山下貴司の発言 (憲法審査会)

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○山下委員 自民党の山下貴司です。
 国民投票法について、立憲民主党の改正案概要は、政治的表現の自由に対する直接的侵害になりかねず、極めて慎重かつ厳格な議論が必要であって、既に当審査会に提出、付託された公職選挙法並びの三項目の改正案とは次元を異にする議論であることから、同一に論ずることは適当ではなく、切り分けての慎重な取扱いをお願いしたいと考えます。
 憲法上、政治的表現の自由は、言論活動によって国民が政治的意思決定に関与するという、民主政治に資するものとして憲法上保障される表現の自由の中核を成すものです。そして、異なる政治的意見の当否は、広く国民に共有される言論の自由市場で判断されるべきというのが憲法の立場です。
 特に、憲法を含め法案に関する意見表明やその勧誘は政治的表現の根幹であり、合衆国憲法草案への賛成論を三人の政治家が新聞に長期連載した「ザ・フェデラリスト」が憲法論の金字塔とされていることを例に挙げるまでもなく、国の根本規範である憲法に関する意見表明は、国民主権の基礎とも言える重要な権利です。
 このような重要性と当時の民主党の意見をも踏まえ、国民投票法では、一定の地位利用による勧誘を禁止する以外は国民投票運動を原則自由とし、その広報については、両院の代表から成る国民投票広報協議会が検討し、広告放送については投票期日前十四日間に限って禁止するなど、制約を極めて限定的なものにしており、この点は、公正な選挙のため憲法四十七条の明文で法律上の制約を認める選挙運動の自由とは異なります。
 しかし、現在の立民側の提案は、憲法改正案に関する意見表明について、何人も、発議から投票までの最大六か月の期間、国民投票運動のための放送広告を一律に禁止する、ネットの動画広告については、放送以上に扇情的な影響力を持つにもかかわらず、一般人や組織、団体の有料ネット広告は放置する一方で、政党等に限って禁止するなどを内容とするもので、公職選挙法の規制よりもはるかに厳しく、具体的な立法事実についても大いに疑問なものです。
 「フェデラリスト」の時代と異なり、現代では放送やネットがむしろ政治的表現の伝達手段としては主流であり、これら放送やネットという言論プラットフォームへの意見表明は、一部のSNSや報道を除き、基本的には無償ではありません。公職選挙法でも、政治的意見の表明について、それが選挙運動や脱法的な売名行為に当たるものでない限り、有償の政治的意見広告は禁止されていません。
 それにもかかわらず、憲法改正への賛否という国民主権の根幹に関わる政治的表現の自由に関して、全ての国民、組織、団体の国民投票運動のためのCM放送と政党等によるネット広告を発議から投票までの最長六か月間禁ずるのは、公職選挙法に定める選挙運動の規制よりもはるかに厳しい、政治的表現の自由の重大な制約と言えます。
 また、政党による憲法改正案への意見表明の重要な手段であるネット広告を禁止するのは、発議のために議論を尽くし、最も憲法改正案の賛否を説得的に論じ得る政党等の見解を幅広く国民に伝える手段を大きく制約し、国民が発議以降に賛否を検討するため政党等の見解に触れる機会を大きく損なうもので、国民にとっても、表現の自由の自己統治的価値を大いに制約するものであります。
 加えて、このような厳しい規制が相当であることを合理化するための具体的立法事実については示されていません。例えば、ブレグジットをめぐる国民投票では、広告規制をしたものの、EU離脱派と見られる組織的なネット上のフェイクニュースが氾濫し、結局効果がなかったとの指摘もあります。
 逆に、立民の規制案では、政党等にだけ有料ネット広告を禁止し、その他の組織、団体の有料ネット広告は禁止されないため、憲法改正案について、政党等以外の人、組織、団体からフェイクニュースが有料ネット広告で垂れ流された場合、憲法改正案の意義について最も知見を有する政党等がネット広告での効果的かつ正当な反論ができず、フェイクの蔓延を放置せざるを得ないという致命的な欠陥があります。
 私は、立法事実に関する検討も不十分のまま、抽象的な危惧を根拠に、いたずらに憲法違反のおそれが極めて高い法規制をするよりは、国民の代表である国会議員で構成される国民投票協議会がガイドライン等を通じて、ファクトチェックの仕組みも含め、その時々の状況に応じて緩やかな規制を示す方が穏当だと考えます。
 したがって、既に案が提出された公職選挙法並びの三項目の国民投票法改正案とは切り分けて、既に提示されたCM規制の論点メモ等も踏まえた慎重な検討をお願いして、私の意見といたします。

発言情報

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発言者: 山下貴司

speaker_id: 606

日付: 2023-03-23

院: 衆議院

会議名: 憲法審査会