中川正春の発言 (憲法審査会)
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○中川(正)委員 中川正春です。
まず冒頭、お話をしておきたいんですが、緊急事態という形で論点を、それぞれの主張をまとめたということでありますが、やはり、まだまだコンセンサスがつくられているというわけではないということと同時に、議員任期の延長だけに集中してこうした形で議論を持っていくということではないんだと思うんです。緊急事態そのものをトータルで捉えた形の議論が更に必要なんだろうということ、これが一つ。
それからもう一つは、実は、緊急事態以外にも、それこそ今の国会で更に、緊急的にしっかり議論の俎上にのせなければならない課題というのはあるわけでありまして、そこについても、審査会、これからの幹事会での協議事項の中でしっかり議論をしていかなければならないと思います。
実は、それをまとめていただいたんですけれども、会長によって、こんな課題についてそれぞれやっていきたいという主張がありましたというようなことを皆さんに示してもらう予定でいたんですが、残念なことに、それが今回のこの審査会でできなかったということであります。これについても更に議論を進めていかなければならないと思います。
冒頭、そのことをまず申し上げておきたいと思います。
その上で、緊急事態における、今回の任期の延長についても、改めて私の見解を申し上げます。
次の二つの選択肢を、憲法改正を経ずに緊急事態において国会機能を維持するための対応策として提示をいたします。
一つは、憲法五十四条に基づいて、参議院の緊急集会で当座の国会機能を維持して、後に、選挙で選出された衆議院により改めて議決するという対応であります。
この点、明文上、衆議院の解散のみが開催の要件となっているため、衆議院の任期満了の際にも開催し得るのかが問題となると考えられます。また、七十日を超える長期にわたり緊急集会が国会機能を担うということは憲法上予定されていないという見解を、当審査会において複数の委員が示されています。
こうした論点について、憲法学者等の専門家を参考人として招致をして見解を伺い、参議院の緊急集会では不足なのかどうか、まず議論を深める必要があると思っております。
もちろん、この問題については、参議院の機能に関わることであって、当事者である参議院側の議論にも十分配慮した上で、当審査会として結論を出すべきと考えております。
また、もう一つは、先ほどウクライナの憲法が出てきましたが、この例に倣う選択肢であります。すなわち、議員の任期と実質の権能の消滅を、別個のものであって、四年の期限が来れば任期は終わることとするが、実質の権能は次の選挙で新しい議員が選出され国会に召集されたときまで継続するという対応であります。
この選択肢については、国会法を改正して緊急事態に限った対応策として明記をしていくことで、憲法改正に至らずとも、現憲法下の対応策とすることは十分可能であるというふうに考えております。
その上で、もう一つ大切な論議があります。議員任期の延長論議というのは、実はその前の緊急事態全般に関わる議論が先行されなければならないということであります。
この緊急事態に対応するためには、権限の集中と、もう一方で私権の制限が必要だということは、私たちの経験則で誰もが認めるところであります。
日本ではこれを、憲法上というより、個別類型に沿った法律の体系において整備をしてきました。自衛隊法、国民保護法、災害対策基本法、新型インフルエンザなどの特措法、感染症法等々であります。これらの法理においては、細部に改善の余地を残している部分はあるとしても、政府機関や総理大臣の権限の集中はおおむね所与のものとして、既に体系化をされております。
しかしながら、今の世界では、武力による侵略、民族紛争やクーデター、コロナ対応でも、人権を無視した完全ロックダウンや暴動に対する戒厳令など、数々の権力の暴走というのが起こっております。
いかに緊急事態とはいえども、権限の集中と私権の制限に対して、無制限にそれを認めるということは許されることではないということも私たちの共通した認識になっているんだと思うんです。
たとえ緊急事態の中であっても、いや、緊急事態の中であるからこそ、しっかりとした歯止めができる機能が用意されていなければならない。にもかかわらず、日本は、平時からこの権力の暴走への歯止めが利いていないのではないか、これで大丈夫なのかということを、私たちは問い直していかなければいけないんだと思うんです。
以上のことから、この憲法審査会において、緊急事態というテーマについて討議する際には、緊急事態の中での議員任期の延長というほんの一部分のみにこだわるということではなくて、更に広く深く課題を捉えて、権力の暴走を民主的に防ぐための歯止めをどのように憲法を含む法体系の中に準備しておくかということ、この問題を総合的に議論することが必要であるというふうに考えております。
実は、近年の政府の行動を見ると、緊急事態下の事象ではありませんけれども、権力の暴走と言わざるを得ないような権力の行使がとみに目立ちます。これを私も何回もこれまで指摘をしてきました。
まず第一、内閣総理大臣が国会の解散権を政権の都合のいいときに、権力の維持に有利なときに恣意的に行使してきていたのではないか。第二に、政権が国会の追及を避けるために国会召集に応じなかったということがあるのではないか。三番、内閣法制局の人事に政権による影響力を及ぼして、憲法解釈などの変更で統治の正統性を偽装しているのではないか。四番、国家に独占される情報について、政権に不利なものは国家機密として国民の知る権利から遠ざけて、時に政権が情報操作に及ぶことがあっても、現状では国民の知る権利を保障するための民主的な対応策に欠けているのではないか。五番、予見し難い予算の不足をはるかに超える、歴史上類を見ない多額の予備費を設けて、補正予算のたびに積み増しし、そして政府が自由に国費を支出することは、財政民主主義を骨抜きにしているということではないか。
緊急事態を特に議論するのであれば、上記五つのような現に起きている問題を総合的に掘り下げて解決すべき、そして、それを憲法の下で深めて、そして、それにどう反映させていくかという、そのことを基本にした議論をしていくべきだというふうに思います。権力の暴走に対してどのような歯止めをかけることができるのか、この緊急事態下での議論の本質であるという、このことを強く望んでいきます。
最後に、今後の審議会の議論について一言申し上げます。
次回以降の審査会では、是非、国民投票法について、その公正性と公平性を担保するための更なる改正議論を進めるということを提案します。その上で、先ほど次の回には参考人質疑をしていこうということで合意をできたことはありがたいことだと思っています。
この国民投票法、これこそ、まとめるところでまとめていくということをしていく、それでないと、憲法改正の国民投票ができない状況が続いているわけでありますから、そのことは改めて先行してやっていくべきだということを主張しておきたいというふうに思います。
以上、私の議論とさせていただきます。ありがとうございました。