深山延暁の発言 (安全保障委員会)

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○深山参考人 おはようございます。ただいま御指名いただきました深山延暁と申します。
 意見陳述に先立ちまして、去る四月六日に発生したヘリコプター事故により殉職された坂本雄一第八師団長始め五名の方々に謹んで哀悼の誠をささげるとともに、いまだ行方不明の方々が一日も早く救助されることをお祈り申し上げます。
 私は、議題となっております防衛省が調達する装備品等の開発及び生産のための基盤強化に関する法律案について、賛成の立場から意見を述べさせていただきます。
 私は、一九八三年に当時の防衛庁に入庁して以来、公務員人生の大部分を防衛庁及び防衛省で過ごし、二〇一八年から二〇一九年までの一年間、防衛装備庁長官を務め、退職いたしました。いろいろな経験を積んだつもりでおりましたが、防衛装備庁長官に就任したとき、私の予想をはるかに超える厳しい状況に防衛産業があるということを実感いたしました。このときに私が突きつけられた課題のうち三つを、この法案との関係で御説明させていただきます。
 第一は、下請企業が事業をやめてしまうという問題でありました。
 防衛装備品は、主契約企業の下に膨大な数の下請企業が入ることが通例です。私も若いときに、戦車は千社という言葉を職場の先輩から教えてもらいました。これは、戦車、タンクのことであります。この戦車の下請は約一千社だということです。このように膨大な数の下請企業の存在は知っていましたが、かつては、下請企業のケアは主契約企業に委ねていたというのが実態でした。しかし、それでは済まなくなってきた。
 私の在任中に、モデルケースとして、政務三役の御指導もあり、潜水艦の下請企業のネットワーク、これがまさにサプライチェーンですけれども、これの調査を行いました。しかし、この調査は、企業の数も膨大で、困難を極めました。途中段階でこのネットワークを図にしてもらうと、あたかも人体の毛細血管図のようになっていました。このいわば毛細血管網を健康に保たねば、装備品は造れません。健康に保つ対策を行うには、まず実態を知る必要があります。この点で、本法案にサプライチェーン調査に関する条文が盛り込まれたのは大きな前進であると考えております。
 第二に、下請だけでなく元請企業も事業をやめてしまう、こういう問題にも直面しました。
 私が直面した問題は、ある車両メーカーの自衛隊車両新規開発事業からの撤退でした。もちろん、企業の事業見直しは常にあり得るところです。しかし、防衛省・自衛隊が撤収してほしくないと思っている企業が防衛事業をやめると言う。これはなぜか。それは防衛事業に会社から見て魅力がないからだと思います。
 防衛産業といいますと、政府と結託して暴利を貪っている、あるいは、経費のごまかしをして会計検査院に指摘されたというようなことを言われることがあります。しかし、私の見た防衛産業の実態は、このようなイメージからはほど遠いものでありました。
 最近、諸物価高騰の中で、大企業による下請いじめというようなことが報道されることがあります。材料費や製造費が高騰しても、それを製品の価格に転嫁することを許してくれない、結果として、下請企業が利潤をなくして苦しむという構造と理解しております。私が自分の経験を総括して思ったのは、防衛省が、そして私がしてきたことは、防衛省による防衛産業いじめだったのではないかということです。
 毎年十二月に政府予算案が決まります。そこに至る過程で主計局とぎりぎりの折衝をします。防衛省が要求する段階でかなり絞った予算を、更に主計局でごりごり絞られ、そして予算額が決まります。ここで決まる装備品の予算が、その後の契約額の天井になります。予算が成立すると、その範囲内で入札し、あるいは交渉をするわけです。企業がこの価格ではできませんと言っても、予算がないからそれでやってくれと言うしかありません。その結果、企業側からすると、経費を転嫁しづらく、かつ細かいことばかり注文される、魅力のない事業になっていた、これが実態ではないかと思います。
 また、多くの方が抱いているイメージとして、主契約企業となる会社は、名の通った会社ばかりで体力もある、口では困ったと言うけれども、大して困っていないんだろうというのがあるのではないでしょうか。しかし、日本の主契約企業となるような防衛産業の場合、会社全体の売上げに占める防衛部門の割合は最大で二〇%弱、多くは数%から一〇%台の前半です。そして、私の知る限り、こうした会社も部門制を取っております。すなわち、防衛部門は防衛部門でほとんど独立採算を図らなければならない。
