重竹尚基の発言 (経済産業委員会)

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○重竹参考人 ボストンコンサルティンググループシニア・パートナーの重竹と申します。
 このような貴重な機会をいただきまして、大変ありがとうございます。
 弊社は、経営コンサルティング会社として、グローバルに様々な企業や政府の戦略の立案、実行のお手伝いをしております。中でも、GX、グリーントランスフォーメーションは、これをどう実現していくか、これが大変ホットなトピックスとなっており、私自身も日本においてそのようなテーマを幾つも手がけております。
 本日は、そういった経験も踏まえまして、私の意見を本法案に賛成という立場から申し述べさせていただきます。
 今日は、三つのお話を申し上げたいと思います。一点目は、そもそもなぜGXを実行するのかというその意味と、その進め方の留意点について。二点目は、GX推進法がなぜ必要なのかについて。三点目は、GX推進法がGXの実現にどう役立つのかについてです。
 まず一点目に申し上げたいのは、そもそもGXは官民が総力を挙げて取り組むべき歴史的転換点の課題であり、その特性上、官の役割が極めて重要であるということです。
 釈迦に説法ですが、GXは百年に一度の抜本的なエネルギーインフラシステムのガラポンです。その取組の巧拙が将来の日本のエネルギー価格を左右し、日本の様々な産業の国際競争力を左右することになります。結果として、素材などの基幹産業の空洞化を招く可能性もあります。
 特に、エネルギー資源のほとんどを海外に依存している日本にとっては、エネルギーの安定供給、これを確保するとともに、いかに経済合理性高く脱炭素化を実現するか、これが大きな課題であり、産業界だけでなく、国民生活にも大きな影響を与えます。
 一方で、同時にGXは、日本が得意とする省エネ技術、新エネルギーなど、こういった技術をてこに、新たな成長を目指す機会ともなります。失われた三十年から日本を新たに再成長軌道に戻す重要な取組です。したがって、GXは、日本が、エネルギーの安全保障、経済合理性の高い脱炭素化、それから成長、この三つを同時に実現するという難しい方程式を解く、やらなければならない、かつ絶対に失敗のできない取組となります。
 また、GXの中でも、脱炭素、これは世界が一体となって取り組む必要があります。日本だけでは解決できない問題、民の取組だけでは解決できない問題もあります。例えば、CO2の排出をどうカウントするか、グリーンの基準などの標準化、これは国際ルールの設定の問題です。この動向により、日本が決定的に不利にも有利にもなります。
 このようなGXの歴史的な意味合い、難しさ、重要性を考えると、GXの取組は、民の自助努力だけではなく、官が枠組みをつくってリードしていく、こういったことが不可欠ではないかと考えております。
 二点目、本法案の必要性です。すなわち、GX推進法は、政策的てこ入れにより、GXの実現に向けた民のコミットメント、これを引き出すということ、それから同時に、タイムリーにGXの取組を進める基盤としてGXの実現への道を開くということです。
 脱炭素化の選択肢、これは、再エネ、グリーン水素、アンモニアなどなど、いろいろいろいろ種類があります。これらのクリーンエネルギーは、供給側、需要側共に、まだ技術的課題、経済性の問題があります。すなわち、供給側は、いかに安定的に、かつ安価にクリーンエネルギーを供給できるようにするか、需要側は、経済合理性が必ずしもすぐ合わない中でどうやって脱炭素手段を導入していくか、これに悩んでいます。
 GXの実現には、これらの悩みながら取り組んでいる民間の動きを加速化していく必要があります。その意味で、GX推進法は、まさに民が腹をくくって動き出すためのコミットメント、これをさせるてこであり、弾み車となります。
 脱炭素を実現するには、技術開発など、まだ解決する様々な課題があります。例えばグリーン水素など、こういった新エネルギーは、これから供給も需要も同時に立ち上げて、全く新しいサプライチェーンをつくっていかなければなりません。技術を磨き上げてコスト削減を進めていく、必要十分な量の新しいインフラを構築する、こういったリードタイム、これはかなりかかります。二〇五〇年の脱炭素化の実現というとかなり先に聞こえますが、実は、それに間に合わせるためには、今、日本として誰かが大規模な先行投資をして動き始めないと間に合いません。
