は彼らの人生にとってどのような存在になり得るのかを、いつも考えておられます。
 教え子が自ら命を絶ち、なぜ、どうしてと問い続ける終わらない苦しみの中、レジリエンス教育を学び出した先生に会いました。担当した生徒がヤングケアラーだったことを同窓会の席で初めて知らされ、どうしてあのとき自分は気付けなかったのか自問自答した末、ヤングケアラー支援団体でボランティアを始めたという先生がいました。教室で一言も声を発しない外国ルーツの生徒と話したい一心でポルトガル語を習い出した先生や、耳の障害のある保護者と目を見て対話したいと手話を習得した先生もいました。
 教室の中で子供たちが先生から学ぶように、先生たちもまた、子供たちの一人一人から多くのメッセージを受け取っています。ここから生まれた課題感や後悔や、もっと知りたい、まだまだ足りない、そんな気持ちを応援する仕組みが研修であるべきなのではないでしょうか。大臣の見解を伺います。
 大人になる過程では、たくさんの失敗や裏切り、孤独や孤立にさいなまれることがあります。そんなとき、若き日に出会った恩師や、ふと掛けられた言葉にその後の人生を支えられることがあります。この国で生きる子供たちに、そんなかけがえのない時間を贈るための改正にこれらがなることを心から願い、私の質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣末松信介君登壇、拍手〕

発言情報

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発言者: 伊藤孝恵

speaker_id: 17711

日付: 2022-04-20

院: 参議院

会議名: 本会議