新藤義孝の発言 (憲法審査会)

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○新藤委員 自由民主党の新藤義孝であります。
 ただいまの衆議院法制局からの論点説明は、緊急事態について私なりに受け止めた各会派委員の発言を簡潔に整理し、その主張が明確になったというふうに思います。この論点説明も踏まえ、緊急事態について私の考えを改めて述べたいと思います。
 まず、なぜ日本国憲法に緊急事態に関する規定を定めるべきなのか、その基本的な意義を申し上げます。
 国家の最大責務は、国民の生命と財産を守り、自由で幸せな社会生活を提供することです。国家の基本法である憲法には、真っ先にそのことが定められているべきです。
 にもかかわらず、日本国憲法には、七十五年前の施行以来、緊急事態という国家の根本概念が規定されておらず、いわゆる有事においても、平時の延長線上での国家運営を行わざるを得ません。仮に緊急事態が発生したとしても、平時を想定した一般法の延長上で対応を強化するか、後追いでパッチワークのような特例法を作り、問題の箇所をその都度塞ぐような対応しかできていないわけです。
 緊急事態に際し、国家の責務と権限を明確にし、国民を守り抜くための最大機能を発揮させるためには、平時モードから有事モードに切り替える条項を憲法に定めておくことが必要不可欠であり、これこそが国家としての責任だと私は考えております。
 こうした点から見ると、参議院の緊急集会の憲法上の位置づけは、平時から有事へのモードの切替えを想定したものではなく、あくまでも平時の延長線上での対応と考えるべきではないでしょうか。
 すなわち、参議院の緊急集会は、衆議院の解散という、通常起こり得る平時の対応として規定された制度であり、想定された活動期間は最大でも四十日から七十日、そこで取られた措置は衆議院の事後的な同意がなければ効力を失うものであることから、この制度はあくまでも平時における一時的、暫定的なものと考えるべきです。
 一方で、この七十日を超えて長期にわたり全国的に選挙ができなくなるような緊急事態が発生した場合は、まさしく平時から有事へとモードを切り替えた対応ができるよう、準備をしておくべきではないでしょうか。この場合は、有事においても二院制を根幹とした国会機能を維持するという観点から、参議院の緊急集会ではなく、議員の任期延長を可能とする規定を憲法に整備することが必要と考えているわけであります。
 先ほどの論点説明にあった審査会の議論でも、七会派のうち、自民、公明、維新、国民、有志の五会派の委員が明確に、議員任期延長を規定する憲法改正の必要性を述べられております。
 次に、対象とする緊急事態の範囲については、大規模自然災害事態、テロ・内乱事態、感染症蔓延事態、そして国家有事・安全保障事態の四つの事態と、さらに、この四事態を超える想定外の事態に備える意味で、その他これらに匹敵する事態という規定をつけ加えることについて、おおむね意見が集約されたと考えております。
 その上で、議員の任期延長は、これらの緊急事態が発生し、適正な選挙実施が困難な状態に陥った場合に発動される規定とすることについても、おおむね意見が一致しております。どのような場合が適正な選挙実施が困難な状態と判断するかは、今後、各会派との間で更に議論を詰めたいと考えております。
 次に、この選挙実施困難事態の認定主体については、そのような状況について総合的な情報を集約できる機能を持つ行政府、すなわち政府がふさわしいと考えます。この点につきましても、おおむねの意見は集約されております。選挙実施困難事態の認定を内閣が行うとしても、これに対する民主的統制の観点から、国会の事前の関与が必要であることは当然であり、この点についても、おおむね意見の一致があります。
 その議決要件の考え方につきましては、そもそも、議会における意思決定は、過半数の賛成で行われることが大原則です。一方、日本国憲法においては、除名など議員の身分を失わせるとき、秘密会にするとき、衆議院が法律案を再議決するときなどの場合は、出席議員の三分の二以上の多数とされています。憲法改正発議につきましては、総議員の三分の二以上の賛成という特別規定が設けられています。
 国会機能維持のための議員任期延長については、それが二院制国会を維持する原則的な規定と考えるか、若しくは、四年、六年の任期を延長する特別な規定と位置づけるか、言い換えれば、原則を回復させる事案として過半数を採用するのか、例外的、抑制的に処理すべき事案として三分の二の特別多数を採用するか、各会派と今後議論を詰めさせていただきたいと考えています。
