中川正春の発言 (憲法審査会)
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○中川(正)委員 立憲民主党の中川正春です。
今日は、緊急事態条項について改めて取り上げていきたいというふうに思います。
私たちは、緊急事態条項を憲法に規定することについては否定的な議論をしてきました。もう少し詳しく、この意図をお話をしたいというふうに思います。
現状でも、緊急事態の形態に応じて国の対処は法律で規定し、緊急事態宣言を総理大臣が発することで、総理大臣を中心とする政府に対して緊急事態に対処する権能を拡大する、このことを可能にしています。私は、こうした法律体系で、個々の緊急事態の状況に応じた形で総理大臣や政府の権能を規定することが、実態に即した危機に対応できるということになると考えています。
もう少し具体的な事象を示します。
緊急事態としては、戦争、国内紛争、大災害やパンデミックなどの事象が想定されていますが、例えば戦争への対処については、大きく二つの目的が想定されます。
緊急事態を認定した時点で、総理大臣は、海外から侵入する敵に対して自衛隊の武力行使を前提にした出動命令を出すことから始まります。国民を守るために敵と戦うという指揮権であります。一方で、敵の攻撃から逃れるために、国民の避難命令など、基本的人権の制限などを含めた、国民自らを対象に権力行使する機能というのがあります。具体的には、国民保護法の中で、特に国家よりも知事や市町村長にこの権能が特別に規定されていると理解をしています。
大災害やパンデミックで緊急事態を想定する場合は、災害対策基本法や新型インフルエンザ対策特措法などの危機対応法制がありますが、現実の事象が起きた中でこれがうまく機能したかどうか、検証が続いています。その中で共通した問題意識は、特に、災害の起きた数日間の発災時点で一人でも多くの人命を救済すること、そして、一時的に避難した人々の生活が持続可能な基本的条件を整えて維持するための救命と復旧活動であります。
この状況での消防、警察、自衛隊などの具体的な指揮権は、危機対応では、どこに権力の集中をして危機対応組織の動員を促し、より多くの命を救済することになるかということを考えることが必要であります。それは必ずしも総理大臣一極への権力集中ではないということは、これまでの経験の中で明らかであります。
事態が発生する初期段階では、現場の情報は現場の指揮官に集中します。現場の指揮官が通常の法律権限を越えた強い指揮権を与えられて緊急的な対処ができる事前の制度が必要なことが、東日本大震災の教訓だったと思います。また、その指揮官の対応を広域的な連携を調整してしっかりとバックアップしていくという体制、これが総理大臣を中心とする国の組織であることが期待をされたということであります。一義的には、市町村長や知事の権限拡大や自由財源を獲得することのできる権限保障の方が、総理大臣の緊急権限よりも優先的に考えることだということが指摘をされております。
緊急事態時の権限集中は必要です。しかし、緊急事態の形態により、その権限の拡大を誰にどのような形で付与するかは、想定する緊急事態によって異なっていくべきものであります。更に言えば、国内の紛争、騒乱を想定した場合は、自衛隊の治安出動や警察の緊急事態布告などにおいて、総理大臣の権力の濫用をどのように民主的なプロセスの中でコントロールするかという仕組みを法律に組み込むことができるかが大事なテーマになってきます。
そうした観点から考えると、憲法で一律に規定するよりも、各緊急事態の形態に応じた現状の法律による対応が望ましいと言えます。同時に、それぞれの法律は、より効果のある対応を実現するために不断の見直しをしていくということも必要であると考えます。
一方で、こうした前提の中、今話題になっている議員任期の延長はどのように整理するかが課題となります。議論の前提として、どのような状況であれ、でき得る限りの国会機能の維持は必要だという考えには賛同をします。
したがって、事の想定は、一般的に、任期が切れた状況で選挙をすることが困難な状態が生じたとき、どのように対応するかということ、言い換えれば、選挙困難事態への対応であります。災害の想定だけではなく、例えば、国の財政破綻で金融市場の大混乱が起き、人々が尋常でない心理状態に陥ったり、反体制運動が激化して選挙のボイコット運動が蔓延したりなど、様々に社会の混乱は想定をしておくべきであります。
そうした前提の下で議論の整理をすれば、まず第一に、この選挙困難事態の定義が必要であります。特に、一〇〇%の公平性を前提にした選挙の環境をいうのか、それとも、多少の公平性は犠牲にしても選挙可能とみなすのであれば、それは具体的にどの程度のことをいうのか、期間、広域性、事態の深刻度などについて決めておかねばならないと思うのであります。選挙困難事態の定義です。
次の課題は、参議院の緊急集会が次善の策として使えるのかどうかということであります。
私たちは、まず第一に、解散時以外の任期満了時にも類推適用ができないか、この問題、それから第二に、七十日の期限限定を少しでも緩和する解釈はできないか、そして三番目に、審議ができる案件が内閣提出の案件及びこれに関連する案件に限られるとする限定を緩和できないか等の諸点について検討が必要と考えていますが、参議院での議論や憲法学者の見解も踏まえて、憲法解釈に結論を見出すべきであります。
ここで出てくる結論によっては、憲法の今の規定に選挙困難事態における議員任期の特例を設ける必要が出てくる可能性もあり得るというふうに思います。
もう一つ大事な議論があります。権力者にとっては、自分に都合のいい理屈をつけながら、このような制度を利用して恣意的に選挙を先延ばししたり、選挙自体を避けることもできる可能性が出てきます。これを避けるためには、選挙困難事態の政治部門による認定をチェックする仕組み、これは司法の関与などということでありますが、について工夫をすることも大切な議論になってくるのではないかというふうに思っております。
以上、整理をしましたが、これから更に議論を深めていきたいというふうに思いますし、ここの議論だけではなくて、国民的ないわゆる意識の喚起ということを求めていくためにも、参考人、あるいは、それぞれの場所で、参議院も含めて議論を広めていく、拡大をしていくということが大切だというふうに思っております。
以上です。