山下貴司の発言 (憲法審査会)
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○山下委員 自由民主党の山下貴司です。
私は、緊急事態条項について、国際的にも、また我が国の経験に照らしても、早急に具体的な議論を進めていくべきだと考えます。
憲法上の緊急事態条項は、世界的には約九割の国が有しており、また、新型コロナ対応を憲法上の緊急事態条項によって対応した国もあるなど、諸外国にとっても当たり前の立憲的制度であります。
そして、我が国も緊急事態条項により国難を切り抜けた経験を持っています。関東大震災です。
首都直下型地震である関東大震災の際には、国会は閉会中でした。震災後、初めて国会が開けたのは発生後三か月以上たってからでした。そこで、政府は、当時の明治憲法八条で認められていた緊急勅令で国難を切り抜けました。発生後一か月の間に十三本もの緊急勅令を出し、震災後、国会が開かれるまでに合計十六本の緊急勅令を出して乗り切ったのです。その緊急勅令は、震災直後の支払い猶予など国民の生活に不可欠なものでしたが、本来、法律事項であり、その対応は、今の憲法であれば国会でなければできなかったでしょう。
しかし、三か月も待たなければ国会が開けないような、関東大震災に匹敵する首都直下型地震が発生した場合、どうするのでしょうか。首都直下型地震は、三十年の間に七割の確率で発生するおそれがあると言われています。国会議事堂が崩壊せずとも、交通が途絶し、国会の定足数を満たさない場合には、国会は開けず、予算も法律も通せません。被災者の命がかかっているというのに、国会が機能停止のまま数か月待ってくれということはできないのではないかと考えます。
さらに、関東大震災での緊急政令による対応で注目すべきは、衆議院議員の選挙手続の特例についての緊急政令を出していることです。衆議院議員の任期満了は、関東大震災の僅か八か月後の翌年五月に迫っていました。今後、首都直下型地震が任期満了の直前に起きる可能性は誰も否定できません。明治憲法では、衆議院議員の任期四年については、法律である衆議院議員選挙法が定めていました。しかし、日本国憲法下では、国会議員の任期は憲法が定めており、憲法を改正しないと任期延長ができないのです。この点も憲法で手当てする必要があります。
緊急事態については、日本の災害対策関連法など、あらかじめ定めた法律によればよいという見解があります。しかし、それでは足りないということは、現行憲法下でも我々が経験しているところであります。東日本大震災と新型コロナウイルス対応です。
東日本大震災では、発災後三か月以内に地方の首長や議員の任期延長法を始め十三本の法律の改正を行い、全部で七十本もの法改正をしました。また、私たちは、感染症法等の法律の改正で、新型コロナを新型インフルエンザ特措法の適用対象とするなど、法改正を行って、新型コロナ対応を乗り切りました。つまり、これらは既存の法律で対応はできず、新たに法改正をしなければ対応ができなかったことの証左であります。
しかし、これらは国会が開けていたから改正できたんです。非常事態が国会閉会中に発生し、しかも、首都直下型大震災やパンデミックのため本会議が開けない、委員会も開けない状態であれば、法改正も予算措置も取れず、対応できない可能性はありました。
こうしたことから、明日にも起こるかもしれない首都直下型地震が起きて、関東大震災のように三か月以上も国会が開けない場合に、国会が開けるようになるまで、被災者に座して死を待てと言うのでしょうか。あるいは、感染爆発が起きて定足数を満たしての国会開会ができない場合に、そのことを言うのでしょうか。
オンライン国会が出れば解決できる問題ではありません。オンライン国会は、震災の場合にオンライン機能が破壊されれば使えないのであります。
この点に関して、例えば、我が国の憲法では参議院の緊急集会があるという向きもありますが、緊急集会は、明文上、衆議院議員の任期満了時に適用できるかに争いがあります。そして、定足数を満たさない場合には開けないことも同じであります。
また、この緊急事態条項について、ワイマール憲法を例に出す向きがありますが、ワイマール体制の崩壊の原因は、緊急事態条項そのものよりも、憲法に優位する全権委任法を制定したことにあり、緊急事態にも憲法秩序を維持するための我々の考え方と異なります。そしてまた、ドイツにも緊急事態条項はあるのです。
こうしたことを日本の経験、国際状況から照らせば、立憲主義を貫く、そして国民の生命を守るためにも、早急に緊急事態における憲法の在り方について議論し、特に国会議員の議員の任期の延長、そして緊急政令の要否について議論すべきことは明らかであることを指摘して、私の意見を終わります。
以上です。