 先ほど、経費のごまかしという話をしましたが、確かに過大請求問題は過去にありました。しかし、防衛部門独立採算制の中で契約額を絞られた結果、何とか防衛部門の中で足りない経費を捻出せざるを得ず、別の契約で過大請求を行ったという例もあったと記憶しております。もちろん、過大請求は許されません。しかし、背景事情はよくよく考えるべきだと思います。
 こうした点を改善するには、適正な契約額を確保することと、装備品の販路を拡大していくことが重要だと思います。適正な契約額については、これは法案には直接書かれてはいませんが、今年度から契約の基礎となる原価計算の算定方法を変更し、適正な利潤を認めることとされています。また、装備品の販路拡大については、装備移転を円滑に行うための措置が法案に規定されております。装備移転を進める上では様々な取組が必要ですが、法案に盛り込まれている助成金交付の措置も装備移転を進める上では大きな力になると考えます。
 第三に、防衛産業が持つ情報をいかに守るかという課題でした。
 これには大きく分けて二つの面があります。一つは、コンピューター上に存在する情報を守ること、サイバーセキュリティーの問題です。もう一つは、情報を持つ人が情報を漏えいすることをどう防ぐかです。
 防衛産業に対するサイバー上の不正アクセス事件は過去にも何度もありました。防衛省は、今年度から新たな防衛産業サイバーセキュリティ基準を導入すると聞いております。この法案には、サイバーセキュリティー強化を支援できる枠組み、特に下請企業の事業支援が可能になる枠組みが規定されております。大いに期待したいと思っております。
 また、これまで、いわゆる省秘、これは自衛隊法上の秘密という意味で、これについては、企業の方々には契約上の義務として保全することをお願いしてきましたが、この法案により、保全が法律上の義務となり、罰則もかかることになります。機微情報の取扱いがより確実なものとなるように願っております。
 以上、三点について申し上げましたが、最後に、私が防衛装備庁長官在任時に感じた、装備品の生産や開発を進める上での大きな壁について申し上げたいと思います。それは、我が国に広く存在する、装備品生産や研究に関わることへの忌避感、そんなことに関わりたくないという風潮です。
 防衛装備庁に安全保障技術研究推進制度というものがあります。これは、防衛分野での将来における研究開発に資することを期待し、先進的な民生技術の研究を公募し、採択した研究には補助金を支給しようという制度です。
 ある年に大学の先生から応募があり、採択させていただきました。ところが次年度になり、継続して補助しようと考えていたところ、学内の反対の声のために補助を辞退されたということがありました。大学が防衛に関する研究を避けるということは戦後一貫しております。もちろん、防衛省の援助を受けるのもやめるのも御本人の自由です。それは分かっていても、こうした現実を突きつけられたことは私にとってショックでありました。
 また、いわゆる防衛産業のホームページを見ると、やっていただいているはずの防衛部門にはなかなか到達できないということがございます。各社の防衛部門の方々は、仕事の重要性を感じて日々努力していただいているのは紛れもない事実です。しかし、経営のリーダーシップを取っている方々はどうなのだろう。やはり死の商人と言われるリスクを恐れているのか、私はこう感じることがありました。
 こうした防衛や軍事を忌避するという風潮は、かえって最新の安全保障環境や軍事問題に関する鈍感さを生んでしまうのではないかと思います。現在では、民生技術と防衛技術の垣根はないに等しいと申し上げられると思います。しかし、防衛や軍事をよく知らなければ、極めて機微な軍事に転用できる民生技術を、うかつにも渡してはいけない国に渡してしまうということも起こり得ます。自分は軍事に関わりたくないという方がいることはよく分かりますし、個人としてその方のお考えは尊重されるべきです。しかし、日本全体として見れば、優秀な方が大勢、防衛の事業に関わっていただく必要があります。
 この場にいらっしゃる委員の皆様は、お立場の違いはあれ、安全保障問題や防衛問題の重要性について共通の思いを持っていらっしゃると思います。防衛の事業に携わっている方々の仕事の意義を評価し、勇気づけることを是非考えていただきたいと切望いたします。そのことが日本の防衛力を支えることに大きくプラスになると考えます。
 以上で私の意見陳述を終わります。(拍手)

発言情報

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発言者: 深山延暁

speaker_id: 32755

日付: 2023-04-25

院: 衆議院

会議名: 安全保障委員会