新藤義孝の発言 (憲法審査会)
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○新藤委員 自由民主党の新藤義孝であります。
五月十八日の審査会では、大石、長谷部両参考人より、参議院の緊急集会について、専門的見地から御意見をお伺いしました。
本日は、これまでの審査会での討議及び両参考人の意見を踏まえまして、参議院の緊急集会について私なりに整理をしたいと思います。
まず、配付資料の上段を御覧ください。
憲法五十四条が本来想定しておりますのは、衆議院の解散時に国会の対応を必要とする緊急の案件が発生し、それを処理するために参議院の緊急集会を開くことができるということであります。これは、その後の一定期間内に総選挙の実施が予定されており、新しい衆議院議員が選出されることを前提に、二院制国会の例外として、一時的、暫定的な制度であることを意味するわけです。
この点につきましては、審査会の議論でも多く出され、大石、長谷部両参考人からも同様の意見がありました。
つまり、参議院の緊急集会は、二院制国会の機能が予定された選挙によって回復するまでの間に活用される、平時の制度と位置づけられるわけであります。
また、大石参考人の指摘のように、このような二院制国会の例外規定は厳格に解釈すべきことについても、多くの委員に共通した意見と考えます。
これを前提に、次の、配付資料の一、場面の限定を御覧ください。
五十四条一項の文言上、緊急集会の開催は衆議院が解散されたときに限定されますが、大石、長谷部両参考人共に、任期満了による衆議院不在の場合にも類推適用できるのではないかとの意見でございました。
例外規定に関する条文の厳格解釈の原則及び立憲主義の観点からすれば、こうした拡張解釈は基本的には望ましくないと考えます。一方で、任期満了による場合も総選挙の実施が予定されており、衆議院の不在が六十日前後の一時的、短期間であるという状況の共通性を考えれば、類推適用について検討の余地があるとも考えられ、更にこの議論を深めたいと思います。
次に、配付資料の二、期間の限定を御覧ください。
緊急集会を開くことができる期間について、大石参考人は、七十日という数字は一義的に明白であるから、これ自体を延長する解釈は取れないと明確に述べる一方、長谷部参考人からは、平常時にはきっちりと守らなければならないが、非常時になれば生き延びることが大事だから、七十日を超えて緊急集会で対応することも可能との意見でありました。
私は、緊急集会が二院制国会の例外規定であることを踏まえれば、原則として、憲法の文言どおり、最長で七十日と考えるべきであります。一方で、一の場面の限定の議論と同様に、総選挙の実施が予定されているが、国会召集までの期間が七十日を超えてしまうというような場合には、状況の共通性という観点から、多少の延長があり得るかどうか、検討の余地があると考えます。
続いて、配付資料の三、権限の限定、案件の限定を御覧ください。
この点について、大石参考人は、参議院の緊急集会は内閣のみが開催を求めることができ、内閣が提案した案件を参議院が審議、議決することなどを踏まえ、その権限をやみくもに拡大することは、内閣と参議院の関係を大きく変えてしまうだけではなく、参議院によって衆議院の権限を奪うという危険をもたらしかねないとの意見を述べられました。長谷部参考人も、参議院の緊急集会の権限に限定があることは認められております。
したがって、参議院の緊急集会の権限や案件が限定的であることは、学識的にも異論はないものと考えます。
配付資料の四は、暫定性についてであります。
緊急集会で取られた措置の効力が、次の国会開会後十日以内に衆議院の同意を得なければならない暫定的なものであることについては、大石、長谷部両参考人とも異論はなく、限定的に二院制の例外としての権能はあっても、二院制の機能を代替できるものではないことが明確になったと考えています。
したがって、我々が議論を進めてきた緊急事態における議員任期の延長などの措置は参議院の緊急集会でカバーできるものではなく、あらゆる事態に陥っても国会機能を維持するという観点からの議論は更に加速させなければならない、このように考えます。
配付資料の下段、議論に当たって留意すべき事項を御覧ください。
まず、1、参議院の緊急集会については、これまでの討議により、総選挙が実施され、新しい衆議院議員が選出されることを前提にした平時の制度であり、期間、権限や案件も限定された暫定的な制度であること。
次に、2、日本国憲法には、参議院の緊急集会では対応できない有事に陥った際の規定がなく、そもそも、いわゆる有事の概念が規定されておらず、緊急事態の発生を想定した制度は整備されておりません。
しかし、そのような有事として、東日本大震災や高い確率で発生が予想されている首都直下型、南海・中南海トラフ巨大地震を考えると、発生する蓋然性は高まっており、今や現実の脅威となっております。
私たち国会議員は、立法府の責任において、いかなる事態が発生しても、国民の生命と財産を守り抜かなければなりません。憲法に緊急事態条項を整備し、二院制国会を機能させるための議員任期延長など、国会機能維持のための措置を講じておくことは喫緊かつ必須であり、立憲主義の観点からも極めて重要です。
なお、三分の一の定足数が確保できれば国会機能は維持可能であるから、選挙ができるところで総選挙を行い、その後は、繰延べ投票を使って、選挙が実施可能になったところで順次行っていけばよいとの意見を聞きました。取りあえず選挙ができたところで選ばれた議員で、定足数さえ満たせれば国会が機能するともいうような意見は、立法府に身を置く者として、到底受け入れることはできません。
また、衆議院の比例選出議員については、そのブロック全ての選挙区で結果が出るまで、一人の当選人も確定しないことになります。このような不完全な状態をもって、国民の代表機関である国会が機能しているとはおよそ言えないと思います。
国政選挙は、全国一斉に同じ条件で民意を問い、その集約として国会議員が選出される、それが民主的正当性のある立法府であり、緊急事態に陥っても、その姿を追求することは当然と考えます。もちろん、厳しい状況であっても、できる限り早期に選挙を実施することは当然であり、自分たちの都合のよいように恣意的な判断があってはならないことも、これまた当然であります。
また、参議院の緊急集会を軽んずることはあってはならず、規定された条件や範囲においては、参議院の重要な機能としてしっかり活用していくことは言うまでもありません。
これまで述べた意見を改めて集約すると、まず、参議院の緊急集会は、平時の制度として、その適用範囲をどの程度拡張できるか、検討を加えてはどうかということであります。あわせて、憲法上の規定がない有事においても国会機能を維持するため、議員任期の延長を始め、どのような緊急事態条項を整備すべきなのか、議論を煮詰める必要が更に深まったというふうに考えております。
これに加えて、3です。このような措置を講じても、どうしても国会機能が維持できないという万が一の事態についても検討が必要であり、内閣の緊急政令や緊急財政処分の制度について議論を深めるべきとも考えています。
もちろん、こうした制度は、積極的な活用を想定するのではなく、究極の備えとして、いかなる場合においても超法規的な政策判断を行うことなく、政府の行動を統制するという立憲主義の観点から重要と考えています。
以上、参議院の緊急集会の位置づけと適用範囲に関する論点を私なりに整理をさせていただきました。
各会派からの御意見も伺った上で、今後は、こうした要素も含め、議員の任期の延長を始めとする緊急事態条項の創設について、憲法審査会として総括的な論点整理を行ってはいかがかと考えております。具体的な進め方につきましては、筆頭間協議や幹事会などで相談させていただきます。
今朝の幹事会におきまして、次の定例日である六月八日に審査会を開催し、討議を継続することを提案いたしました。引き続き、憲法審査会が安定的に開催され、充実かつ深い論議が行われるよう委員各位の御理解と御協力をお願いして、私の発言といたします。