石橋通宏の発言 (本会議)
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○石橋通宏君 立憲民主・社民の石橋通宏です。
私は、会派を代表し、ただいま議題となりました法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律案に対し、岸田総理に質問いたします。
本年七月八日、参議院選挙応援演説中の安倍晋三元総理が、山上容疑者の銃撃によって命を奪われました。改めて心からのお悔やみを申し上げます。
しかし、その後、この日本国民に衝撃を与えた事件の背景に、旧統一教会による深刻な被害が今もなお存在していた事実が明らかになりました。
私たちは、三十年以上に及ぶ政治の不作為によって旧統一教会による甚大な被害、家族崩壊、人生破壊、二世の皆さんに対する悲惨な人権侵害を許してきた重大な責任を痛感し、一日も早く真に実効性ある法制度をつくり上げる責任を果たさなければなりません。
まず、岸田総理に、過去の反省と、被害者の方々への責任、そして、私たちに課せられた極めて重たい責務をどう胸に刻み、この法案を提出され、この審議に臨んでおられるのか、伺います。
岸田総理が被害者に対する責任を痛感しておられるのであれば、これまでに少なくとも二十二件の民事上の不法行為が裁判で確定してきた事実を踏まえ、すぐにでも旧統一教会に対する解散命令請求を行うべきです。
また、同時に、二〇一五年の旧統一教会の名称変更が旧統一教会の実態隠しに加担して被害を拡大、継続させてしまった問題について、当時の下村文科大臣の関与を含め、文化庁宗務課における旧統一教会との全てのやり取り、政府内での検討プロセスを明らかにするよう命ずる決断をすべきです。岸田総理の答弁を求めます。
私たち立憲民主党は、七月末にいち早く旧統一教会被害対策本部を立ち上げ、これまで三十回以上に及ぶ会合やヒアリングを重ね、被害の実態、現行法制度による救済の限界、具体的な救済の方策等について真摯な議論を積み重ねてまいりました。
特に、被害当事者や支援者、有識者のヒアリングに力を入れ、二十人以上の二世被害者の方々から苦しく悲惨な被害実態をお聞きしてきました。今、その被害当事者の方々や、長年その支援を続けてきた弁護団や支援団体の皆さんが、政府案で本当に被害者救済ができるのかと心配の声を上げています。
岸田総理、法案の審議が参議院に回ってきたこの時点でも、被害当事者の方々がまだ不十分だと訴えておられる声に総理はどうお答えになるのか、被害当事者の方々がこれなら救われると思っていただける新法になるよう最後まで努力する覚悟がおありか、見解を伺います。
その上で、以下、法案についての懸念点を具体的に指摘していきます。
第一の懸念は、政府が本法案による規制の対象を個人から法人等に対する寄附行為に限定してしまったことです。
政府はなぜ規制の対象を法人等への寄附行為にのみ限定したのか、これによって教団との関係性の立証が被害者側には難しい個人の勧誘者が規制対象にならず、救済ができなくなる問題は生じないのか、総理に伺います。
第二に、本法案が寄附行為一般を規制対象にしてしまっていることです。そのため、NPOやNGOなどの非営利組織までもが規制の対象になり、ただでさえ脆弱な日本の寄附文化にマイナスの影響を及ぼすことが心配されています。
政府は、なぜ寄附行為一般を規制対象にしてしまったのか、それが寄附文化への萎縮をもたらさないことをどう担保するのか、御説明ください。
第三に、政府案が規制対象を寄附に限定し、その定義に無償要件を付していることです。その結果、いわゆる霊感商法等による被害が救済対象とならない懸念が生じています。
不当な勧誘でマインドコントロール下に置かれ、通常の判断ができない状態で数百円程度のつぼや経典などを数百万、数千万で購入するような場合は、正当な商取引とは言えず、本法案による規制、救済の対象にすべきだと思いますが、対象になるのかならないのか、無償要件を付した理由も含めて、担当大臣の説明をお願いします。
第四の懸念は、法案第三条が禁止規定ではなく配慮義務にとどめられていることです。私たちは、この配慮義務を禁止規定にすべきだと訴え、修正を求めてきました。
