石上千博の発言 (経済産業委員会)
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○石上参考人 ただいま御指名いただきました連合の石上でございます。
本日は、このような場で私たち連合の意見を表明する機会をいただきまして、ありがとうございます。働く者の立場から、GX法案に関する連合の考え方について意見を述べさせていただきたいと思います。
連合には、約七百万人の労働者が四十七の産業別労働組合組織を通じて加盟をしております。GXの推進は、産業、企業、地域経済、そして生活者の日々の生活に大きな変革をもたらすというふうに考えております。
特に、二酸化炭素を多く排出する産業にとっては、国際競争のルール作りだけでなく、産業そのものの転換も視野に様々な取組が進められており、連合の仲間からは不安と期待の声が多く寄せられております。本日申し上げる意見は、そうした背景をベースにしておりますことを御理解いただければ幸いです。
初めに、今回のGX推進法案に対する連合の評価を申し上げます。
昨年開催された政府のGX実行会議には、我々連合会長の芳野が構成員として参加をし、意見反映に努めてまいりました。取りまとめられたGX実現に向けた基本方針には、連合が繰り返し求めた公正な移行の実現が政策イニシアティブの柱の一つに加えられており、そのことは評価をしておりますけれども、今回の法案には公正な移行が含まれておらず、この点については修正を求めたいと思います。
また、今回の法案のたてつけは、二〇三〇年目標、二〇五〇年カーボンニュートラル実現に向けた移行の枠組みづくりに重きが置かれていると理解をしておりますけれども、具体的制度設計の段階においては課題があるというふうに認識をしております。
本日は、そうした課題の中から、大きく三点、一つ目は公正な移行の実現について、二つ目はGX移行債等の投資対象の条件について、そして最後に成長志向型カーボンプライシングについて述べたいというふうに思います。
まず一点目は、公正な移行の実現についてです。
ここ数年のCOPの最終合意文書には、公正な移行が重要であるということが明記されてきました。我が国においては、二〇二一年十月に閣議決定されたパリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略で言及されて以降、昨年末に取りまとめられましたGX実現に向けた基本方針においても、柱の一つとして新たに盛り込まれるに至りました。
しかし、今後十年のロードマップに盛り込まれておらず、社会対話や社会保障など、具体的な取組も示されておりません。この社会対話や社会保障の必要性は、COP27の最終合意文書、シャルムエルシェイク実施計画にも明示されております。
本法案は、排出削減と産業競争力強化、経済成長の同時実現を達成するための炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進を目的としておりますけれども、その土台となるのは、グリーンでディーセントな雇用への公正な移行の実現だというふうに思います。各条文に記載されている目的とありますけれども、これを炭素成長型経済構造への円滑かつ公正な移行の推進と修正することを求めたいというふうに思います。
さらに、国際公約と競争力強化、経済成長の同時実現を目指すには、失業なき労働移動はもとより、地域脱炭素、産業移転に伴う地域経済の在り方を含む分野横断的課題の深掘りが必要であり、国、地域、産業の各レベルで様々な関係者が入って、政労使が加わる中で社会対話を行うとともに、省庁横断的対応に向けた体制を構築することも必要だというふうに考えます。
なお、失業なき労働移動を円滑に実現するためには、多様な働き方に中立な社会保障制度、学び直しに必要な社会保障など重層的なセーフティーネットの構築、中小零細企業への雇用への影響を適切に評価をしていただいて、サプライチェーンだけでなく、国、地域レベルでの目くばせと強力な支援を行うことも必要だというふうに思います。
これらの実効性を担保するためにも、公正な移行の実現を今後十年のロードマップに盛り込み、政労使が加わる中で社会対話の設置、分野横断的課題を深掘りをする、そういう体制を是非要望をしたいというふうに思います。
二点目は、GX経済移行債等の投資対象の条件についてです。
