古川禎久の発言 (本会議)

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○国務大臣(古川禎久君) 川合孝典議員にお答え申し上げます。
 まず、拘禁刑を創設する趣旨についてお尋ねがありました。
 懲役において行わせる作業は、改善更生、再犯防止のための重要な処遇方法ですが、いずれの懲役受刑者に対しても、一定の時間を作業に割かなければならないことから、個々の受刑者の特性に応じた指導等の実施に必要な時間を確保することが困難な場合があります。
 そのため、より一層改善更生、再犯防止を図るには、その受刑者の特性に応じた柔軟な処遇を可能とすることが必要です。そして、このような個々の受刑者の特性に応じた柔軟な処遇は、禁錮受刑者の改善更生、再犯防止にも資すると考えられます。
 そこで、個々の受刑者の特性に応じ、作業と指導とをベストミックスした処遇を行うことができるよう、これまでの懲役及び禁錮に代えて拘禁刑を創設するものです。
 次に、刑事施設の改善指導プログラムについてお尋ねがありました。
 受刑者に対しては、処遇調査により犯罪傾向等を把握した上で、その特性や状態に応じたプログラムを受刑期間を通じて柔軟に実施することとしており、例えば、覚醒剤事犯者に対し様々な手法を用いた薬物依存離脱指導を実施するなど、実効性の高い改善指導に取り組んでまいります。
 次に、刑の執行猶予制度に係る改正の概要と目的についてお尋ねがありました。
 まず、再度の刑の全部の執行猶予の言渡しの対象者の範囲の拡大は、再度の刑の全部の執行猶予を言い渡すことができる刑期の上限を現行の一年から二年に引き上げるとともに、保護観察付執行猶予の期間内に再犯に及んだ場合にも、再度の保護観察付執行猶予を言い渡すことができることとするものです。
 これらは、裁判所による処分の選択肢を広げて、より適切な処遇を可能とする観点から、保護観察付執行猶予の一層の活用を図ろうとするものです。
 また、刑の執行猶予期間の経過後にもその刑の執行ができるようにする仕組みの導入は、猶予の期間内の再犯についての有罪判決の確定が執行猶予期間の経過後となっても、執行猶予の言渡しを取り消して、刑の執行ができるようにするものです。
 これは、猶予の全期間を通じて、執行猶予の言渡しの取消しによる心理的強制により改善更生、再犯防止を図るという執行猶予の機能が十全に発揮されるようにするものです。
 次に、受刑者の処遇原則についてお尋ねがありました。
 法制審議会においては、若年受刑者に対する処遇原則を設けるべき旨が答申されたものと承知しています。この答申を踏まえ、若年受刑者に対する処遇原則について検討する過程において、若年以外の受刑者についても、その年齢に応じた配慮が類型的に必要となる場合が想定されたことから、今回の法改正では、年齢一般を考慮要素とし、その上限を設けることとはしなかったものです。年齢に応じた処遇を行うに当たり、若年であることに焦点を当てた処遇の充実のための取組についても推進をしてまいります。
 次に、受刑者に対する社会復帰支援の具体的内容や支援実施に向けた刑事施設の対応についてお尋ねがありました。
 社会復帰支援は、釈放後に自立した生活を営む上での困難を有する受刑者に対して、その意向を尊重した上で行うものであり、具体的には、適切な住居に帰住するための支援、釈放後に医療機関に通院等するための支援、公共職業安定所と連携した上での就業に向けた支援などを想定しております。
 また、刑務官等に対し、法改正の趣旨を踏まえ、受刑者の円滑な社会復帰の実現に向けて、職務執行能力を向上させるための研修を実施するとともに、必要な人的体制の整備に引き続き努めてまいりたいと考えております。
 次に、更生緊急保護の充実化の趣旨についてお尋ねがありました。
 更生緊急保護は、貧困や住居がないなどの事情により緊急的な保護を必要としている者が、援助を受けられず生活を不安定化させ、再犯に至ることのないようにするものですが、今回の法改正では、いわゆる処分保留で釈放された者を対象に追加し、釈放後直ちに必要な保護を受けられるようにするための手続を整備し、保護に必要な期間を確保することとし、その充実化を図るものです。
 次に、被害者等の心情等を踏まえた処遇についてお尋ねがありました。
 保護観察の措置をとるに当たっては、被害者等の心情等を適切に考慮し、保護観察対象者にその心情等の理解を促すことにより、自らの犯した罪に対する反省、悔悟を深めさせ、被害の回復等に努めさせるなど、適切に指導監督を実施してまいります。
 次に、保護観察所の長が地域住民等からの相談に応じて行う援助の具体的支援、失礼、具体的内容についてお尋ねがありました。
 この援助の内容としては、保護観察所が地域社会における犯罪をした者及び非行のある少年の改善更生並びに犯罪の予防に寄与するために、例えば、刑務所出所者の家族から犯罪に結び付くおそれのある生活上の問題について相談があった場合に、更生保護に関する専門的知識を活用し、その個別事情に即した地域の相談機関を紹介したり、家族としての接し方について助言を行うことなどを想定しています。
