佐藤丙午の発言 (安全保障委員会)

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○佐藤参考人 おはようございます。拓殖大学の佐藤でございます。
 本日は、防衛産業の抱える問題について、今回の法案というのは非常に力強い一歩だと考えます。その観点から、本日は、この法案に関する問題について、参考人として意見を申し上げたく思っております。
 もう既にほかの参考人の方々が強調されましたように、日本の防衛産業は、自衛隊を運用する上で欠かすことができない存在であると思っております。この問題を議論する際には、どの方面から議論するかによって議論の組立て方が異なります。本日は、防衛産業をめぐる最近のトレンドを中心に、強化法案に係る課題を述べさせていただきたいと思います。
 まず、防衛省にとって防衛産業は、政策を実現する上で、三自衛隊に加えて四本目の柱であることは言うまでもありません。しかしながら、自由主義社会においては、防衛生産というのは主に民間企業によって担われております。技術の特許を防衛省が保有しているケースも多いと思いますが、完成品を製作、納入するのは民間企業の役割になっております。
 防衛産業には、完成品を生産、納入するプライムコントラクター、そして、比較的小規模ではありますが、防衛生産や特定の技術に特化した能力を持つ専業の社の組合せによって構成されております。これはもう既に指摘された点でありますけれども、防衛産業は極めて裾野が広い産業だというふうに形容されます。
 日本の防衛生産は国産比率が高いというふうに言われますが、自国産の兵器システムが少ないのも日本の防衛産業の大きな特徴であります。自衛隊が求める高性能な近代兵器は、主にライセンス生産やFMSなどで入手されており、基本技術から完成品までの完全国産という兵器システムは極めてまれな事例となっております。
 しかし、このような状況というのは日本固有の問題ではございません。アメリカや欧州においても、防衛技術を自国単独で担うのは困難な時代になっております。したがって、各国は、それぞれの兵器システムを完成する上で、いかに国際的に技術のアクセスを高めるのか、そして、国内で製造される技術を含めて、ある意味で国際的な技術獲得競争というのが展開されております。
 ただ、この技術獲得競争というのは、相手国、次第によっては必ずしも対立的なものではございません。実際、防衛技術を調達する際には様々な方法が検討されております。国内の技術を使う場合、国際共同開発で相互に補完する場合、必要な技術だけを入手する技術協力、又は、これが近年のトレンドだと思いますが、一般に流通している技術を最適化しながら、要は民間技術を活用しながら必要な防衛生産を行う方式も存在すると思います。
 そういう意味で、防衛生産では、技術を保有する企業や国とのパートナーシップが何よりも重要になっております。アメリカにおいても、世界最高水準の技術を単独で持っていないと認めており、パートナーシップを構築するのが重要な課題であるというふうに規定されております。
 防衛産業が直面しているもう一つの問題は、需要と供給のバランスでございます。
 この問題は、ウクライナにおける事態に象徴されるように、侵略等に対処する場合、それぞれの国が単独で軍事力を準備するのではなく、場合によっては国際的な支援を仰ぐことが一般的な形になっております。よく、単独で、自国で防衛力を全て涵養し、保存し、貯蔵し、それを使って防衛するというイメージが流布されておりますけれども、国際的にはそういうふうな事態は極めてまれな事態ということになっております。
 ただそれは、他国に余剰の軍事生産力がある場合に可能になるものでございます。同時にこれは、各国の防衛生産に緊張状態をもたらすものであることも言うまでもありません。
 米国は現在、ウクライナに対して大規模な軍事支援を行っておりますが、その軍事支援を実施する際に、国内での需要と国外における需要をどのように均衡させるのか、これがなかなか解くことができない重要な課題であるというふうに言われております。
 日本国内の事情を考えたときに、日本の防衛産業の生産能力は自衛隊による調達に大きく依存しておりますので、それを超えるような生産余力を持っておりません。したがって、量的な需要の拡大が生じた場合は、それが自衛隊のものであれ、国外に輸出するためのものであれ、生産ラインをいかに確保するのか、また、必要に応じてその生産ラインをどのような形で増加させるのかというのが重要な課題になっております。民間製品と自衛隊に関わるような防衛装備品を共に同じ技術で生産することによるコストの削減というのは、ここから出てくる議論であります。
 日本の防衛産業が直面する三つ目の問題は、次世代の兵器システムの開発であると思います。