 一方で、GXは、省エネ技術、新エネなど、日本にとって新たな成長の機会をもたらします。ただ、こちらはグローバルな競争になりますので、早く動き始めないと間に合いません。もし日本が遅れると、日本はこの機会を逃してしまうことになります。その意味で、本法案は、企業が今すぐ動き出すことを促す、まさにタイムリーであると言えると思います。
 グローバルには既に、御案内のように、政策主導で民を動かす取組が始まっています。昨年米国で成立したインフレ抑制法、IRA、これは十年間で五十兆円。これはエネルギー関連部分だけの試算と言われていますので、全体では百兆円を超えるという試算もあります。既にグリーン水素が経済性が現時点で合うような、こういったレベルの思い切った支援を打ち出しています。欧州も今年に入って新たに、ネットゼロ・インダストリー・アクト、ネットゼロ産業法とでも訳すのでしょうか、これで追加的な支援をつい最近打ち出しました。その規模は三十五兆円レベルと言われています。
 GXのグローバル競争に勝つためにも、一刻も早く、本法案を基盤として日本も動き出すべきだと考えています。
 三点目に申し上げたいのは、GX推進法を基盤として、GXの目的の実現に向けた様々な各論の具現化が、日本ならではの、より効果的な取組として進むということです。
 これはまた釈迦に説法で恐縮ですが、脱炭素化実現の定石は、まず一丁目一番地の省エネに始まります。そして、徹底的に電化を進めて、その電力を再エネなどのクリーン電源化します。その上で、どうしても電化できないエネルギーの需要、例えば工場の高温の熱需要など、こういったものをグリーン水素、アンモニアなどで対応します。それでもどうしても残ってしまうところ、これをCCS、DACなどで回収します。
 さらに、お天気任せ、風任せというところがある再エネ電源、これを安定化させるために、蓄電池、それから調整電源、この調整電源もクリーン電源である必要があります、こういったものを導入する。さらに、増えた電力をきちんと最適に届けられるように電力系統をきちんと強化していく。こういった様々な取組を組み合わせて、日本のエネルギーシステムを抜本的に変える必要があります。
 このように、脱炭素の取組は選択肢がいろいろいろいろあります。これは相互関係があります。例えば、再エネ、グリーン水素、アンモニアのように、何かを増やせば何かが減るといった関係もありますし、再エネ、蓄電池、調整電源のように、何かが増えれば何かも増える、こういった相互関係もあり得ます。
 したがって、いろいろな選択肢を追求した結果、日本が最終的に二〇五〇年に脱炭素化を実現したとき、どの選択肢がどれくらいの量を占めているか、結果的にどういうエネルギー構成になっているかは、現時点では分かりません。それは、今から二〇五〇年までの技術開発や技術の磨き上げによって、一義的には、どの選択肢が経済合理性が優れているか、こういう観点で決まります。なぜなら、需要と供給は、お互いの経済合理性判断が合致するかどうかで決まるからです。
 一方、GXのそもそもの目的を考えると、経済合理性に加えて、別の判断軸が必要になります。具体的には、エネルギー安全保障の観点から優れているか、それから、日本の成長に貢献するかという、この二つの政策判断です。エネルギー安全保障の観点が政策的に入ること、これは余り違和感ないところだと思いますが、成長分野についても政策判断が入るのはちょっと違和感を持たれる方もいらっしゃるのではないかと思います。これは、過去何度か起きている、日本が技術で勝って事業に負けるという、この事象を繰り返さないためです。
 日本が技術的にリードしていたものがいつの間にか海外勢に逆転されてしまうということ、過去に起こっています。一つの原因は、世の中への実装が進んでスケールアップが必要なときに、そのタイミングとレベル感を見誤ったためです。これは、正しい競合を見ていないために起こります。本来の競争相手はグローバル市場をにらんだ海外企業なのに、国内の競合相手との彼我差で、これに着目して小さな打ち手で満足してしまったり、また、自社内の他の事業の比較で、公平性を担保するために十分めり張りのついた投資ができないなどの理由によります。
