吉田宣弘の発言 (憲法審査会)
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○吉田(宣)委員 公明党の吉田宣弘です。
本日も意見表明の機会をいただきましたことに、会長始め皆様に感謝申し上げます。
まず冒頭、中山太郎先生に、その御功績に対し感謝の思いを添えて、御冥福をお祈り申し上げます。
さて、前回、私からは、新藤筆頭から示された、緊急事態条項における残された論点について意見表明をさせていただきました。
時間の関係で取り上げることができなかった前議員の身分復活の論点及び緊急政令、緊急財政処分の論点につき意見表明をさせていただいた後に、憲法裁判所についても意見表明をさせていただきます。
まず、前議員の身分復活について、自民党、日本維新の会、公明党、国民民主党、有志の会の五会派において肯定されているところです。私自身も賛成するところでございます。
まず、適用場面を整理したいと存じます。
議員の身分が継続されている状況において緊急事態が発生した場合には、議員任期の延長が問題になります。これに対し、前議員の身分復活が問題になるのは、議員の身分が失われていることが前提ですので、具体的には衆議院解散後か衆参議員の任期満了後ということになります。
この点、任期満了解散は、衆参共に、公職選挙法の規定により任期満了前に実施するのが原則であり、原則に基づく限り、議員身分の空白は発生しないはずです。しかし、公選法では別に、任期満了後に選挙を行うことが想定されており、この任期満了後の場合に緊急事態が発生したときには選挙ができなくなる可能性があることから、前議員の身分復活が問題になります。
私は、緊急事態における国会機能の維持という必要性の観点から、解散後、任期満了後にも前議員の身分を復活させなければならないと考えます。この点、衆参共に前議員の身分の復活が強く要請されることに違いはありません。しかし、解散の場合には、解散の効力との関係で理論構成が求められるところだと考えます。
この点、解散は決断した内閣の判断である以上、緊急事態が生じるとしたら解散は行われなかったであろうという内閣の意思を合理的に推測し、解散の効力を失わせるという意味での解散の撤回と解せることができると考えます。
次に、緊急政令、緊急財政処分の論点について意見表明させていただきます。
この論点は、自民党、日本維新の会、国民民主党が必要であるとの立場であるのに対し、公明党は不要、有志の会は更に議論が必要との立場でございます。
この点、必要とする三会派も、法律で定めるところにより、若しくは、あらかじめ法律で定めるところによりと、法律への委任を設けていることから、完全白紙委任的な緊急政令を想定しているのではないと理解します。とすれば、あくまで私の理解が間違っていないことを前提にすれば、法律の委任に基づく緊急政令について、制度的に裏打ちをした規定を憲法に設けることそのものに意義があると考えます。
この意義について肯定的に捉えることもできると感ずるところではございますが、私は、大規模自然災害やテロ、内乱など、緊急事態の範囲が事前に示されていることとの関連では、危機管理法制の中で必要なものを補充していくことで足りるのではないかと考えております。
次に、緊急財政処分についてです。
私は、財政民主主義の観点からは、緊急財政処分は簡単に肯定することはできないと考えております。不測の事態に対しては予備費で対応するということが、現行憲法下でも認められているところでもあります。
そこで、改めて論点の射程を定めれば、予備費でも補正予算でも対応できない場合を想定する必要があるのかという点になろうかと存じます。
緊急財政処分は、明治憲法下では存在したところです。この点、明治憲法下の緊急財政処分も事後的に帝国議会の承認を必要としており、財政民主主義を事後的に保障しています。
私は、財政民主主義はどのような形であれ貫かれなければならないと考えます。
そこで、この論点については、財政処分という行政行為の民主的統制と国会の機能維持ということとの関わりから考え、国会議員の任期延長や前議員の身分復活により国会の機能を維持し財政民主主義を実現すれば、財政民主主義は貫かれるのであるから、憲法規定における緊急財政処分の制度はその必要性が少ないのではないかと考えます。
次に、憲法裁判所について意見表明させていただきます。
前回の憲法審査会において、日本維新の会の岩谷先生から憲法裁判所に関する意見をお聞きしました。立憲主義の強化及び議院内閣制に内在する多数者支配の暴走を抑制する観点などから、総じて裁判所機能の強化を求めるお考えであり、民主的正統性を強化された憲法裁判所が必要であるとの御主張であると理解いたしました。非常に参考になる御意見だったと感じております。
これに対し、我が党の國重委員から、我が国の法文化や歴史に立ち返った検討の必要性、また、裁判官の人材育成、裁判の政治化、政治の裁判化への懸念など、検討されるべき課題も示されたところでございます。
この点、佐藤幸治先生の教科書によると、司法裁判所型と憲法裁判所型の現実の制度ないし機能の実態から見ると、両者の間に類似性ないし接近傾向がある、また、私権の保護ということから出発した司法裁判所型と、憲法保障自体を目的とする憲法裁判所型との違いは、軽視されてはならないが、理念のレベルにとどまって、その違いを絶対視してはならない、また、抽象的違憲審査制は、裁判所の広範な憲法判断を引き出す上で確かに有益的とは言えるが、しかし、そのことが直ちに基本的人権の保障の強化を帰結するという理論上及び実際上の保障はない、と同時に、付随的違憲審査制も、実際の調整措置を講ずることにより、抽象的違憲審査制にかなり近接した運用もあり得るとされております。
憲法裁判所の採用は、現状の統治機構の在り方に大きな影響を与えるので、多くの、しかも大きな論点をクリアしなければならないと承知しております。論点を検討するに当たっては、佐藤幸治先生の御示唆を参考に、司法裁判所でなければ駄目だとか憲法裁判所でなければならないといった二律背反な議論ではなく、司法裁判所と憲法裁判所の議論が、国民の皆様にとってどのような裁判所の在り方がふさわしいかという観点から、今後も検討させていただくこと、検討について改めて意見表明の場を与えていただきたいことをお願いして、私の意見表明とさせていただきます。