 プライムコントラクターの現状の開発、生産体制では、ある程度フィックスされた状況が存在します。そこで新たな技術を導入し、新たな兵器システムを開発することは追加のコストになりますので、どの企業にとってもそれは難しいものになるのではないでしょうか。また、兵器開発に必要な技術をどこから調達するのか、また、その技術に対する投資をどの程度行うのかという問題は、企業の側の論理からすると、必ずしも大胆に行動できない状況があります。
 配付させていただいたペーパーの裏側に、兵器のライフサイクルの図をつけております。これは、特定通常兵器使用禁止制限条約の、無人兵器システムの政府専門家会議の資料の中で示されたものでございます。
 これで分かるように、兵器システムの開発においては、コンセプト段階から、設計段階から破棄の段階まで様々なレベルが存在し、そこには多様な企業が関わることが可能になっております。無人兵器システムの議論においては、ここにどのような形で人工知能の技術開発が入ってくるのか、それをどういうふうに規制するのかという問題がここで議論されたわけですけれども、これは、防衛生産を議論する際にも参考になると思います。
 すなわち、様々な段階が存在するがゆえに、そこには様々なアクターが関わる余地があるということです。将来の兵器システムを検討する際には、いかに多様な新規参入を含めた民間企業を関与させるかというのが重要なポイントになってきております。
 今回の法案では、既存の防衛産業の強化について重点的に対処されていると思います。しかし、日本の防衛産業基盤の強靱性を維持するためには、これだけでは、非常に残念なことではありますけれども、まだ実施すべき措置が十分あるというふうに考えております。
 このような状況を踏まえて、今回の法案の特徴と課題から、幾つかの論点を挙げさせていただきたいと思います。
 まず第一に、防衛生産基盤維持を目的とした政府支援において、生産及び経営の安定性というものが強調されております。
 しかし、この安定性の定義は、防衛省・自衛隊側にとって安定的な供給が確保されるということを暗黙の前提にしており、必ずしも兵器システム開発自体の安定性というものが議論されていない、想定されていないように思います。この点について更に深く議論していく余地があるというふうに考えております。
 第二の問題として、移転に関する支援が挙げられます。
 生産の量的規模を維持する上で、防衛装備移転は不可欠であるということは言うまでもありません。法案では移転を目的とした仕様変更への対処がなされております。
 この問題においては、完成品の仕様変更だけでなく、先ほどお示ししたライフサイクルに関わる生産システム全体の中で、輸出を当初から可能にするような仕様の製品の製造も、同盟国及び友好国との対話の中で、対話を通じてそのような仕様の製品の製造も可能にするようなことを考慮するのも重要な点であるというふうに考えております。
 第三に、政府による技術維持に関する支援の問題があります。これは指定装備品製造施設の問題であります。
 これは必ずしも政府工廠を再建するということを示しているものではないと思いますけれども、防衛省・自衛隊にとって必要な死活的な技術基盤や生産基盤を維持するために欠かすことができない技術について、政府の積極的な関与が規定されているものでございます。
 ただ、このような措置は、もっと極端な言い方をすれば、政府工廠のようなものというのは、それが必要とされなくなった、若しくはそれを維持することができなくなったという事情も存在します。生産効率あるいは兵器システムの多様性を担保するためには、やはり民間企業による競争というものにいかに委ねていくかということが重要だと思います。それを促すような政府の関与も重要な点であるというふうに思います。
 第四には、今回の法案では必ずしも明確に規定されていない国際的な技術アクセスの問題と、第五に、新興技術を活用した次世代兵器システムの開発をめぐる問題を指摘させていただきたいと思います。
 これらの問題は、単純な解決策若しくは突破口があるわけではありませんけれども、将来における日本の安全保障を考察する上で極めて重要であると考えます。防衛産業は、今のシステムを維持する、若しくは製造するだけのものではありません。将来の日本の安全保障をいかに維持していくのか。国際的な技術開発、兵器システムの開発の状況に合わせて常にアップグレードしていかなければ、日本は、防衛省・自衛隊というのは、すぐに対応が遅れるものになってしまうと思います。したがって、これらの問題を今法案の先の課題として検討していただければありがたいと考えております。
 以上、見解を申し述べさせていただきました。
 どうもありがとうございます。(拍手)

発言情報

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発言者: 佐藤丙午

speaker_id: 2770

日付: 2023-04-25

院: 衆議院

会議名: 安全保障委員会