辻清人の発言 (憲法審査会)
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○辻委員 自由民主党の辻清人です。
御発言の機会、ありがとうございます。
國重委員の御発言に私も賛成ですが、今日、示し合わせたわけではないのかもしれませんが、九条について多数、意見が述べられておりますので、私も、国際的な観点からちょっとこの九条について私見を述べさせていただき、議論を深めたいと思います。
我が国の安全保障環境は激変しています。ウクライナ情勢を見るまでもなく、一国で危機に立ち向かうことは困難だと思います。だからこそ、各国との連携が欠かせません。その際には、特に、自由、民主主義、法の支配、人権といった普遍的な価値について、これを共有する同盟国と協力する形で危機に立ち向かう姿勢が求められていると思います。例えば、その典型が、安倍元総理が提唱して、今、岸田総理によって展開されている、自由で開かれたインド太平洋などの外交戦略だと思います。
これらの普遍的な価値の前提となるのは何かというと、個人の価値観の多様性だと思います。個人の価値観の多様性を守るために国家に課された最大の責務は何かというと、国民を守ることです。
日本国憲法では、前文、十三条と九条を併せ読むことによって、解釈で、国民を守るために許容される自衛の措置を導き出しています。
では、その点、各国の憲法はどのように規定しているかというと、国民を守るという観点からは、まず軍隊の設置規定が思い浮かびますが、多くの国は、軍隊の設置自体の根拠規定は置いていません。その理由は、推測ですけれども、二十世紀初頭から中葉の戦争違法化の流れの中で、かつては国家が戦争に訴える権利を有していたとされること、そして、国連憲章によって戦争の完全違法化の後も、国家固有の権利として自衛権を有することを背景に、その担い手の軍隊の保有は国家として当然であるとの認識があるのではないでしょうか。
ただし、憲法に軍隊の設置自体の根拠規定を有する国はあります。それがドイツです。ドイツは、我が国と同じ敗戦国として軍隊が完全に解体されました。その後、冷戦の激化に伴って、西側諸国の最前線という地政学的な位置づけから再軍備に至ります。その際、憲法が改正され、軍隊の保有規定が置かれました。
翻って、我が国の憲法には国家の最重要責務たる国防の規定がありません。同じ敗戦国のドイツとは対照的です。我が国も本来なら、昭和二十七年の主権回復時や昭和二十九年の自衛隊発足時に、必要な規定を憲法に整備すべきだったと思います。
そこで、例えば自民党案では、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つという国防規定と、その担い手の自衛隊を憲法に明記して、現行憲法制定以来の欠落部分を補って、憲法を頂点とする法体系を完成させることを提案しています。
また、多くの国の憲法は、軍隊の保有を当然の前提としつつ、行政による統制である軍隊の最高指揮権の規定と、議会による統制である軍隊の組織編成に関する法定主義の規定を置いているようです。この点、例えばドイツでは、軍隊の指揮権が平時には防衛大臣に、戦時には首相にあることや、軍隊の定員数、組織は予算で明らかにすることなどを定めて、また、フランスでは、大統領が軍隊の長であり、政府が軍事力を掌握することや、国防組織の基本原則は法律事項であることなどを定めています。
自民党案では、主要国憲法との共通の事項として国防規定を設けるとともに、シビリアンコントロールに関する規定も設けて、自衛隊について、これに関する事項が法律事項であることのほか、行政権の主体である内閣の指揮権下にあることや、国会による統制に服することの明確化も提案しています。
同僚議員が述べているように、憲法改正によって国の形を整えて次世代に引き渡すことは今を生きる私たちの責任であって、国民を守り抜くための国防規定を設ける視点が欠かせません。最後にこのことを指摘して、私の発言とします。
ありがとうございます。