新藤義孝の発言 (憲法審査会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○新藤委員 ただいま森会長から御発言がございましたように、長らく憲法調査会長、憲法調査特別委員長を務められました中山太郎先生が御逝去されました。
 私は、国会に憲法調査会を設置しようとする議員連盟の立ち上げから御一緒させていただきました。中山先生の憲法改正に向けた取組を間近に拝見し、直接御指導いただいた者の一人として、改めて深い感謝と敬意を表し、御冥福を心よりお祈り申し上げたいと思います。
 中山先生が掲げられました、政局を離れ、国民のための憲法論議を深めるとの理念を受け継ぎまして、更に憲法審査会が安定的かつ活発に開催できるように努めてまいりたいと思います。
 本日は、これまでの討議で残された具体的論点について、私にいただいた御指摘も含め、意見を申し上げます。
 まず、緊急事態における議員任期延長については、国会の議決要件を過半数とするか三分の二以上とするかについて、どのような観点から絞り込むべきか、問題提起をさせていただいております。
 私は、議決要件を過半数にすべきと決めているわけではなく、三分の二の特別多数議決とするかどうかも含め、何を基準として選択すべきか、議論の際には、日本国憲法の考える議決要件との整合性を確認する必要があると考えているわけであります。こうした考え方は、今後、他の改正項目について議論する際にも踏襲すべき基本的姿勢であるべきだと思います。
 国会の議決は、二院制国会の下、衆参それぞれが過半数で議決することが大原則となっています。過半数議決こそは民主主義の根本ルールであり、意思決定方法の原点と言えます。
 一方で、三分の二による特別多数議席は、二院制議決の例外として、除名など議員の身分喪失、秘密会の決定、衆参で議決が異なった場合の衆議院による法律案の再議決に関して規定がされているわけであります。これらは全て一院による議決行為です。それがゆえに、二院制による議決の例外として三分の二が求められています。
 過半数か三分の二の議決とするかは、その内容が重いか軽いか、特別に重要か一般的かといった観点ではなく、二院制国会の下で、衆参両院で議決するのか、一院のみで議決するのかという原則に照らした基準で判断されるとも考えられるわけであります。
 例えば、法律は衆参両院の過半数で可決、制定されますが、だからといって、法律の制定は軽いと判断されるのでしょうか。重大な案件だから三分の二の議決、軽い案件だから過半数議決というように、法案の内容で議決内容を分けていないことは言うまでもありません。
 一方で、議員任期の延長という、いわば任期の例外を決める重要な手続だから、三分の二の特別多数がふさわしいという意見が示されています。さらに、重要な議決を行う際に、多数派によるお手盛り議決や濫用を防ぐ観点から、特別多数議席を採用すべきとの意見もあります。
 それぞれ着目する観点によって判断が分かれるわけでありますが、国民を代表する国会議員の任期を変更するという重要な決定の判断に当たっては、その第一の理由を多数派による濫用や恣意的運用を防ぐ観点とするのではなく、二院制の原則という民主主義の根幹、ルールに沿っているか否かという観点を優先し、その上で、更にどのようにしたらよいか議論を深めたいと私は提起をしているわけであります。議論の末に、やはり三分の二の特別多数議席がふさわしいとの結論になる可能性も残されているとも言えますが、よくよくここは議論をすべきことだ、このように考えているわけであります。
 憲法上、両院での議決で三分の二の特別多数決とされているのは、言うまでもなく、憲法改正の発議のみです。これは、国家の基本法である憲法の安定性を重んじ、その改正の発議については、国家の根本規範である憲法の規定そのものを変更するものとして、過半数議決の例外規定を設けたものと考えられます。
 これに対して、選挙困難事態の認定議決は、憲法の規定を変更するものではなく、憲法の規定に基づいて両院が判断するものと位置づけられるのではないでしょうか。選挙困難事態の認定について、これが憲法改正そのものに匹敵する事態と判断できるかどうか、今後、各会派の委員なりの御意見をいただいた上で、更に議論を深めていきたいと思います。
 また、私たち自民党が示した緊急事態に関するたたき台素案では、議決を三分の二と示しているのではという御意見もいただきました。このたたき台素案そのものは変更しておりません。しかし、素案において規定しているのは大規模自然災害のみでした。しかし、これに加えて、審査会の議論において、感染症蔓延、テロ・内乱、国家有事・安全保障の四事態、プラスこれらに匹敵する事態を対象とすることが賛成会派の共通理解となっています。この審査会においての議論として進んでいるわけであります。
 さらに、私たちの素案で提起している事態認定は国会自身の議決のみとしておりますけれども、この点につきましても、審査会の議論においては、認定は内閣が行い、その議決は国会が行うという点で賛成会派の共通理解が進んでおります。
 憲法改正の議論は、各会派がそれぞれの意見を持ち寄り、審査会で議論を積み重ねていくことが重要であり、審査会で深められた論点は、最終的には各会派に持ち帰り、フィードバックされることになると思います。しかし、まずは審査会において議論を積み重ね、各会派の共通理解を進められるよう取り組んでまいりたいと願っております。
 次に、裁判所の関与についてであります。
 先週までの議論において、内閣や国会の権限濫用を防ぐためにも司法による関与が必要という意見と、選挙困難事態の認定は、主権者国民から選挙で選ばれた政治部門が責任を持って行うべき極めて高度な判断であり、その適切性を司法がチェックするのは人的、組織的能力に照らして困難という意見が述べられています。
 さらに、司法の関与が必要とする立場からは、国会の議決要件を過半数にするのであれば、濫用防止の観点から、より一層司法チェックの仕組みを導入すべきとの意見も述べられました。
 過半数か三分の二以上かの問題は、二院制の本質から導かれる理論的な帰結であって、濫用防止の観点のみを理由とすることではないということは改めて申し添えたいと思います。
 そして、緊急事態の認定に誰が責任を負うべきかという観点からは、一義的にそれは政治が行うものであり、その判断に対する信任は、民主主義の根幹である国政選挙において示されることになります。
 一方で、政治が最終責任を持って判断するとしても、裁判所の関与を一切否定するものではありません。例えば、現行憲法においても認められているように、選挙困難事態の認定によって権利利益が侵害されたと主張する私人がいる場合には、それを理由に裁判所に訴訟を提起することは可能です。また、選挙困難事態の認定を、選挙訴訟や住民訴訟のようないわゆる客観訴訟の対象とすることについて検討できるのではないかとも考えられます。
 選挙困難事態に対する政治の判断については、新たに司法のチェック機能を憲法に付加するよりも、現行制度の下で必要な司法関与の在り方を検討した方が、より合理的かつ現実的な方策が取れるのではないかとも思っております。この点につきましても、今後、各会派の委員なりの御意見をいただき、更に議論を深めたいと考えております。
 今朝の幹事会におきまして、来週の定例日にも審査会を開催し、議論を継続することを提案いたしました。今後も、憲法審査会が安定的に開催され、充実かつ深い議論が行われるよう、委員各位の御理解と御協力をお願いして、私の発言といたします。

発言情報

speech_id: 121104183X00520230330_003

発言者: 新藤義孝

speaker_id: 16290

日付: 2023-03-30

院: 衆議院

会議名: 憲法審査会