奥野総一郎の発言 (憲法審査会)
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○奥野(総)委員 立憲民主党、奥野総一郎です。
本日は、参議院の緊急集会に関連して発言をさせていただきます。
日本国憲法は、徹底した国会中心主義を採用し、いわゆる緊急事態条項を設けていません。昨年から見てきたように、武力攻撃、内乱・テロ、自然災害、感染症、それぞれにつき基本法制があり、濫用のおそれなく緊急事態等の認定を行い、対応する仕組みがあらかじめできています。これらで不十分な場合、例えば予算措置が必要であるとか新たに現行法改正の必要が生じた場合には、国会で審議をして対応することになります。急ぐのであれば、迅速に審議を進めればよいだけであります。
緊急政令、緊急財政処分条項については、日本国憲法制定時に検討されましたが採用されず、いかなる場合でも、立法機能、行政監視機能等、国会機能の維持を大前提として、事前の立法による政令委任、参議院の緊急集会の規定が設けられた経緯があります。
こうした経緯から見ても、いわゆる緊急事態条項を憲法に規定する必要がないことは明らかです。公明党も同趣旨の御発言をされたと理解しております。
ただし、現行憲法上、明らかでない点があります。災害や武力攻撃事態などにより選挙が期日までに行えず、衆議院の全部又は一部が選任されない場合にどのように対処するかという点です。これを、選挙困難事態と仮に呼びます。
参議院の緊急集会は、憲法の条文上、衆議院の解散から特別国会の召集までの七十日間に、内閣は国に緊急の必要があるときは参議院の緊急集会を求めることができる、緊急集会において取られた措置は臨時のものであって、次の国会開会の後十日以内に衆議院の同意がない場合にはその効力を失うと規定されており、通常どおり選挙が行われることを前提とした規定ぶりになっています。
つまり、今の現行憲法には、選挙困難事態、選挙ができないということについての規定がないわけであります。このことから、日本国憲法は、選挙はいかなる場合にも行うことを前提としていると考えられます。
一方で、大災害、大規模テロや武力攻撃事態、感染症など、様々な事態を想定しておかなければならない状況が近時生じています。現に、東日本大震災の際には、地方公共団体の議員及び長について、半年を限度として、選挙期日、そして議員任期の延長が行われました。
国会議員の任期は憲法に明示されており、地方公共団体議員のように法律で任期を延長することはできません。現実に国政選挙が行えない場合にどのような対処をするのか、あらかじめ議論をして結論を得ておく必要があります。
そこで、まず、どのような場合が選挙困難事態に当たるのかについて、先ほど述べた例を念頭に慎重に議論し、定義を定める必要があります。
その上で、選挙ができないかどうかの具体的な判断については、一義的には選挙を実施する行政府に委ねざるを得ないと考えられますが、そこで、時の政権が権力維持のために恣意的に選挙を先送りすることを防ぐため、権力分立の観点から、司法及び国会をこの判断に関与させる必要があると考えます。また、司法の関与を考える場合、憲法裁判所の設置の是非も併せて議論すべきであります。
加えて、選挙をいかなる場合にも行うことが基本である以上、選挙困難事態の期間や地域についても慎重な判断が必要であります。
すなわち、選挙困難事態について、どのような場合が想定されるのか、あるいはそのような事態は生じないのか、それを誰が判断するのか、そしてどの程度の期間を想定するのか、全国一斉に投票を繰り延べるのか地域を限定するのかといった論点について、有識者から伺う必要があると考えます。
次に、選挙困難事態の認定が全国に及び、衆議院の定足数を満たさなくなる場合に、参議院の緊急集会制度でどこまでカバーできるのかが論点になります。
選挙困難事態に関し、新藤幹事の以前の論点整理メモにも、議員任期の延長等は、緊急集会で対応できない場合の措置とあります。つまり、緊急集会で対応できない場合とはどのような場合かについて定まらないと、議員任期の延長の議論に至らないことになります。
緊急集会については、任期満了により衆議院議員が存在しない事態においても、類推適用により招集できるという説が近時有力になっています。こうした見解に立てば、災害時など選挙実施のめどがある程度立つ場合には、選挙を繰り延べつつ、緊急集会で対応できることになると考えます。
この点についても、有識者の方の見解を伺いたいと思います。
さらに、全国的な選挙困難事態が長期にわたる場合、緊急集会の活動に機能的、時間的に限界があるのか、何ができるのかという問題があります。
機能的限界については、緊急の必要に該当するものである限り、国会の権能の全てを行うことができるとする説もありますが、緊急集会はあくまで臨時のものであることから、全ての国会の権限が行使できるわけではないとする説が有力のようであります。緊急の必要については、制定過程から、旧憲法と同様、福祉増進という積極目的のために本条を発動することはできないとする有力説もあります。
また、条約締結の承認が可能なのか、内閣総理大臣が欠けたとき、内閣総理大臣の指名はできるのか、内閣不信任決議はできるのかなどの論点もあります。
一方、七十日を超えてどこまで緊急集会で国会機能の代行ができるのか、時間的限界については余り議論がなされていないように思われます。
緊急集会が機能的、時間的にいかなる範囲で二院制の国会、通常の国会の代行ができるのか、有識者に伺いたいと思います。
以上について、有識者の見解を伺い、審査会で議論を詰め、国会中心主義の観点から必要があるということであれば、議員任期の延長について、国会機能を維持するための選択肢の一つとして議論を進めてもよいというふうに考えております。
最後に、全国的な選挙困難事態の対応を考える際、仮に議員任期の延長という手段を取るとすると、任期が終了しているのに選挙を経ていないという民主的正統性の問題があり、これについても、参議院緊急集会と同様、慎重な検討が必要であるということを念のため申し上げて、発言を終わりたいと思います。
以上です。