 次に、緊急事態の認定に対する裁判所の関与についても議論がございました。
 緊急事態の認定に当たり、維新の委員は憲法裁判所によるチェックを提案し、国民民主と有志の会委員は最高裁によるチェックを提案されています。
 まず、憲法裁判所については、国家の統治機構の大変革であり、特別の国家機関の創設については別途議論が必要と考えます。すなわち、個別の事件について憲法判断を行う現行の最高裁による付随的審査制を離れて、新たに憲法裁判所を設置し、法律や行政処分について一般的な憲法判断を適宜行うような体制とするべきか、我が国の歴史的、文化的背景も含め、検証が必要と考えています。
 次に、最高裁による緊急事態の認定に関するチェックについては、そのような権限を与えるにふさわしい最高裁とするために、裁判官の任命制度を含め、別途議論が必要ではないか、このように考えるわけであります。
 次に、議員任期延長の上限につきましては、主権者国民の選挙機会を奪うことでもあり、その延長期間はできる限り短期間とすることが望ましいということは言うまでもございません。
 東日本大震災のときに行われた地方選挙の延長が発災から最長八か月であったことを念頭に、私は一年を上限とすることも考えられると発言をしておりますが、上限期間の考え方につきましては各会派で意見が分かれています。
 そもそも、ウクライナ憲法のように、延長期間について、選挙が実施され、新たな議員が選出されるまでとすることも考えられます。有事の際には将来の見通しが立たない可能性があり、このような任期の定め方も合理的ではないかとも考えられるわけであります。
 この点につきましては、引き続き皆さんと議論をしていきたいと思います。
 また、解散後の前衆議院議員の身分の復活については、失われた議員の身分を復活させるというよりも、解散を行った内閣が緊急事態の発生により選挙実施が困難と判断した場合には、解散の効力も失われることになり、それに従い、衆議院議員の身分も元に戻ると考えることもできます。
 この論点は、特に、民主主義の根幹である議員身分の取扱いという極めて重要なものであり、更に議論を深めていきたいと考えております。
 国会機能の維持の観点からは、議員任期延長の規定を設けるのであれば、その他の国会機能維持、すなわち、国会の閉会禁止、あるいは即時召集、衆議院解散の禁止、同時に、内閣不信任議決の禁止といった措置について手当てが必要という点につきましては、おおむね意見が集約されたと思います。
 そのほか、議員任期延長以外の緊急事態条項全般にわたる事項につきましても、各会派から活発な提言がありました。
 まず、緊急政令と緊急財政処分について、国会機能維持のために議員任期を延長したとしても、国会が機能不全に陥り、法律や予算の議決ができない状態に備え、規定を設けておく必要があることを私は提案しております。
 これは、政府に権限を集中することが狙いではなく、どのような緊急事態においても国会機能の維持をぎりぎりまで追求し、それでも困難となった場合に、政府による超法規的措置の執行を防ぎ、立憲主義の下で政府を行動させようという仕組みであります。
 あくまでも最後のセーフティーネットであることを御理解いただき、皆さんと引き続き議論したいと思います。
 また、緊急時においても人権が最大限保障されなければならないことは言うまでもありません。ウクライナ憲法には、あえて、必ず保障されなければならない国民の権利、自由が明記されています。ベニス委員会が推奨しているこのような比較的新しい考え方を、日本国憲法の改正を行うに際し規定しておくべきかどうか、皆さんと議論を深めたいと思います。
 最後に、先ほどの幹事会におきまして、来週の定例日である十二月八日に憲法審査会を開催し、国民投票におけるネットCMの取扱いとネット社会と憲法の関わりについて参考人質疑を行うことを提案いたしました。
 引き続き、憲法審査会の安定的かつ活発な運営がなされるよう、委員各位の御理解と御協力をお願いいたしまして、私の発言とさせていただきます。

発言情報

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発言者: 新藤義孝

speaker_id: 16290

日付: 2022-12-01

院: 衆議院

会議名: 憲法審査会