GX実現に向けた基本方針では、国による投資促進策の基本原則として、その基本条件には、国内の人的、物的拡大につながるものとあります。この基本条件により、雇用の拡大はもとより、産業人材への更なる投資が一層促進されることを期待するところでありますけれども、雇用の質も重要であるというふうに考えておりまして、この基本条件に、付加価値の高い、グリーンでディーセントな雇用創出につながるものを明確化していただきたいというふうに思います。
さらに、投資先の企業においても、人権への取組を含む企業体の評価手続が確立されるとともに、いわゆるESGの社会的責任、Sや、健全な企業統治であるGの側面において、法令遵守や情報公開の取組が行われるように求めていきたいというふうに思います。
欧米を中心に、国際市場においてはESGの取組を公開する社会的要請が高まっており、日本においても、本年一月から、有価証券報告書及び有価証券届出書においてサステーナビリティーに関する企業の取組等の開示が求められており、国内企業もこうした取組を進めることにより、国際競争力の確保はもとより、国際市場でのプレゼンスが失われぬようにする必要があります。
政府においても、ESGに係る円滑な情報公開など、国際的なスタンダードの確立に向けたイニシアティブを取り、国内の中小零細企業に対するこうした取組の普及拡大に向けた技術的支援拡充など、環境整備を併せて行っていただきたいと思います。
三点目は、成長志向型カーボンプライシングについてです。
この具体的設計に当たっては、エネルギーのSプラス三Eを原則として、産業の競争力を確保し雇用への影響を最小限にとどめるため、脱炭素化への移行コストは、特定の産業だけでなく、便益を享受する国民全体で広く負担することを基本に、丁寧な議論の上で進めるべきと考えます。
この点、本法案では、賦課金や特定事業者負担金の制度の枠組みが定められておりますけれども、特定産業のみに負担を負わせないためにも、附則に、脱炭素への移行コストは、国民、企業、自治体など国全体で負担し、適正に転嫁できる環境を整備する、その際、負担は公平性、透明性を確保することを織り込むことを求めたいと思います。
また、これまでも、カーボンプライシングの在り方をめぐっては、連合の構成組織から様々な声が寄せられております。具体的制度設計の在り方によっては産業競争力や雇用にも関わる課題であり、具体的には、次の五点を念頭に検討を進めることを求めたいと思います。
一点目は、複雑な現行のエネルギー環境諸税の整理、軽減が行われないまま、賦課金や特定事業者負担金だけを増やさないこと。
二点目は、排出量取引制度が開始された後に予想される排出枠に関するルール改正や取引価格の不安定さによって生じる負担を、特定の産業、中でもGXリーグに参加する企業のみに負わせないこと。
三点目は、具体的な投資、支援の対象の設定や中長期にわたる具体的制度設計など、制度の具現化に関しては、国が責任を持ち、前面に立って国民、企業、自治体などに十分な説明を行い、国民的な合意形成を丁寧に進めること。
四点目は、エネルギー価格は国民生活や産業に大きく影響するため、特に現時点のような価格高騰の環境下にあっては、国の責任において過度な国民負担を抑制するようにすること。
五点目は、必要に応じて制度の見直しに機敏に対応できる体制とすること。
これらを含め、負担の在り方や予見可能性が確保できるよう、労使を含む関係産業の意見を十分に取り入れていただき、制度の細部設計や負担水準の設定を行うことを求めたいと思います。
最後になりますけれども、GXの実現には技術革新などイノベーションが必要ですが、イノベーションの源泉は人であり、人の意欲を引き出すためには、適正な評価と成果の公正配分に基づく継続的な賃上げが必要だと思います。
今春季生活闘争では、今週、山場を迎えました。先行する組合が相次いで満額回答を引き出し、高い水準での賃上げの流れが生まれております。今後重要となるのは、この流れを、中小企業や非正規雇用で働く仲間など、全ての働く者に波及させていくことだと思います。そのためには、労務費を含むコストを適正に価格転嫁できる環境が不可欠となります。
今年だけにとどまらず、継続して、全ての働く人々への人への投資を促進し、GXだけではなく、経済の自律的成長を実現する上でも、引き続き適正な取引環境の整備に御尽力をいただくことをお願いをし、私からの意見としたいと思います。
ありがとうございます。(拍手)