岸田文雄の発言 (本会議)

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○内閣総理大臣(岸田文雄君) 石橋通宏議員の御質問にお答えいたします。
 新法案の審議に臨む姿勢についてお尋ねがありました。
 過去数十年にわたり旧統一教会の被害が続いてきたことについては、政府として深刻に受け止めなければならないと考えております。
 このため、政府としては、旧統一教会問題に関し、宗教法人法に基づく報告徴収・質問権の行使等を通じた事実把握、実態解明、相談体制の強化等による被害者の救済、今後同様の被害を生じさせないための法制度の見直しという三つの対策を並行して進めていくこととしております。
 その中で、政府としては、改正法案及び新法案の早期の成立により、早期の被害者の救済と被害の再発防止に万全を期すべく、参議院においても丁寧に御説明し、最大限努力してまいりたいと考えております。
 旧統一教会について、解散命令請求や名称変更に係る経緯の公表についてお尋ねがありました。
 旧統一教会については、御指摘の解散命令の請求の適否を判断するためにも、まずは報告徴収・質問権を行使するとともに、弁護士の団体等からの情報も得て、旧統一教会の業務等に関して具体的な証拠や資料などを伴う客観的な事実を明らかにする必要があり、その上で、法律にのっとり必要な対応を行ってまいります。
 また、名称変更の認証申請の過程については、二〇一五年に申請が行われ、所轄庁において、当該申請の内容が法令に規定された要件を備えていることを確認し、認証の決定を行ったと報告を受けております。御指摘の文化庁における旧統一教会とのやり取り等の情報の扱いについては、文部科学省において関係法令にのっとり適切に対処すべきであると考えております。
 新法案の実効性を高めるための努力についてお尋ねがありました。
 新法案では、現行の日本の法体系の中で、許される限り最大限実効的な法案とすべく、消費者契約法に当たらない寄附も含め、社会的に許容し難い悪質な寄附の勧誘行為を禁止し、これに対する勧告、命令等の行政措置を導入するとともに、不適切な勧誘行為を受け困惑した中で行われた寄附の意思表示には瑕疵があることから、寄附者を保護するため、取消しを認める制度としております。
 さらに、寄附の勧誘に当たっての配慮義務を定め、これに反するような不当な寄附勧誘が行われた場合には、民法上の不法行為認定やそれに基づく損害賠償請求の容易化を図ります。この配慮義務規定については、衆議院での議論も踏まえて、十分に配慮を行うよう法人等に求めるとともに、勧告、報告徴収の対象とするなどの修正も行われたところであり、更に実効性が高まっていると考えております。
 この新法案と既に提出した消費者契約法等の改正法案により、多くの被害者の救済を図ることができると考えておりますが、様々な御指摘をいただいていることも承知をしております。法案の趣旨や解釈について丁寧に御説明するとともに、法案が成立した後においても、法律の解釈の周知に努め、実効性を高める努力を続けるなど、様々な御指摘に対しても最大限丁寧に対応してまいります。
 新法案の寄附の勧誘行為に係る規制対象についてお尋ねがありました。
 寄附の勧誘をしている者が個人であっても、法人等の行為と評価される場合には新法案の規制対象になります。具体的には、法人等の代表者、役員又は使用人等が行った勧誘行為は法人等が行ったものと認められることになります。また、宗教団体と委任や雇用関係がない信者が当該宗教団体への寄附の勧誘行為を行った場合においても、宗教団体と当該信者間の明示又は黙示の契約の有無など、使用人と同等程度の法人との関係性がある場合には、法人等の行為と評価することができ、新法案の規制の対象になると考えております。
 また、現在、社会的に問題となっているような悪質な寄附については、被害者において法人等と表向きの寄附の勧誘者との関係を全く立証できないということはないのではないかと思いますが、こうした点も含めて被害回復の相談に応じることができるよう、体制の充実等を図ってまいります。
 寄附行為一般を対象とした理由及び寄附文化への配慮について御質問がありました。
 新法案は、宗教法人以外が行う不当な寄附勧誘も対象とすべきもので、宗教法人に絞る必要はないと考えております。また、新法案においては、法の運用に当たっては、NPO法人等、様々な法人の活動における寄附の重要性に留意しなければならない旨規定をしております。