 国益を左右するような重要なGXの取組については、民間の個別の動きに任せるだけではなく、事業化、量産化のところでグローバルに勝てるような大きなスケール、これを実現するような支援をしていく、こういった政策的な判断が鍵になります。
 GX推進法は、これらの様々な選択肢の磨き上げ、導入、これに民がコミットするための基盤であるとともに、道中どの選択肢がより経済合理性が高くなるか、エネルギー安全保障に資するか、日本の成長に貢献するかというGXの三つの目的を実現するという難しい判断、これを政策的にかじ取りしていく基盤にもなります。この基盤を基に今後様々な各論を政策、制度的に加えていくことによって、GXの目的の実現を加速化することができます。その際、日本はグローバルの動きから学び、より効果的に取組を進めようとしているわけです。
 例えば、欧州においては、EU―ETS制度で企業のCO2排出に対して課金をすることによって、十年がかりで需要側を動かすことから始めました。さらに、近年、大胆な支援策をスタートさせています。一方、米国は、先ほど御紹介したインフレ抑制法で思い切った支援、これを供給側に提供することによってGXを加速化しようとしています。少し乱暴に単純化して申し上げると、EUは規制から入って、時間をかけてじわじわと進めてきました。一方で、米国はここに来て大胆な支援主体で一気に動かそうとしています。
 翻って、日本の取組は、カーボンプライシングと投資促進策という規制と支援、これを一体的に運用していく、そして民を動かしていくということを志向しています。この日本ならではの取組は、頑張るところが報われる、こういうメカニズムが働きます。また、政策的なてこ入れに甘えずに、民の自助努力を促すことにもつながります。GX推進法を基盤としたてこ入れ、さらに、こういった日本ならではの政策、制度的な要素を加えていくことによって、エネルギー安全保障、経済合理性の高い脱炭素化、成長、この三つの目的を全て達成しようという難しい狙い、これが欧米の取組よりも効果的に進むのではないかと考えています。
 以上、三点申し上げました。まとめて、三点とその要点を繰り返します。
 一点目。そもそもGXは官民が総力を挙げて取り組むべき歴史的転換点の課題であり、その特性上、官の役割が極めて重要である。
 すなわち、百年に一度のエネルギーのガラポン、産業競争力を左右します。エネルギー安全保障、経済合理性の高い脱炭素化、成長、この三つを同時に達成させる。難しいがやらなければならない、失敗できない極めて重要な取組です。これは民の自助努力だけでは難しく、官のリードが不可欠であるということです。
 二点目。GX推進法は、政策的てこ入れによりGXの実現に向けた民のコミットメントを引き出す、これと同時に、タイムリーにGXの取組を進める基盤としてGX実現への道を開くということです。
 すなわち、二〇五〇年の脱炭素化を目指すには、実現するには、今すぐ動き出さないと間に合いません。脱炭素化の様々な選択肢、この取組に悩んでいる民間がすぐに今動き出すこと、これをコミットさせるてこであり、弾み車になるということ。
 三点目。GX推進法を基盤として、GXの目的の実現の加速化に向けた様々な各論の具現化が、日本ならではの効果的な取組として進みます。
 すなわち、規制と支援を一体的に運用する、こういった日本ならではの政策的な措置を講じて、二〇五〇年に向けて、経済合理性のある脱炭素化、成長、エネルギー安全保障という、民間の自助努力だけでは実現が難しい三つの目的を同時に実現するという、この取組を効果的に進めていくことが可能になるのではないかということです。
 私からは以上です。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 重竹尚基

speaker_id: 19057

日付: 2023-03-17

院: 衆議院

会議名: 経済産業委員会