新藤義孝の発言 (憲法審査会)

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○新藤委員 自由民主党の新藤義孝です。
 本日は、緊急事態における議員任期延長に関連し、参議院の緊急集会の適用範囲について、議論となる点を整理してみたいと思います。
 まず、この国の運営の大前提とすべきは、どのような事態に陥っても、我が国の民主主義の根幹である国会機能を維持する、このことであります。そのためには、あらゆる事態において二院制国会を維持し、民主的統制の下に国の運営を行っていくことが重要と考えております。
 しかしながら、我が国の憲法には、いわゆる有事と言われる緊急事態の規定が欠落しております。
 本日のテーマである衆議院解散時における参議院の緊急集会は、予定した衆議院総選挙が実施されることを前提とした、いわば平時の規定であり、短期間に適用される制度です。仮に、衆議院の解散時や議員の任期満了時に緊急事態が発生し、長期かつ広範な地域において選挙の実施が困難な状態に陥ったときの対応は、憲法に規定されておりません。結果として、衆議院不在の状態が継続され、国の根幹を成す二院制国会が機能しなくなってしまいます。
 私は、長期にわたって衆議院不在が予想されるような有事が発生した場合においても二院制国会を機能させるために、憲法の明確な要件に基づき発動される緊急事態時の議員任期延長などの措置を講じておくことは、立憲主義の観点からも極めて重要と考えているわけであります。
 この基本的な認識を前提とし、憲法五十四条の文言に沿って、参議院の緊急集会が想定している適用範囲について、確認をしてまいりたいと思います。
 まず、配付資料上部、憲法五十四条の条文を御覧いただきたいと思います。
 第一項で、「衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。」として、解散から新しい衆議院議員による特別会の召集までは、最大七十日間であることを定めております。
 次に、第二項では、「衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。」と規定し、二院制国会の大前提である両院同時活動の原則を定めているわけであります。その上で、「但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。」と規定し、二院制国会の例外としての参議院の緊急集会を定めているところであります。
 さらに、第三項では、この参議院の緊急集会において取られた措置は、「臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。」として、その効力は限定的なものであることを規定しております。
 以上の文言を手がかりにいたしまして、日本国憲法が参議院の緊急集会の適用範囲をいかに限定的なものと考えているのか、四つの論点から検討してみたいと思います。
 まず、この配付資料の一、場面の限定でございます。
 五十四条二項では、明確に「衆議院が解散されたとき」と定められております。一方で、この規定を拡張解釈し、任期満了による衆議院不在時にも類推適用できるのではないかとの意見があります。
 この任期満了による衆議院不在の期間は、公選法及び国会法によって、総選挙までの三十日プラス臨時会召集までの三十日の最大六十日とされており、解散・総選挙が想定する七十日と同様に、一時的な衆議院不在の場合と言えるかもしれません。
 しかし、条文上、明確に「衆議院が解散されたとき」と規定されているにもかかわらず、任期満了時にも類推適用することは、憲法の明文規定に反し、立憲主義の観点からは決して望ましい解釈とは言えないと思います。
 次に、配付資料の二、期間の限定の論点です。
 憲法五十四条一項が想定する参議院の緊急集会が開催可能な期間は、解散から総選挙までの四十日間に加え、特別会召集までの三十日間、最大でも七十日間と考えられます。総選挙までの四十日に特別会召集のための準備期間を加えた、四十日プラスアルファ程度ではとの見解もございます。
 いずれにしても、参議院の緊急集会は、四十日プラスアルファから最大七十日程度の期間に次の新しい国会が召集されることを前提とした、平時の制度であることが理解できます。