総理は、禁止行為は要件を可能な限り客観的で明確なものとして規定すべきと指摘していますが、第三条の三つの配慮義務、特に一号と三号については、既に過去の旧統一教会に係る裁判の判例で同趣旨の内容が認定されています。また、三号後段は公益法人法十七条三号とほぼ同じ規定ですし、同法第十七条四号ではいわゆるバスケットクローズが置かれ、より抽象的な規定が禁止行為とされています。
本法案で禁止行為とできない理由はないはずですが、なぜかたくなに禁止行為にしないのか、より詳細な説明を求めます。
なお、本日、衆議院において、第三条の規定に十分なを加え、十分な配慮とする修正が加えられました。また、配慮義務の遵守に係る勧告や公表、報告の求めについても修正が加えられました。これらの修正によっていかなる法的な効果と行政の対応が生じるのか、政府の受け止めを御説明ください。
懸念の第五は、寄附の勧誘に際してという要件の解釈です。これが、一回一回の寄附行為が行われるたびごとに禁止行為が行われ、困惑して寄附したことを被害者側が証明しなければならない規定だとすると、旧統一教会の被害実態、つまり、当初は困惑して入信しても、その後、洗脳によって次第に義務感、使命感を感じて進んで寄附や勧誘を行う状態に置かれているケースが救済対象にならない懸念があるからです。
岸田総理は、入信前後から寄附に至るまでが一連の寄附勧誘であると判断できる場合は対象になると述べ、さらに、一連の寄附勧誘と判断できない場合でも、入信時に抱かされた不安が継続している場合に、法人等がこれに乗じて寄附の勧誘をすれば取消し権の対象になると答弁しています。
そこで確認ですが、入信前後から寄附に至るまで一連の寄附勧誘であると判断できるのは具体的にどのような場合なのでしょうか。また、不安が継続していて勧誘側がその不安に乗じているという条件には、マインドコントロール下で寄附の時点では不安を感じずに進んで献金をしている場合も対象になるのか、御答弁ください。
第六の懸念が困惑要件です。さきに述べたとおり、旧統一教会の典型的な手法では、マインドコントロール下に置いた状態で義務感や使命感で寄附をさせます。実際に献金する際には困惑状態にはないのが一般的なのです。
岸田総理は、衆議院で、いわゆるマインドコントロールによる寄附については、多くの場合、不安を抱いていることに乗じて勧誘されたものと言え、消費者契約法改正案と新法の取消し権の対象になると答弁しました。
しかし、ここでも、不安を抱いていることに乗じてという枕言葉が付されていて、義務感や使命感で寄附を繰り返し行っている状態が取消し権の対象になるのか疑問が残ります。
総理、旧統一教会の被害者がこの困惑要件のために救済から除外されることはないということをここで明確に御答弁ください。
やはり、困惑については、消費者契約法の逐条解説を条文化すべきです。岸田総理は、逐条解説の切り張りを条文化することはできないと答弁していますが、逐条解説では、困惑とは、困り戸惑い、どうしてよいか分からなくなるような、精神的に自由な判断ができない状況と定義をされていて、切り張りではなく、条文化できない理由はないのではないでしょうか。総理、お答えください。
第七は、禁止行為第六号の要件に、必要不可欠との規定があることです。マインドコントロール下に置かれている信者に対しては、法人側は、もう一々必要不可欠と告げたり、それに類する言動を行う必要もないために、この要件がかえって現行より救済対象を狭めてしまう懸念すら弁護団から指摘をされています。
岸田総理は、必ずしも必要不可欠とそのまま告げる必要はなく、勧誘行為全体としてそれと同様の必要性や切迫性が示されている場合には適用可能で、多額の寄附に至るような悪質の勧誘事例の多くはそのような必要性や切迫性を有していると説明しています。そうであれば余計に必要不可欠と書く必要はなく、必要と書けば足りるし、それで曖昧な場合は、必要性又は切迫性を書けば足りると考えますが、総理の説明を求めます。
また、厄払いなどが対象となり得る可能性があるとの答弁もありますが、一般的な厄払いは、霊感により、不安をあおり、困惑させという他の要件から外れるので、対象となる可能性はないはずです。担当大臣の説明を求めます。
第八は、借入れ等による資金調達の要求の禁止についてです。