 本法案における禁止規定は、社会通念上、悪質、不当な勧誘行為と考えられるものであり、配慮義務も、真っ当な寄附を募っている法人等であれば当然に配慮されているものに限っています。そのため、通常の法人であれば寄附の勧誘に支障があるといったことはなく、寄附文化の醸成に対する不当な抑制にはつながらないと考えております。むしろ、不当な寄附の勧誘行為が防止されることによって、寄附への理解や寄附勧誘への安心感が高まることにもつながり得ると考えられます。
 そして、配慮義務を禁止行為とすること及び配慮義務違反の立証についてお尋ねがありました。
 禁止行為は、法人等がどのような行為をしてはならないのか明確に認識できるよう、その類型及び要件を可能な限り客観的で明確なものとして規定すべきと考えられます。
 こうした中で、現在の規定は、いわゆるマインドコントロールによる寄附について、現行の日本の法体系の中で許される限り最大限禁止行為や取消し権の対象とするとの方針の下、規定を行ったものです。
 一方、配慮義務については、適切な判断をすることが困難な状態と、勧誘によってもたらされる結果としての個人の状態を規定しています。これは、いかなる行為によるものであったとしても、寄附勧誘の際にはそのような結果をもたらさないようにすべきという規範を示すものであり、禁止行為とする場合よりも、こうした結果を招くより幅広い行為を捉えることができるため、民法上の不法行為認定及びそれに基づく損害賠償請求を容易とする効果が高いと考えております。
 このように、禁止規定について最大限規定を行った上で、さらに配慮義務の規定を行っておりますが、仮に配慮義務を法人等の禁止行為として具体化した場合には、現在禁止規定としている規定、現在禁止規定として規定しているものと同様の内容になると考えております。
 なお、御指摘の公益法人法第十七条の禁止行為は、遵守していない場合に公益認定の取消しにつながり得るという効果につながるにとどまることから、最終的に刑事罰にもつながる新法案における禁止行為の規定と一概に論ずることは困難であると考えています。加えて、公益法人法の禁止行為と異なり、新法における禁止行為は寄附の取消し権とひも付いているものもあります。
 このように、法律の趣旨が異なるものであることから、公益法人法の禁止行為規定と新法の禁止行為規定を同様のものとして論ずることは困難であると考えております。
 そして、取消し権行使の要件についてお尋ねがありました。
 御指摘の一連の勧誘行為と判断できる場合は、例えば、入信当初に身内の不幸などを挙げて不安をあおられ、教義と称して、そのような不安に乗じて身内の更なる不幸等の不利益を回避する手段を教え込むことでこの困惑させるような場合は該当し得ると考えられます。
 また、一連の勧誘行為と判断できない場合であっても、入信時に抱かされた不安が継続している場合には、法人等がこれに乗じて寄附の勧誘をすれば、新法の第四条第六号の不安を抱いていることに乗じての要件を満たすことから、取消し権の適用対象になると考えております。
 こうした場合において、自分が困惑しているか判断ができない状態で献金を行ったとしても、その状態から脱した後に本人が主張して取消し権を行使することが可能な場合はあると考えられます。
 同様に、寄附当時は自分が困惑しているか判断できない状態で、外形的には義務感や使命感で寄附を行っているように見える場合でも、先ほど申し上げたとおり、後から冷静になって考えると不安に乗じられ困惑していた寄附だったと気付いたということであれば、そのような主張、立証を行って取消し権を行使することが可能であると考えられます。
 旧統一教会関係の被害者はこのような被害例が多いと考えられることから、多くの被害者が本法案を活用することで救済され得るものと考えております。
 なお、逐条解説を条文化すべきではないかとの御指摘ですが、困惑を分かりやすく解説したものが御指摘の逐条解説であり、表現を入れ替えたとしても何ら法的な効力に変更はないと考えております。
 加えて、法律を分かりやすく解説するための表現と用例等を踏まえて規定される条文上の用語は、おのずから異なるものであると考えられます。
 一方で、困惑に該当する事例などを更に分かりやすく法律の解釈等において示すことは法律の実効性を高めるために有用であり、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。
 そして、必要不可欠の要件についてお尋ねがありました。