 これに対し、この期間の限定を拡張し、衆議院の解散中に緊急事態が発生し、総選挙が七十日を超えて困難な場合にも参議院の緊急集会の規定が類推適用でき、議員の任期延長を行わなくてもこの規定で事足りるのではないかとの意見があります。この論点こそは、参議院の緊急集会に関する解釈の最も重要なポイントであります。
 この類推適用を認める拡張解釈の理由は、衆議院の総選挙が七十日を超えた場合であっても、衆議院不在という点では同じだからと推測されます。しかし、憲法が想定する衆議院の不在期間は、あくまで平時の一時的な期間であり、予定された期間内に総選挙により新たな衆議院議員が選出されることを前提としているはずであります。
 衆議院が解散され、衆議院議員が不在となった状態で仮に緊急事態が発生し、かつ、総選挙の実施がいつ行われるか予測できないほど厳しい状況に陥ったとします。そのときこそ、国民の安全と生活を守るため、憲法上の大原則である二院制国会の機能を最大限発揮することが求められるはずであります。
 にもかかわらず、有事において、国会が二院制の機能を発揮できず、その民主的統制を平時の制度としての一院である参議院の緊急集会に委ねることは、憲法が求める国の運営原則にかなっているとは到底言えず、国民の負託に応えることにもなりません。
 また、そもそも、参議院の緊急集会は二院制国会の例外であり、その規定の厳格な解釈が大原則であることは言うまでもありません。
 このように、参議院の緊急集会は、その開催可能な期間について限定されたものであることがよく分かると思います。
 なお、こうした議論は、参議院の緊急集会の位置づけを変更させるものではなく、平時における衆議院解散から総選挙を経て特別会召集までの衆議院不在の期間においては、国会機能を代替する機関として憲法により特別に位置づけられた重要な規定であると認識しております。
 私たちが議論すべきは、一院が持つ権能についてではなく、現行憲法に欠落している、有事における二院制国会の機能をいかに維持するかという観点からの検討であることを、改めて皆さんと共有したいと思います。
 次に、配付資料、三の1、権限の限定を御覧ください。
 参議院の緊急集会は二院制国会の例外であり、その性格から、内閣総理大臣の指名、条約締結の承認、内閣不信任決議などの権限は行使できないと考えられており、その解釈も現行規定の枠内で安定しています。
 次に、2、案件の限定です。
 五十四条二項ただし書では、参議院の緊急集会を求めることができる主体を内閣と規定しています。これを受けて、国会法では、緊急集会で審議できる案件は、内閣が示した案件とこれに関連する案件に限られるとされています。
 これについては、国会法改正により、処理できる案件の範囲を拡大できるのではないかとの意見があります。しかし、国会法における案件限定は、内閣が緊急集会を求めることを踏まえた憲法上の要請であり、法律でこれを拡大することには無理があり、慎重な議論が必要と考えます。
 ここにおいても、参議院の緊急集会が行使できる権限の面でも、審議できる案件の面においても、限定的であることが理解できると思います。
 最後に、配付資料の四、暫定性の論点です。
 参議院の緊急集会で取られた措置は、事後の衆議院の同意が必要であり、暫定的な措置とされています。新たに衆議院が構成され、二院制国会の原則に復帰する以上、当然のことと思われます。この点につきましては、現行規定の枠内解釈で安定しているものと思われます。
 以上、私なりに論点整理をさせていただきました。
 そのポイントは、配付資料の下、枠囲いにありますように、第一、参議院の緊急集会は平時における二院制国会の例外であることを踏まえ、立憲主義の観点からも、憲法の慎重な解釈が必要ではないかということです。第二として、憲法に議員任期延長などの新たな規定を設け、有事における二院制国会の機能維持を図るため、万全の措置を講ずるべきではないかということであります。
 今朝の幹事会において、本日の集中討議を踏まえ、来週の定例日には参議院の緊急集会について参考人質疑を行うこととなりました。引き続き、憲法審査会が安定的に開催され、充実かつ深い議論が活発に行われるよう、委員各位の御理解と御協力をお願いいたしまして、私の発言といたします。

発言情報

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発言者: 新藤義孝

speaker_id: 16290

日付: 2023-05-11

院: 衆議院

会議名: 憲法審査会