旧統一教会による被害実態では、資産等を処分して献金するだけではなく、資産等そのものを寄附してしまう例も多く見られています。また、寄附行為の勧誘のたびごとに明示的に借入れや資産等の売却を法人等の側が要求していたことが要件だとすれば、旧統一教会の被害には対応できない懸念があります。
この点、資産等をそのまま寄附することは禁止の対象になるのか、寄附の勧誘の際には明示的に要求がなかった場合も対象になるのか、総理、御説明ください。
懸念の第九は、時効の問題です。
信者の多くは、長期間にわたってマインドコントロールから解けず、寄附行為を続けています。山上容疑者の母親も、今も熱心な信者であることが伝えられています。となると、現実の問題として、政府案の時効十年では短過ぎるのではないでしょうか。せめて民法と同じ二十年にすべきだと考えますが、総理の説明を求めます。
懸念の第十は、この法案の債権者代位の特例では、被害信者の御家族、とりわけ長年にわたって深刻な被害を受けてきた二世信者の方々がほとんど救済されないことです。岸田総理も三名の二世信者の方々とお会いしたと聞いていますが、その二世信者の方々の多くが債権者代位では救済されないと訴えている事実をどう受け止めておられるのか、お答えください。
総理は、成人してからも遡って未成年時代の扶養義務等に係る定期金債権を取り戻すことができると答弁しています。しかし、過去に遡って債務者たる親信者が禁止行為によって困惑した状態で寄附行為を繰り返していたことを立証することは極めて困難ですし、二世被害者の保護者の多くはいまだに熱心な信者であり、立証の協力を得ることは不可能です。
総理、債権者代位で本当に実効性ある救済は可能なのか、是非二世信者の方々に具体的に御説明ください。
私たち立憲民主党は、維新の会と共同で提案した悪質献金被害救済法案で、後見人制度の補助制度を参照した特別補助制度を提案しています。この手法を使えば、マインドコントロール下に置かれて寄附を続けてしまう親信者の寄附行為を止め、家族の破綻や権利侵害を防ぐとともに、不当な寄附を取り戻すことができるようになります。
総理は、第三者が幅広く本人の行った契約や意思表示の取消しができるとすることは財産権の侵害の観点から適当ではないと述べていますが、私たちの案は、幅広く取消し権を認めるものではなく、特定財産侵害行為が認定された場合に限り、その悪質な禁止行為を行った加害者への寄附行為に限り、被害者本人の保護を確保することを目的に極めて厳格かつ限定的に適用されるものです。
岸田総理、本気で二世被害者を救済しようと思うなら、政府はこの案をこそ採用すべきだったのではないでしょうか。今後是非私たちの案を検討していただきたいと思いますが、答弁を願います。
最後に、念書やビデオ証拠の問題について確認をいたします。
衆議院での答弁で、総理は、困惑状態でサインした寄附の一部の返金の和解の合意や、寄附の返金を求めない旨の念書は公序良俗に反して無効になり得ること、念書の作成やビデオ撮影が勧誘の違法性を基礎付ける要素となり得ることなどを改めて述べています。
しかし、この答弁でも困惑状態でという条件が付されていますが、マインドコントロール下に置かれ、念書等を作成した時点では何の疑問も持たない状態である場合にも総理の説明は通用するのか、是非確認答弁を願います。
以上、いまだ残る政府案の懸念点について質問をいたしました。冒頭、岸田総理にお聞きしたとおり、これまで三十年以上に及ぶ政治の不作為で、数多くの日本国民が旧統一教会による被害に遭い、幸福追求権やそして生存権、二世たちの信教の自由などが侵害され続けてきました。
私たちには、その反省を胸に、被害当事者の方々、長年苦しんでこられた二世や御家族の方々、そして被害者を懸命に支援してこられた弁護団や支援者の方々がこれでようやく救済されると実感し、喜んでいただける法制度をつくり上げる責任があります。
岸田総理、そして与党の皆さんにも、この参議院でも最後まで充実した審議を尽くして、被害者救済のために更に良いものをみんなでつくり上げていく努力をすることを要請し、私の代表質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