 議員御指摘のとおり、必要不可欠の要件は、必ずしも必要不可欠という言葉そのままに告げる必要はなく、勧誘行為全体として、それと同等程度の必要性や切迫性が示されている場合には適用可能と考えている旨、先日、衆議院において答弁を申し上げました。
 他方、御指摘のように、単に必要とすると、御指摘のような曖昧さのみならず、厄払いなど一般的に許容されている宗教活動等にまで対象が広がってしまいかねず、規制の範囲が広がり過ぎるおそれがあります。また、必要又は切迫性がある旨規定すれば足りるのではないかとの御指摘でありますが、必要不可欠とは必要性と切迫性の双方が必要な概念であり、御指摘のような規定を行った場合、やはり規制の範囲は広がり過ぎると考えております。
 資金調達要求の禁止規定についてお尋ねがありました。
 新法では、居住用不動産や個人等の生活の維持に欠くことのできない事業用資産について、法人等の側からあえて寄附者に処分による換金という手間を掛けさせて寄附するよう要求する行為を禁止しております。他方で、居住用不動産や事業用資産そのものを寄附するよう要求する行為は禁止しておりません。これは、こうした資産をあえて換金までして寄附を求める行為はより悪質性が高いと考えられることに着目したものであります。
 また、寄附勧誘の際にこういった資産の売却の求めがなく、自発的に売却し、寄附を行った場合には、寄附勧誘者が第五条に抵触することはない一方で、そのようないわゆるマインドコントロール状態にある人に対する寄附勧誘については第四条の禁止行為に該当する可能性も高く、また、家族も居住している不動産を寄附する場合には、個人又はその配偶者若しくは親族の生活の維持を困難にすることがないようにする配慮義務に反する、このように考えられます。
 取消し権の行使期間についてお尋ねがありました。
 民法では詐欺や強迫に関する取消し権を二十年と設定していますが、新法案では、これに該当しない行為についても、一定の悪質性が認められる場合には取消し権の対象としております。
 このため、取消し権の行使期間については、民法よりも取消し対象が広がることとの比較考量で短くなりますが、一方で、いわゆるマインドコントロールから脱するために相応の期間を要する事例があることを踏まえ、寄附の意思表示をしたときから十年間とするなど、それ以外の消費者契約法の取消し権の行使期間より長い期間を設定することとしております。
 債権者代位権の特例についてお尋ねがありました。
 御指摘の野党案については、既に国会に提出された法案であり、政府の立場から意見を述べることは控えますが、政府提出の新法案においては、自ら権利を保全するために必要な範囲で、他者の権利を行使することを認める制度である債権者代位権を活用しやすくしており、これによって、個人の財産権を侵害せず、今後発生する債権も含めて、家族らの被害救済につなげることができると考えております。
 一方、債権者代位権は使いにくいとの指摘があることから、債権者代位権の適切な行使に向けて、法テラスと関係機関が連携した相談体制の充実を進めてまいります。
 また、配慮義務の規定では、寄附の勧誘に当たって、寄附者やその配偶者、扶養親族の生活の維持に関する配慮義務を規定しております。これにより、家族自身を当事者とした民法上の不法行為の認定やそれに基づく損害賠償請求が容易となり、家族の被害救済の実効性を高めることができると考えております。
 なお、扶養債権の範囲を超えて、家族を含めた第三者が幅広く本人が行った契約や意思表示の取消しができるとすることは、個人の財産権の侵害の観点から適当ではないと考えております。
 マインドコントロールの下でサインした念書の有効性についてお尋ねがありました。
 当時は自分が困惑しているか判断できない状態で、何の疑問も持っていないような状態であったとしても、その後脱会して冷静に考えると、当時、不安に乗じられ困惑していたということであれば、そのような状態でサインした寄附の一部の返金の和解の合意や、寄附の返金を求めない旨の念書は公序良俗に反するとして、無効の主張、立証をすることが可能となり得ると考えております。
 そして、残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)
   〔国務大臣河野太郎君登壇、拍手〕

発言情報

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発言者: 岸田文雄

speaker_id: 6324

日付: 2022-12-08

院: 参議院

会議名: 本会議