 次に、更生保護事業の類型の改正の趣旨とその概要についてお尋ねがありました。
 近年、施設を退所した被保護者を訪問して保護を行う事業が一時保護事業に該当するなど、その実態が事業の名称とそぐわないなどの問題が生じています。
 そこで、各事業の内容の明確化を図るとともに、各事業の内容にふさわしい名称に改めることとし、被保護者を更生保護施設に宿泊させて保護を行うものを宿泊型保護事業、被保護者を更生保護施設等に通所させ、又は被保護者の元を訪問する等の方法により保護するものを通所・訪問型保護事業、関係機関との地域における連携協力体制の整備等を行うものを地域連携・助成事業と改正することとしています。
 次に、受刑者に対する鑑別及び少年鑑別所の体制整備についてお尋ねがありました。
 拘禁刑の創設の趣旨を踏まえ、個々の受刑者の特性に応じた柔軟な処遇を推進するためには、処遇調査において受刑者の特性をこれまで以上に的確に把握することが重要となります。
 今回の法改正により、鑑別対象となる受刑者の年齢の上限を撤廃し、必要に応じて二十歳以上の受刑者に鑑別を受けさせることで、専門的知識を用いた科学的調査の手法を用いて受刑者の特性をより精緻に把握し、効果的な処遇の実施を可能とするものです。
 また、少年鑑別所の職員に対し、法改正の趣旨を踏まえ、受刑者の改善更生の実現に向けて、職務執行力を向上させるための研修を実施するとともに、必要な人的体制の整備に引き続き努めてまいりたいと考えております。
 次に、侮辱罪の要件及び処罰対象となる行為についてお尋ねがありました。
 今回の法改正は、侮辱罪の法定刑を引き上げるのみであり、もとより、構成要件は変更しておらず、処罰対象となる行為の範囲は全く変わりません。そのため、侮辱罪の法定刑が引き上げられた後も、侮辱罪は、事実を摘示せずに公然と人を侮辱した場合、すなわち、不特定又は多数人が認識できる状態で他人に対する軽蔑の表示を行った場合に構成要件に該当することとなります。
 具体的にいかなる行為が侮辱罪による処罰の対象となるかについては、個別具体的な事実関係に応じて事案ごとに判断されることとなるため、一概にお示しすることは困難ですが、近時、侮辱罪により有罪が確定した裁判例を挙げますと、例えば、被害者のツイッターアカウントに、「てか死ねやくそが」、「きもい」などと投稿した事案などがあるものと承知しています。
 次に、侮辱罪の法定刑を法案のように定める趣旨についてお尋ねがありました。
 公然と名誉を侵害する行為が行われた場合、名誉毀損罪又は侮辱罪に該当し得ることになりますが、両罪は、事実を摘示するか否かによって法定刑に差が設けられています。しかし、事実の摘示がなくても名誉を侵害する程度が大きい事案が少なからず見られるなど、近年における侮辱罪の実情等に鑑みると、法定刑に大きな差を設けておくことはもはや相当とは言い難いことから、侮辱罪の法定刑について、名誉毀損罪に準じて、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金を追加するものです。これにより、当罰性の高い悪質な侮辱行為に対してこれまでよりも厳正に対処することができるようになります。
 一方、侮辱罪の中には、当罰性の低い事案も想定されることからすると、拘留、科料を存置しておくことが、個別具体的な事案に応じた適切な量刑に資するものと考えられることから、拘留、科料を存置することとしたものです。
 次に、侮辱罪の法定刑が引き上げられた場合の科刑状況等についてお尋ねがありました。
 個別具体的な事案においてどのような刑が言い渡されるかについては、裁判所において事案ごとに判断されるものであり、御指摘の点について一概にお答えすることは困難です。
 その上で、一般論として申し上げれば、先ほどお答えした今回の法改正の趣旨を踏まえ、当罰性の高いものについては懲役、禁錮、罰金が言い渡され得る一方で、当罰性の低いものについては拘留、科料が言い渡され得ると考えられます。
 最後に、侮辱罪の成立範囲に変更はないのかについてお尋ねがありました。
 今回の法改正は、侮辱罪の法定刑を引き上げるのみであり、もとより、構成要件は変更しておらず、処罰対象となる行為の範囲は全く変わりません。
 正当な批判や意見といった正当な表現行為については、仮に相手の社会的評価を低下させる内容であっても、刑法第三十五条の正当行為として違法性が阻却され、処罰されないと考えられ、このことは、今回の法改正により何ら変わることはございません。(拍手)
   〔国務大臣末松信介君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 120815254X02420220520_010

発言者: 古川禎久

speaker_id: 19897

日付: 2022-05-20

院: 参議院

会議名: 本会議