北神圭朗の発言 (憲法審査会)
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○北神委員 私の方から、今法制局から説明のあった資料に沿って、有志の会の考えを申し述べたいと思います。
まず、参議院の緊急集会につきましては、これはあくまで国会の二院制の例外であり、暫定的な措置だと捉えています。緊急事態という、国民の生命財産に関わり、権利の制限が求められかねない状況の中で、一院だけで長期間にわたり立法府としての機能を果たすことは、憲法が予定するところではないというふうに思います。より本質的にも、緊急集会で緊急事態に対応することは難しいと言わざるを得ません。
緊急集会に関連する国会法第九十九条第一項を参照しますと、「内閣が参議院の緊急集会を求めるには、内閣総理大臣から、集会の期日を定め、案件を示して、参議院議長にこれを請求しなければならない。」とあります。また、第百一条に、「参議院の緊急集会においては、議員は、第九十九条第一項の規定により示された案件に関連のあるものに限り、議案を発議することができる。」さらに、第百二条には、「参議院の緊急集会においては、請願は、第九十九条第一項の規定により示された案件に関連のあるものに限り、これをすることができる。」というふうにあります。
つまり、国会法上は、内閣が緊急集会を請求するときには、総理から具体的な案件を示さなければなりません。このいわゆる案件に限ってのみ緊急集会は審議、議決ができるのが国会法の考え方です。また、案件に関連のあるものに限って、議員による議案の発議と請願の受理が認められるのです。
一方で、緊急事態といえども、国会も内閣も専らこの対応にいそしんでいればよいということではないというふうに思います。通常やらなければいけない教育とか年金、介護、医療、農林水産、中小企業、様々な幅広い分野の政策についても同時に粛々と実行していく必要も生じます。また、当然、行政監視機能も求められます。
ところが、今申し上げた国会法上の案件という文言は、普通、法律用語としては、議題とされる事案その他処理されるべき問題として理解すべきであり、個別具体的なものに限定されます。この案件の中に、緊急事態対応だけでなく、通常処理をすべき政策課題等の全般を包括的に盛り込むことは難しいと考えます。
したがって、我々が想定している緊急事態にあって、では、緊急集会によって国会としての全般的な立法機能、行政監視機能が果たせるのかと問われれば、難しいと言わざるを得ません。やはり、そういった意味で、議員任期の延長の制度が必要だというふうに考えます。
次に、第二の要件については、まず、実体的要件のうち、対象とする緊急事態の範囲は、みんな実質一致しています。また、付加要件である、任期延長を総選挙の適正な実施が長期間困難と明らかに見込まれる場合に限定することについても、実質一致している。
先ほど、我々が選挙を停止しようとしているという発言がありましたけれども、決して停止しようとしているわけではなくて、災害とかで実施が物理的に困難だ、これは空想ではなく、東日本大震災でも実際にあったわけであります。それで、身分の保障を我々は求めているわけではなくて、ちゃんと国民の声を反映して、内閣を行政監視するためにも、国会機能をこういう状態の中でも維持しなければいけない、そういう趣旨であるということを御理解いただきたいというふうに思います。
ですから、任期延長を総選挙の適正な実施が長期間困難と明らかに見込まれる場合に限定することについても、これも実質一致しています。
次に、手続的要件のうち、実体的要件の認定機関を内閣とすることについても、完全に一致しています。国会の関与等についても、事前承認が適当とされていることも共通しています。我々有志の会は、議決要件を、特別多数である国会の三分の二以上の多数、出席の数の三分の二ですけれども、半数というと、これはやはり、議員の任期を延長するというかなり重たい事案なので、三分の二以上が適当だというふうに考えています。もちろん、憲法の特別規定ほどではないという位置づけであります。
裁判所の関与につきましては、前川委員とか玉木委員から話があったとおり、私も同じ考えでありますが、最高裁判所の実務上の負担や権限の実態など、現場の声も丁寧に聞いていかなければいけないとは思います。
次、三に移りますと、効果、以上の要件が満たされた場合の法的効果につきましては、任期延長の期間に何らかの上限を設けることには、みんな一致しています。ただ、その制限の在り方が異なります。
議員の任期延長が例外的な制度であることから、できるだけ短めに上限を設定する考えも十分理解できますが、これもなかなか厳密な基準が見当たらないため、我々は、一年間を上限にしつつ、国会の議決により再延長も可能とすることが適当だというふうに考えます。今回の感染流行が数年に及んでいることなども踏まえますと、余り短く設定して、小刻みに再延長することは避けた方がいいのではないでしょうか。
先ほど玉木委員から質問がございましたけれども、どうやって任期延長を終了するかということにつきましては、緊急事態の収束が大体分かってきて、めどがついたときに、そして総選挙が実施できると判断された場合には、国会議決により、延長された任期の終了日を定めなければいけないということを、これも私は憲法上規定すべきだというふうに思っています。この場合は、例外から通常に戻すので、半数の議決でいいというふうに考えています。
次の、任期満了後あるいは解散後に緊急事態が発生した場合、いわゆる前議員の取扱いについては実質的に一致していますが、先ほど新藤委員からお話があった、解散が無効となるという考え方もあるというふうに思います。これもちょっと検討してまいりたいというふうに思います。いずれにせよ、憲法第五十四条第一項、すなわち、選挙期日は解散の日から四十日以内という規定は適用しないという明文を、その場合、手当てする必要があることを指摘したいというふうに思います。
最後に、議員任期延長以外の国会機能維持策、すなわち、国会の閉会禁止あるいは即時召集、衆議院解散禁止、内閣不信任決議案の議決禁止については、各党、基本的に一致しています。ただ、有志の会の考えとしては、内閣が議員任期延長のために緊急事態宣言を認定し、国会もこれを議決する以上は、閉会禁止などは言わずもがなのことなので、あえて明文化する必要はないというふうに考えています。
最後の、緊急事態全般に関する論点については、まず、緊急政令、緊急財政処分については、前回申し上げたとおり、緊急事態における国会機能の維持とは別次元の論点であり、また、不要とする政党もまだありますので、引き続き議論を重ねていく必要があると思います。
一部御意見が出ている、憲法上、あらかじめ法律の定めるところによりと規定をするのも、これは私の理解では、既存の緊急事態法制、今ある緊急事態法制にそのままのっとることになると思います。その場合でしたら、あえて憲法上新たに規定を設ける必要はないと考えます。ただ、そういうことでしたら、あえて反対することもないというふうに思います。仮にその方式を取る場合でも、既存の緊急事態法制で対応できない事態はあり得るのか、対応できない場合はこれを法律で補完するのか、憲法で補完するのかなど、本審査会で検討を加えるべきだと思います。
次に、人権制約の限界明記については、本来は、緊急事態条項の効果として考えられる人権制限の論点との関係で議論すべきだというふうに思います。これを意識的に行ってこなかったような気がします。
従来は、憲法第十三条の公共の福祉を根拠に人権制約が可能とされてきました。しかし、ここで新たに一部の人権のみ制約できないと明記することは、逆に、その他の具体的人権については制約できるということになります。
この考え方に私は必ずしも異論はありませんが、仮に、緊急政令について既存の緊急事態法制によるのであれば、既に制約され得る人権が法律上明らかになっているわけです。したがって、これで足りるとするのか。いずれにせよ、緊急政令との関連で議論を続ける必要があるように思います。
以上です。