中川正春の発言 (憲法審査会)
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○中川(正)委員 立憲民主党の中川正春です。
今日の審査会は、参議院の緊急集会について、先般の参考人質疑を踏まえての議論になります。
私は、ここでは、もう少し原点に立ち返ったところを話の出発点としていきたいというふうに思います。
この出発点というのは、緊急事態条項が必要かどうかということでありました。この論点については、私たちは、憲法に緊急事態条項、すなわち、通常の統治機構を超えて権力を集中させ、緊急事態に対応する権能を明記するということは必要ないというふうにこれまでも申し上げてきました。それぞれの法律の中で体制がつくられているということであります。
不文の法理である国家緊急権を実定化し、憲法上の緊急事態条項を設けるということは、かえって権力によるその濫用のリスクというのを高めていきます。緊急事態の大義名分の下、緊急事態条項が濫用されるというリスクであります。
そのような中で、今回課題として取り上げられたのは、緊急事態により選挙困難事態が続くと想定される場合にはどうするかということであります。
この課題に対して、どんなときでも権力の濫用を国民代表機関である国会が統制するという立場に立てば、最初に考えなければならないのは、選挙困難事態をでき得る限り早急に解消して選挙を実施し、国民の意思を反映した衆議院の機能を取り戻すということであります。
選挙困難事態の捉え方としては、これを理由に時の政権が恣意的に選挙を先延ばしして権力の維持を図り、暴走するという危険性をいかに防ぐかという観点が大切であろうかと思います。また、それが出発点だと思うのです。
それを踏まえた上で、具体的に検討すべき主な論点は、次のようになります。
まず、選挙困難事態を早期に解決する方策であります。
これに関して、日弁連の提案が次のようにあります。まず、1、平時において、選挙管理委員会に対し、選挙人名簿のバックアップを取ることを義務づける。さらに、2、大規模災害が発生した場合には、避難者が避難先の市区町村の選挙管理委員会に出向いて投票を行える制度を設ける。三番目に、郵便投票制度の要件を緩和することにより投票できる制度を備えていくといった内容であります。これに加えて、インターネット投票の実施規定を設けるということも重要であるというふうに思っております。
次に、選挙困難事態の認定基準と効果の問題であります。広範な地域での長期間の実施不能を意味する選挙困難事態とはどのような事態を指すのか、この定義であります。
選挙が実施できない地域のみを除いた選挙の一部実施が許されるのか。許されるとした場合に、その基準などを事前に決めておく必要があります。すなわち、選挙の公正な施行に支障がある選挙区の割合が、例えば全体の三〇%なら選挙の一部実施をしていいのか、五〇%ならどうか、それとも、一〇〇%の選挙区で選挙が公正に施行できなければ一切選挙ができないというのかということについて、様々な事例を想定しつつ、選挙困難事態の具体的な認定基準と認定の効果を策定していくことが必要だと思います。
さらに、選挙困難事態の認定主体の問題もあります。
選挙の延期や実施の決定をするのは、政府だけでいいのか。国会ないし参議院の緊急集会の関与が必要なのではないか。それとも、第三者機関に選挙の延期、実施勧告などの権限を付与することも必要であるのではないかということであります。この機能を一定程度裁判所に付託するということ、こんな論点も含めて、更に議論が必要だというふうに思います。
さらに、選挙困難事態により衆議院議員が不在となる期間が長期にわたって続くと想定される場合にどうするかという点も、当審査会で議論されています。
しかし、実際には選挙困難事態が長期化する蓋然性が低いということ、そうしたケースを事前に想定することは困難であるということは、大石、長谷部両参考人も述べておられます。また、過去の例から、そのようなケースは起きていないということも指摘をされています。
そのような中で、たとえ発生する確率が低いものであっても、あえて選挙困難事態の長期化を想定する必要があるということであるとすれば、私たちは、現時点では、さきに述べた選挙困難事態に対する課題を解決した上で、参議院の緊急集会で対応することを選択すべきだと考えております。
ただし、通常の二院制の中で国会が果たすべき機能とは区別して、内閣から付託される限られた課題に臨時的、応急的に対応することが前提となっていくのは当然であります。さらに、選挙が行われて衆議院の機能が戻ったときには、憲法五十四条の規定に基づき、それを承認する手続というのが必要であります。
なお、七十日を超えて選挙困難事態が続くと想定される場合には、緊急集会では対応できず、議員任期を延長して対応する案が出ておりますが、現時点で、我々は議員任期の延長は必要ないと考えています。
元々、七十日は、その間に選挙をして衆議院の機能を取り戻す期限の目安であって、万が一これを超えたからといって、参議院の緊急集会の機能が否定されるということはないと考えています。
もっとも、緊急集会の活動可能期間について、衆参の憲法審査会で議論を詰め、一定の制約があるとの共通認識に達した場合には、議員任期延長についても、国会機能を維持するための選択肢として議論を進めることもあり得るということ、ここもあると思います。
ただし、その際には、先般の長谷部参考人の立憲主義に基づいた見解に留意する必要があると思います。議員任期の延長を可能とすれば、時の政権がそれを悪用して、選挙で民意の審判を受けることを避けていつまでも権力の座に座り、緊急事態を恒常化させてしまう危険があるということであります。時の政権が議員任期の延長を権力維持のための手段として使うことがあってはならないということ、これを強く申し上げておきたいと思います。
以上、緊急集会を取り巻く課題について、私たちの論点整理をしました。
参議院の憲法審査会でもこの議論は続いております。緊急集会に関する議論は、参議院の論点整理を尊重していくということが必要であると思います。そこを待たなければならないということであります。最後にこのことを申し添えて、私の今日の発言といたします。
ありがとうございました。